はてなキーワード: サンタとは
たとえば「食べてすぐ横になると牛になるぞ」とか親に叱られても、荒唐無稽すぎて信じないよな?
それにテレビとか見てたらなんとなくわかりそうだし。
上流家庭は子供にテレビを見せないとかっていうし、カルトが信者をマスメディアに触れさせないようにして洗脳するみたいに、洗脳してるかね。
みたいな話をたまに聞くけど、現代日本でそんなことがあるのか?
俺はサンタが実在してるなんて思ってたことはまったくないのだが。
ところ変わって兄貴のほうはバイトを終え、仕事仲間と共に帰路の途中だった。
「やれやれ、サンタのコスプレなんてガラにもないことやるもんじゃないな」
「ところで、お前はクリスマスどう過ごすんだ? やっぱり映画でも観るのか?」
「そんなに自分って分かりやすい人間に見える? まあ、その通りなんだけれども。ビデオ屋の店長が在庫処理で譲ってくれてさ」
「『家にボッチ』、『エクセレントかも、人生?』……パッケージが如何にも古いって感じだな」
「知らなくて悪いかよ。そうやって知識でマウントとろうとする姿勢、お前の悪い癖だぞ」
「無知なのにマウント取ろうとする奴よりはマシだろ。それよりもホラ、割と珍しいものもあるよ。この『ええクリスマス物語』とか、この国では未公開なんだ」
「なんでそんなの店長が持っているんだ」
「……さあ? まあ自分の話はこれくらいにして。マスダは今日どう過ごすつもり?」
「特にないな。明日は家族と過ごすけど、今日は父さんと母さんが夫婦水入らずのディナーを楽しむから。弟の子守りのために留守番」
「ふーん……あ、そんな話をしていたら、ちょうど弟くんが」
ドッペルが家から出てこないので、仕方なく公園でくすぶっていたのだろう。
俺は木陰に隠れながら、チャンスを伺う。
あいつに気づかれれば、さっきのように俊足で逃げられるのがオチだ。
そして、そのチャンスはすぐにやってくる。
ツクヒが俺のいる木陰とは真逆の方を向いた。
俺はそれを見逃さず、全速力で距離を詰める。
けど、俺の逸る気持ちが足音に出てしまい、ツクヒとの距離を満足に詰められないまま気づかれてしまう。
俺が隠れていた木陰と、ツクヒがいた場所までかなり距離があったのも痛かった。
この公園が、俺たちの町では『缶蹴りに向かない広場』なことで有名なのを実感する。
そして、ツクヒはまたもその俊足でもって俺との距離をどんどん離していった……。
これではさっきと何も変わらない。
もちろん、そんなことは分かっていたし、こうなることも分かっていた。
違うのは、今の俺は一人じゃないってことだ。
「兄貴、そっちにいったぞ!」
ついさっき出会った兄貴たちに、公園の外を見張ってもらっていた。
俺はツクヒを捕まえるために走ったのではなく、あくまで誘導役だったのだ。
「人違いだ」
ツクヒは慌てて方向転換し、逃げようとする。
けど、もはや逃げることも、捕らえられるのに抵抗する体力も残っていなかった。
全体的にリアリティがない。
家族そろって食事は普通の日もそうだし(普通の日に出来ないような、例えば仕事が忙しい家庭は
この年末のクソ忙しい中で余計にできるわけないし)
プレゼントも夫婦だと新婚のうちはともかく、段々渡さなくなっていくものでは。
仕事が遅いならケーキは奥さんが買っておくものでは?奥さんはもっと遅い設定?
まあこれはあるかも
今回は別行動で済んでるけどこのままいくと別居だよな。
もしこのまま関係が改善されないのであれば別れる、気持ちは相当離れているということを正直に伝えてチャンスを一度だけ与えるしかないな。
あなたの周りにいる夫婦は、ほぼすべての家庭で家族そろって食事をし、プレゼントを交換し楽しく過ごしてるよ。
普段は仕事で遅く帰ってくる旦那も会社の帰りにケーキとか買っちゃってチキンとか食べてたりするね。
部屋に入ると、そこには魔法少女がいた。
ミニスカートのサンタという色んな意味で寒そうなコスプレをして。
イベントのために、出番を待っている様子だった。
「ちょっと協力して欲しいんだ。居場所を見つける魔法とかでさ」
「うーん……マスコットに聞いてみるね」
肩に乗った珍獣に話しかけると、マニュアルじみた説明を始める。
「個人の守秘義務に反するので、魔法少女の仕事以外でそれを利用することは原則禁じられています」
俺がそう言うと、珍獣は何も言わなくなった。
故障したのだろうか。
「あー……どうやらマスコットを遠隔操作している人が、マニュアルを読み返しているみたいね」
「……失礼しました。確認したところ、機密の優先順位においてサンタは上位者にあたるようです。なので魔法少女の超法規的措置が適用されます」
「つまりOKってこと。さっそく自動追跡の魔法を飛ばすから、ツクヒくんが見つかるまで待っててね」
自分でも無理のあるお願いだと思ったが、まさかサンタがそこまで特別な存在だったとは。
「……ねえ、初めて会った日のことを覚えてる? あなたや、あなたの友達が私の正体を知ってしまった日」
「ああ・・・・・・あったね、そんなこと」
「それでも今、こうして私は魔法少女をやれている。なぜなら、あなたたちが正体を広めなかったから。それって、サンタがいないのをバレないようにしているのと似てない?」
そういえば、何となく似ている気もするな。
「言葉には出来なくても、あなたは理解していたの。嘘で幸せになったり、暴かれたとき不幸になったりもする。そういった嘘もあるって」
俺の中で答えが形作られていくのを感じた。
それは魔法少女の言葉だけではなく、これまでの出会い、経験全てがあってこそだったのかもしれない。
「ツクヒくんの場所が分かったよ。公園に戻ってきているみたい」
「分かった、ありがとう」
「手伝ってあげたいけど、これからイベントでやらなきゃいけないことがあるから、ごめんね」
「大丈夫さ。クリスマスのために、それぞれやるべきことをやるんだ」
その俺がやるべきことは、ツクヒを止めることだ。
サンタクロースは やってこない
空から降ってこない
ソリを引っ張る トナカイにとっちゃ
ただの支配者
ホーホー なんて笑い方
気色悪い
既に気づいているだろ
ほら サンタは やってこない
サンタクロースは やってこない
売名目的
型落ちの玩具 親のズレたチョイス
これで喜べと?
商業主義の化け物
ほら サンタは やってこない
この1年、大変よいこに過ごし、男に浮気されても黙って去り、仕事にも黙々と打ち込みMVPをとり、部下の笑顔が見たい一心で身を削って職場環境を見直し、部屋もいつも清潔に保ち、税金もしっかり払って健康第一で無欠勤無遅刻で過ごしたのに
サンタてめえサボってんなコラ。
気持ちを切り替え、俺は改めてツクヒの捜索に乗り出す。
ツクヒの行方は見当がつかない。
だが、居場所を見つけるアテはあった。
魔法少女だ。
この町には魔法少女がいて、とある一軒で見知った間柄になった。
事情を話せば、協力してくれるはず。
確か市内で、クリスマスの催しに参加するとか触れ込みがあったよな。
イベントの関係者であるタケモトさんの鉄壁のガードによって、俺は強引な突破すら封じられていた。
「諦めろっての。無分別なファンとかが突撃してこないよう、関係者以外は通しちゃいけねえんだ。どのような事情だろうが、例外はない」
けど、ここまで来て諦めるわけにはいかない。
「頼むよ。サンタを、サンタを信じる子供を、それを大事にする人たちのために、どうしても必要なことなんだ」
俺は何度もタケモトさんに頼み込んだ。
「タケモトさん、去年のハロウィンのことを覚えている?」
「お前がイタズラあってのハロウィンだとか主張して、周りの制止を振り切って暴れようとしたときだな」
「結局、あれは失敗に終わったけど、最後にタケモトさんは自分の家を犠牲にしてまで、俺たちのイタズラを認めてくれた」
もちろん、それを認めてくれたのはタケモトさんだけじゃない。
他の大人たちも表面上は俺たちを止めつつも、正論だけでは学べない大事なことを知っていた。
「そんなんじゃねえ。イタズラが原則悪いことって前提は変わらねえんだ」
「でも、それが許されたり、認められる時もある。そういうのを“容認”っていうんだろ。サンタなんて嘘が大衆に根付いているのは、そういう考え方も大事なのを知っているからだ」
「ふん、大した理屈だな。だが、それと今お前を通すことは別の話だ」
そうして押し問答が幾度となく繰り返され、タケモトさんが絆され始めたとき。
「通してあげて」
魔法少女の声だ。
タケモトさんは溜め息を吐くと、おもむろに扉を開けた。
「先に進む前に、さっきの話の続きだ」
そのまま進もうとする俺に、タケモトさんは呼び止める。
「ハロウィンのイタズラが悪いものとは限らないように、サンタの存在も悪いものとは限らん。大人は、なにもサンタを使って子供たちを騙したくて、悪意があって真相を隠すわけじゃねえ」
「うん、分かってるよ」
「いずれ知る日が来て、傷つくかもしれない。だがそれを悪い思い出にするか、良い思い出に昇華できるかはテメェ次第だ。夢から醒めるのは、見ているものが夢だって気づいた時だとは限らんからな」
「タケモトさんは……できたの? 良い思い出に」
「大人だって誰かの子供だ。その子供が大人になった今、その夢の“お手伝い”に参加しているってのが答えだ。オレの話は以上。とっとと行きな」
タケモトさんは、俺を追い払うように手を振った。
あわててドッペルに連絡を入れる。
「もしもし」
「ドッペル、いまどこにいる?」
「家にいるよ。この時期になると親がなぜか外出させてくれなくて」
「よし、今日はそのまま家にいて、誰が来ても迎え入れるんじゃないぞ」
「サンタも?」
「サンタは訪ねるとき、わざわざ住人に尋ねたりしないんだよ。合法侵入なんだから」
「それもそっか」
ひとまず、これで時間は稼げる。
ツクヒを見つけだし、サンタの暴露話を思いとどまらせなければならない。
だが、そんなことができるのだろうか。
俺は少し冷静になって、“本当の意味で根本的な問題”について考えた。
『いずれドッペルも分かることだ、マスダ! 止められると思うなよ』
実際問題、ツクヒを止めたところで、ドッペルもいつかはサンタの存在に気づく日が来る。
その日がいつなら良いのか、誰も正確な答えは知らない。
仮に答えがあったとして、そこまでして隠す意義があるのか。
そもそも、サンタなんて虚構の存在を作り上げて、それで俺たち子供を騙して何の意味がある。
ただツクヒを無粋だからといって止めるのは、本当に正しいことなのか。
俺はその答えを出せない。
それでも心のどこかで、ツクヒを止めなければならないという思いが歩みを止めさせないでいた。
俺自身が迷っているのに、仲間たちを呼んで協力を仰ぐのは憚られた。
アテもなく、俺は一人でツクヒの捜索を始める。
別に悪いことをやっているわけじゃないけど、あいつがやってると何だかすごく胡散臭いな。
「おや、マスダくん。クリスマスだというのに浮かない顔ですね。プレゼントのアテが外れたとか?」
「そうじゃないよ。あんたこそ他宗教の文化に参加するなんて大丈夫なのか?」
「生活教は、他の宗教に寛容です。それが人々の生活を彩るものであれば、文化や風習においても同様なのです。だからクリスマスを祝っても何ら問題ありません」
「随分とフットワークが軽いんだな」
「まあここだけの話。新興宗教は歴史のある信仰や、科学などの体系と真っ向から戦うと排除される運命しかないので。柔軟剤入り洗剤のように、しなやかでクリーンであることに努めないとやっていけません」
好き勝手やっているように見えて、宗教って割と不自由なんだな。
俺は、それがまるでサンタみたいだと思った。
「俺たちのクリスマスには、主とかは出てこないけどさ。なんというか、サンタって信仰そのものだよな」
思わず吐露してしまったが、我ながら教祖相手に何を言っているんだか。
「ふーむ……確かに。サンタは、信じることの尊さを学ぶ上では大きな存在ですね」
だが教祖は意外にも真面目に答えた。
「時に虚構というものは、人々が何かを学ぶことに大きく貢献しています。基本的に嘘は良くないことですが、それでもサンタという存在を守ろうとするのは、そこに何か大事なものがあるからでは?」
「プレゼントとか?」
「まあ……それもあるでしょうけれども。私の立場では、そういったものに明確な答えを出すわけにはいかないので……」
たぶん、俺がツクヒを止めようとしているのも、そのためなんだ。
答えはまだ出ないけど、道筋は見えたような気がした。
「よし、クリスマスが過ぎるまでに何とかしないと」
ん、どういうことだ?
「クリスマスの時期は宗教によって異なるので、別にテキトーにやっても大丈夫です」