2017-12-27

[] #45-4「3丁目の輝石」

≪ 前

部屋に入ると、そこには魔法少女がいた。

ミニスカートサンタという色んな意味で寒そうなコスプレをして。

イベントのために、出番を待っている様子だった。

ちょっと協力して欲しいんだ。居場所を見つける魔法とかでさ」

「うーん……マスコットに聞いてみるね」

肩に乗った珍獣に話しかけると、マニュアルじみた説明を始める。

個人守秘義務に反するので、魔法少女仕事以外でそれを利用することは原則禁じられています

「けど、サンタ守秘義務に関わることなんだよ!」

俺がそう言うと、珍獣は何も言わなくなった。

故障したのだろうか。

「あー……どうやらマスコット遠隔操作している人が、マニュアルを読み返しているみたいね

わざわざ読み返さないといけないほどのことなのか。

「……失礼しました。確認したところ、機密の優先順位においてサンタ上位者にあたるようです。なので魔法少女超法規的措置適用されます

「つまりOKってこと。さっそく自動追跡の魔法を飛ばすから、ツクヒくんが見つかるまで待っててね」

自分でも無理のあるお願いだと思ったが、まさかサンタがそこまで特別存在だったとは。


…………

ツクヒの居場所が分かるまでの間、俺と魔法少女は話をした。

「……ねえ、初めて会った日のことを覚えてる? あなたや、あなた友達が私の正体を知ってしまった日」

「ああ・・・・・・あったね、そんなこと」

「それでも今、こうして私は魔法少女をやれている。なぜなら、あなたたちが正体を広めなかったから。それって、サンタがいないのをバレないようにしているのと似てない?」

そういえば、何となく似ている気もするな。

言葉には出来なくても、あなた理解していたの。嘘で幸せになったり、暴かれたとき不幸になったりもする。そういった嘘もあるって」

俺の中で答えが形作られていくのを感じた。

それは魔法少女言葉だけではなく、これまでの出会い経験全てがあってこそだったのかもしれない。

「ツクヒくんの場所が分かったよ。公園に戻ってきているみたい」

「分かった、ありがとう

「手伝ってあげたいけど、これからイベントでやらなきゃいけないことがあるから、ごめんね」

大丈夫さ。クリスマスのために、それぞれやるべきことをやるんだ」

その俺がやるべきことは、ツクヒを止めることだ。

サンタクロースはやってこない」

歌:ツクヒ


サンタクロースは やってこない

から降ってこない

ソリを引っ張る トナカイにとっちゃ

ただの支配

ホーホー なんて笑い方

気色悪い

既に気づいているだろ

ほら サンタは やってこない

サンタクロースは やってこない

特に貧乏人には

有名人の 慈善行為

名目

型落ちの玩具 親のズレたチョイス

これで喜べと?

商業主義の化け物

ほら サンタは やってこない


次 ≫
記事への反応 -
  • 気持ちを切り替え、俺は改めてツクヒの捜索に乗り出す。 ツクヒの行方は見当がつかない。 だが、居場所を見つけるアテはあった。 魔法少女だ。 この町には魔法少女がいて、とある...

    • あわててドッペルに連絡を入れる。 「もしもし」 「ドッペル、いまどこにいる?」 「家にいるよ。この時期になると親がなぜか外出させてくれなくて」 「よし、今日はそのまま家に...

      • 今年もクリスマスが近づいてきた。 みんな思い思いの過ごし方を目指して大忙しだ。 父はアニメのクリスマススペシャル制作で。 母は市民団体のクリスマス企画で。 兄はバイト。 ...

  • ≪ 前 ところ変わって兄貴のほうはバイトを終え、仕事仲間と共に帰路の途中だった。 「やれやれ、サンタのコスプレなんてガラにもないことやるもんじゃないな」 「確かに。精神的...

    • ≪ 前 俺たちは捕まえたツクヒを囲み、この後どうするべきか考えあぐねていた。 「ふん、サンタなんてタダの不審人物だ。そんなのを糾弾して何が悪い」 「不審人物だっていうが、...

      • ≪ 前 兄貴としてはドッペルが寝ている間に、部屋にプレゼントだけ置いて帰るつもりだったのだろう。 だが、時間はまだ20時。 子供が寝るにはまだちょっと早い。 部屋に入ると照明...

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