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2024-11-20

anond:20241119215603

クラシック教室だとそうなっちゃうかもしれませんね…。

今どきの音楽教室には大人初心者向けポピュラーピアノ講座はたくさんあるので、そういうところに行くとよいですよ。

中高年のおじさんおばさんたちに混じってグループレッスンするもよし、月謝は少し上がるけど個人レッスンにするもよし。

課題曲自由に選ばせてくれるし、ひとりひとりの技量志向に合わせた教え方をしてくれるはず。

しかアドリブがしたいならジャズピアノ講座のほうがよいかもです。コードスケール理解に応じた教え方をしてくれます譜面が読めない人でも大丈夫)。

アドリブはまずはブルースペントニックから教わるはずですが、できるようになればそこまででも十分楽しいはずだしギターなどほかの楽器への応用も十分に利きます

コードの基礎も、それこそトニックドミナントサブドミナントからきちんと教えてくれるはずです(ジャズはそれ抜きでは成立しませんから)。

どんな調でも即座にアドリブができるようになると、音楽の楽しさはぐっと広がります。よく使われる調なんてたかが知れているので、全部を覚える必要もありませんし。

あと、ギターピアノの両方でコードスケール理解できているのは強みです。

ギターは調が変わっても運指が変わらないのがよいところですが、反面、構成音(ノートルートとの関係)が直感にわかりづらいのが弱点です。その点、鍵盤でコード構成音やスケールがわかっていると〈ギターしかやってこなかった人〉よりもずっと上達が早いしフレーズも幅も広がると思いますよ。

2020-12-05

anond:20201204131940

どういう曲を作るかによるが、いわゆるポップスを作りたいならまずダイトニックスケールダイトニックコードを覚えることだな

KeyをCとするとメジャースケールでC,D,E,F,G,A,B、

このスケールの音を積み重ねてC(CM7),Dm(Dm7),E(Em7),F(FM7),G(G7),Am(Am7),B(Bm7b5)という7つのコードができる

これをダイトニックコードという、これがコード作曲の基本パーツ

さらにこの7つのコードの中でも、1番目C(CM7)、4番目F(FM7)、5番目G(G7)が重要、いわゆるスリコード

Cがトニック、曲の中心になる和音トニックで初めてトニックで終われば自然に聞こえる

Gがドミナント、一番緊張度が高いと言われる、コードの組み合わせの基本はトニックからドミナントに向かいまたトニック解決すること

Fはサブドミナント、CとGの中間性格

なのでC→F→Gと進行してみたり、C→F→C→Cと進行してみたり、C→G→Cと進行してみたり、いろいろ組み合わせを考えてみるのが簡単作曲

禁止事項としてG→Fはダメ、つまりドミナントからサブドミナントダメと言われているが、実際そういう風に進行する音楽も実は多い(ブルースとか)

C,F,Gの3つだけでヒット曲が作れる。例えばハイロウズ日曜日よりの使者はこのルールだけで曲を作っている

しかし、さすがに3つだけだとインスピレーション湧かない場合が多いので、残りのダイトニックコード

それぞれC、F、Gの変わりに使える、C→F→G→Cとするところを、C→Dm→G→Amかに変えてもOK

更にダイトニックコード以外からも変わりの和音を使えたりするが詳しくは理論書でも買って読むといい。

(最初に読み物としては憂鬱官能を教えた学校お勧め、ただしこれ読んで概略を掴んだら普通理論書読んだり講師についた方がいい)

メロディも、ダイトニックコードの組み合わせの上でダイトニックスケールの音、KeyCならCDEFGABを良い感じに組み合わせれば初歩的な曲ができる

2020-03-22

( ・3・) クラシック好きの上司ディランを聴きたいと言いだして 1

https://anond.hatelabo.jp/20150214223556

( ・3・) クラシック好きの上司ジャズを聴きたいと言いだして、から数か月後――

ある朝の会話

その朝、彼が職場に着くと、クラシック好きの上司は目を閉じて見えないオーケストラの指揮をしていた。腕の動きが激しさを増し、握った拳が垂直に振り下ろされる。1、2、3、4、5、6、7、8、9、1011

おはようございます」と彼は上司に声をかけた。

「なんだ、来ていたのか」と上司は目を開いて言った。「春の祭典の第二部なんだが、どうにも縦の線が揃わなくてな。リハーサル不足だ」

空想オーケストラにもリハーサルがあるんですか?」

「高度に発達した空想現実と見分けがつかないくら不自由ものだ。ティンパニ奏者とシンバル奏者はもう何年も口をきいていない。――それはそれとして、ボブの件、明日の日曜はどうだ?」

ボブというのは、ボブ・ディランのことだった。上司の娘さんが英語の授業で「はげしい雨が降る」を習ってきたらしく、それ以来、上司は彼にディランについてのレクチャー要請しているのだった。彼が娘さんに教えるのではなく、彼が上司に教え、上司が娘さんに教える。ディランことならパパに任せなさい、と目論んでいるのは明らかだった。

明日。彼は断ろうとしたが、適当な口実が見つからなかった。高齢の親戚はひと通り殺してしまっていたし、このあいだ死んだ祖父にもう一度死んでもらうには、まだ少し時間必要だった。

「じゃあ、決まりだな」

事の次第

こうして、彼は休日をつぶして上司の家を訪ねることになった。どの作品を題材にするべきか迷ったが、一日でディランキャリアを追いかけるのは無理だと割り切って、彼自身ディランを聴き始めた高校生のころに感銘を受けたものを選ぶことにした。『ブラッド・オン・ザ・トラックス』だ。このなかの数曲を検討するだけでも、一日まるごとかかってしまうだろう。たくさんのアルバムを持っていかずに済むのが救いといえば救いだった。

駅に到着

最寄駅に着くと、もう上司は車で迎えに来ていた。大きな声で名前を呼ぶので、きまりの悪い思いをしたのをわたしはよく覚えている。車に乗り、しばらく走ると、左手惣菜パンの店が見えてきた。看板にはアルファベットDELI BAKERY と書かれていた。

デレク・ベイリーCD今日こそは返していただきます」と彼は言った。

「そんなことを気にしていたのか」と上司は笑った。「大丈夫。おまえは持ってきたもの以上を持ち帰ることになるだろう」

おまえは持ってきたもの以上を持ち帰ることになるだろう。それはまるでデルポイの神託のように聞こえた。彼は運命うねりが身に迫ってくるのを感じた。しかし、現実物語とは違う。成就しない予言。読まれない遺書。途切れる伏線。それが現実だ。

デレク・ベイリーというのは、あのヴェーベルン風のギタリストだな?」

「そうです」

「あれをかけると、猫たちが爪とぎを始めるんだ。何か感じるものがあるのかもしれないな」

「猫たち、とはどういう意味ですか?」

「猫たち、とは」と上司は言い、長めのフェルマータを置いた。「猫の複数形だな」

「また拾ってきたんですか?」

「いや、拾っていない。拾ったのはちーちゃんだけだ」

「猫の方から入ってきた?」

「いや、入っていないし、出してもいない」

「じゃあどうして増えるんですか?」

「さて、どうしてでしょう」

家に到着

ちーちゃんベルリオーズリムスキー=コルサコフストラヴィンスキーお客様にご挨拶だ」と上司居間の扉を開けて言った。居間には母猫のちーちゃんと、三匹の子猫たちがいた。上司公園で拾ったときちーちゃんはすでに出産を間近に控えていたのだ。

「お母さんとは名前方向性が違うようですが」

里子に出すまでの幼名だよ。正式名前里親がつければいい」

猫たちは来客には関心がないようで、ストラヴィンスキーリムスキー=コルサコフに背後から跳びかかり、ベルリオーズは伏せの姿勢でおしりを振りながら取っ組み合いに加わる間合いを計っていた。

「みんな元気だな。よし、そっちに掛けてくれ。いまコーヒーを淹れてくる」

ブラッド・オン・ザ・トラックス』までのボブ・ディラン

( ・3・) まずはバイオグラフィからだな。ボブの経歴をざっとまとめてくれ。

――いえ、それをやっていると時間がなくなるので、今日は『ブラッド・オン・ザ・トラックス』というアルバムだけを聴きます

( ・3・) それにしたって、そのアルバム位置づけくらいは踏まえないと。

――では、Rate Your Music のページを見てください。

https://rateyourmusic.com/artist/bob-dylan

――アルバムが発表順に並んでいますね。デビューしてまもなく、1963年最初ピークが訪れます。このころのディランがお手本にしていたのはウディ・ガスリーで、ギターハーモニカ、歌というフォークスタイルで世に出ました。

( ・3・) 「はげしい風が吹く」か。

――「はげしい雨が降る」と「風に吹かれて」です。ディラン1941年まれなので、22歳前には代表作を発表していたことになります

( ・3・) 詩人早熟なんだよな、たいてい。

――1965年から66年にかけて、二回目の、そして最大のピークが訪れます演奏フォークからロックへ変わり、詩の内容も変わります

( ・3・) どう変わるんだ。

――初期の詩は、一言でいえば真面目で、真面目な人たちに支持されるものでした。そこに、散文的な感覚では理解できない要素が入ってきます。「イッツ・オールライト・マ」「デソレイション・ロウ」「ジョハンナヴィジョン」といった大作が次々に書かれるのがこの時期です。

( ・3・) 理解できない要素というのは?

――たとえば、「ジョハンナヴィジョン」はこんな感じです。

Inside the museums, Infinity goes up on trial

Voices echo this is what salvation must be like after a while

But Mona Lisa musta had the highway blues

You can tell by the way she smiles


( ・3・) 「ダビデの職分と彼の宝石とはアドーニスと莢豆との間を通り無限消滅に急ぐ。故に一般東方より来りし博士達に倚りかゝりて如何に滑かなる没食子が戯れるかを見よ!」

――どうしました?

( ・3・) 西脇順三郎だよ。よく分からない詩には、よく分からない詩で対抗だ。

――なぜ対抗しなくてはいけないんですか?

( ・3・) ただなんとなく。

――はい。続けますが、1960年代後半は、ロックが急成長する時代です。しかし、ディラン自身は、その運動の先頭に立とうとはしません。1969年の『ナッシュヴィルスカイライン』は、カントリーアルバムでした。

( ・3・) 帽子に手を添えてにっこり。

――捉えどころのない人である、というディランイメージは、このころにはできあがっていたと思います。そして、三回目のピークが訪れるのは、1975年

( ・3・) 『ブラッド・オン・ザ・トラックス』だな。

――録音は1974年なので、33歳のとき作品です。

( ・3・) 33歳。――それだけ?

――伝記的な情報はいろいろあるのですが――というか、常に伝記を参照しながら語られる作品なのですが――今回は知らないふりをします。「この女性は誰々がモデルから」といったアプローチとりません。捉えどころのない人、謎めいたよそ者であることを行動原理にしている人が、久しぶりに本気を出したらしい、くらいで結構です。

( ・3・) そう、じゃあ聴いてみようか。1曲目は――

――1曲目は後にして、2曲目から始めましょう。「シンプル・トゥイスト・オブ・フェイト」。「運命のひとひねり」という邦題がついています

( ・3・) なんで? 有名な曲なの?

――ほかの曲より易しめだからです。ディラン重要な曲を挙げるとしたら、おそらく50位以内には入ると思いますが。

第一タン

オーディオ

https://youtu.be/sGnhyoP_DSc

歌詞

https://www.bobdylan.com/songs/simple-twist-fate/

They sat together in the park

As the evening sky grew dark

She looked at him and he felt a spark tingle to his bones

’Twas then he felt alone and wished that he’d gone straight

And watched out for a simple twist of fate


――ディラン歌詞は本人のサイトで公開されているので、それに基づいて進めていきましょう。では最初のスタンから、どうぞ。

( ・3・) 訳すの? 俺が?

――訳ではなくてもいいので、どういうことが歌われているのかを説明してください。

( ・3・) 夕暮れの公園男と女がいた。女に見つめられると、男は体の芯に火花が走るのを感じた。彼が孤独を感じたのはそのときだった。彼は思った。まっすぐに歩いていればよかった、運命のひとひねりに気をつけていればよかったと。

――はい特に難しいところはなかったと思いますが。

( ・3・) そうだな。恋人たちがいい雰囲気になっているのかと思いきや、なんだか雲行きが怪しい。急に孤独を感じちゃったりして。

――人は恋に落ちると孤独を感じるものではありませんか?

( ・3・) そうなの? で、まっすぐに歩いていればよかった、というのは比喩的表現だな?

――もちろん。

( ・3・) われ正路を失ひ、人生の覊旅半にあたりてとある暗き公園なかにありき――

――?

( ・3・) ともかく、この男はあるべき道を見失って、運命の力が自分に働きかけているのを感じているわけだ。でも運命って、注意していれば回避できるものなんだろうか?

――回避できたら運命ではないような気もしますね。

( ・3・) 運命からねえ。

脚韻について

――次のスタンザに進む前に、脚韻の形式を見ておきます。2小節ごとに改行を加えると、以下のようになります

They sat together in the park

As the evening sky grew dark

She looked at him and he felt a spark

Tingle to his bones

’Twas then he felt alone

And wished that he’d gone straight

And watched out for a simple twist of fate


( ・3・) 1行目・2行目・3行目の park, dark, spark で韻を踏んでいるな。4行目・5行目の bone(s), alone もそうだ。それから6行目・7行目の straight, fate も。

――はい。この形式は次のスタンザ以降も同様です。

サブドミナントのひとひねり

https://twitter.com/kedardo/status/1241415360672219137

――ついでにコード進行確認しておきます。これは実際に鳴っている音ではなく、説明のために簡略化したコードです。元のキーはEですが、ここではCに移調しています。 [1]

( ・3・) いったい誰に対する配慮なんだ。

――まずは1小節から8小節目まで。何か気づいた点はありますか?

( ・3・) 見たままじゃないか。ド、シ、シ♭と半音ずつ下がっていって、ラに落ち着く。

――はい。ラはサブドミナントコードであるFの構成音です。しかし、まだラは終点ではありません。

( ・3・) 半音下降は続くよどこまでも。

――Fの次のコードFmです。どの音が変化しまたか

( ・3・) Fの構成音は「ファ・ラ・ド」で、Fm構成音は「ファ・ラ♭・ド」だ。長三度のラが短三度のラ♭になる。なんだか言うまでもないことを言わされているようだが、どこに誘導しようとしているんだ?

――ラからラ♭へ半音下がることによって、コードに影がさします。その箇所ではどんなことが歌われていますか?

( ・3・) 「彼が孤独を感じたのはそのときだった」

――はい。彼が孤独を感じるのは、サブドミナントコードメジャーからマイナーに変化するときなんです。

( ・3・) ああ、それが言いたかったのか。つまりコード進行歌詞の内容とが結びついている、と。

――そうです。それから、もう一点。この曲は、コードが頻繁に変わる曲でしょうか。それとも、あまり変わらない曲でしょうか。

( ・3・) また誘導が始まった。1小節から10小節目までは、2小節ごとにコードが変わる。C7からFへの進行を除けば、コード構成音のうちのひとつ半音下がるだけだし、曲のテンポゆっくりだし、あまり変わらないんじゃないか

――はい11小節から12小節目、"and wished that he'd gone straight" と歌われるところはどうでしょう

( ・3・) ここは2拍ごとにコードが変わる。あまり動かなかったコードが動きだす感じだな。

――"and wished that he'd gone straight" の "straight" は、この曲の旋律で最も高く、長く、強く歌われるところです。コードの動きと旋律との関係を見ると、11小節目に助走が始まって、12小節目の頭で大きくジャンプするようにできています

( ・3・) ……ハーモニック・リズムと言えば済む話じゃないのか?

――その用語は使わず説明していたのですが。

( ・3・) いったい誰に対する配慮なんだ。

小休止

( ・3・) はっさく食べる?

2013-09-13

aiko の「花火」の構造が凄い!

http://neralt.blogspot.jp/2013/09/aiko.html

これを読んでさらに色々言いたくなったので書きます。まずはこの記事で分析されてるサビのコード引用します。

「サビ」
夏の星座に〜     こんなに好きなんです〜
/FM7/Em7 Am7  (G)/F△ E7 /Am Gm7 C7/
夏の星座にぶら下がって〜     火を消した〜
/FM7/Em7 Am7  (G)/F△ Em7/Dm G7       /F Em7/Dm Dm on G/

ちなみに原曲Fメジャーのところ、Cメジャーに移調されてます

さて、まず一見してわかることですが、キーが C メジャーでありながら、一度も C△ が出て来ません。キーが C であるというのは、言い換えると「C△のコードが一番安定感がある」ということです。でもこの曲はサビで一度もその「安定感」に落ち着きません。

でも C7 は出てきていますね。しかし、これは Gm7 → C7 → FM7 という動きの中で出てきています。この動きは「II of IV → V of IVIV」で、いわゆるツーファイブと呼ばれる進行です。わかりやすく言うと、このC7は主役ではなくて、FM7に行くための「つなぎ役」みたいな役割をしています。だからこれは C ではなくて FM7 の一部であると考えるべきでしょう。

さらに、リスナーにとってこのコード進行で一番印象的な音はどこかというと、最初の FM7 だと言って良いでしょう。なぜか。それは、まずはサビの「一番最初の音」という一番印象に残る音であること。さらに、一小節まるごと同じコードで押し通しているのは FM7 だけです。その上、前述の通り二度目の FM7 にはツーファイブ進行で入って行きます。ツーファイブから入って行くと、そこに一種の「解決感」が生まれます。つまり、「あっここでちょっと落ち着いた」という感じですね。これにより、リスナーの耳には FM7 が一番強く印象づけられるようになっているのですね。

さて、ではこの FM7 というのはどういうコードでしょうか。キー C においては「サブドミナント」と呼ばれる役割をするコードです。コード役割トニックサブドミナントドミナントに分けられる、なんて音楽理論のひとは言いますが、サブドミナントはその中でももっとも「ふらふらした」性質を持ちます。というのも、トニックコードは「安定感がある」のがウリですし、ドミナントコードは「トニックの前にならしてトニックに移動することで解決感を出す」のがウリです。サブドミナントはそのどちらでもない、なんともふわふわした性質を持ってるんですね。「トニックほど安定してないし、ドミナントみたいに行き先が決まってるわけでもない」って感じです。

一度まとめましょう。このサビ、キーが C でありながら、最も安定する C△ に一度も安座せず、ずっとふらふらしていますしかも、このサビを一番特徴づけるコードである FM7 は、「ふらふらしてる」がウリのサブドミナントです。要するに、このサビ、めっちゃ「ふらふらしてる」んですよ。

さて、それだけならば、「へー。なるほどね〜」という感じなのですが、aiko花火は、これが「詩世界を支えるために」作られている(あるいは逆、詩世界がこの音楽構造を支えている)としか思えないところが凄いんですね。

サビの歌詞引用しましょう。

(1番)
夏の星座にぶら下がって 上から花火を見下ろして
こんなに好きなんです 仕方ないんです

(2番)
夏の星座にぶら下がって 上から花火を見下ろして
たしかに好きなんです 戻れないんです

夏の星座に腰掛けるわけでもなく、「ぶら下がる」という不安定な状況。「好きなんです。仕方ないんです」というフレーズも、その「好き」が安定して簡単にうまくいくものではない、あるいは、いってはいけないものである感じを出していますね。そして、「戻れないんです」と敢えて言うということは、「本来は戻るべき」なのに戻ることができないという不安定な状況なわけです。

歌詞世界も、音楽も、どちらもリスナーに「不安定な感じ」を感じさせるために仕組みが随所にばらまかれています。この不安定さが aiko らしいちょっと切ない感じを生んでいるわけです。こうして分析してみると、aikoはかなり自覚的にクレバー作詞作曲を行っているミュージシャンだな、と感じますね。

さて、ここまでアツく語りましたが、わたしは aiko の高い能力をすごいと思っていますが、シンガーとしての彼女はどちらかと言うと嫌いです。いえ、素直に言いましょう。大嫌いです。なんか飲み会コミュ障気味の童貞にボディタッチかまして勘違いさせて安全なところから恋愛ごっこするスキル高そうな感じをその曲と歌と佇まいから受けます。怖い。でも良い曲、悔しい聴いちゃうビクンビクン。

追記:

非常にいいツッコミが入っているので追記します。

id:twelvescales
CメジャーとAマイナーを行ったり来たりしてるのでCメジャーと言い切るのはちょっと乱暴かと。E7 - Amでちゃんと解決してるし。むしろ王道の進行なので似たコード進行ヒット曲多数。「Just the two of us」じゃん。

ブログにもあるとおり、たしかにこのサビってAmっぽい調性なんですよね。とくに E7 - Am は強進行で、ここで一気に調性が Am に近づいてる。でも次に Am に行くときには E7 ではなく Em7 からで、しかもそのフレーズ最後Dm7-G7 というかなり C メジャーっぽい進行になっています。他の人からの指摘もあるとおり、この平行調をふらふらと行ったり来たりするコード進行って心地いいからいろんな曲で使われてますね。とくに F G Em Am という進行は「王道進行」なんて呼ばれてて(わたしはこの「王道進行」という言葉定義が well-defined ではないので好きではありませんが)、その意味で、コード進行だけを取ったら決して「独創的なコード進行」ではないです。この記事、「独創的なコード進行ですごいよね」ということは書いたつもりはなくて、「コードが担う役割歌詞が担う役割がきちんと計算されててすごいよね」ということを書いたつもりだったんですけど、ちょっと書き方が良くなかったですね。ちなみに記事では書いてないんですけど、メロディもかなり自覚的(だと思われる)仕掛けが仕組まれてて面白いです。だれか書いてくれないかな。

ちなみに、「王道進行」についてですが、なんか王道進行っていくらでもヴァリエーションしますし(というかそもそもどっからどこまでを「王道進行」と呼ぶの? FM7 Fm7 Em7(-5) A7 は王道進行ですか? でもこれ F G Em Am とはだいぶ雰囲気の違う進行ですよね)、むしろ私は「どうバリエーションするのか」というところに意味があるなーと思っていて、その意味ではこの楽曲は G に行かずに FM7 にとどまるというのがいい効果を上げているな、と思うんですよ。それが「FM7が一番印象的な音になってる」という部分ですね。「王道進行」という概念発明されてから、「これは王道進行だね」でアナリーゼが止まっちゃうの多くて、わたしはちょっと残念に思っています

 
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