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2020-05-25

黒川検事長に対する訓告についての憶測怪文書

まあみんな言ってることでもあるけど色々な記事を読んだ上で妄想シマシで書くとたぶんこんな感じなんだろう


法務省官僚A「黒川のせいで法務省検察も評判ガタ落ち…これで退職金まで全額払ったら不味いよな?」

法務省官僚B「でも法務省内規でできる矯正措置訓告厳重注意)[1]じゃ退職金は減らんぞ。懲戒処分するしかないけど基本的任命権である内閣がするもの[2]だし進言するか」

法務省官僚C「人事院指針でも賭博戒告相当[3]だって主張すればいけるだろう」

法務大臣「伝えておきますね」

官邸人間A「そんなことしたら内閣責任が問われるじゃん!法務省内で完結する形にしてよ」

官邸人間B「懲戒処分矯正措置両方とも行った例もある[4]けど、基本矯正措置懲戒処分をするに満たない行為で行うもの[5][1]だろう?懲戒処分と違って法務省による矯正措置検事総長法務省人間権限がある[1]から矯正措置を行ってもらえば内閣としては動かずにすむ」

官邸人間C「じゃあ法務大臣には内閣の一員でなく法務省の一員としてという体で訓告提案してもらえばいいな」

法務大臣「(法務省の一員として意見を言えば)事態は重大で(法務省単体で判断できるなかで一番重い)訓告妥当だと思います

法務省官僚内閣懲戒処分するつもりはないのですか?」

法務大臣「(それはさておき私としては)訓告妥当だと思います。最終的には措置権者の判断になりますけど」

法務省官僚「どちらにせよ内閣は動く気はないな…。けどすぐに何か措置を打たないと世間から批判が出る…」

検事総長検事長訓告できるのは私だけ[1]なので私から訓告しておきましょう」

法務大臣検事総長訓告相当だと判断したと内閣に伝えます

野党訓告だと軽すぎない?」

首相「(懲戒処分はさておき検事長に対する訓告については検事総長しか権限はないから)検事総長諸般の事情考慮して適切に処分を行った。私はその報告を法務大臣からもらった」

メディア「どういう経緯なの?」

法務大臣法務省内と内閣協議して内閣で決定されたものを私から検事総長に伝え、検事総長から訓告にすると聞いた」

野党法務大臣首相証言と食い違ってるよね?嘘ついたの?法務省懲戒処分相当だと思ってたらしいけど」

法務大臣「いや、法務省内と内閣での協議は同時並行だったので…。協議の中でさまざまな意見懲戒処分相当だという意見か?)が出たのは確かだけど、(内閣懲戒処分をする気がなく)協議の結果、法務省としては(法務省懲戒処分権限がないから)一番重い訓告が相当だと考えた。そこで(法務大臣である私は法務省代表(=行政庁)なので)法務省として訓告が相当だと検事総長に伝えた。(制度検事長に対する訓告権限検事総長しかないのだから検事総長訓告相当だと判断して法務省から内閣に報告し(当然だが)内閣から異論は出なかった。(検事長に対する訓告についての)措置権限検事総長しかいか検事総長処分を行ったという首相の答弁と私のメディアに対する発言矛盾はないし、法務省としても意見を述べることしかできない」

野党法務省内部では戒告だって決めてたって本当?」

刑事局長「(最初どう判断たかはさておき)経過としては、法務省として調査結果を踏まえて(最終的には)訓告が相当だと考え検事総長に伝えた」

メディア報道と食い違ってるけど事実関係はどうなの?」

官房長官法務省が21日検事総長訓告相当と伝え、検事総長訓告相当と判断して処分した。同日法務省から内閣に報告があり、決定に異論がない旨回答した。法務省調査結果や黒川氏の処分内容についてはあくま法務省検事総長が決定したもの(確かに訓告については検事総長しか措置権限がないから『決定』は検事総長が行っている)」

メディア官邸側は全く関与していないと?」

官房長官「(質問には直接答えず)今申し上げた通り(だが懲戒処分についての判断に関しては何も答えていない)」

一部の人「つまり官房長官内閣懲戒処分にするか訓告にするかの判断に全く関与していないという主張か(早合点)」


と、仮にこういう経緯だとすれば嘘は言っていないな嘘は。

でも、この妄想通り時系列の前段階とか一部の事実をばっさり削ってたすればかなりミスリード

櫻井よしこ氏の番組安倍首相が「基本的検察の人事は検察の総意で決まる」「介入して変更してない」みたいなことを言ってたのもそういう類の手法使ってるんじゃないかね。

そしてこういう可能性があるのに勝手解釈して官邸主導の一部報道を否定と書くと多くの人が騙されるのでよろしくない。

別に首相法務大臣は「官邸懲戒処分すべきだと主張していたのに法務省訓告で済ますべきと反対した」と言ってるわけでもないんだから、「勝手メディア国民勘違いしただけ」とか言って逃げるぞ。


[1]

法務省職員訓告等に関する訓令

第1条

1 法務省外局を除く。)の一般職職員(以下「職員」という。)が国家公務員法昭和22年法律第120号)第82条第1項各号のいずれかに該当する場合において、服務の厳正を保持し、又は当該職員職務の履行に関して改善向上を図るため必要があると認められるときは、当該職員監督上の措置として、訓告厳重注意又は注意(以下「訓告等」という。)を行うことができる。ただし、同項に規定する懲戒処分を行おうとするとき又行ったときは、この限りでない。

2 訓告は、職員責任が重いと認められる場合に、当該職員責任自覚させ、将来における服務の厳正又は職務遂行の適正を確保するため当該職員指導する措置として行うものとする。

https://yamanaka-bengoshi.jp/法務省職員訓告等に関する訓令%ef%bc%88平成%ef%bc%91%ef%bc%96年%ef%bc%94/:title=山中理司弁護士による資料紹介]

総務省『国の行政機関の法令等遵守態勢に関する調査結果』表3-⑴-⑫ p.163(PDFではp.19) 

なお、上記総務省文書によれば、矯正措置権限を持つ者として「法務大臣……検事総長」などが挙げられている。山中弁護士が示している訓令原文にある表によれば検事長矯正措置を行えるのは検事総長に限るようだ。

「ただし、同項に規定する懲戒処分を行おうとするとき又行ったときは、この限りでない。」にも留意する必要がある。

[2]

検察庁法

第15条

1 検事総長次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、内閣が行い、天皇が、これを認証する。

国家公務員法

第84条

1 懲戒処分は、任命権者が、これを行う。

2 人事院は、この法律規定された調査を経て職員懲戒手続に付することができる。



[3]

懲戒処分の指針について

第2

3 公務非行関係

(9) 賭博

ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。

イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。

人事院『懲戒処分の指針について』



[4]

あくま倫理法等に違反する疑いのある行為に対して国家倫理委員会が動いたものではあるが、2018年懲戒処分矯正措置の両方を行った事例が2件あったという。

人事院『平成30年度 公務員白書』第2編第3章2

[5]

また、各府省は、懲戒処分に至らない非違行為について、指導監督上の措置として訓告厳重注意等の措置(以下「矯正措置」という。)を講じている。」

総務省『国の行政機関の法令等遵守態勢に関する調査結果』p.145(PDFではp.1)

2020-05-21

anond:20200521114247

検事総長らの意見書では違法と指摘されてる

あとは専門家判断やね

注意すべきは、この規定内閣裁量次長検事および検事長の定年延長が可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである

2020-05-17

神保哲生氏の記事に対するなにぬねの氏のコメントより

非常に重要な指摘。

(神保氏)黒川さんが法務省の官房長、法務次官だった5年間、自民党が絡む疑獄事件はいくつも浮上しましたが、結局、何一つ立件されませんでした。法務省の官房長や法務次官は、検察政治家が絡む事件に着手するかとうかや政治家逮捕に踏み切るかどうかを決定する際に開かれる検察首脳会議政府側(官邸側)の意向を伝える役割を担って出席します。その会議には検事総長次長検事担当管区の検事長検事正特捜部長なども出席しますが、検察首脳会議では全会一致が意思決定の前提となっているので、誰か一人が反対すれば逮捕は見送られると考えられています

この部分は間違っていませんか?

検察首脳会議捜査の最終方針を話し合ったり、起訴すべきかどうかを話し合う場です。

一方、立件は「検察起訴」するという意味で、立件見送りというのは捜査した結果起訴するに足る十分な証拠がなかった、犯罪を立証できなかったから起こりうることです。

仮に検察首脳会議黒川が反対していたのなら、検察による捜査すら始まらないのではないでしょうか。それとも捜査には賛成して、起訴すべきという可能性が高まったときにだけ反対したということですか?

小渕氏、甘利氏、松島氏、佐川氏などは捜査されましたが立件されませんでした。

黒川が介入したと見るよりも、障害者郵便制度悪用事件以降慎重な捜査をするようになった検察が確たる証拠もなく起訴はできないと判断した結果だと考えたほうが自然だと思います

法務事務次官検察法務省組織において序列No.5です。他の組織序列が違います検事総長差し置いて法務省事務次官の一声で起訴できなくなるという力関係もはなはだ疑問です。

検察法改正案の中身がやっと理解できたよ(5月13日再更新

https://www.jimbo.tv/commentary/492/

なにぬねの氏の言う通りで、現時点で神保氏の記事陰謀論の域を出ない。

2020-05-14

東京法律事務所検察庁法改正反対の記事への反応を見て

 実名で書くと多方面への配慮が面倒なので…

 http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1077404701.html

 ネットにおける検察庁法改正反対運動の動きは目覚ましいものがあり、どうでもいい問題と思っていた私としても意見を変えつつある。世間状態政権不信があると、こういう技術的なものに近い話が、特に興味を持たない、何となく怖いと思っているだけの人々をここまで大きく動かせるのだと、率直に恐怖に近い感情を覚えた。専門家からの指摘についても、良いものもあるが、上記東京法律事務所記事法案反対・現政権批判という色が強く、ややバランスを欠いているように見える。

 この件については、既にバズっているとんふぃ氏のまとめが比較中立でわかりやすいが、少し専門性が強く読みづらいかもしれない。ちなみに、別にとんふぃ氏は改正賛成はではなく、どちらかというと反対に近いように見えるが、本当の問題がどこにあるのか、という点から網羅的・中立的にまとめておられる。

 https://note.com/tonfi/n/n95a2265c6273

 また、慶應義塾大学大屋雄裕教授Twitterも参考になる。

 https://twitter.com/takehiroohya?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

 こういった良情報があり、注目を集めてもいる状況がありながら、東京法律事務所記事が分かりやすいと賛同を得る状況を見るに、内容面への理解というよりは、現政権おかしい!何か危ういことをしようとしている!というスタンス危機感に合っているかどうかが重要視されるようになっているのではないかと感じている。

 こういうときに、上のお二人には到底及ばないが、少しでも落ち着いて考えるように促す投稿が別途あっても良いかもしれない、というのがこの投稿を書いている動機である

1.私の改正についての賛否

 まず、私自身だが、どちらかというと改正案には反対である

 本改正案は、細かいところを捨象すると、①検察官全体の定年を63歳から65歳に引き上げる、②一定役職については役職としての定年を63歳(現行法の通常の検察官の定年と同じ)にする(=その後は平の検察官に戻る)、③一定事由がある場合内閣によって②の役職の定年や①の検察官としての定年を延長することができる、という3段階の制度を設けていることは広く知られていると思う(ただ、ここは、役職等により色々な条項が入り乱れており、ざっくりまとめれていることがほとんどであるため、理解をしにくくしている点かもしれない。)。

 このうち、問題視されている③について、私は、特段必要性がないと思っていることが反対の理由である三権分立というような大上段の話ではない。

 ①については、公務員全体の定年引上げという中で、そこと揃えるのであるから特に反対する理由は思いつかない。ここについては、東京法律事務所問題ないとしているので、特に取り上げない。

 ②についてであるが、高齢化社会において定年の延長という社会全体の趨勢があるとしても、トップやそれに近い要職高齢者が就いているという事はあまり好ましいものではないと考えており、私としては問題がないものと考えている。ここも、東京法律事務所記事特に反論されていないのでこれ以上は触れない。

 ③については、例えば民間企業等において、優秀なトップに引き続き職責を務めてもらいたい、というような理由高齢の方が一般の定年年齢を過ぎた後も働くということは往々にしてあると思われ、規定趣旨としては理解できるものである。ただ、そのような能力があると言えるかどうかの検証は困難であると思われ、実際には、政治力等々、様々な事情の絡んでくる話になるだろう。とすれば、②の趣旨を貫徹し、一律新しい風を吹き込むべきであるというのが私の見解である。この辺りは、各人に考えの違いがあるのではないか。ただ、それは、定年という制度への考え方についての話であり、三権分立がどうとか、現政権陰謀というような話にはならないだろうし、これほど世間が大きく盛り上がるような話でもないと考える。

2.三権分立について

 何故、私が、今回の件について三権分立関係しないと考えているかという点だが、これも散々に指摘されているところではあるが、そもそも、現行検察庁法上、「検事総長次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、内閣が行」うものとされていることから明らかなとおり、内閣一定役職の任免権があるからである

 最も恣意的な関与を及ぼしやすい場面の一つである任命について内閣にその権限があるのに、定年を伸ばすという「出口」だけを殊更問題視することで、いったいどれほど政権恣意排除ができるのだろうか。

 この点について、東京法律事務所記事は「歴代自民党政権は、検察庁とりわけ前任の検事総長意見尊重し、これに介入しないという慣例がありました」として、任命権があるからと言って時の政権自由にできたわけではないことを挙げているが、まさか、この慣例に反することが違法だという趣旨ではないだろう。そうだとすると、検察庁法の立て付けとして、任命については、精々政権が慣例に配慮することを望むことはあるかもしれないが、内閣に任せても三権分立は維持できるということになっている。ならば、定年延長についても個別事例においてきちんと国民監視を行い、問題があれば、当該政権への非難を行えば十分であるだろう。余談だが、先述の慣例を無条件に守るべきであると考えているのであれば、昨今(というほど最近でもないが)の司法制度改革を通じ、一種象牙の塔」と化していた法曹界国民との間での双方向性を入れてきた流れとは、ずいぶん異なるようにも思う。

 結局、この法改正があろうがなかろうが、適正な三権分立の維持のためには国民不断監視こそが重要であることは、若干文脈が異なるがとんふぃ氏の指摘するとおりである三権分立の点から批判するのであれば、せめて、任命についても含めて、より大きな視点から制度設計を描かない限り、説得的ではないのではないか

(ここからは全くの邪推だが、定年を伸ばせる程度では大したことはできないだろうという見解に対し、任命の問題と別の大問題だという見方をする方の背後には、桜を見る会モリカケ、あるいは、それこそ黒川氏の定年延長問題など、様々な問題についての現政権批判が結局は世論に届いてこなかったという無力感や怒りがあるように感じることがある。結局、国民監視し、意見するということの力は、大したことがないのだと。ただ、本当にそれは大したことがない力しかないのだろうか。)

3.黒川氏の問題について

 正直に言えば、黒川氏の定年延長については私の興味の外に近い。既に内閣見解として、検察庁法に関わらず定年延長可能という解釈が示されている以上、今回の改正と絡めて邪推をするよりも、個別に法解釈上の問題を争うとともに、個別妥当性についても問題にすべきだろう。事後的に定年延長を正当化するものであり、政権の不当な解釈変更を事後的に承認しかねないものだという見解も多く見られるが、国会において適法に成立した法に則り、適切なプロセスを経て定年延長をすることが仮に可能なのであれば、それはそれで問題が無いのではないか。こういうのもなんだが、そもそもわいろというのは見える場所でやり取りする物だろうか。丸見えのわいろに従って忖度した判断をする検事総長等々の判断に反抗しないほど個々の検察官は軟弱で、国民は見抜けない程阿呆なのだろうか。

 ただ、結局、この問題と絡めたおかし邪推がしやすいような状況で、改正推し進めた結果が国民からの不信を高める結果を助長したのは間違いがなく、改正法は成立になっても不成立になっても禍根を残すだろう。非常に悲しく、恐ろしい状態になってしまったなと感じる。

4.今回の反対運動について

 まとめであるここの項が、一番言いたいことであり、また、一番の放言であるのだが、Twitterハッシュタグでの拡散による反対運動一定成功を収めたように見えることは、非常に怖いことであると感じた。今回の件について、きゃりーぱみゅぱみゅ氏が炎上してしまたことは大変悲しいことであると思うし、個々人が、自身理解の中である政治的問題への意見を表明すること自体は悪いことであろうはずもない。ただ、Twitterという短文投稿の場で、ハッシュタグ拡散を行うという安易さは、民主主義の基礎たる議論となじむものなのだろうか。そこにあるのは、何となく不安や恐怖に対する共感が主であり、相互理解のための議論があるとはどうしても思えないというのが私の意見である。そういった共感による多数を作ることが民主主義なのだとしたら、全体主義はそのすぐ隣にいるのではないだろうか。

 
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