2021-02-12

必読書コピペマジレスしてみる・海外文学編(1)

方針

ホメロスオデュッセイア

イリアス」は捕虜奴隷女の配分をめぐった交渉がこじれた結果、勇者が拗ねて戦場に出ず、味方がどんどん死ぬところからスタートするので、昨今の倫理観から問題があり、神話初心者にはこっちをお勧めしたい。「オデュッセイア」も家で待っている妻を忘れてよその女のところで数年過ごすが、まあ魔法をかけられていたということでこっちのほうがマシだ。舞台もあちこち移動するから飽きないし。

ユニークなのは劇中劇的にオデュッセウス時間をさかのぼって事件の進展を語る箇所があることで、ホメロス時代にはすでに出来事が起きた通りに語る手法が飽きられ始めていたのかな、と想像できる。

実は「ラーマーヤナとある共通点があるが読んでみてのお楽しみ。

旧約聖書創世記

聖書はなんせ二千年前以上の宗教書から原典に当たる前に基本的出来事の流れと時代背景や当時の常識理解していないと読解が難しい。当時のユダヤ民族偏見も混じっているし。加えて、ところどころ立法全書的に当時の習慣や禁忌を延々述べる箇所があり、通読はさすがにできてない。新約聖書だけは何とか意地で読破した。

ところで、どうして「創世記」だけを取り上げたのだろう。たとえば物語として盛り上がるのは「十戒」の「出エジプト記」だ。「ハムナプトラ」とかでエジプトが悪役になるのは大体これのせい。いきなりこれにチャレンジするのなら、手塚治虫聖書物語のほうがいいかもしれない。

ソポクレスオイディプス王

犯人探しが不幸を呼ぶことからミス的な要素もあるし、ギリシア神話の「不幸な運命を避けるために必死になって行動した結果、結局その運命を呼び寄せてしまう」というアイロニーが大好きな自分としては、その典型例なので好物だ(予言鵜呑みにした結果ドツボにはまる「マクベス」も好き)。

これが面白かったら、アイスキュロスの「オレステイア三部作」もおすすめしたい。何世代にもわたる恨みの念が恵みの女神として祀られることで鎮められるというモチーフは、異国のものとは思えない。

唐詩選』

一般教養唐詩の授業を取ったので岩波文庫でぱらぱらとめくった覚えがある。なにぶん昔のことなので記憶曖昧なのだが、はっきり覚えているのが王梵志の「我昔未生時」で、天帝に生まれる前の時代の安らぎを返してくれるように願う詩だ。当時は反出生主義が哲学思想界隈でここまでホットトピックになるとは予想してはいなかった。

他にいいな、と思ったのは杜甫厭戦歌「兵車行」。

ハイヤーム『ルバイヤート

酔っ払いの詩。酒が飲める酒が飲める酒が飲めるぞーという内容。著者は文学者であっただけでなく天文学者数学者としても知られるが(三次方程式を解いた実績がある)、ここで展開されている詩はひたすら現世の美しさとはかなさをうたったもので、酔っ払いは世の東西を問わず、というところか。イスラム世界の厳格なイメージをひっくり返してくれるので面白い。ガラン版のアラビアンナイト高野秀行の「イスラム飲酒紀行」とあわせてどうぞ。

ダンテ神曲

フィレンツェ追放されたダンテが苦しみの中生み出したキリスト教最高峰文学のはずだけれど、とにかく気に食わない政敵地獄でめちゃくちゃな責め苦に合わせているところを面白がる下世話な楽しみ方ができる。地獄にいる人物聖書ギリシア神話歴史上の人物も多く、ヨーロッパ歴史文学をざっくり知っているとダンテがどれだけやりたい放題やったかがわかるので愉快。

ただし、地獄編の続きの煉獄編・天国編はキリスト教哲学をかじっていないと結構しんどく、しか風景が山あり谷ありの地獄と比べてひたすら恵みの光が明るくなっていくだけなので、絵的に面白いのは地獄のほうだ。

ついでに、ヒロインがかつて片思いをしていたベアトリーチェという女性なので、ベアトリーチェの美しさを歌う箇所も下世話な目線で楽しめる。妻帯者の癖に未練たらたら。

ラブレーガルガンテュアとパンタグリュエルの物語

未読。後述のラテンアメリカ文学とかジョイスとかは読んだんだが、そこに出てくる過剰なものや糞尿譚も結構楽しんだので、いつかは読みたいと思っている。

シェイクスピアハムレット

四大悲劇と「ロミオとジュリエット」はざっくりと読んでおくと、いまにも受け継がれているネタ結構あることがわかって楽しいし、意外と下ネタオンパレードなので当時のイギリス人に親しみを持つことができる。ついでに上記のうち二作は黒澤明映画元ネタでもある。

興味深いのは、劇中劇というかメタフィクション必然性を持って登場することだ(父を殺した叔父の目の前で、その殺人の場面そっくりの劇を演じて動揺させるシーン)。すごく先進的だ。かっこいいぞシェイクスピア

セルバンテスドン・キホーテ

基本的には正気を失ったおじさんが繰り広げるドタバタ劇で、下巻では著名になったドン・キホーテからかう公爵夫妻までも出てくる。これだけだと精神を病んだ人をおちょくる悪趣味書物だとしか思えないのだが(というか最初時代遅れの騎士道精神批判するために書かれた)、昨今はドン・キホーテに同情的な解釈が主流。最近テリー・ギリアム映画化した。

スウィフトガリヴァー旅行記

自分が道を踏み外した元凶。誰だこんな子供人間嫌いにする本を児童書の棚に並べたのは。クレヨンしんちゃん夕方アニメにするレベルの蛮勇だ。四部作だが、最後の馬の国では人間という存在醜悪さをこれでもかと暴き立てており、おかげさまですっかり自分人間嫌いで偏屈な人になってしまった。作者の女嫌いの影響を受けなくて本当に良かった。

とはいえ、当時のアイルランド支配はこれほどまでの告発の書を書かせるほどひどかった、ということは知っておきたい。

スターントリストラム・シャンディ』

夏目漱石吾輩は猫である」に出てくる。基本的にはふざけた話であり、著者が自分誕生から一生を語り起こそうとするがなかなか著者自身誕生せず、しか物語の進捗が遅いせいで半年ごとに本を出す約束なのにこのままでは永遠に現在自分に追いつかない、みたいな語りで笑わせてくる。挙句の果てに著者が途中でフランス旅行に出かけてしまう。英文学というジャンルがまだ黎明期なのに、こんな愉快なのが出てくる懐の深さよ。

だが、これだけふざけているのに、登場人物の一人がうっとうしい蝿を「この世の中にはおれとおまえと両方を入れる余地はあるはずだ」といって逃がしてやるシーンはいい。

サド悪徳の栄え

未読。「毛皮を着たヴィーナス」と「眼球譚」は読んだんだが。バタイユどんだけおしっこフェチなんだよ。自分もお尻とかブルマーとか競泳水着が好きだから笑わないけどさ。

ゲーテファウスト

個人的にはとても好き。人生できっと何かを成し遂げられるはずという万能感ある思春期に読みたい。主人公行為は決して褒められたものではない。様々な悪事を働き、幼い少女妊娠させたうえ捨ててしまう。このシーンのせいで、もしかしたら二十一世紀には読み継がれない古典になってしまうかもしれない。しかし、主人公最後にたどり着いた境地の尊さの価値は失われることはないと信じている。現世で最も美しい瞬間とは何か、あらゆる物質的な快楽を手に入れた主人公が見つけた答えを読んでほしい。後半はギリシア神話を知らないとつらいかもしれないが、そのためにギリシア神話入門を読む値打ちはある。

スタンダールパルムの僧院

未読。同著者の「赤と黒」は貧乏青年がひたすらのしあがろうとする話で、あまりピンとこなかったのだが、文学サークルの友人から最近来たメールに「訳者を変えて再読したら面白かった」と書いてあった。

ゴーゴリ外套

さえないかわいそうなおじさんが好きなので好き。ロシア文学というものは、名前がややこしいうえに同じ人物が様々に呼ばれるので敬遠されがちなのだが(イワンが何の説明もなくワーニャと呼ばれるなど)、登場人物メモしたり、ロシア人名の愛称の一覧を頼りにしたりして飛び込んでほしい。このハードルさえ超えれば最高の読書体験が待っていることは保証する。ロシア文学はいいぞ。

ポー盗まれた手紙

ポーは大好きなんだけどどうしてこれを代表作に選んだのかはよくわからない。個人的には王道の「黒猫」とか「アッシャー家の崩壊」とかを最初に読むのがいいと思う。中学生の頃、狂気や暗鬱さにどっぷり浸っていた頃に読んだのだが楽しかったし、作中の詩が今でも世界で一番好きな詩のひとつだ。ちなみに、東京創元社ポー全集には、ポーユーモア作品もいくつか収録されており、意外な顔を知ることができる。もっとも、今読んで面白ジョークかどうかまでは保証しないが、こじらせ文学少年文学少女としては必読か。

エミリー・ブロンテ嵐が丘

最高の昼ドラにして非モテ文学。俺は愛されずに育った、俺は永遠にからも愛されない、だから他人幸福破壊してもいい、的な気分に一度もでもなった人は何としても読んでほしい。

メルヴィル白鯨

スターバックスコーヒー元ネタ

映画マチルダ」の中で児童書に飽きた天才少女がこれを読もうとする場面があるんだけど、これ小学生が読む本じゃないだろ。単純に難しいのではなく、とにかく話が脱線しまくる。まともにストーリーが進まずに、著者自身クジラに関するうんちくが延々と続く箇所もある。雑学隙の自分は楽しく読んだが。

敵のクジラを殺してやろうとするエイハブ船長狂気についていけるかどうか。

フローベールボヴァリー夫人

自分人妻萌え発症した元凶の一つであり、世界文学初のカーセックスシーンがあることでも知られている(自動車ではなく馬車でだが)。ストーリーは夢見がちな女性が夫に幻滅して若い男やチャラ男浮気し、サラ金から借金を重ねて自殺するという「闇金ウシジマくん」的なノリ。妻の浮気を知ったさえないボヴァリー氏の哀れな反応は必見。自分が寝とられ文学が好きになってしまった元凶の一つ。

続きますanond:20210212080411

記事への反応 -
  • 哲学・思想 プラトン『饗宴』 アリストテレス『詩学』 アウグスティヌス『告白』 レオナルド・ダ・ヴィンチ『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』 マキァベッリ『君主論』 モア『ユー...

    • 方針 読んだ感想を思いついたままに、友達にだべるみたいに書く 高校卒業後に読んだ本も含める 読んだ人が「面白そう」と思ってくれたらうれしい 文学はいいぞ 古典はいいぞ 時...

    • どうせルソーとかマルクスとか読むなら スミス『国富論』 J・S・ミル『自由論』 ケインズ『自由放任の終焉』 ハイエク『隷属への道』 あたりもついでに

      • そのへんの古典をイチから読まずに古人の問題意識から最新の学説に至るまでをコンパクトにまとめた本は無いのかしら。

        • それぞれの思想家?について研究してる人の書いた本を読めば、古典自体を読まずに思想を理解すること自体はできるだろうけど そういう本がどれぐらい「最新の研究」までカバーして...

          • いきなり古典そのものを読むより、専門家による入門解説書を読む方が良いと思う。時代背景などは解説なしでは把握できないでしょうし。

        • あるよ。たいていは定番の入門書・解説書がある。ちょっとググって調べれば見つかると思う。

    • どういう基準で選んだの? 文学は知らんのでスルーするが、哲学・思想に関して言えば、ヨーロッパと日本にえらく偏っている。かといって、何かしら思想史の体系や特定の価値観に則...

      • 検索して出てきたもので選んだだけやからそんなこと知らんわ マウンティングせんといて

        • 素直!

        • ズコー (先にマウンティングしといてソレ?!...)

        • どおりで.... 語学関連だと、ソシュールや時枝誠記は専門的すぎると思う。言語学専攻や国語学専攻なら必読だけど。 あと、ハイデッガーやヴィトゲンシュタインは大変だよ。それよ...

    • うっせー「ファインマンさん」と「グールド」と「ろうそくの科学」ぶつけるぞ

    • 以下、このリストに紛れ込ませるラノベタイトル大喜利

    • ルイズ入ってないんだけど

    • 本好きの主語デカすぎないか?

      • 日本文学の方向性がさっぱり分からんちん。 乱読家って感じがする。

    • これだけ読んでも数は数えられないのか

    • 坂口安吾『堕落論』は10〜20分で読み終えられるからオススメ

    • こーゆーのを、昔から、 『衒学者』、といーます。 (平成なら「ブッキッシュ」か)

    • こんなの100人中90人くらいは挫折するでしょ。 この辺の書籍を漫画にした、まんがで読破シリーズでざっくりよんどけばいいんじゃね。

    • ヘッセの「車輪の下」は中学受験終わった小学生に読んで欲しい そしてその時の気持ちを社会人になったときに思い出して欲しい

      • 『車輪の下』は良いね。僕も受験の頃に読んで非常に共感したよ。

    • デリダもフーコーもいらねえよゴミポモくそやろう

    • 特に若い間は。もしその古典が現代までの反駁に耐えうる素晴らしい内容を含んでいるのだったら、そのエッセンスはもっと磨き上げられた上で現代の本にも取り込まれている。無いな...

    • 残念だけど教養主義の時代はもう終わっちゃったんだよな。2chにこういうコピペが貼られていた頃、20年前頃だろうか、ではまだその残り香があったのだけれど。

      • 教養主義が崩壊したのは団塊世代と氷河期世代が馬鹿だから。 その二つの馬鹿が吹っ飛べば、教養主義はガラホやラズパイとともに復活する。 その復活の糸口は将棋や囲碁などに表れて...

    • 聖書全部読めとは言わんけど創世記だけってのはどうだろう。 出エジプト記くらいはセットで読みたい。聖書読むのにモーセが海を割る部分を読まないなんて嘘だろ。 欲を言えばカナン...

    • anond:20210210225201 「100選」って書いたけど、多分50冊もないわ。トラバやブコメで埋めてくれ。順番とかは重要度とかではなくて、単に思いついた順。 外国人著者 スティーブン・ピンカ...

    • 現代詩マニアとして吉岡田村という入手性の良い二人を挙げているところに信頼はおけるが ただ近現代詩を俯瞰してまず読むべきは吉岡田村より賢治と谷川だろうよ 吉岡田村は自分が作...

    • https://anond.hatelabo.jp/20210210225201 エドガー・エラン・ポオ「モルグ街の殺人」 ウィルキー・コリンズ「月長石」 コナン・ドイル「シャーロック・ホームズの冒険」 モーリス・ルブラン...

      • カポーティの「冷血」はノンフィクションノベルであってミステリではないんだが・・・

      • 来世の高校に賭ける!

      • 罪と罰はミステリーなのか あれが含まれるなら大抵はミステリー要素あるな

        • そらそうよ 謎があればミステリー 想像があればSF 不思議があればファンタジーだよ

      • 方針・目的 ミステリはほとんど読まないので読んだのだけ 最近のミステリは全然読んでない 少しでも多くの人を読書沼に引きずり込みたい 必読書を挙げるというより、自分の一押...

      • ここまではてな記法をつかいこなせるとはおまえ元は名のあるダイアラ―だな だがコピペに向かないのだよな 30%くらい読んだこと会ったけど最終的に北村薫と泡坂妻夫あたりでいい...

      • https://anond.hatelabo.jp/20210215101500 エドガー・エラン・ポオ「モルグ街の殺人」  ・しょうもない犯人、しょうもない気付き、しょうもないミステリの元祖。 ウィルキー・コリンズ「月長石...

        • コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズの冒険」は脳内でホームズのセリフを露口茂の声に変換すると最高な作品となるのは言うまでもない。

        • 売れ筋の東野圭吾は?

        • 館入れていいなら有栖川も入れてくれよ

      • 出でた〜老害の押し付け恩着せがまし〜 時代背景の違いが原因で読みづらいことが結構あるけどそれは考慮しない〜

      • 最近必読書を挙げる増田が流行っているけれど、その必読書にはなんで未来の書物は含まれていないんだろう。 過去の書物による必読書リストって、既知のリストからセレクトするだけ...

      • 79. 中井英夫「虚無への供物」 忘れていたので追記。ミステリをろくに読まずにアンチ・ミステリを読んで気取るのもどうかと思ったが、メタフィクション的なものにひかれる性分なも...

    • https://anond.hatelabo.jp/20210210225201 (便乗したいだけである) 令和にもなってるのに、いの一番にバブリーズやスチャラカ勧めている人は絶対読み返していないだろと。今読むと結構キツイ...

      • 書いたな!俺の前で!TRPGリプレイのことを!   なんて嘘嘘。 当方、リプレイの歴史を語る知識も能力もござーせん。 元増田と比べてかなり薄い人。 しかし、元増田に影響されて思い...

        • 菊池たけしのセブンフォートレスのやつはギャグにふっててよかったような つっても絵師の力も大きかったし、最初のやつだけかな

    • を書こうとしたが普通に頭数が足りなかった n>=100 本,読破,古典anond:20210210225201 ミステリ,読破,古典anond:20210215101500 2,読むべきではない,理由anond:20210215232802 ロック,聴く,古典anond:202102...

    • 方針 すでに読んだか、著者の別の作品を読んだ場合にコメントを書く 海外文学ほど読んでない 元増田→anond:20210210225201 森鴎外『舞姫』 留学先で女性を妊娠させて見捨ててしまう話...

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