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2020-11-02

手塚治虫ブッダ」とおっぱい20世紀おっぱい

ラーマヤーナ」ではインドラの火とも伝えているがね

特に理由はないのだが、最近通勤時間で「ラーマーヤナ」を読んでいる。特にインド旅行する予定はないのだが、しいて言えば大学時代の友人二人がインド哲学科出身だったからかもしれない。そういえば、冒頭のムスカ台詞では長母音場所が間違っている、みたいな話にもなった。

それはさておき、「ラーマーヤナ」である英雄ラーマが囚われの妻シーターを仲間の助けで救いに行く話で、要するに古代インドスーパーマリオなわけだが、そこで出てくる美人形容が興味深い。たとえば「美しく黒ずんだ肌」という表現が出てくる。美白という美意識はやはり時代地域によっては必ずしも自明ではないのだ。

また、ほっそりした腰つきや豊かな乳房の美しさを表現する箇所もある。

「二つの乳房はそれぞれの先端がむっちりと盛り上がって魅力的で、つやのあるヤシの実のように美しく、最上宝石の装飾品をつけて輝いている」

この個所を読んで僕は首を傾げた。ここまで乳房の美しさを形容するってことは、シーターは上半身裸だったのか? 実際、インド東南アジアの神々の像では女性たちは上半身裸だ。以下はエローラの石窟の姿である

女神ガンガー

女神パールヴァティ

しかし、近現代インド叙事詩を描いた絵画では、上半身普通に覆っている。

追放されたシーター姫

シーター姫を攫ったラーヴァナが助けに来たジャータユを返り討ちにする図

それを見て思い出すのは手塚治虫の「ブッダ」だ。正直なところ、みんなおっぱい丸出しで小学生の頃はエッチすぎて読めなった記憶しかないのだけれど、それはさておいて、あれは歴史的に見て正しいのだろうか? それとも、単なる手塚治虫性的空想だったのだろうか?

頼むぞグーグル先生

そういうわけで僕は「ancient india topless」と検索した。すると、肯定的証言をするサイトが数多く引っかかった]。特に英語版ウィキペディアのtoplessの説明がわかりやすかった。

In many parts of northern India before the Muslim conquest of India, women were topless. ……(中略)……Toplessness was the norm for women among several indigenous peoples of South India until the 19th or early 20th century……(以下略

ムスリム征服以前のインドの多くの地域では、女性上半身裸であった。……(中略)……上半身裸は19世紀20世紀初頭の南インド先住民女性の間では普通のことであった……(以下略)。

そういうわけで、古代インド女性おっぱい丸出しだった。手塚治虫変態だったかもしれないが、古代インドの服飾史については、嘘をついていなかった。

また、「古代インド おっぱい」と日本語検索すると、次のようなツイートが見つかった。

https://twitter.com/tenjikukitan/status/1093099586778853378

古代インドに詳しい方が日本語情報発信をしてくださると、大変助かる。

よく、東洋舞台とした作品ブラトップ同然の格好をした女性が出てくることがあり、しばしば批判されるのだが、これは実際には上半身裸だったのを攻めておっぱいだけは隠しておこう、という配慮だったのかもしれない。

実際、いわゆる熱帯地域だけではなく、古代クレタ島でも乳房は見せていたし、それこそ以前記述したように、日本海女さんもかつては上半身裸が普通であった。

おっぱい税、巨乳税、その非人道性

ところで、英語版ウィキペディアを読んでいたら、気になる記述を見つけた。

The Breast Tax (Mulakkaram or mula-karam in Malayalam) was a tax imposed on the lower caste (Shudra) and untouchable (Dalit) Hindu women by the Kingdom of Tranvancore (in present-day Kerala state of India) if they wanted to cover their breasts in public, until 1924. ……The tax was evaluated by the tax collectors depending on the size of their breasts.

乳房税(ムラカラム)とは、現在の(南インド)ケーララ州で低カーストシュードラ)と不可触選民ダリット)に属するヒンドゥー教徒女性が、公共の場乳房を覆いたければ支払わなければならなかった税である。……税金を集める役人女性乳房の大きさによって額を決めていた。

なんとも非人道的で、正直なところ読んでいてかなりのショックを受けた。身体の大きさを申告・検査しなければならない恥ずかしさ、支払えなかった女性苦痛いかほどのものであっただろうか。個人的には野外露出系のポルノは大好きだが、これが強制されたものだとなると不快だ。裸とは恥ずかしいものではなく、人間が生まれながらにして持つ、何物にも束縛されない自由意味する気持ちのいいものであってほしい。それにこれはフィクションではない。歴史的事実だ。

これについて日本語資料が見つからいかどうか探したが、幸いにしてナショナルジオグラフィック誌の記事があった。

古代ローマにトイレ税、世界5つのヘンな税 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

乳房税が廃止された経緯もまたショッキングである。ある女性が収税に来た役人に抗議するため、乳房を切り落として見せたことがそのきっかけだ。言葉もない。ローマ公衆便所から税を取り立てたケチで名高いウェスパシアヌス帝が単に合理的でまともに思える。

ナショナルジオグラフィック誌の姿勢、僕の姿勢

そのナショナルジオグラフィック誌だが、2018年に同誌は人種差別的であったことを公式謝罪した。国内有色人種無視していたし、外国文化過去の姿をやや好奇の念をもって眺めていた。そして、異民族過去の姿である上半身裸をピックアップしすぎた、と。

とても誠実な姿勢だと思う。確かに異文化への関心は、はじめのうちは興味本位小ネタから始まるかもしれないが、それだけで終わってしまってはもったいないし、現在の姿を誤解したままでは失礼だ。それに、欧米日本オリエント人間を過度にセクシャル表現してきた歴史があり、それを是正することはまったく正しい。

それは欺瞞だ。伝統的に上半身を見せる文化を改変するのは子どもたちに嘘を教えることになる。乳房を恥としない相手価値観や服飾文化破壊ではないか、という意見もあり、それももっともだと思う。とはいえ、今のところ乳房は隠すものデファクトグローバルスタンダードになってしまっている。歴史的正確さと表現のふさわしさと、これもまた正解のない問いである。

シーター姫のおっぱいが気になった僕もこの罪とは無縁ではない。今を生きる人々の人格と彼らの先祖文化伝統、どうすれば両方に敬意を払えるかを考える日々である。できる限り正確性に努め、通説が誤っていれば訂正をするように心がけているが、それでも異文化への関心が性的好奇心とは無縁ではないことを意識しないではいられない。

今後の研究課題

今回は古代インドではトップレス普通であったことを示した。また、乳房隠蔽キリスト教だけではなく、イスラームの影響もあることも明らかになった。

今後は、世界の中で乳房がどのような文脈を持っていたかを調べたい。例えばシチリアの聖アガタ乳房を切断され、かつては形の似ているパンや鐘の職人守護聖人であったが、いまでは乳がん守護聖人ともなっている。また、戦時中日本を含め、多くのプロパガンダでは、乳房母性記号として国土の豊かさを意味してきたし、しばしば女性を母としての役割に閉じ込める役割も担ってきた。逆に、女性自身が抗議の意味露出することもある。私の身体は私のもので、勝手意味を担わせないで欲しいという奪還の意図もあるのだろう。

加えて、世界各地ではどのような形の乳房理想とされてきたのか、その変遷もいつかはたどりたい。

実際、「ラーマーヤナ」ではほっそりした体を(乳房の重みで)曲げて、と形容されるターラーという猿の夫人がいる。今も残るインド彫刻から判断すると、古代インドには細い腰とそれに対する豊かな乳房への明確な好みがあったのではないかと推測される。また、この彫刻の特徴は東南アジアにも受け継がれている。その辺が知りたいのである

このあたりは西洋絵画からたどるのがいいかもしれないが、芸術個人自己表現となった時代以降は、画家自身の好みも反映されて難しい。

また、逆にトップレス世界の標準であった可能性についても検討したい。すなわち、ユダヤ教キリスト教イスラームの広がっていない地域の服飾史について検討し、トップレスでいることの自由がどのように失われていったかについても調査したい。

2014-07-13

NHK高校講座世界史を全部視聴したからまとめてみる。

ここで全部の回を無料で視聴できる。http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/sekaishi/index.html

高校の頃に世界史を履修しなかったことを後悔していて、何回か受験用の参考書とか見てみたんだけどいっつもフェニキア人あたりのややこしさでわけわかんなくて挫折してた。

で、今ちょうど会社辞めて暇だしみてみるかーって視聴したら、案外すんなりみれて、スッカスカだけど自分の中で骨組みみたいなのができた。この状態で参考書読んだら前より全然読めた。これから参考書だけじゃなくて本とか読んで肉付けしていくつもり。

向いている人

世界史全然知りません」って感じの初心者の人。習ったことある人には全然物足りないと思う。1テーマ20分だし、かなり粗い(多少なりとも知ってる現代史は、物足りなかった)。けど、後に間を埋めていく楽しみもできるし、初学者には向いてる。

ちょいちょい「その頃日本はxx時代で〜」とガイドしてくれるのもいい。

毎回の流れ

司会、小日向えり嬢の「歴史の部屋」にゲストがその回で扱う歴史に関するお土産とともにやってきて、歴史上の人物ナビゲーターという名の語り手として紹介してくれる(最後の方は歴史上の人物ではなく単にナレーション)。たまに「プラスワン」というコーナーでトリビアを扱う。

先生ルーフバルコニーにずっと引きこもっていて、司会とゲストがキャッキャしていると唐突音楽を鳴らして司会をルーバルに呼びつけ解説をはじめる。ゲスト先生と会うことがなく、解説中は部屋に放置されている。どういう設定なんだ。司会が席を外すときに、ゲストの人がちょっと「えっ?」って感じになるときがあって、若干いたたまれない。先生の後ろにあるギターが毎回気になる。最終回だけルーバルから出てきた。

最後に1分程度でその回のまとめがある。スライド3-4枚のコンパクトもので、振り返るのに便利。

2014年度各回出演者等まとめ(敬称略

声優さんにあんまり詳しくないんだけど、それでも名前を知っている人がいるので豪華なんじゃないかと勝手に思っている。

ゲストナビゲーター(声)ルーバルプラスワン
1パトリック・ハーラン
 (パックン
ジョン・F・ケネディ大塚芳忠水島司東京大学なし
2フィフィツタンカーメン朴璐美本村凌二早稲田大学古代オリエント博物館池袋
3ベリッシモ・フランチェスコカエサル池田秀一本村凌二早稲田大学ペンション熱川温泉
4サニーフランシスアショーカ王奥田民義水島司東京大学観蔵院(東京
 石塔寺滋賀
5ヨフィ・ワヒューディヨノシーター姫能登麻美子水島司東京大学なし
6周来友始皇帝鈴木勝美鶴間和幸学習院大学原泰久
 (漫画キングダム」作者)
7林丹丹呂雉井上喜久子鶴間和幸学習院大学なし
8ローラ・チャン楊貴妃井上麻里奈鶴間和幸学習院大学阿倍仲麻呂井真成
9サヘル・ローズウマル・イブン・ハッターブ
 (飯塚昭三
羽田正東京大学なし
10フィフィイブン・バットゥータ志賀克也宮本正興中部大学なし
11フィダン・セルジュクテオドラ(田中敦子大月康弘一橋大学東京復活大聖堂ニコライ堂
12サンドラ・ヘフェリングレゴリウス7世楠大典大月康弘一橋大学なし
13ベリッシモ・フランチェスコフリードリヒ2世(平田広明大月康弘一橋大学なし
14ヒョンギ元暁小西克幸六反田豊東京大学なし
15イラチンギス・ハン(立木文彦上田信立教大学なし
16林丹丹マテオ・リッチ井上和彦上田信立教大学なし
17ヒョンギ申維翰森川智之六反田豊東京大学なし
18サヘル・ローズサラディン、メフメト2世、アッバース1世
 (檜山修之/1人3役)
羽田正東京大学コーヒーについて
19政井マヤラ・マリンチェ伊藤美紀)、
 コルテス(山野井仁
落合一泰一橋大学銀について
20サンドラ・ヘフェリンレオナルド・ダ・ヴィンチ
 マルティン・ルター
 (高木渉/1人2役)
大久保桂子國學院大学なし
21デイトルイ14世家中宏大久保桂子國學院大学なし
22サニーフランシスアクバル関智一水島司東京大学木綿について
23ジェーニャピョートル1世置鮎龍太郎中嶋毅首都大学東京大黒屋光太夫
24セイン・カミュラファイエット小野大輔油井大三郎東京女子大学なし
25政井マヤシモン・ボリバル寺島拓篤落合一泰一橋大学なし
26瀬戸カトリーヌナポレオン3世山田ルイ53世山下範久立命館大学なし
27ピーター・バラカンカール・マルクス大塚明夫山下範久立命館大学なし
28セイン・カミュリンカン中田譲治油井大三郎東京女子大学なし
29林丹丹マカートニー竹内良太上田信立教大学なし
30ゾマホンD.C.ルフィオラウダー・エキアノ(小杉十郎太宮本正興中部大学なし
31ジェーニャレーニン下山吉光中嶋毅首都大学東京なし
32ピーター・バラカントマスエドワードロレンス
 (三木眞一郎
羽田正東京大学なし
33林丹丹NA竹内良太
 宋慶齢水落幸子
上田信立教大学なし
34セイン・カミュNA田中秀幸油井大三郎東京女子大学なし
35G.M.ナイルNA神奈延年
 ガンジー田中秀幸
水島司東京大学A.M.ナイル
36ヒョンギNA鹿野優以
 金大中神奈延年
並木真人フェリス女学院大学なし
37ジェーニャNA山口由里子
 ケネディゴルバチョフ下山吉光
中嶋毅首都大学東京なし
38政井マヤNA山田みほ落合一泰一橋大学なし
39プリスカ・モロツィNA石川英郎宮本正興中部大学なし
40ピーター・フランクルアインシュタイン永井一郎羽田正東京大学なし

視聴の後は

理解度チェック」という簡単なテストのページがある。

あと、あんまりやすくないけど「文字と画像で見る」でサクッと振り返ることもできる。放送内容を綺麗にまとめてくれた「学習メモ」っていうPDFもあるよ(押さえるべきポイント付き)。絵はないけど「学習メモ」のほうが好きかな。至れり尽くせり。

 
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