はてなキーワード: パターナリズムとは
元増田は「子供は性的主体性を持つには未熟」が「ちょっと子供の判断力をナメすぎ」とおっしゃるけれど、現代の社会は性行為に限らず、子供のさまざまな権利を制限しています。飲酒や喫煙や公営ギャンブルは禁じられていますし、民法では制限行為能力者といって「私法上の法律行為を単独で完全におこなうことができる能力」を持っていないとみなされています。その理由は、未成年の自己決定能力の未熟さを鑑みて適切に保護するという観点から、未成年に対しては愚行権を含む自由権に一定の制約を課すべきだという社会的コンセンサスがあるからです。未成年に対しては人権を制約するレベルのパターナリズム(保護者的統制主義、当事者の能力やリソースの不足を社会が保護者として補い、庇護する)をとってもよいし、分野・状況によっては積極的にそうしなければいけない、というのが近代国家の原則です。
あなたの論法に則ると、たとえば未成年が法的契約の十全な主体になれない(正確には、未成年者契約はいつでも無効にされうる)こと、つまり「子供は法的主体性を持つには未熟」とされている現況に対しても、「ちょっと子供の判断力をナメすぎ」と言えることになりますが、これに同意する人はほとんどいないでしょう。大人と同等の判断力を持つ子供もいますが、そうでない子供もたくさんいます。
元増田は「一生のトラウマ」というメンタルな問題のみを取り上げていますが、そもそも性行為というのは適切な知識と配慮をもって行わなければ様々な身体的リスクがある行為です。たとえば性感染症。未成年のクラミジア感染率は、少し古いデータですが、15~18 歳健康高校生 6,000 人での陽性率が男5%・女子13%。そして19歳までの未婚妊婦の27.3%が感染しています。http://www.jspid.jp/journal/full/02301/023010063.pdf また女性の場合、HPV(ヒトパピローマウイルス)のように、若いうちに感染するほど、後の子宮頸がん発症の強い因子となる性感染症もあります。そして多くの性感染症は、たとえコンドームで避妊していても咽頭経由で感染します。これらの事実を正しく認識している未成年者は決して多くありません。
そして妊娠。多くの未成年女子が正しい避妊の知識を持っておらず、また力関係的に性行為の場で避妊を求めることができず、その結果として性的交際により妊娠しています。未成年の人工妊娠中絶数は、2014年の厚労省データで約18,000件/年です。https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1610/19/news017.html このように未成年で中絶に到る妊娠が突出して多いのは、妊娠リスクに関する未成年の判断力の未熟さの傍証だといえるでしょう。妊娠はゼロリスクではなく、母親にもそれなりの周産期死亡率がある、非常に身体的負担の大きい事象です。臨まない妊娠の妊娠中断(中絶)にも多大なお金がかかります。また、学校や家庭などのコミュニティでのサンクション(制裁)も発生します。そうした性行為にまつわる事実を正しく認識し、そのリスクを踏まえた上で行動できる未成年者ばかりではありません。