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はてなキーワード: 沈黙とは

2010-01-16

女の子ひろった  追記あり

 夜の海岸線を走る国道女の子をひろった。

 ビニール傘をさして雨の中をとぼとぼと歩く姿が、ヘッドライトの中で片手を大きく上げるので速度を落としたが、女性であることに気づいて、クラクションを鳴らして通り過ぎる。

 大の男が女性ヒッチハイカーをひろうわけにはいかないわけだし、旅の途中でもあるわけだし、だいいち予定をずいぶん超過しているわけだし。ちらりとデジタル時計を見ると、九時をだいぶ回っている。周囲にヘッドライトは見えない。しかたなく路肩に車を停め、僕は傘をさして反対方向へ走り出す。

大丈夫ですか? あいにく男なんです、それに」

 駆けより弁解しようとして、言葉が途切れる。ヒッチハイカーの二十歳前後女性は小柄で、その細い肩を小刻みに震わせていた。

大丈夫?」

 顔色をのぞきこむと彼女くちびるがかすかに動く。さむい。

 歩ける? じゃあ、車まで、距離あるけれど。縦に首を振る。それでとぼとぼとついてくるのを振り返りながら車まで歩き、助手席に座らせてヒーターを全開にした。

「この道、ぜんぜん車とおらないですよね、国道なのに」

 できるだけ声をあかるくして後部座席からバスタオルを出して、渡す。沈黙を消すためにラジオをつけると、朝のドラマのあかるいポップソングが流れだす。ポットにホットコーヒーの残りがあったのを思いだして、それを注ぐと白い湯気がのぼり、カップを渡すとふるえる手がそれを受けとる。車内灯をつけて地図を広げる。

「どこまでですか? 駅まで送りますよ。ここから歩くとずいぶんありそうですし」

大阪。いきますか、大阪?」

 宮城に入ってからずいぶん走った気はしていたが、さすがにぎょっとしてコーヒーをすする彼女の顔をみつめる。ふしぎそうな視線がこちらをちらと見る。

「あ、ええ、大阪も回るつもりですが、ずいぶん先ですよ?」

「友達がいるんです」

 ああ、家出かと得心がいき、何も荷物も持たずに海岸線を歩いていた理由がわかったような気がした。大学生ならばまだ夏休みも少しは残っているし、家を飛びだして高校時代の親友の家に転がりこむなんて算段もするだろうし、お金がないからヒッチハイクなんてことも考えるかもしれない。それでもこんなオフシーズン大阪行きの車などめったになく、それで車を乗り継ぐうちに時間切れのように雨降るひとけのない国道に取り残されたのではないか、そんなことを思う。

「どうも」

 カップが差し出されて、ポットをしまい、思いだしたように車を出す。

「とりあえず、今日仙台まで行く予定だったんです。だからどのみちそこまでは行きましょう。大阪はどうするかはともかく」

地図見ます」

 それでふたりで納得して、ヘッドライトが照らす濡れたアスファルトを見つめながら、静かなラジオに身を任せる。夜のニュースが始まり、あいかわらず政治の話題が伝えられる。それを片耳で聞きながら、ハンドルを指先で叩く。久しぶりの信号で停車すると彼女が訊いた。

「行くんですよね、大阪?」

 ちらと見るとタオルで濡れた腕をぬぐっている。青信号にあわててアクセルを踏み、それから思いだしたように言葉を繰り返す。

「ええ、ですが、大阪に着くのはずいぶん先ですよ?」

 彼女は小首を傾げるがそれも無理はなかった。

 僕は今、ながいながい旅の途中でそれは生まれてはじめてする長い旅行。先月やめた仕事で貯めたお金をはたききって、日本中をまわろうと思っていた。小さな軽と二ヶ月はふらふらできる貯金、あとは地図だけあればなんとかなるというそんな旅。そんな自分勝手ができるのはおそらくこれが一生に一度で、この旅が終われば、山形実家の酒屋を継ぐ。やっと都会のやくざ仕事から足を洗って帰ってきた息子の計画を両親は二つ返事で了承し、思う存分遊んでこいなどと、背中まで叩いて送り出した。

「どれぐらい先ですか?」

「さあ、計画決まってないんです。ふらふらしているだけで」

「じゃあ、大阪へ向かってくれないんですか?」

「え? あ、まあ」

 いいにくそうにしていると赤信号彼女と視線が合う。びっくりするほどきれいなまなざしが向かってくる。それで正直に言うことにした。

岬めぐり、してるんです。全国のあちこちの岬をめぐって写真を撮ろうと思っているんです。だから、大阪にはいつ着くかなんてわからないんです」

 彼女はきょとんとしていたが、おかしそうに笑う。

「楽しそうですね、岬めぐり。ちょっとベタだけど」

「こういうのはベタなほうがいいんです。あんまり考え込んでも面白いことなんてないんです。考えるより車を走らせた方がいい。面白そうな岬をめぐってみたほうが、ちっぽけな自分がわかるんです。考えている時間もったいない。走っている間にいくらでも考える事なんてできるんです。それに岬めぐりは、日本人青春伝統みたいなところがあるし」

「そうなんですか?」

 え、まあ、とつぶやきそれから彼女は知らないのだと気づく。

「歌があるんですよ、有名なフォークソングで、岬めぐりって歌が」

 僕はそう言って、覚えてきたその歌をうたい始める。父のカセットテープで何度も聴いた曲。子供の頃のドライブの定番で、それはとても懐かしく、自分人生を振り返っている心地になる。へたくそな歌を遠慮がちにくちずさむ。指でリズムを刻むと、やけっぱちの冒険心が刺激される。

失恋の歌ですね」

 えっと彼女を見て、ああとあわてていう。

失恋旅行している訳じゃないんですよ?」

 小首を傾げるので、少し迷って話す。

仕事やめたんです、東京の。それで実家の酒屋を継ぐんです、山形の」

 わかったのかわからないのか、へぇ彼女は呟いたがそれでも地図には目を落とし、だいぶ増えてきた街灯の明かりにそれをかざす。ここ、右です。それでだいぶ仙台市内に入ってきたことに気づく。ラジオ深夜放送になっていて、誰かの語りがイタリアの今についてしきりに話していた。彼女はもうタオルで拭くのをやめていて、少し暑い気がしたのでヒーターを弱める。海岸線をまわる旅だったからか仙台きらきらした人工の宝石のように見え、だいぶ安堵感が戻ってきて、気安く彼女に言う。

「どこかに泊まってください。お代は出すので。僕は車に泊まりますから。大阪の話は明日しましょう。どちらにしても今日は無理です」

「え? ああ」

 困ったように迷い込む彼女を眺めながら、考え込む。

(なんなんだろうなあ……、この子は……。得体が知れないというか、自分以外の世界がまったく見えてないというか。こっちがまったく見えていないような気さえする)

 まあ、でもそれは今日限りの事で、きっと彼女仙台で都合をつけて、高速を走る大阪行きの車にヒッチハイクするのだろうと、そう思ってまあこれぐらいはよいかと思う。

「でも、これ、あなたが泊まるためのお金ですよね?」

「ん……、まあ、僕も泊まってもいいのだけど、そうすると見知らぬ男と部屋は別でも同じ屋根の下っていやですよね? だったら節約した方がいいじゃないですか?」

 正直に言えば車中泊はもう慣れていたし、無理におなじところに泊まるほうが心理的な圧迫感が大きかった。なので、僕の提案は僕にとっての最善であり、これは僕の都合でそれが好ましいのであり、彼女に対して何かをしているわけではなかった。

 それでも彼女はしぶしぶシティーホテルに部屋を取り、僕はその駐車場で眠った。

 朝のラジオが鳴り、リンドバーグの歌で午前八時がやってくる。

 僕は駐車場でのびをして、体をひねってみて、コンビニででかいヨーグルトを調達してスプーンでそれをすくう。ラジオ健康体操の話で、ダッシュボード地図を眺めながら、それを聞く。何か正直仙台まで来てしまったことが、まずい気さえしてきてしまう。もうちょっと前によい岬があったのではと。ノートPCを立ち上げて、あれこれと調べはじめる。昨日撮ったデジカメ画像を移しながら、ヨーグルト片手にそれをチェックしていく。この朝の作業はあんがい楽しいコンコンと窓ガラスが鳴る。視線を上げると彼女が笑っていて、窓を下げた。

大阪までお願いします」

 どういうつもりだろうと思ってしまう。

「あなた、とても優しい人だし、それにとても善良だから」

半月ぐらいかかるかもしれませんよ?」

 彼女はにっこりと笑った。

 ■シリーズリスト

 ・女の子ひろった

 http://anond.hatelabo.jp/20100116012129

 ・これこそ逃避

 http://anond.hatelabo.jp/20100119221742

 ・すごい彼女

 http://anond.hatelabo.jp/20100123005026

 ・ふたつ恋した

 http://anond.hatelabo.jp/20100204210025

2010-01-13

久々に友人から電話がかかってきた。たまには初詣でも、だそうだ。数年前から病気がちでロクに外出などしていない私は正直億劫だったが久々に友人と会うのもいいな気分転換にもなるしと同意した。

が、予定を決めるのに若干時間がかかった。彼女と何かを決める時はいつもこうなのだ。彼女は常にこちらの意向を聞いてくれる。それはありがたい事だ。しかし意向を伝えたところで必ず拒否されるのだ。彼女からしてみればもっともらしい理由をくどくどと並べて回避しているので拒否している感覚など微塵もないだろう。その事に気づいてから説明するのも面倒なので全て任せる事にしている。こちらとしては彼女の思い描いている行程を一発でまとめて打診された方がラクなのだがそういった行為は押し付けであり罪悪感が伴うのか今までまとめて打診された事は一度も無い。現地で待ち合わせなのに交通手段を聞いてくる神経もよくわからない。実質的にはこちらが譲歩しているのだが形としては彼女が譲歩している事になり彼女もそう信じて疑っていない部分に若干イラッとする。

当日。億劫さが湧き起こり葛藤しているうちに10分ほど遅れて出発。本来であればメールひとつでも送るべきなのだろうが以前に送ったら「自転車を止めてメールをする暇があったらその分、急いで来なさいよ」とにべもなく言われたので送るのを躊躇う。

対面。私ほどではないけれど相変わらずぽっちゃりの彼女体重は標準の範囲だそうだが見た目はもっとあるように見える。体脂肪率が高いのかしら?などと考える私。たまの外出なのでせっかくだから美味しいものでもと思ってオーダーしたものが彼女の気に障ったらしく怪訝な表情をされた。まあ痩せたいなら食うなって事は私も自分で思うわけだがそう思ったならそう言ってくれていいのに。言わない事が美徳とでも思っているのかしら。ならその表情も隠さないと意味なくない?中途半端な美徳ね。

何かしら思うところがあって話したい事でもあったからこその再会かと思いきや結局彼女は私の近況を根掘り葉掘り聞くだけで特に何かを話すわけでもない。色々とあまり答えたくない質問が続いたがあまり重い雰囲気になるのも嫌なので淡々と答えた。質問が終わるとしばらく沈黙したのちに彼女がこの後にすぐ予定があると言い出した。ああ、ごめんね気がつかなくていいのいいのなどと空虚な会話を交わして私たちの初詣は完了した。本来であればこちらからも質問すべきだったのかもしれない。でも自分彼女にされた答えたくない質問を彼女に対してしたくはない。

彼女に見送られた後、ふと思い立って引き返すと本屋立ち読みしている彼女がいた。立ち読みが予定?私と過ごす時間苦痛だったのならば構わないが特に予定もないならば今度は私の話を聞いてと言ってくれれば聞いたのに。彼女は昔から誰かに聞きだされる事を待つタイプではあったのだが年々それに拍車がかかっている。毎年会っているわけじゃないのにこんな決め付けするのもどうかと我ながら思う。予定がないのに予定があるフリするのも誰が得をするのだろう。一度じっくり話し合うべきなのかもしれないが今の私には彼女の話を聞く余裕すらない。



http://anond.hatelabo.jp/20100113030035

2010-01-11

巻物の第2巻

今日この日を、私は、心からの愛をもって迎える。

なぜならば、これは、いかなる仕事においても、成功するための最大の秘訣だからである。

腕力は楯を打ち砕き、人を殺すこともできるが、人の心を開くことはできない。これができるのは、目に見えない愛の力だけである。この愛の心をもって、顧客に接しえぬかぎり、私はただの行商人の域をでることはできない。私は愛をもって、私の最大の武器としよう。私に呼びかけられた客は、私の愛の力の前では、結局は、商品を買わないではいられなくなるにちがいない。

あるいは客は、私の説明に納得しないかもしれない。私の話をのっけから信じないかもしれない。私の着ているものを感じの悪い服装だと言うかもしれない。私の顔つきが気にくわないかもしれない。私との売買契約が、疑わしいと思うかもしれない。

しかしながら、どんなにかたく凍りついた地面も、やがては太陽の熱には溶かされてしまうように、私の愛は、人の心を暖め、開いてしまうであろう。

今日この日を、私は、心からの愛をもって迎える。

では、どのようにして、それを成しえるのか?

これより以後、私は、すべてのものを愛の心をもって見ることにしよう。そして、私は生まれ変わるのだ。

私は太陽を愛する。それは、私の骨の髄まで暖めてくれるがゆえに…。また、私は雨を愛する。それは、私の心を洗い清めてくれるがゆえに…。私は光を愛する。それは、私の行く手を照らしだしてくれるがゆえに…。また、私は、暗闇さえ愛する。それは、私に星の輝きを見せてくれるがゆえに…。

私は喜びを歓迎する。なぜなら、それは私の心を広げてくれるからだ…。しかし、また、悲しみにも耐えよう。なぜなら、それは私の魂を開いてくれるからだ。

報酬は当然、私に支払われるべきものだから、私は喜んで、それを受け取ろう。しかし、障害も、それは私がその仕事に挑んだゆえに、生じたことだから、同じく喜んで迎えいれよう。

今日この日を、私は、心からの愛をもって迎える。

しかし、どのような言葉を持って話しかければよいのか?

私は私の敵をたたえよう。これによって、彼らは私の友となろう。私は友を力づけよう。そうすれば、友は私の兄弟となる。つねに、私は、彼らをたたえるべき理由を探すべく努めよう。けっして、彼らの悪口をかき集めるようなことはするまい。

他人を非難したくなったら、私は自分の舌を噛もう。その反対に、人を褒めたくなったら、私は屋根の上から大声で叫ぼう。

鳥や、風や、海や、そして、大自然のすべてが、彼らの創造主を褒めたたえる音楽を奏でているではないか。そして、人びとも同じく、創造主が創りたもうたものである。その創造主の同じ子らに向かって、私も音楽を奏でることができないはずがない。

これ以後、私は、この秘密をけっして忘れることはない。そして、この秘密が私を変えるのだ。

今日この日を、私は、心からの愛をもって迎える。

それには、どのように振るまえばよいのか?

私は、人びとの行為をすべて愛する。人の行為には、たとえ表面からは見えなくても、すべての人に、褒めたたえられるべき性質のものが秘められている。

私は、愛の力をもって、彼らが心のまわりにはりめぐらした不信と憎しみの壁を崩し去ろう。そして、その場所へ、私は丈夫な橋をかけよう。そうすれば、私の愛は、そこを渡って、彼らの魂の中へ入っていくにちがいない。

私は野心家を愛する。なぜなら、彼らは私を勇気づけてくれるからである。私は失敗者を愛する。なぜなら、かれらは私に教訓を与えれくれるからである。私は王様を愛する。なぜなら、彼も等しく同じ人間だからである。私はおとなしい人を愛する。なぜなら、彼らは神のように謙虚だからである。私は富める者も愛する。なぜなら、彼らは孤独であるから。私は貧しい人も愛する。なぜなら、彼らは、この世の中にいちばん多くいるからである。私は若者を愛する。なぜなら、彼らは若々しい信念を抱いているからである。私は老人を愛する。なぜなら、彼らは歳月のもたらしてくれた知恵をもっているからである。私は美しい女を愛する。なぜなら、彼女らの眼には、悲しみがたたえられているからである。私は醜い人を愛する。なぜなら、彼らの瞳に宿る平和と静けさのゆえに。

今日この日を、私は、心からの愛をもって迎える。

しかし、私は、人々の行いに対して、どのように対応すればよいのであろうか。

その答えは、ただの一語をもって答えられる。「愛をもって」この一語である。ありは人の心を開くための武器である。同時に、他人からの憎しみの矢や、怒りの槍をはね返す楯でもある。災難や失意が激しくこの楯を乱打しても、やがては、春雨のように力を失ってしまう。この楯は市場では私を守ってくれ、一人いるときは、私の心の支えになってくれる。失意のときは泰然、得意のときは冷然とさせ、心の乱れを鎮めてくれる。

楯は日を追うごとに強力になるが、やがては、その楯さえ、私は必要としなくなる。私は、その楯をかたわらへ放棄し、あらゆる武器を持たないまま、世間の人びとの中へ入っていくことができるようになる。そのときこそ、私の名前は、ピラミッドより高くたたえられることだろう。

今日この日を、私は、心からの愛をもって迎える。

しかし、私は、はじめて出会う人びとに対し、どのように接すればよいのであろうか?

方法はただ一つである。無言のうちに、心の中で、私は彼に近寄り、そして、「私は、あなたを愛している」と呼びかける。この言葉は、沈黙のうちに語られるが、しかし、それは、私の眼の中で輝き、私の額のしわをぬぐい去り、私の唇に微笑をもたらし、私の声の中にこだまする。そして、この時、はじめて彼の心が開かれるのである。

心がすでに、私の愛で開かれているのに、私の商品を拒みえる者がいるだろうか?

今日この日を、私は、心からの愛をもって迎える。

私は、何にもまして、自分自身を愛する。

そして、つねに私自身を知りつくすべく努めよう。私の肉体の一部と化した、精神、魂、心のすべてを知りつくすのだ。

私は、自分の肉体の要求に、そのまま溺れることなく、清潔さと適正さをもって、その要求にやさしく応えよう。私は、私の精神が、邪悪なるもの絶望的なるものに引きつけられることをけっして許さず、むしろ、それらを、長い間に培った知識と叡知をもって、高い境地にまで昇華させよう。

私は、独りよがりな自己満足に陥ることなく、瞑想と祈りによって、自らの魂を高めていこう。

私は、自分の心が狭く、冷酷になるのを許さない。人々と、愛を分かちあい、寛容の心を成長させ、世界暖かい友情で包まれるのが、私の望みである。

今日この日を、私は、心からの愛をもって迎える。

今より、私は全人類を愛する。今この瞬間より、すべての憎しみは、私の血管から除かれる。なぜなら、もう私には、愛する時間はあっても、憎む時間はないからである。今この瞬間より、私は男の中の男になるべく、その第一歩を踏みだす。私は、愛をもって、売り上げを百倍にも増やし、偉大な商人になってゆくのである。

たとえ、私には何の長所がないとしても、案ずるには及ばない。愛さえあれば、成功への道は必ず開けるのである。愛がなければ、あらゆる知識や技術をもっていようと、きっと失敗することだろう。

今日この日を、私は、心からの愛をもって迎える。

そして、私は成功する。

2009-12-25

コミュニケーションにおける最大の問題はそれが達成されたという幻想

7 : ペストコントロールオペレーター(長野県):10/07/27 16:27 ID:VXzEcToP

俺も人を信じないけど表面上は信頼してるように見せないと色々面倒だろ

その程度の処世術は遅くても中学までに会得しておくべき

http://lifehack2ch.livedoor.biz/archives/51260720.html

知人・友人・友達・親友・心友・莫逆の友・友情

コミュニケーションにおける最大の問題は、それが達成されたという幻想である

バーナード・ショーアイルランド劇作家

The greatest problem in communication is the illusion that it has been accomplished.

George Bernard Shaw

小人と仇讐することを休めよ、君子に諂媚することを休めよ。

韓非子19 「説難(ぜいなん)」5 (IE・GC)|やけい

相手愛情を持っている場合は、いいことを言えば

すぐに気に入られ、ますます近づけられる。

ところが憎まれ場合は、いいことを言っても受け付けられず、

いよいよ遠ざけられるだけである

韓非子 説難

弁舌を率直に簡潔にすると、知識が足りないとして退けられ、

丁寧に幅広く論じたてると、冗漫だと思われて、別の者と代わらされる。

賢仁人生相談 韓非子/説難編 ~社長に意見が認められず左遷されたケース~ : 文芸雑技団ハルカトーク

人を信じないけど表面上は信頼してるように見せないと色々面倒だろ

ブルータス、お前もか

好かれるより「嫌われない」こと

はてなブックマーク - Amazon.co.jp: 嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え: 岸見 一郎, 古賀 史健: 本

語りえないことについては人は沈黙せねばならない。

[友人][友達][友情]お互い友人だといっても、それを信じるのは愚か者。

「すべては主観である。」モニモス

[権内][権外][分限自覚][エピクテートス]意志の力でどうにもならない物事

自分と未来は変えられる。他人と過去は変えられない。

「なんとなく」を可視化し、「変えられるもの」に集中する - 点と点をつなぐためのメモ - connecting the dots

最近、他人を説得したり、意見することにエネルギーを使うことをやめました。それよりも、自分を変えることが大切。

[面従腹背][面従後言]

常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう

[ゲシュタルトの祈り][Gestalt Prayer]

ラインホールド・ニーバーの祈り The Serenity Prayer

はてなブックマーク - 気に入らない人間を潰す方法(社内政治で潰されないための知識) - @fromdusktildawnの雑記帳

アドバイスをするというのは、疑わしい療法だ。ユング

[六韜]仲間の多い人間とは腹黒い人間。

人間は一生、他人の心などわかるはずもない。MASTERキートン

人間は誰しも他人から完全に理解されるということは有り得ない

[他人の心]人の心などわかるはずがない

[ロバ売りの親子][粉屋と息子とロバ]粉挽きとその息子と驢馬

鶏口牛後 - はてな匿名ダイアリー

影で「きもい、最悪、勘違いすんな」って言われてても気付かなくてシアワセなんだろうな。

ラベンダー畑の向こう側

・・・ 毎日のように夜遅く電話してくる

友達

いて非常に迷惑だった。

☆ゴミの通院日記☆:波浪注意報 - livedoor Blog(ブログ)

私はあんたのことなんて知らない、お前が男とどうなろうがしったこっちゃない。

言いたいのに、いえない。

私へのメール日記じゃないのです。

うざいからやめてくれない?

泣きながら電話するのやめてくれない?



はてなブックマーク - 九尾のネコ鞭「会話はキャッチボール」の本当の意味

[人間関係は腹六分]

http://anond.hatelabo.jp/20091223141728

http://anond.hatelabo.jp/20130423091413

http://anond.hatelabo.jp/20130524122441

http://anond.hatelabo.jp/20130722214426

http://anond.hatelabo.jp/20131005225557

http://anond.hatelabo.jp/20131103181214

http://anond.hatelabo.jp/20140112111619

http://anond.hatelabo.jp/20140311111743

http://anond.hatelabo.jp/20140902031152

http://anond.hatelabo.jp/20160321122600

2009-12-13

http://anond.hatelabo.jp/20091213121947

そもそもはてなでだって少なからずいるじゃないか。

その少なからずの内実をみてみろよ。ホントの馬鹿もいるだろうけど、勝手に「自衛厨」に認定してるのだっている。もっといえば、馬鹿意見に賛成するはてなーは実際としてどれくらいいるのか、教えてくれよ。大していないはずだよ。いるなら数字を挙げてくれ。絶対多数は「被害者たたき」に与しないよ。

大多数が馬鹿認識してても黙ってたらブックマークとかブログは「よほどの馬鹿」のコメントで埋まってるよ。

何人が埋めるの、その馬鹿で。そのわずかの馬鹿ブクマが、はてな世論を動かして、リアル世論も動かすの?動かないよ。

あんたの文章のほとんどは被害者叩き批判への反発であって被害者たたきへの反発じゃない。

当たり前。被害者たたき批判が極端だから反発してるんだ。被害者たたきは悪い、でもだからって被害者たたき批判が絶対的に是認されるわけでもない。程度の問題。「被害者たたき批判」が物事を簡単に一般化してるところが極端だというだけの、なにが悪いんだ。

http://anond.hatelabo.jp/20091213124714

現実に上に書いたような状況ではないし、被害者叩きが一般化してなくても沈黙が一般化して反論する人がいなければ叩き以外存在しなくなるといってる。

被害者たたき批判をするななんて、誰も言ってない。ほら、すぐそうやって極端な話に持っていって反論するからダメだと言っている。

お前が勝手無駄に反発してるだけだろ。言われなくてもわかってるなら黙ってればいいじゃないか。本当はわかりたくないから黙らせたいんだろ?

黙らせたいのはあなた方だろう?もちろん、被害者だたきは許されない。かといって、被害者だたき批判をする過程で行き過ぎた部分は、やっぱり行き過ぎなんだよ。あなたがたこそ、自分たちに対する批判を「黙らせたい」だけじゃないか。

http://anond.hatelabo.jp/20091213121947

被害者たたきの言説であふれかえってしまう」?ならないよ。現にはてなでさえもなってないじゃないか。

2ちゃんでもヤフーニュースコメント欄でも性犯罪者の被害者たたきはある。何を根拠に「ならないよ」といってるのかわからん。そもそもはてなでだって少なからずいるじゃないか。

わざわざ「よほどの馬鹿」に逐一反論したおかげで、そうならなかったの?違うでしょう。大多数の人間が「よほどの馬鹿」を馬鹿だと認識してるからですよ。つまり、言われなくても分かってるんだ、んなことは。

大多数が馬鹿認識してても黙ってたらブックマークとかブログは「よほどの馬鹿」のコメントで埋まってるよ。関心の薄い普通の人はいちいち書かないんだから。逐一反論したから埋まらなかった。反論してなかったら賛同以外の記事・コメントが出るはずないだろ。

被害者たたきに反発しないのに、被害者たたき批判へは反発してる。」も的外れ

全然的外れじゃない。あんたの文章のほとんどは被害者叩き批判への反発であって被害者たたきへの反発じゃない。もう一度自分が書いたものを読み返してみろ。

おかしいと言ってるのは、現実は上に書いたような状況なのに、「被害者たたき」を簡単に一般化しちゃってるでしょう?極端なんだよ。

現実に上に書いたような状況ではないし、被害者叩きが一般化してなくても沈黙が一般化して反論する人がいなければ叩き以外存在しなくなるといってる。

そっくりそのままお返しするよ。あなたみたいに曲解した反応が、どれだけ無駄な反発を生じさせてるんだよ。くだらない屁理屈言うなって。

お前が勝手無駄に反発してるだけだろ。言われなくてもわかってるなら黙ってればいいじゃないか。本当はわかりたくないから黙らせたいんだろ?

2009-12-08

小児性愛冤罪を阻止するエホバの証人

小児性愛冤罪を阻止するエホバの証人

エホバの証人小児性愛被害者虐待者を仲間の間で訴えた場合、他に証人がいなければ不問とする。

 告発されても、もし当人がそのような事実はないと言うなら長老たちは告発した人に審理措置は何も講じられないことを説明すべきです。
 そして会集は告発された人を引き続き潔白な人とみなすでしょう  -ものみの塔95年11月1日 28~29頁   

告発しても証人がいなければ不問とは、たとえばこういうこと。

 

被害者わたしが7歳のとき、あの兄弟パンツに指を入れてきて、」

加害者「してません」

監督者「ということなので調査するわけにはいきません。ほかに見た人がいれば別ですが」

 

では告発者が複数場合はどうなるか。

 

 たとえ二人以上の人が、同じ人から虐待を受けた"覚えがある"としても、
 その種の記憶は至って当てにならない性質のものであるため、
 裏付けとなる他の証拠がない限り、審理上の決定を下す根拠になりません

 

被害者B「わたしも数年前にあの兄弟からパンツに手を突っ込まれたことがあるんです」

被害者C「ずっと言えませんでしたが8歳のときわたしも」

加害者「いや記憶にない」

監督者「ということなので調査するわけにいきません。証拠があれば別ですが」

では証拠がある場合はどうなるか。

実はエホバの証人は内部の問題を外部の法廷に持ち出すのは「神の御名に疵をつけること」として禁じられている。

自分たち信教の自由のためにはしょっちゅう争っているのだけれど、信者信者を、特に監督者を訴えるのは原則禁止

  

被害者ABC「じゃあ警察に行きます

監督者「それはエホバの御名に傷をつけます」

被害者ABC「傷をつけたのは虐待者ではありませんか」

監督者「警察行くなら排斥しますよ」

 →被害者警察へ。刑事訴訟虐待者は有罪に。そして組織排斥される被害者

ということがアメリカのNBCで放映されたドキュメンタリーニュース番組特集されたが、日本エホバの証人ほとんどはこのことを知らない。

https://www.youtube.com/watch?v=8psxo0s1MXk

ものみの塔聖書冊子協会好意的でないニュースは背教者の手によるものなので、絶対に見てはならないと警告されているからだ。

見たり聞いたり読んだりした内容を、仲間に話したり、監督者に質問したりすると背教者として排斥される恐れがある。

 

容疑を認めない小児性愛者を訴えて排斥処分にされた人をどう思いますか?

1. 母親エホバの証人である37歳の男性エホバの証人の間での立場 奉仕の僕 開拓者

「会衆内のレイプを世の法廷に訴えた女性のことをどう思う?」

「その人はそうせずにいられなかったんじゃないかな…」

「だから責めるのはかわいそうっていうこと?」

「そう」

問題虐待者とそれを隠蔽しようとした人だと思わない?」

「…」

仲間の信者を世の法廷で訴えることは情状酌量余地があるとはいえ、重大な悪行である

これが会衆内で問題を扱う立場にいる二世信者認識

から彼らの多くは被害者になっても沈黙を守るし、守らなければ信者の間で反逆者として敵意を買う。

 

2. 28歳でエホバの証人になった43歳の女性 エホバの証人の間での立場 開拓者

「え…でも世の法廷に出したらいけないんじゃない?」

「じゃあ、私があなたのお母さんを目の前で殺したらどうする?」

「どうするって…悲しい」

「それを見たのがあなただけで他に証人がいなかったとするよね。

 私が容疑を否認したら協会内部ではお咎めなしということになる」

「そうだね」

警察へは行かないの?」

「ああ、そりゃ、殺されたら警察行くよ」

「じゃあ強姦は?」

「…え、強姦だったら…どうかなあ」

殺人淫行聖書の中では同列の罪だよね?」

「あ…まあ、そうか」

ちなみにエホバの証人内部の性暴力が明らかになったのは皮肉なことに性暴力被害から身を守る記事を「目ざめよ!」で特集したこときっかけだった。

記事反響として全世界から子供時代協会内部のレイプされたという声が寄せられたのだ。

本部はこれを隠蔽しようとして、「証人必要」「記憶はあてにならない」「世の法廷に持ちだしてはならない」という記事を次々に出した。

結果的にはアメリカでの裁判惨敗して空前の慰謝料を支払うことになり、ニューヨーク本部を引き払うことになったんだけどね。

キャンディス・コンティ裁判

http://www.jwstudy.com/ja/candace_conti_summary/

 

ものみの塔聖書冊子協会好意的でない報道話題にしたとき共通の反応

「その話、どこで知ったの?」

インターネット?そういうの見ると霊的に影響受けるよ」

「会衆で発表がないことなら、私達が知る必要のない情報なんじゃないの?」

こうしてインターネットを介してエホバの証人ものみの塔協会関連の犯罪を知ることは背教行為として厳しく調べられる。

 

長老と呼ばれる監督者に呼び出され、潔白が証明されないなら「排斥」または「戒め」として文字通り一切口を利くことを禁じられる。

これを書いたことがバレたら自分も教者リスト入りすることになる。

日本エホバの証人が「信者が増えない国ランキング」1位になった理由 ※追記あり

https://anond.hatelabo.jp/20130912022500

http://anond.hatelabo.jp/20080723030022

2009-11-30

ふたば二次裏でまとめられていた、中高生のための100冊 その2

ふたば二次裏でまとめられていた、中高生のための100冊

http://anond.hatelabo.jp/20090503233005

これは二次裏でもimg鯖でまとめられたオススメ本一覧2008年バージョンだったらしい。

元は「中高生のため」と限定したわけじゃなく単純に他の人に薦めたいというものだとか。

1年毎にまとめられているようで、これの2007年バージョンを見つけたので貼ってみる。

1 激突カンフーファイター  清水良英

2 戦闘妖精雪風 神林長平

3 黒死館殺人事件 小栗虫太郎

4 シラノ・ド・ベルジュラック エドモン・ロスタン

5 涼宮ハルヒの憂鬱 谷川流

6 グリーンマイル スティーヴン・キング

7 繁栄の法―未来をつくる新パラダイム 大川隆法

8 悪魔の下回り 小林信彦

9 風が吹くとき レイモンド・ブリッグズ

10 黄金の法 大川隆法

11 駿河城御前試合 南條範夫

12 発明超人ニコラ・テスラ 新戸雅章

13 実録・外道の条件 町田康

14 蝿の王 ウィリアムゴールディング

15 パンセ パスカル

16 豹頭の仮面 栗本薫

17 ドグラ・マグラ  夢野久作

18 仮面の告白 三島由紀夫

19 虚無への供物 中居英夫

20 シブミ トレヴァニア

21 EGコンバット よしみる,秋山瑞人

22 もの食う人びと 辺見庸

23 人類は衰退しました③ 田中ロミオ

24 麻雀放浪記青春編> 阿佐田哲也

25 ニューロマンサー ウィリアム・ギブスン

26 愛に時間を ロバート・A・ハインライン

27 創竜伝 田中芳樹

28 ベルカ、吠えないのか?  古川日出男

29 エロ事師たち 野坂昭如

30 マルドゥック・スクランブル 冲方丁

31 ミッドナイト・ミートトレイン クライヴ・バーカー

32 薬菜飯店 筒井康隆

33 ばいばい、アース 冲方丁

34 変身 カフカ

35 チリ地震クライスト短篇集 ハインリヒ・フォン・クライスト

36 罪と罰 ドストエフスキー

37 七瀬ふたたび 筒井康隆

38 宦官中国四千年を操った異形の集団 顧蓉

39 帝都物語1神霊篇 荒俣宏

40 恋のかけひき他11篇 マルキ・ド・サド

41 フィネガンズ・ウェイク ジェイムズ・ジョイス

42 ラヴクラフト全集 (1) H・P・ラヴクラフト

43 大菩薩峠<1> 中里介山

44 ロリータ ウラジーミル・ナボコフ

45 日本百名山 深田久弥

46 灰とダイヤモンド アンジェイェフスキ

47 最悪 奥田英朗

48 旧約聖書創世記 改版 関根 正雄訳

49 少女地獄 夢野久作

50 泥流地帯 三浦綾子

51 ハローサマーグッドバイ マイクル・コニイ

52 平行植物 レオレオーニ

53 李陵山月記 中島敦

54 特犬捜査みちる 羽沢向一

55 スカイ・クロラ 森博嗣

56 ペドロ・パラモ フアン・ルルフォ

57 魂の駆動体  神林長平

58 剣客商売 池波正太郎

59 フランス革命史 ジュールミシュレ

60 エルマーとりゅう-Elmer and the Dragon ルーススタイルス・ガネット

61 ファイアスターター スティーヴン・キング

62 決戦・日本シリーズ かんべむさし

63 ドリトル先生アフリカゆき ヒュー・ロフティング

64 一握の砂・悲しき玩具 石川啄木

65 一万一千本の鞭 ギヨーム・アポリネール

66 暗闇のスキャナー フィリップ・K・ディック

67 夏草冬涛 井上靖

68 家守奇譚 梨木香歩

69 沈黙 遠藤周作

70 1999年ゲームキッズ 渡辺浩弐

71 ソフトマシーン ウィリアムバロウズ

72 アリスAlice in the right hemisphere 中井拓志

73 ハイペリオン ダン・シモンズ

74 かめくん 北野勇作

75 スローブギにしてくれ 片岡義男

76 てのひらの闇 藤原伊織

77 極大射程 スティーヴン・ハンター

78 初秋 ロバート・B・パーカー

79 マルテの手記 ライナーマリアリルケ

80 彼女が死んだ夜 西澤保彦

81 カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー

82 邪宗門 高橋和巳

83 裸のランチ ウィリアムバロウズ

84 インスマス年代記 スティーヴァン・ジョーンズ

85 鬼麿斬人剣 隆慶一郎

86 夏への扉 ロバート・A・ハインライン

87 明治断頭台 山田風太郎

88 舞姫 森鴎外

89 淫行時間割わいせつ母 睦月影郎

90 サムライ・レンズマン 古橋秀之

91 京美ちゃんの家出ミルキーピア物語 東野

92 死者の代弁者 オースン・スコット・カード

93 新約聖書福音書 塚本虎二

94 ウィーン愛憎 中島義道

95 ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち リチャード・アダム

96 薔薇のマリア I.夢追い女王永遠に眠れ 十文字青

97 左巻キ式ラストリゾート 海猫沢めろん

98 されど罪人は竜と踊る 浅井ラボ

99 暗黒館の殺人 綾辻行人

100 ジョゼフ・フーシェ―ある政治人間の肖像 シュテファン・ツワイク

2009-11-28

気ままな掌編 3/5

http://anond.hatelabo.jp/20091128000814から続き

恐る恐る視線を戻すと、美樹はレポートの作業を再開させていた。軽快な音を立てて、シャーペンが紙面を滑っている。まだずっと続くのであろう作業を呆然と見守っていてもつまらないし、そんなことをしていようものならばまた何か言われてしまうのが目に見えていたので、とにかく僕も何かをしようと数学の問題集を開いた。まだ先とはいえ、もうそろそろ今期末のテストが近づいている。授業にうまくついていけていない僕にとっては、まさしく恐怖のイベントだ。このままだとまず間違いなく、確実に単位を落とす。必修科目だから尚更やばい。

小さく深呼吸をしてから問題集に目を移す。シャーペンを片手に、頑張りますかと、気合を入れた。

そんな折にふと視界に入った二人分のエスプレッソコーヒーは、机の端でいやに肩身が狭そうで、微かな湯気をひっそりと立ち昇らせ続けていた。

生まれ始めた沈黙時間。二人で一緒のテーブルを囲みながら黙々と作業を続ける最中、店内の音楽ジャズっぽくなり、クラッシックっぽくなった。ラウンジミュージックが流れ、ハウスミュージックの印象的なバスドラムが僕の集中力を飛躍的に高めてくれたような気がする。

そしておそらくそれは美樹にしても同じことであって、だからこそ僕はその一声をかけるときに、自分でも思いもみなかったほどに大きな勇気を振り絞らなくてはならなくなっていた。

「……な、なあ、美樹。ちょ、ちょっといいかな」

そうおずおずと尋ねた僕に、順調に進んでいた作業を中断させられた美樹は露骨に不快感を表しながら顔を上げた。微かに何か特徴的な物音が聞こえたような気がする。短く弾ける小さな苛立ち。おそらく舌打ちをされたんじゃないだろうかと考えた。眉間に寄ったしわは一段と深くなっている。僕の中で降り積もる恐怖は次第に厚みを増していく。

「あ、あのさ。ここの問題なんだけどね、さっぱり解き方が分からなくて」

生唾を呑んでから微妙に震える声でそう言って、僕は数学の問題集の左上に書かれた問題を指差した。美樹は僕の手からひったくるようにして問題集を奪うと、しばらくの間その問題をじっくりと見て、それから僕の方に視線を戻した。呆れ返った瞳が僕をひやりとさせる。

亮太、こんなのも分かんないの? 基本中の基本でしょうが。数学の基礎でしょこれ。高校レベルの問題じゃない。……ねえ、馬鹿なの? それともなに、ただ私に話しかけたかっただけなの? 随分と面倒なやり方をするもんだね」

「いや、本気で分からないんだけど……」

言うや美樹が宙を仰いだ。なんてこったい。そう脱力しきった彼女の身体が物語っている。言葉になんかしなくてもひしひしと伝わってきていた。同時に、ずっと懸念していた嫌な予感がはっきりとした輪郭線を捉え始める。

美樹はひとつ大きなため息をついてから、再び僕に視線を戻した。浮かんでいた予想通りの表情を見て、僕は一瞬で気分が滅入ってしまった。

亮太ってさ、一応大学生だよね。それも私とおんなじ大学の。ねえ、そうだよね。私、間違ってないよね。ね。じゃあさ、やったでしょこれと似た問題。やったよねえ。同じ高校だったんだしさ。できないと、ここにいられるわけがないものね。……あんたさ、どれだけ忘れるの早いのよ。大丈夫? 心配になってきたわよ。もしかすると、脳細胞がほとんど死んでんじゃないの? それともニューロン絶対数が足りないのかしら。もしかしたら亮太の神経だけ伝達速度が遅いのかもしれないね。いやー、凄いね。珍しいよ。新人類なんじゃないの?」

言われたい放題だった。随分と僕という存在が小さくなったような気がした。

美樹はそこまで一気にまくし立てると、最後に小さく「考えられない」とぼやいた。そしてまたひとつ大きなため息を吐くと、さも面倒くさそうに僕に解法を教え始めてくれた。段々と店内の照明が赤暗くなり始めたような気がする。正直なところ僕も考えられなかった。

数学の問題がひとつ分からなかっただけなのに、どうしてここまで言われなきゃならないのだろう。確かに簡単な問題だったのかもしれない。高校の時に似たような問題を解いたかもしれない。けれど、だからと言って新人類などと馬鹿にするのは酷過ぎないだろうか。本質的に愚弄している。そりゃ僕は美樹に比べたら恐ろしく頭が悪いかもしれないけれど(確かにどうして同じ大学に入れたのか今でも不思議でならない)、こんなにぼろくそに言われる筋合いはないと思う。

腹の底に暴れる蟲を一匹仕舞い込みながら、それでも僕は低頭身を乗り出して解法を教えてくれる美樹の声をしっかりと聞いていた。美樹はこういう奴なんだから。我慢しなくちゃならない。仕方がないんだ。そう思っていた。思うように言い聞かせていた。

ずんずんと進んでいく説明を聞きながら、僕は公式をひとつ忘れてしまっていたことに気が付いた。なるほど、そのせいで出来なかったのかと、気が付いてなんだか清々しい気分になった。

一方で、そんな僕の発見など気にも留めない美樹の説明は続いていく。かなり早かった。端的に説明しながら、僕が理解出来ているかどうかにも関係なく進んでいく。お陰でいつの間にか進んでいた計算の過程がよく分からなくなってしまった。

「ちょ、ちょっと待って。ここはどうやってこうなるんだ?」

慌てて尋ねた僕を見上げた美樹の瞳に、苛立ちが燃え上がっていた。やばい。僕は更なる罵詈雑言が放たれることを覚悟する。機関銃ガトリング砲がガラガラと音を立てて照準を合わせ始めている。

美樹の唇がわなないた。

(4/5に続く)

2009-11-24

http://anond.hatelabo.jp/20091124202641

私なんてどうせ・・・メイクなんかしたら「プッやっぱりモテたいんでしょ?」って思われちゃいそうで怖い!

って思っていて、それでもお洒落に憧れていて、モテとは無関係そうなファッション誌(CUTiE,ZIPPER,SEDA,mini,soupとか)を読んでそうな子が変な男に引っかかった例をいくつか見てきた。

変な男っていっても、結婚詐欺師とかじゃなくて、単なる処女食いだけど。

非モテの俺からみれば数ヶ月もしないで別れて、別れてすぐ次の子(そしていつも恋愛経験のない、あるいは少なそうな子)と付き合う男を処女食いって思ってるだけで、世間一般にはごく普通なのかもしれないけど、俺は大嫌い。

喰われた女はみんな、きれいになったと思う。

服装も化粧も、みょうちくりんな芸術系から、普通に男好みになったし、皮肉冗談を交えた大人の会話も出来るようになった。

でも、男好きになった。

誰かに認められてないと、欲されていないと、自分の存在を確認できないビッチになった。

非モテだった俺にはよくわかる。

非モテ時代より、恋愛失恋経験した今のほうが、孤独への恐怖は大きい。

年下の、無知の、バカの、世間知らずの女をひっかけるのは簡単だし、楽しいと思う。

適当なところに連れて行って、お茶を飲ませて、料理を食べさせて、酒を飲ませるだけで、すごくお洒落な男と思ってもらえるからだ。

カッコイイ俺を演じる楽しさがある。

で、その処女食いもいつも格好よく別れる。

別れる時くらい思い切り嫌われてやればいいのにって思う。

童貞期に俺をボロボロにしてくれた女のおかげで、今はさらさらと綺麗だねっと言えるようになった。

わざわざ大声で告白したり、雨の中かけつけたり、沈黙や抱擁や逆ギレやを使いこなせるようになった今でも、その女に出会わなければよかったと思ってる。

だから、バカ、無知、世間知らずの女をおだてるようなことはしない。

2009-11-20

わざとらしい咳ばらいと鼻すすり

わざとらしい咳ばらいと鼻すすりは実際にあると思う。

細い道を歩いているとき、自分のすぐ後ろを歩いている人から咳ばらいされた。

どけろという意味でやってるのか。

陰湿だな。

身近な人を見ていると、

沈黙が起こったとき。

通りすがりざまに。

・嘘をついているとき。

・誰かが物を落としても、拾ってあげないとき。

こんなときにしているように感じた。

2009-11-16

距離

世界に主張しなくても良いと思ってた。正しいものはそこにあってそれを守ればいい。いちいち口に出さなくても正しいものはそこにあるのだし、本当に必要な言葉なんてほとんどないのに人はどうして不必要な言葉ばかり使いたがるのかと思っていた。

口を閉ざした理由には、世界には間違ったことを声高に主張する人がたくさんいて、そういう人にいちいち対応したくなかったからというのもある。恥も外聞もなくそういうことをのたまう人たちはそもそもの前提が異なるか、もしくは理屈の通らない人間だと決めつけた。そう「衝突を避ける俺」はそういう人たちの相手をしたくなかった。

そうやって生きてきた。おとなしくて優しい人だと言われた。沈黙は美徳だった。友達もいる。悪くなかった。でもすこぶる良くもなかった。

時が経つにつれて、段々と人との間の溝が見えてきた。その溝は何なのか。わかってる。でも口に出したくない。いや出せない。出すのが怖い。わからない。たぶん出してしまえば楽なのだろう。溝を埋める一歩になるのだろう。でも、できない。いや、たぶんできる。でも今の状態からより良い状態になるという確信がないから出たくない。そうやってずっとずっと逃げてきた。程度の差はあれ他の人もたぶん同じようなことを思うことはあるのだろう、と思う。ただ俺の何倍も勇気があるだけだ。

世界自分が主張することで在る。なぜ気付かなかったのか。それが全てなのに。かっこつけて、そんなものは頭の悪い人間の戯言だとなぜ思ったのか。正しいものがあると思っていたからだ。正しいものなんてあるのか?本当に?

このままでいてもたぶん幸せ。そう悪くない。そういう選択もある。

けど嫌だ。このままは嫌だ。世界にはすごい人がたくさんいる。下ばかり見てうつむいていた俺の隣を素通りして見えないくらい先に行った人。はじめから見えないくらい先にいる人。たくさんいる。彼らに勝ちたい。そう思った。

ここがスタート地点なのだろうか。

徒にスクロールバーを長くさせるだけの迷惑極まりない掌編

ぱがん、と、乾いた音が耳を突いた。まどろみに埋もれていたわたしの意識が、急速に引き上げられていく。気だるげに開いた眼は、薄暗く静寂に沈んだログハウス天井を視界に捉えていた。

ぱがん、と、乾いた音が再び聞こえてくる。のっそりと上体を起こしたわたしは二段ベッドの上から室内を見渡し、まだサークル仲間の誰も彼もが目を閉じたまま微動だにしない様子を確認すると、がりがりと寝癖のついた頭を掻いてしまった。

もう一度眠ろうかと考えた。予定では、今日は引率している野獣の如き子ども達を宥めてオリエンテーリングに向かわせなければならなかった。下手に寝不足のまま参加してしまえば足手まといになってしまうだろうし、やつれて無駄に疲れてしまうことが目に見えて明らかだった。

やっぱり眠ろう。決めて身体を横たえて瞳を閉じる。小さく、仲間達の呼吸が小さく聞こえてきていた。意識はじゅんぐりと眠りの海に沈み始める。布団を引き寄せて、身体を小さく抱え込んだ。温もりが再度まどろみに沈んだ身体にとても心地いい。

ぱがん、と、三度あの音が鼓膜を振動させた。瞬間、わたしの瞼は何者かに支配されたかのように勢いよく見開かれる。まだ浅いところで引き上げられてしまったせいで、とうとう完璧に目が冴えてしまった。こんな朝っぱらからうるさいなあと少し腹が立ったわたしは、仲間達を起こさないよう静かにベッドから降りると、懐中電灯を持ってひとりログハウスの外へと足を向けてみることにした。

「……すごい」

扉を閉めると同時に、立ち込めていた噎せ返るような濃霧に、思わず呟いてしまっていた。少し息が苦しいような気がする。まるで水底に立っているかのようだと思った。山間だというのに立ち並んでいる木々の姿さえも確認できない。濃密な霧の姿に、わたしは途方もなく圧倒されてしまった。

霧はまだ陽も昇っていない早朝の薄闇の中、心なしか青白く色付いているように見えた。纏わりつく気配の中手を動かすと、水流が生まれるかのように顆粒が小さな渦を巻く。懐中電灯がなければとてもじゃないけれど踏み出せそうにはなかった。霧のせいで迷子になってしまう恐れがあったのだ。ともすれば壁だと錯覚してしまいそうなほどの密度を持った濃霧は、その奥底に圧倒的な幽玄を潜ませながら、音もなくキャンプ場を覆い尽くしていた。

そう。本当にあたりには何も物音がしなかった。鳥の鳴き声も、梢の囁きも、虫の音までも、一切が外気を震わせていなかった。空間を満たしているのは、どこまでも深い霧ばかりだ。昨日来たときには煩わしいほどに感じられた生き物の気配は、どれだけ耳を研ぎ澄ませてみても拾い上げることができなかった。

先ほどの言葉でさえも、口にした途端に濃霧に絡め取られてしまったのだ。生き物達の振動も、片っ端から霧に呑まれて分解されているのかもしれないと考えた。

ぱがん。辺りにまたあの音が谺した。随分近くで。あるいはとても遠い場所から。あの音だけは、やけに周囲に響き渡っている。まるで、霧があえて分かりやすくしているかのように。わたしは音がした方向に向けて懐中電灯の心細い光を放つ。

「誰かいるんですか?」

返事の代わりなのか、しばらくしてから再びぱがん、と音がした。導かれるようにして、わたしは濃霧の中に一歩足を踏み出す。一定の間隔で聞こえてくる音だけを頼りに、見通しの悪い、すでにどこにログハウスがあるかも分からなくなってしまった霧の中を進んでいく。

唐突に、光の円の中にひとりの老人が浮かび上がった。

思わず息を呑んで立ち尽くしたわたしの目の前で、どこか古めかしい翁のような雰囲気を纏った老人が手にした斧を大きく振り被る。耳に張り付いてしまったあの音を響かせながら、刃が突き刺さった丸太はぱっくりと左右に割れて落ちた。

「お早いのう」

こちらに振り返ることもしないで黙々と薪を割っていく作業を続けながら、老人が言った。

「音が聞こえましたから」

「ああ、そうじゃったか。……もしかして起こしてしもうたかな?」

言いながら老人は斧を振り被る。ぱがん。薪が割れる。

態度に少し気分を害したわたしは不機嫌を装って返事をした。

「まあね。うるさかったから」

「そうじゃったか。それは申し訳ないことをした」

と、老人はまったく反省したような素振りを見せずに口にする。なんなんだ、この人は。思ったわたしは口を噤むと思い切り睨みつけてやった。友達から、怖いと評判の眼差しだった。止めた方がいいよと。

けれど、老人は意にも介さない。丸太を立てて、斧を振り被って、割れた薪を横に積み上げていく。

漂い始めた沈黙と続く変化のない作業に、先に耐え切れなくなったのはわたしの方だった。

「あなたは、この辺りに住んでいるの?」

「ええ。長いもので、かれこれ三十年近くになりましょうかね」

「こんな朝早くから薪を割りにここまで昇ってくるんだ?」

今日はちょうど薪を切らしてしまっていての。寒いし、こりゃあ大変だということで、急いで準備に取り掛かったんじゃよ」

「でも、この霧だと大変じゃなった? よくここまで来られたわね。住み慣れた経験がものを言ったのかしら」

少し嫌味っぽく言うと、老人の口許に淋しそうな笑みが浮かんだ。その表情に、わたしは思わずどきりとさせられてしまう。老人は一度作業を中断させると、腰を伸ばしてから額に浮かんだ汗を拭った。

「深い、とてつもなく濃い霧じゃからなあ。あなたも驚かれたんじゃありませんか?」

「え、ええ。まあ」

「息が詰まって、溺れてしまいそうだと思った」

発言に、わたしは無言のまま頷く。老人は初めてこちらに目を向けると、とても柔らかく微笑んだ。穏やかな、それでいてどこか影の差し込んだ微笑だと思った。

「私も、初めてこの霧を経験した時にはそう思ったもんじゃからなあ。とんでもない霧だとな。けれども、いい場所だとは思わんかね。神聖な気配が満ち溢れているような気になる」

「神聖?」

突飛なキーワードに思わず声が口をついて出てしまった。

「ええ。ええ。そうじゃとも。この辺りには神聖な気配が満ち満ちておる。とりわけ、こんな濃霧の日にはの」

言って、老人は濃霧の向こう側を、その奥底を眺めるようにそっと目を細めた。

「……辺りを少し歩いてきてみたらどうですかな。きっと、とても気持ちがいいはずじゃよ」

しばしの沈黙の後、再びわたしの方を向いた老人は穏やかに微笑んでそう提案してきた。

「それに、もしかすると今日不思議なことが起きるかもしれない」

不思議なこと?」

繰り返すと、老人はこくりと頷いた。

「ええ。まあ、噂にすぎないんじゃがね」

そう口にして苦笑した老人に、わたしは最早当初抱いた不快感を消し去ってしまっていた。この人は少し仕事に集中していただけで、本当は親切ないい人なのだ。そう思うことで、優しくなれるような気がした。

「あんたなら、あるいは出会えるかもしれん」

口にした老人に、ありがとう、と礼を言うと、わたしは言われたとおり少し辺りを散策してみることにした。依然として先の見えない濃濃密密たる霧には変化がなかったものの、どういうわけか迷子になって帰られなくなる、といった不安は感じなくなっていた。ぱがん、と背後から断続的に薪割りの音が聞こえてきたからなのかもしれない。わたしの足はずんずんと霧の奥へと進んでいった。

どれほど歩いたのか、濃すぎる霧はわたしから時間感覚を奪ってしまったようだった。ぱがん、と聞こえる音の回数も、五十を過ぎたあたりから数えられなくなっていた。

一体、ここはキャンプ場のどの辺りなのだろう。どこをどう進んで、どこまでやってきたのかが分からなかった。劣悪すぎる視界は距離感覚も曖昧にさせてしまっていたのだ。加えてどういうわけか聞こえてくる薪割りの音はいつも同じ大きさだった。遠くもなることも、近くなることもないせいで、同じ場所をぐるぐる回っているような奇妙な感覚に陥ってしまっていた。

先の見えない霧の中、疲労にがっくり項垂れたわたしは、とうとうその場に屈んで、膝に手を置いてしまった。上がった呼吸を整えながら、もうそろそろあの老人の許へ帰ろうかと考えた時だった。

幼い笑い声が耳に届いた。

驚き、わたしは素早く顔を上げる。聞き間違いじゃないかと思ったのだ。引率してきた子ども達がこんな時間に外出しているはずがないし、そもそもその声がこの場所で聞こえるはずがなかった。

わたしは膝に手を突いたまま硬直して、こんなことはありえないと念じ続けていた。目の前にいる何かを幻だと理解しながらも、どこかでそうではないと信じていたかった。

再び笑い声が響く。たった三年だったにも関わらず耳馴染んでしまった、最後に息を吸う特徴のある、誰が笑っているのかを知っている声が谺する。

視界に映った霧の中で、その影は確かに楽しそうに口角を吊り上げていた。

「七恵なの……?」

呟くと、ひらりと身を翻して小さな子どもの姿をした影は霧の奥へと駆け出してしまった。

「待って!」

叫び、わたしは全力で影の背中を追う。疲れた身体の都合など知ったことではなった。実際、膝はすぐに悲鳴を上げ出し、やがて横腹も痛みを訴え始めた。いつの間にか木々の間に入ってしまっていたらしく、足場が安定しないのも苦しかった。

けれども、それでもわたしは身体に鞭を打った。影を追わなければならなかった。ここにいるはずのない、ましてやこの世に存在しているはずのない妹が、いま目の前を走っているのだ。どうして追わないことができよう。彼女に伝えなければならない言葉をわたしはずっと胸のうちに秘め続けていた。

掠れ始めた呼吸音と、立ち込める霧そのものが発しているかのように響く七恵の笑い声を耳にしながら、わたしはあの一日のことを思い出していた。決定的に何かが失われてしまった、手を離すべきではなかった日のことを。

あの日まで、わたしはお姉さんだった。三歳になったばかりの七恵を、監督し守ってあげなければならない責任があったのだ。

なのに。

先を行く七恵の影は、どうやら現状を鬼ごっこか何かと勘違いしているらしい、奇声のような歓声を上げながらするすると木々の間を縫い進んでいく。

「待って……待って、七恵」

もう手放さないから。絶対に、必ず握っておくから。

――だから、もうどこへも行かないで……!

ぎゅっと閉じた瞼の裏側に、あの日の光景フラッシュバックする。病床に臥していた祖母のお見舞いに向かっていたのだった。病室でわたしは暇を持て余していた。近くにいるように母に言われていたのに。七恵を連れて院外へ出てしまった。

近くにあった商店街。立ち止まり見惚れてしまった文房具店。陳列されたいろいろな文房具は、小学生になったばかりだったわたしの目に、キラキラ光っているように見えた。どれもこれも可愛くて、熱中してしまた。

握り締めていたはずの七恵の小さな掌の感触。いつの間にか、なくなってしまった感触。

生々しく思い出せるが故に、後悔は杭となって打ち込まれていく。鈍痛は、いまなお血と共に滴り続けている。槌を振るにやけ顔の罰は、愉快そうにこう告げてくる。

「おいおい、なにを寝ぼけたことを言ってるんだ。それだけじゃないだろう。お前の罪はそれだけに留まらなかったはずだ」

そうだ。そのとおり。文房具から目を上げたわたしは、隣に七恵の姿がなかったことをかなり早い段階で認識していた。その時点でわたしが探していれば、もっと違った現在があったかもしれなかったのだ。

幼かった七恵。まだ三歳になったばかりだった。生意気で、なんでも真似して、両親の愛情まで奪っていって――。わたしは邪魔だったのだ。幼い独占欲は、妹の存在をうっとおしく思い始めていた。

わたしはあの時、本当は喜んでいたのだ。疎ましい七恵がいなくなったと。人通りの多い商店街の中で、これでようやく好きなだけ文房具と向き合えると思ってしまっていた。

失った感触。温かくて柔らかくて、小さかった脆弱な掌。

両親は血相を変えてわたしたちを探しに来た。どうして急にいなくなっちゃったの、と、鬼のように母さんに怒られた。それから、父さんが言った。

「七恵はどうした」

ななえはどうしたななえはどうしたななえはどうした……。

わたしは言葉を何度も頭の中で転がした。意味を理解しようと努めた。そして、同時にかっと全身が暑くなって、唇が動かなくなってしまった。

「ねえ、七恵は。七恵はどこに行ったの?」

怒ったままの鬼の母さんまでもが々ことを口にする。わたしは俯いた。父さんは周りを見渡しながら困ったなと呟いたはずだ。探してくる、と駆け出していったから。

「どうして勝手に抜け出したりしたの」

母さんはヒステリックに叫んでいた。思えば、あの時すでに最悪の事態を予想していたのかもしれない。当時、近くの町で未解決の誘拐事件が発生していたのだ。高圧的に、そして混乱しながら怒鳴り散らす母さんの声を、わたしは俯いたままぐっと唇を噛んで耐え忍んでいた。

罰が愉快そうに口にする。

「そうだ。思い出すんだ。お前の罪がなんなのか。本当に最悪ないことはなんだったのかを」

母に怒られながら、しかしわたしは七恵の手を離してしまったことを後悔していたわけではなかった。むしろ、七恵を恨んでいた。勝手にいなくなって、そのせいでわたしが怒られてしまったのだと、やっぱりいらない奴だと考えてしまっていた。

だから、わたしは泣かなかったのだ。いくら怒られても、いくら詰問されようとも。そして、時が経つにつれて本当に泣くないようになってしまった。

記憶は正確に当時の状況を把握し続けている。行き交う人波の中から戻ってきた父の表情。分からない、との呟やきを耳にした後の母のパニック。宥める父と泣き崩れた母の姿。ようやくわたしにも事態の深刻さが理解できかけてきたのだった。両親が人目も憚らず取り乱す姿なんて後にも先にもこの一件以外に見たことがなかった。

警察への連絡、掴めない足取り、過ぎていくだけの日数、憔悴していく両親。わたしは何も言えなかった。言えなくなってしまった。そもそも言う権利など、端から存在しなかったのだ。

誘拐事件への疑い、寄せられた怪しい人物の目撃情報。七恵は、商店街の出口付近で、若い男に手を引かれていたのだという。

そしてその翌々日。

七恵は、近くの池に浮かんでいた。寒空の下、下着姿でぼんやりと漂っていた。性的暴行を受けた末に、死体の処理に困った犯人に投げ捨てられたのだった。その後、連続誘拐犯の若い男は逮捕され、死刑が決まった。

けれども、もうなにも蘇らなかった。わたしのせいでわたしは、わたしの家族は、そして七恵は、どうしようもなく損なわれてしまった。もう二度と元へは戻れない。失われた存在の代償など、七恵本人以外にありえるわけがなかった。

足がもつれる。転びそうになってしまう。前を向いて、歯を食いしばり、泣き腫らしながらわたしは走り続けている。影に追いつかなければならなかったのだ。あの掌を握り締めることだけが、わたしにとって可能な唯一の贖罪だった。

唐突に影が急に立ち止まる。限界を通り越した身体で追いすがるわたしに振り向くと、にこりと微笑んだ。表情など見えないはずなのに、なぜか笑っていると理解できた。同時に、迎えなければならない別れの予兆も感じ取れた。

「な……なえ……」

息も絶え絶えにそう呼びかける。七恵はどうしてわたしが苦しみを抱いているのか分からないといったような顔をして、首を傾げる。

「ごめん、ごめんね、七恵。わたしが手を離したばっかりに、わたしはあなたを死なせてしまった」

そう、全てわたしのせいなのだ。幼いわたしの自分勝手な考えが、全てを反故にしてしまった。用意されていたはずの七恵の未来も、温かな家族の団欒も、些細な笑い声さえも、残された家族から損なわせてしまった。

崩れ落ちるようにして膝を突き、両手で落ち葉を握り締める。瞑った両目からは、涙が零れ落ちていった。

「ごめんなさい。ごめんなさい」

この言葉しか口に出せないわたしの肩に、そっと手が触れたような気がした。

顔を持ち上げる。霧の中で七恵は満足そうに笑っている。影の腕が動いて、大きく左右に振れた。口が動いたのが見えなくても分かってしまった。

さよならの合図だった。永遠の別れ。奇跡は二度とは起こってくれないだろう。

焦ったわたしは手を宙に伸ばす。待って。行かないで。もうどこにも。この手から離れないで。そうじゃないと帰れなくなってしまう。あなたは二度と帰られなくなってしまう。

膝を立てて懸命に、力の入らない足を遠ざかりつつあった影に踏み出そうとした瞬間だった。霧の向こう側から、鋭い陽光が網膜を貫いた。

そのあまりの輝きに堪らずわたしは目を閉じる。瞬間、周囲を穏やかな風が通り抜けていった。柔らかな、優しさに満ち溢れた風だった。

ゆっくりと瞼を開く。あれほど濃密で深かった霧がすっかりと薄くなり始めていた。見れば、手を突き出した先の地面は、すとんと途切れてしまっている。山の断崖に出ていたわたしは、昇り始めた太陽に照らされた雲海を、裂け分かれていくようにして音もなく消えていく霧の姿をじっと目に焼き付けることとなった。

壮麗な光景言葉を失っていた最中、そよいだ風の合間に幼い声を聞いたような気がした。バイバイおねえちゃん、と聞こえたその声は、紛れもなく妹のそれであり、もう決して届かなくなってしまった彼女のことを思ってわたしは再び涙を流した。

泣き疲れて適当に歩いていたせいで、どこをどう帰ってきたのか分からなくなってしまった。気がついたとき、わたしは再びあの老人を視界に捉えていて、何かに操られるかのようにして近づいていったのだった。

老人は相変わらず薪割り続けていた。

「どうじゃった。なにか、起きたかね」

斧を片手に顔を上げないまま、そう口にする。如実に現実感が蘇ってきて、わたしはついさっき体験した出来事を思い出し、それからそっと笑顔になって口を開いた。

「ええ。とても素敵な出来事でした」

もう二度と合えない相手と、たとえ影だけだったとしても会うことができたのだ。伝えられなかった想いも、伝えることができた。一方的ではあれど、わたしにとっては確かに素敵な体験だったのだ。

「……前を向けそうかね」

老人の問い掛けに、やはりこの人は霧の山で起きていることを正確に把握しているのだなあと理解した。わたしはくしゃりと表情を崩して、どうでしょうと口にする。

「また会いたくなってしまうかもしれません」

言葉に、老人は少し困ったような笑みを浮かべた。ぱがん、と薪が割れる。

「あんたも過去に囚われてしまいますか」

わたしは何も答えない。額を拭って、老人は斧を振り下ろす。ぱがん、と薪が割れる。沈黙が二人の間に染み込んでくる。

「かく言う私も、この山の霧に魅せられてしまったひとりでね」

不意に口にして、薪を割る手を休めた老人は恥ずかしそうに頭を掻いた。

「失った日々を前にしてからというもの、ここから離れられずに、こうして樵のような真似事をしておるわけなんじゃよ」

「ご家族の誰かを?」

自嘲気味に笑った横顔に、失礼とは承知で訊ねたわたしに対して、老人は素直に頷いて答えてくれた。

「妻と娘をね、冬場の火事でいっぺんに亡くしてしまったんじゃ。あの冬はとても寒くての、ストーブは欠かせなかった。今思えば不幸なことに違いないのだろうが、ちょうど私は出張で家を離れていてのう。事のあらましを聞いて駆けつけてみれば、二人は見るも無惨な姿に変わり果ててしまっていた。面影すらなかったんじゃ。熱によって筋肉が収縮したんじゃろうなあ、口だけぽっかり開いていて並んだ歯が見えるんじゃよ。でも、それだけじゃ。身体は顔も全身も真っ黒に焼け爛れてしまっとってな、まさしく消し炭で、私は一瞬妻と娘じゃない、他の誰かが死んだんじゃないかと思ってしまったんじゃよ」

進んで訊いたくせにどうとも反応することができず、わたしは目を伏せて小さく頭を下げた。老人は遠く、消えつつある霧が覆い隠してしまった妻子を見つめるかのようにして目を細めた。

「この山はの、異界と繋がっているんじゃよ。もしくは、壮あって欲しいと心のどこかで願う者に山が望むものを与えてくれる。けれども、だからこそあまり長居をしてはならないんじゃよ。私は運よく山に管理者として認めらはしたが、私以外にここで長居をして無事にいられた者は他にはいないんじゃ。皆、山に呑まれてしまった。霧の奥へと誘われて、とうとう帰ってこなかった」

その淋しそうな物言いに、わたしは抗うようにして微笑を湛えた。

「それでも、またいつかこの場所に来てもいいでしょうか?」

驚きに目を見張って振り返った老人が、わたしの表情に何かを見たようだった。柔和に顔をほころばせるとそっと口を開いた。

「……いつでも来なさい。ここはどんな時でもちゃんとこのままであるはずじゃからのう」

「はい」

確かな返事をして背後に振り向く。木々の間を縫って差し込んできていた朝陽に目を細めた。鳥が羽ばたいて空を横切っていく。甲高い鳴き声が響き渡る。存外近くにあったログハウスの中から、いなくなったわたしを心配したらしい大学サークル仲間達が顔を出し始めていた。

「行かなくっちゃ」

呟きに、老人は力強く頷きを返してくれる。

「またいつか」

「ええ。またいつか」

言うと、老人は割り終えた薪をまとめて背中に担いだ。木々の間に分け入っていく背中を見えなくなるまで眺めてからわたしは踵を返した。

帰るべき日常へ、あるべき仲間の場所へと、わたしは歩を進めた。

2009-11-12

なにかが嫌だ

互いに安心して近しくいられる人がいればいいなと思う。なのに、いざそうなれそうな雰囲気になるとなにかが嫌になって引く。なにが嫌なんだろう。

相手の性格容姿、性別、年齢、その人と関わる手間、出費、時間、関係の名前(友達とか恋人とか、なくてもいい)、性的な関わり、メール電話の頻度、趣味、会話の内容、沈黙、ずっと笑っているわけではないということ、言葉づかい、常識、そういうのが嫌なんじゃない。あるいは気にならない。頼るのも頼られるのも、踏み込むのも踏み込まれるのも構わないし、いやそれはねぇよ、と思うようななにかを相手が持っているわけでもない。

そもそも 何それ引くわー と思うことなんて、仲良くなった人に対してに留まらず殆どない。好きなところは無数にあって、相手も私を多少なりとも好いてくれる。

なのにどうして私は人と近しくなれないんだろう?

心も身体も寒いなんていうのとはかけ離れた掌編

重く圧し掛かってくるようなこの頭痛の原因はなんだろうと麗子は考えた。

ああ、先週訪問販売で安く買ったミネラルウォーターを寝る前に飲みすぎたのが悪かったのかもしれないし、深夜一時から午後十時までぐっすりと寝てしまったのがいけなかったのかもしれない。あるいはいやに肌寒い部屋の温度が血流を滞らせているのかもしれないし、どこかで誰かが麗子のことを思って祈祷をしているからなのかもしれなかった。

とにかく、麗子は頭が痛かった。宵闇に沈んだ寝室のベッドに横たわったまま瞼だけをぱちりと持ち上げて、かれこれ十五分ほど、何をするでもなく天井を睨み続けていた。

手を伸ばして、チェスタースタンドに明かりを灯す。突き抜けた眩しさに、思わず目を瞬かせてしまった。細く視界を狭めながら、無遠慮に光を放ち始めたスタンドに舌打ちをする。それから、自らが選んで灯したのだということを思い出した。

幼い頃から持ちえていた性質だったが、最近、麗子にはこれと似たようなことがよく起きている。つまりは、自身で望んだことであったはずなのに、現れた変化に対してどうしようもない苛立ちや不快感を抱いてしまうのだった。

その性質自体に対して、よくないことだとは思っていない。ある期間、そういったことが頻発することはままるのだろうし、人格の性質としてどうしようもなく取り込んでしまっているものなのだ、無理に矯正することよりも受け入れることを麗子は好んでいた。

ただ、折に触れて面倒だなと思うだけだった。朝食の時にバターを塗ったトーストを齧ってからジャムにしたらよかったと後悔したり、職場で休憩がてら自販機からコーヒーを買ってしまってからお茶に擦ればよかったと思い直したり、折角の休日絶望的に寝過ごしてしまってからやっぱり早起きしていればよかったと残念に思うだけのことだったのだ。

あるいは、付き合っていた恋人と別れてしまってから元に戻りたいと思ってしまったりすることも、あげたいくつからの例と同じことなのかもしれない。

ベッドから降りてキッチンへ向かい、お湯を沸かしてコーヒーの準備をする。灯したダイニングの蛍光灯は、やっぱり無遠慮に麗子の目に突き刺さってきて、不快感を募らせる要因となった。小さく舌打ちをして、乱れた髪の毛を更にぐしゃぐしゃと掻き毟る。湯気が音を立てたので、火を止めてインスタントコーヒーを淹れた。

食器棚にもたれかかりながら暑くなったマグカップを唇に近づける。咽喉が嚥下するのと同時に、不味いなと思った。寝起きにブラックなんぞを口にしてしまったのがよくなかったのかもしれない。砂糖を少し加えるとか、ミルクを足しておけばよかった。ずずずと、再び不味いインスタントコーヒーを飲んで麗子はぼんやりと部屋の中に目を向けた。

沈黙したままの液晶テレビが、まっすぐに顔を向けてきていた。下部に取り付けられたラックには、DVDレコーダーが取り付けられている。それから、それなりに揃った次世代ゲーム機とそのソフト。特等席として設けられたソファに腰かけて、二人並んで映画を見たりゲームをするのが楽しかったなと、失われてしまった日々を思った。

そういえば、陸夫はほとんど何も荷物を持っていかなかったなと考えた。停止しきった沈黙の中に、こつこつと時計の針だけが一定のリズムを刻んでいる。ショルダーバッグに数日分の着替えとお気に入り文庫本を数冊、CDも詰め込んで麗子の部屋からいなくなったあの男は、いまなにをしているのだろうか。

同棲などしているつもりはなかった。結果的にそれが同棲と呼ばれる生活になっていただけで、陸夫にも陸夫の帰る場所が他にもあったのだし、言うなれば遊びみたいなものであって、共にこの部屋の中で過ごしていた日々というのは一種のエンターテイメントでもあったわけなのだ。

それが、数日前に終わっただけ。娯楽が消失しただけなのだ。麗子の部屋に持ち込んでいた大半のものを残したまま、陸夫はあの日から戻ってきていない。

考えてみれば、飼っていた猫を持っていかれてしまっていた。半分ほどコーヒーを飲んだまま固まっていた麗子はその事実にはたと気が付くや、なにかとんでもない失態を犯したような嫌な気分を胸のうちに混みあがらせることになって焦った。

捨て猫だったわりには理知的で、とてもおとなしく物分りのいい猫だった。外出することを極度に嫌ったが臆病ではなく、麗子や陸夫のことをいつも気にかけてくれている猫だった。

まだ、麗子が陸夫と知り合う前に拾い、三年くらいふたりだけで過ごしていた。その頃の日々を思い出そうとして――麗子は観念したかのように頭を振った。

こんなことして、なんになるというのだろう。結果論として、陸夫がいなくなり、猫を連れて行った。それだけでいいではないか。

まだマグカップに残っていたコーヒーを流しに捨てて、麗子は申し訳程度につけられた小さなベランダにへと続く窓の前に立った。黒く染まったガラスに手を添える。冷たさに、ぞくぞくと肌が粟立ちそうになった。

どうしてこうなったんだろう。

考えてみたものの、ついに麗子には答えを見つけ出すことができなかった。

頭痛はいつの間にか消えていた。思えば、あの頭痛にしてみてもなくなってみると些か物悲しいような気分になるものだなと、麗子は思った。

2009-11-10

言葉沈黙に、光は闇に、生は死の中にこそあるものなれ、飛翔せるタカの虚空にこそ輝ける如くに

2009-11-09

反応のない呟きって意味あるのかな

沈黙オーディエンスって同人が見たら誘い受けって言うのかな。

誰も反応しない呟きに意味はあるんだろうか?

誰が見ているのかも分からず、実は誰も見ていないwebページの価値とか。

2009-11-08

与作と愛子

言われてみれば簡単なことなのに、どうやってもその瞬間にはそれに気づかないことがある。

その時も、与作は、他の解決策が思いつかなかった。絶対に愛子を殺さなければいけないと思い込んでいた。

「ごめんな愛子。愛してなかったわけじゃないんだ。ただ、お前がどうしても子供を産みたいなんていうから。オレはお前がそんな女だったなんて思わなかった。オレが悪いんじゃない。わかってくれ」

与作は愛子の首を絞めるために用意した麻紐を、落ち着かないそぶりで何度も何度もひっぱり指に撒きつけたりしながら、愛子の部屋で愛子の帰りを待った。

夜も22時を回ったころ、ガタンッとドアの外で音がした。愛子が帰ってきたと思った与作は、そっとドアの陰に身を潜めた。愛子が部屋に入ってきたら、声を出す隙もあたえず首を絞めて殺すつもりだった。

ところが、いくら待ってもドアは開くそぶりを見せない。気のせいだったのだろうか。与作は再び部屋の中に戻って愛子の帰りを待つことにした。

長い長い時間が過ぎた。時計の音だけがカチコチと、いつにも増して大きく響く。与作の緊張はピークに達した。愛子は帰ってこない。もう限界だ。なんで愛子は帰ってこないんだ!

その時、急にドアノブが回された。与作はとっさに麻紐を隠した。愛子か? ドアはゆっくりと開かれていく。

ドアを開けたのはやはり愛子だった。だが様子が変だった。愛子は酒に酔っているようだった。髪は乱れ、服は汚れ、立っていることもままならない。こんな愛子を見たのは初めてだった。

「与作さんが部屋にいるのはわかっていたわ」

「そうか」

「与作さんが何の用で訪ねてきたかもわかっているわ」

「…」

長い沈黙が二人の間を通り過ぎる。

想定外の状況になって、かえって与作の頭は冴えていた。愛子を殺して何になる。殺した後はどうするつもりだったんだ。そんな必要はないじゃないか。オレは愛子を愛していた。今だってそうなんだ。これからの二人の生活を想像した。幸せな家庭、可愛い子供…。与作は、今まで自分の内臓を締め付けていたものがふいに解かれたような開放感を感じた。

子供は二人で育てよう。オレが悪かった」

愛子の目が驚いたように見開かれた。次の瞬間に与作は愛子笑顔を期待した。しかし、愛子の表情は変わらなかった。

「酷い…」

結局、与作は予定通り、愛子の首を絞めることになった。自分子供を殺したこの女が憎かった。

2009-11-06

夕方6時半過ぎに出かけて10時過ぎにご帰還

下層の友との飯はまずかったそうだ(笑

昼間もめずらしく出かけていたようで、朝の5時から夕方6時半まで華麗なる沈黙

いやはやめずらしい

2009-11-02

童貞をからかわれたら

知人から童貞ネタにからかわれたら、

童貞云々より、自分の言動あるいはルックスもしくはその両方が

周囲からかなりキモく見えていることを自覚すべきだ。

逆に言えば、キモくない人なら童貞というだけでからかわれたりはしない。

つまり童貞人権はあっても、キモい人間人権は無いのが今の日本だ。


で、キモがられるのが嫌だったら、キモくない人になればいい。

具体的には、Amazon書評とかを基に、

評判がいいファッションコミュニケーション関係のマニュアル本を買って

ノウハウを盗み、実践する。まずはここから始める。

ゲームで言えば定石を体得するようなもんだ。

もちろん定石だけ覚えたって強くなれないのと同様の意味で、

マニュアルは鵜呑みにすべきではない。そこだけは注意しよう。

実際にやってみて成功と失敗を重ね、時に強者や専門家アドバイスも聞く。

ここらへんはまさしく「ゲーム感覚」でやればいい。

そうやって経験を積んでいけば、自然と評価は好転すると思う。


それからネットで見かける童貞叩きだが、あれはモノを知らないか、

あるいは知っていても知らないフリをしている奴が

憂さ晴らしにやっていると思えばいい。

何より童貞は思い切り叩きやすいのだ。

なぜなら、童貞であることは100%本人の怠慢の結果である

という風潮がまかり通っているから。

実際は、その人の生きている文化の質とか、

その文化の構成員の大小とか男女比とか、

本人の問題だけでは中々どうにもならない要素がかなり大きくて、

これを自己責任・自助努力に全て帰してしまうのは、

雇用問題を自己責任・自助努力だけで片付けるくらい無理がある。

でも現実には


普通に生きていれば彼女くらい自然と見つかるだろ」


という心無い言葉に、ほとんどの人は沈黙してしまう。

これが


普通に生きていれば仕事くらい自然と見つかるだろ」


と言えば、言ったほうがdisられ放題なのにね。

ふしぎ!

2009-10-30

http://anond.hatelabo.jp/20091030025541

元増田の言ってる『「応募すれば賞程度すぐとれる」という意識勘違い君』ってお前のこと?

多くのラノベ読者やラノベ支持者は、重文・複文の段階で、もう理解のキャパ超えてるんだよ。

ラノベとは、そんな人たちのための「ライト」な「ノベル」なんだ。

アニメマンガラノベしか知らない人間国語テストトラウマになっている人間、そんな人たちが相手。

そう思って書かなきゃウケない。違うか?

応募作の文章力が酷いと嘆くのなら、文章力に優れた文学的な作品を、ネタものを完全に沈黙させるぐらいに売ってみせろ。アニメ化させてヒットさせてみろ。

そうしたら、そいつを超える作品を死力を尽くして書いてやる。

で、お前はその売れるものを書けてんの?

できるのなら賞とれるだろうに、口ばっかしで取れもしない人間が喚き散らしたところで遠吠えだわな。

プロになってから吠えるこった。

俺らラノベの賞に応募する側の本音

http://anond.hatelabo.jp/20091027181046

本屋に並ぶような物とタメを張る、だって?

あれとタメ張るのが目標なんて言うんじゃ、まぁ、底が知れてるな。

今に限らず、ラノベは所詮、ラノベ

多くの読者……オタクにとって、エロマンガと同等程度の地位のものでしかない。

書いてる方だって、本当は、下らないと思ってるよ。

それでも俺たちクリエイター系列人間にとって、読者はお金を恵んでくれる有り難いお客様だからな。

ウケているものを分析して、ライトノベルサイトをチェックして、その結果出て来たのが

「読み易いというよりは子供でも読める文章」

オタク的な一発ネタ

「中高年のオタクから見た自己啓発自己肯定」

「中流で育った中高年が望む『中高生』の姿」

ラノベ文章力なんかがウリになっている訳ないだろ。

ラノベサイトの奴ら、中学生教科書に載ってるような小説程度で悲鳴あげてるぜ?

多くのラノベ読者やラノベ支持者は、重文・複文の段階で、もう理解のキャパ超えてるんだよ。

ラノベとは、そんな人たちのための「ライト」な「ノベル」なんだ。

アニメマンガラノベしか知らない人間国語テストトラウマになっている人間、そんな人たちが相手。

そう思って書かなきゃウケない。違うか?

こっちもなるべく損な事はしたくねぇんだ。

応募作の文章力が酷いと嘆くのなら、文章力に優れた文学的な作品を、ネタものを完全に沈黙させるぐらいに売ってみせろ。アニメ化させてヒットさせてみろ。

そうしたら、そいつを超える作品を死力を尽くして書いてやる。

一発ネタで金になるんなら、それでいいじゃないか。

俺の妹が云々」とか言うのだって、話題になったろ? ウケたろ? 金になったろ?

それでいいんだよ。読者も出版社作家も、みんなが幸せだ。

金がなきゃ暮らしていけないんだから、ウケるためにはなんでもする。

生活苦しいんだよ、俺ら末端の「クリエイター」は。

未来希望が持てないだけじゃなく、真面目に明日食うにも困ってるんだ。

だから、俺らみたいな末端が、この最悪な状況をなんとかしたくてラノベの賞に応募し始める。

一般小説でいいだろう? って?

一般小説よりは門は広く、手堅く金になる可能性が高いんだ。そう言う風に見える。

ワナビとか、承認欲求とか本当は嘘だ。大嘘だ。

blogでいかにもワナビ的な事を書くのは、そう書いた方が読者受けがいいからさ。でなきゃ、誰があんなしちめんどくさい事するか。

呑み会だって、みんなで励まし合ってるような言葉良く言ったり聞いたりするけど、それがそこでの空気だからさ。

誰一人、本気で「俺すげぇ」なんて思ってなんかいない。みんな自信ないんだ。どうやったらウケるか、その事について自信がないんだ。

それを認めたらうずくまってるしか出来ないし、隙を見て誰かに取って食われそうだから虚勢を張ってるのさ。

あと呑み会の場合なんかでは、上下関係上のある席の場合も多いから、「俺は夢を追っているワナビだから安い賃金で働く馬鹿ですよ」とアピールするため、って事もあるかな。

自分を利口に見せようとすれば、他人の反感を買う。上の立場の人間であれば、尚の事だ。金を出す人に取って、手下は従順な僕であって欲しいものだからな。

一般的な会社でどうだかは知らないが、いわゆる「クリエイター」関係ってのは、そういう世界だ。

こっちは下手の一手しかないんだわな。ま、一般の会社に入らずに、こんなチンケな仕事続けてる俺たちは、実際、馬鹿には違いないが。

別に好きで下手に書こうとしている訳じゃない。

好きで「オタク的な一発ネタ」なんか盛り込もうとしている訳じゃない。

そんな事は本当は、どうでもいいんだ。そんなものが楽しいのかどうか自分じゃ分からねぇよ。

読者がそれを望んでいるのはラノベサイトを見れば明らかで、そういう物が売れるから仕方なしに盛り込んでいるんだ。

生徒会のなんたら」、今、アニメでやってるだろ?

そういうものなんだよ。

もっともツカミという意味では、一発ネタアイデアは必須の要素だ。

そうでなきゃ、全ての小説が登場人物の名前を変えただけのテンプレ芝居になっちまう

ところが、ラノベは、この「一発ネタアイデア勝負」が、全くアイデア勝負になってないと来ている。

とは言え、ラノベの読者が求めているのは、テンプレ芝居と萌え要素なんだから、書く方はそれに従うしかないのさ。

ここに文章力の論議の入る余地はない。

ジャンプのバトルマンガみたいなもんだ。

ジャンプマンガ嫌いな身としては辛いものがあるが、金の為には割り切らなくちゃね。

お客様は、神様です。

2009-10-29

その踏み切りは山の入り口にあって、その線路を越えると生い茂る木々の間を進む坂道に道は繋がっていた。辺りに家や建物は見当たらなく、人気のない細い道を進んだ末に、山と裾野をとを分断するようにして無機質に佇んでいた。

一体何の理由があってここまで来なくてはならなかったのか、廃線と紛う線路を目にした瞬間に忘れてしまったのだけれど、私はその踏切の真ん中に一頭の羊を見つけていた。

羊は、例えば山羊とか鹿みたいにほっそりしていたり、大きく悪魔的に曲がった角を持っていたわけではなく、もこもことした乳白色の毛並みや、じっと私の顔を凝視しつつも咀嚼することを止めない泰然たる様にしてみてもまさしく羊そのものであって、いやいや待てよ、どうして東北の人気もなければ人家もなく、ましてや畜舎があるわけでもない山間に羊なんぞがいるのだ、という疑問すら吹き飛ばしてしまうほどに、間違いなく羊そのものであった。

私はしばらくの間羊と睨み合っていたのだと思う。最中、辺りには誰こなかったし、風ひとつ吹きはしなかった。ただもぐもぐと続く咀嚼と、固まったままの私の眼球とが対峙しているだけだった。

やがて、つうっと羊が前を向いた。そして、そのまま線路を歩き出す。足取りは思いのほかしっかりしていて、とてもこの地に馴染んでいるように見えた。そんなことはありえないと思うのだけれど、どうやら羊はこの辺りに長らく住んでいるようだった。

私は麓の高校に通っているけれど、三階の窓からいつでも見ることのできるこの山間に羊が住み着いているだなんて話は一度も聞いたことがなかった。おそらく、噂にすらなっていないのだろう。羊は誰にも知られることなく、それでいて確かにこの地に根を下ろしているようだった。

呆然と歩き始めた羊を見つめていた私を、ふいに立ち止まったもこもことした乳白色の塊は振り返る。じいっと見つめられる眼差しには何かしらの意図が含まれているような気がしたけれども、生憎私は気が狂うほどに動物が好きと言う訳でも、羊の言葉が分かる隠し能力を持っているわけでもなかったので、一体全体羊がなにを思って、どうして私に伝えようとしているのかが分からなかった。

けれども、何となくだけれど、ついていけばいいような気はした。きゅぴんと電撃が迸るようにして脳内言葉が、煌々とネオンを灯し始めたのだ。

羊は、私をどこかに導こうとしている。

予兆めいた直感は、けれど一度頭の中で腰を吸えると、俄然とそれらしい輝きを放つようになり、他の候補、例えば羊がさっさと私に消えて欲しいと思っているとか、私にでんぐり返しをして欲しいと思っているなどということをことごとく眩ましてしまった。

ごくりと生唾を飲み込んでから、私は一歩その場から踏み出してみる。踏み切りの真ん中で進路を羊の方へと定めて、ショルダーバッグの帯をぎゅっと握り締めた。

様子をじっくりと観察していた羊は、私が背後に立ち止まったことを確認すると再び歩き出した。ざくざくと、石を刻む音が再開する。一度大きく息を吸い込んでから前を向いた私は、意を決して足音を重ねることにした。

羊はもそもそと、遅くもなく早くもない歩調でずんずん線路を進んでいった。まるで、私の歩調に合わせているみたいだった。どれだけ歩いても羊との距離は縮まらず、また決定的に離れることもなかった。

沈黙以上に冷たく張り詰めた静寂が線路の上を覆っていた。そこで許されている音は足音だけで、ぎりぎり呼吸をする音が認められているぐらいだった。呼び起こされたへんてこな緊張感に、私はいつの間にか歩くという行為だけに没頭せざるを余儀なくされていた。

ざくざくと石を刻みながら、私は段々とどうしてこの線路の前にやって来たのかを思い出し始めていた。

帰り道。友達を分かれた後歩いていた住宅路の角に、するりと移動した後姿を見たような気がしたせいだった。消え去る影が、一週間前忽然と姿を消した家猫の背中に非常に似通っていたのだ。名前を呼びながら、いつの間にか私はその後姿を追い始めていた。

角を折れるたびに、小さな後姿はもうひとつ先の角を曲がっていた。右に左に。途中から肩で息をして、私は懸命に後を追っていた。待って、まださよならも言えてないのに、急にいなくなるなんて酷いよ、といろいろなことを考えながら。

そして、あの線路のぶつかったのだった。そこに、目の前の羊がいた。

ふと辺りを見渡す。知らない間に景色が一変していた。左手に見えていたはずの町並みは消え去り、左手にあったはずの藪もなくなっていた。

私はどこまでも続く杉林の中を歩いていた。しっとりと霧が立ち込めていて、先を行く羊の姿はおぼろげに曖昧になっていた。

更にもう少し歩いていると、やがて見知らぬ無人駅に辿り着いた。立ち止まり、呆然と見上げる私の背後から、プオープオーと汽笛の音がし始める。慌てて線路から無人駅へとよじ登った私は、滑り込んできたSLを前にして口に出すべき言葉が見つからなかった。

車窓から、様々な動物達の姿が見えた。例えばそれはイヌであり、ニワトリであり、リスであって、ワニでもあった。あるいはゾウであり、キリンであり、ライオンであり、クジラでもあった。サルも、キンギョも、ヘビもいたのかもしれない。ありとあらゆる動物が乗り込んだSLは、けれどもその形状を変容させることなく、全ての動物を受け入れていた。

というのも、動物達は一様にして似たような大きさにまとまっていたのだった。人間で言うところの大人ぐらいの大きさ。また、ある動物眼鏡をかけて新聞を読んでいて、ある動物煙草をふかしていて、ある動物ウォークマンを聞いていた。人が動物になっただけで、車内の様子は一般的な汽車のそれと寸分の変わりがないように見えた。

「えー、米田ー、米田ー。停まりました駅は、米田でございます。まもなく出発いたしますのでー、お乗りのお客様は乗り遅れないようお願いいたします」

らしい抑揚をつけたアナウンスが構内に谺する。見れば、青い制服を着込み頭には帽子を被った羊が、拡声器を使って無人駅を歩いていた。

様子から、羊が駅長なのらしいことが分かった。代わる代わるやってくる乗客から切符を受け取り、ひとつひとつ丁寧に切ってはSLに乗せていく姿は、なるほど、結構様になっているように見えた。

いまだ呆然と、なにをどうしたらいいのかすら分からないまま、私は一連の出来事を見守り続けていた。これは、一体なんなのだろう。純粋な混乱の最中にあった私は、その瞬間に一気に神経を一点に集中させた。

SLに乗り込む乗客の中に、いなくなった家猫の姿を確認してしまったのだ。

「ミーコ!」

思わず叫んでいた。駅長の羊から切符を返してもらったミーコは、そっと困ったような表情で私のことを見返してきた。

眼差しは、多分の物事を語ってきていて。

そっと視線が外れ、静かにSLに乗り込んだミーコの姿に、私はもうかける言葉を見失ってしまっていた。

汽笛が高らかに蒸気を吹き上げる。

「えー、間もなく、間もなく、新町行き米田発の汽車が発車いたします。危険ですので、白線の内にてお見送りください」

アナウンスが終了すると、SLはごとん、ごとんと動き始めた。私は駆け出して、窓からミーコの姿を探し始めた。けれど、座席一杯にひしめきあった動物の中からミーコの姿を探すことは容易なことではなかった。まだ速度の出ていないうちに、ひとつでの多くの窓から探そうと、私の足は駆けていく。

けれども、やがてSLはスピードを増して、徐々に私が遅れていってしまう。

「ミーコ。ミーコ!」

呼び声だけが、虚しく響くばかりだった。SLは駅を走り去っていく。後姿を、私は込み上げる悲しみと共にいつまでも見続けていた。

その後、どうやってあの米田駅から帰ってきたのかは分からないのだけれど、私はいつの間にか線路を戻ってきていて、再びあの踏み切りの場所にまで辿り着いていた。

夜は更けていて、辺りは真っ暗だった。風は冷たくて、全身が氷付けになったみたいに寒かった。早くお風呂に入りたい。それからミーコの写真を抱いて、ぐっすりと眠りたかった。泥のように、あるいは死人のように。睡眠は死界に一番近づける状態なのだ、夢の中でならミーコに会えるのだと信じていたかった。

踏み切りから細い道へと進路を変える。町へと降りていく道をしばらく歩いてから、そうっと背後を振り返ってみた。

りんりんと鈴虫が鳴く闇夜に、月光だけが照らし出す踏み切りは少しだけ幻想的に映っていた。

再び踏み切りから視線を前に向けた瞬間、私は確かに踏み切りの中央に羊の姿を見ていた。

プオープオーと響いた汽笛は、微かに夜風を震わせていた。

2009-10-25

出会い喫茶に行ってきた。

当方スペック。玄人童貞年収そこそこ。30代前半。

あまりにも出会いに飢えていたので2chから出会い喫茶を知って行ってみることにした。

出会い喫茶について知らない方はWikiを見てくれ

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E4%BC%9A%E3%81%84%E5%96%AB%E8%8C%B6

受付に現れたのは30代後半ぐらいのチョイポチャのミニスカおばさん。

知り合いに風俗関係の仕事をやっている奴が、関係者は男とは限らないっていってたのはなるほどこういうことかと思った。

身分証明書がいるということだったので、名刺を出すのは嫌だったのでどうしようと思ってたが免許証でOKとのこと。

ザルな身分証明だ。

周りの人をみたのだが、今までのコンパとはちがい、いわゆるゴルフ場にいそうなおっさんばっかり。

これはカツル!と正直思った。

でもこちとらピュア紳士なのでまずは話して意気投合したら食事ぐらいのことを考えていた。

女性からアプローチしてくる方式の出会い喫茶らしく、簡単な自己紹介メモを書いて部屋で待機。

待機はまじで困った。TVDVDがあって、DVD適当に見てもらってOKですとかいわれるんだけど、アダルトビデオとか見てどうしろと。

ピュア紳士の俺としては、NHKをチョイス


10分ぐらい特に何もなく、近隣の部屋から聞こえてくる話声に緊張していた。

15分後、1人目の女性が入ってくる。

ギャル。乳なし。ミニスカ。顔まあまあ。

今日4万」とかいきなり言われてもおかしくない感じ。

いきなり「何言ってんのばかぁん」みたいなボディタッチしてきた。

話のペースもまぁまぁ。

いきなり交渉とかいう流れか?と思ったが、30分後「じゃあいくね。」とブツっと終了。


また10分ぐらいの沈黙時間が流れる。

コンコンと入ってきた次の女(こ)、ギャルカワイイ、乳あり、ミニスカ、話上手。

ボディタッチはなしだが、こっちが初めてだと伝えるといろいろシステムを教えてくれた。

50分ぐらいずっと話しこんだ後、「きっといい女(こ)見つかると思うよ」と言って退室。


また10分ぐらいの時間が流れる。

この時点で帰ってもよかったのだが、流れ的にまたかわいい子来るかも?と期待してしまった。


3人目。地味。でかい。ミニスカ。顔はいまいち

話がはずまない。早く帰ってほしかったが、沈黙をはさみつつ30分経過。

2時間コースを選択していたので、延長決定。


4人目。地味でもなくギャルでもない感じ。ミニスカ

普通に話して、いい加減疲れてきたので、食事にさそってみるが今日は用があるからダメとのこと。

よくよく聞いたら、たまに出会い喫茶に来るが一度もどっか出かけたことないとのこと、何しに来たんだこいつ?

ここで終了。


2人目の女の子曰く、「まじめに出会いを求めている人や、遊び友達を求めている人が大半で、ウリはほとんどいない」

さて、俺はまた行くべきだろうか。ちなみに今まで、ミニスカを着るような女とデートしたことない。

ちなみに料金は2万強ぐらいだった。

友達ほしいな。

2009-10-22

http://anond.hatelabo.jp/20091020194439

はてな村有村教祖だから

それともみんなこいつのお仲間なのか

みんな信者という方が正しい。

普段は児童ポルノを叩いてる自称正義連中が有村児童ポルノマニアな事をブログに書いたとき沈黙したのにワラタ。

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