2021-05-18

中国韓国との競争に敗れ衰退が続く日本造船業について

かつては世界最大の船舶建造国であった日本だが、今では中国韓国に追い抜かれ衰退の一歩を辿っている。

少し前まで造船所で設計業務を行っていた中の人として立場から日本造船業界の現状と苦境の原因について説明したい。

赤字続きの造船事業から完全撤退する企業が相次ぐ

造船大手サノヤスHD新造事業新来島どっく譲渡不動産賃貸業に特化、三井造船も造船事業常石造船譲渡することを決定済み。

その他中小造船所についても新造事業から撤退表明が相次いでおり、業種転換や修繕事業への特化に取り組む先が増えている。

余談ではあるがサノヤスHDから新来島どっくへの事業譲渡価格はたったの100万円。人員設備、40億円超の銀行借入を引き受けてもらうとはいえ実質は無償譲渡

この譲渡価格を見れば、今の日本国内の造船事業にはその程度の価値しかないということが分かって頂けると思う。

手持ち工事量が1年を切ると危険水域

造船所は一般的に最低でも2年分の手持ち工事を確保する必要があると言われている。

(契約から船舶の引渡しまで2~3年なので、手持ち工事量が2年を切ると設計リードタイムが確保出来ない)

ところが現時点で手持ち工事量が1年を切ってしまっている造船所が国内には多数存在している。仮に今すぐ市況が回復して受注出来たとしても設計作業が追いつかない状態

まあそんな状況でも「弊社なら年内竣工可能です!」と安請け合いして現場を大混乱に陥れる営業担当がどこの造船所にもいるはず、多分。

新規受注が取れないのは何故? キーワードは「環境規制」「船腹余剰」

新型コロナの影響も当初は確かにあった。昨年春頃は世界的に物流が停滞するとの見方から用船料が暴落し、ハンディマックスサイズ(DWT60,000トン)のバルクキャリア(ばら積み船)で7,000ドル/day程度まで落ち込み完全に採算割れとなっていた。

しかし今足元では同船型の用船料は25,000ドル/dayとリーマンショック前の水準まで急回復している。

普通ならここまで用船料が上昇すれば新造船を発注する動きが出てくるはず。ではなぜ誰も発注に走らないのだろう。

船舶世界中を航海するので世界共通環境規制が定められている。NOx(窒素酸化物)排出についても段階的に規制が強化されており、2016年以降に建造される船には三次規制(従来の排出から80%削減)が適用される。

各造船所は規制強化間際に駆け込みで契約を進めた(2015年末までに契約した船は少し緩めの二次規制仕様での建造が可能)ので、2016年以降も二次規制対応船の建造を続けられた。

だが昨年くらいで二次規制契約船の手持ちが尽きてしまった。ちなみに三次規制対応の船は二次規制比較して建造コスト10%ほど上がる。

このコスト増加分を誰が負担するかが明確になっていないため、誰も発注に踏み切れないのである

(本質的にはこのコストは当然荷主が負担(用船料へ上乗せ)すべきなのだが、船主・オペレーター要請しても荷主の方が圧倒的に立場が強いため有耶無耶にされてきた)

また、リーマンショック前に用船料が急騰し、それを受けて2009~2012年頃に大量の新造船が建造された。その後船舶需要が低下したのちも造船所が設備稼働維持を目的としてストックボート(発注が無いまま船舶を建造し、造船所が自社グループ内で船主として船を保有する)の建造を行ったため、供給過剰な状態が続いた。

ストックボートは市況が回復したときには中古船として売却されるわけだが、単なる需要の先食いでしかない。結果として新規受注が伸び悩むこととなっている。

造船所が人手不足なのは3K職場から

私自身は上記に挙げたような大手造船所ではなく、年間で数隻程度しか建造していない中小造船所で設計部員として働いていた。

現場は1年を通して屋外で作業をするので3Kかと言われれば間違いなく3K

納期厳守で納期を守るためなら深夜残業や土日出勤も当たり前という反面、色々な面でゆるい職場でもあった。

船舶が完成したあとは引渡し前に必ず海上での試運転を行う。各担当船舶に乗り込み丸一日かけて運航データを取るのだが、気象条件によってはこれが一日では終わらない。

契約書上では「船速は○ノット以上とする。下回った場合0.1ノット毎に○百万円のペナルティが発生する」となっているので、試運転では必ず契約速度をクリアする必要がある。

風もなく海面もクリアなら特段問題ないのだが、季節によっては荒天続きでまともな運航データが取れないときもある。その場合、延々と条件の良い海面を探し続けることになる。

一日で試運転を終える予定でピクニック気分で酒と食料を積み込んで宴会を開いたものの、翌日も翌々日も天候に恵まれ二日酔い状態で航海を続けたこともあった。

またあるとき台風の接近により、建造中の船舶を岸壁につけたままでは損傷する可能性があるからタグボートで沖合いまで曳いて行ったこともあった。

万が一に備えて船中泊をする人員を残して私たちは岸壁へと戻ったのだが、事件はそこで起きた。

係船用の岸壁まであと少しというところで急にエンストを起こしタグボートが止まってしまったのだ。なんとか手動でエンジン再起動するも全く動く気配がない。

9月になっていたとはいえまだうだるような暑さの中で、私たちは仕方なく全員でボート内にあったパイプやら板やらをパドル代わりにして必死に漕ぎ続けた。

なんとか岸壁に到着したときには皆が皆疲労困憊、脱水症状寸前となっていた。

地面に倒れ込みスポーツドリンクを飲みながら、「こんなことな最初から手漕ぎの方が楽だったな」と冗談を言って笑いあったこともあった。

日本の造船所が中国韓国の後塵を拝した理由 「設計システムガラパゴス化」「部品の規格共通化」

話が横道へ逸れてしまっていたので、本題に戻ろう。韓国中国の造船所に対し日本の造船所は価格競争力において圧倒的に劣勢である

ハンディマックスサイズバルクキャリアを建造するとして、日本中国ではUSD2mil~3milの価格差が発生するといわれている。

従来からこの価格差は「中国韓国政府国策として造船を支援しているから」「中国は安い人件費を背景に人海戦術で建造しているから」と説明されていた。

また、価格面では日本は劣るが、品質においては日本が優位だとも言われてきた。

私に言わせればこれはどちらも正しくない。昔はそうだったのかもしれないが、今では中国建造船のクオリティ日本建造と大差ないくらいにまで向上している。

一方で日本の造船所は熟練工の退職による人手不足外国人実習生で埋めている惨状なので、過去との比較では技術レベルは数段落ちている。

日本中国人件費比較においても以前ほどの差はない。ではなぜ日本の造船所の建造コストは高止まりしているのだろう。

私は「設計システム共通化」「部品規格の共通化」という2つの点で中国に大きく差をつけられているのだと考えている。

日本の造船所は大手から中堅どころまで各造船所がそれぞれに設計部隊を抱えている。造船業仕事量の山谷が激しいので、自前で設計を抱えると設計コストが高くつく。

更に日本場合設計システムについても三菱製、IHI製、日立製などなど各社が自前のソフトでの作業を行っているので、使い勝手は良いがコストは非常に高い。

日本製の設計ソフトを使うのは日本企業だけ、しかもそんな狭い市場に3社も4社も自前ソフトを投入しているので維持管理や改良にかかるコストが高くなってしまう。

翻って中国韓国世界トップシェア英国AVEVA社のソフト使用しているところが大半なので、システムの維持更新にかかるコスト日本と比べれば格段に安い。

日本自前主義ガラパゴス化を招き、結果としてそれが衰退の原因となってしまっているのである

部品規格の共通化」についても同じことが言える。自動車メーカーコスト削減のため、異なる車種間の部品共通化を進めコスト削減を図った。

中国の造船所は建造と設計が分離されており、各造船所は決まった設計会社から図面を購入してくるので造船所間の部品規格の共通化が図られている。

日本場合、同じところに使う部品でも造船所毎に微妙カスタマイズされているので、部品メーカーは多品種ロット製造余儀なくされ、それがコスト増に繋がっている。

規格共通化を図るため、国内首位今治造船と第2位のJMUが共同の設計会社日本シップヤード」を設立したが、今からではすでに手遅れではないかという気さえする。

トヨタ代表される日本自動車メーカーは地道なカイゼン活動コスト削減を少しづつ少しづつ積み上げて今の体制を作り上げた。

それに対し日本の造船所は「船価は為替や用船料市況次第で数億円単位で動くので多少のコスト削減は無意味」などと言い訳しながら丼勘定を続けてきた。

アメリカ自動車メーカートヨタ駆逐されてしまったのと同様に、経営改善を怠ってきた日本の造船所は淘汰されてしかるべきなのだろう。

終わりに

他業種と違って造船業界は新型コロナ対策の無利息融資を受けることが出来なかった。コロナ特別融資は「売上高が前年同期比で減少していること」が要件となっている。

造船業界は2年程度の手持ち工事量を確保しているため、コロナの影響はすぐには出ない。各社の売上が減少するのはコロナ前に確保していた手持ち工事が枯渇する2022年以降であるが、その頃にはコロナ特別融資制度は終了してしまっている。

かくいう私の勤務先も手持ち工事量が大幅に減少し、仕事のなくなった一部職種の人たちは近隣の自動車メーカー半導体工場などに期間限定で出向することとなった。

新規受注が無いので設計人員も約半数がリストラされることとなり、私を含め大勢設計部員建築系などの設計会社転職することとなった。

退職が間近に迫った日の夜、私は仲のよかった同僚たちと居酒屋最後送別会を行った。「昔みたいに一気に船の市況が回復して、またみんなで船を造れたらいいね」と言いながら

でも絶対にそんなことは起きないと頭では分かっていながら、4人で楽しかった頃の思い出を語り合った。

閉店時間まで飲み会は続き、終電を逃してしまった私は一緒にタクシーで帰ろうという同僚たちの誘いを断り、一人で駅前ビジネスホテルに泊まることにした。

妻には今日帰宅が遅くなるとあらかじめ伝えてある、折角なので今日は久しぶりに遊んで帰ろうと決めた私はすぐにスマホ検索をはじめた。

相応の料金を払うと一定時間女性派遣してくれて更に手厚いサービスが受けられるというお店に電話をかけると、私は部屋で一人女性の到着を待った。

やってきたのは、見た目はまあ普通なのだが愛想もなく非常に態度の悪い女性であった。営業トークも無くほぼ無言で体を洗われた私は「やることを済ませてすぐに寝よう」と決めた。

女性の側も同じ考えであったようで、適当前戯を済ませたあとで「いれてもいいですよ」とぶっきらぼうに言うと身体を投げ出して仰向けになった。

それならばと私も上にまたがり身体を動かしたのだが、態度の悪さに加えアルコールを過度に摂取していたこともあり、一向に気持ちよくならない。

好きな女優の顔を思い浮かべつつ全力で腰を振り続けること数十分、なんとか制限時間ぎりぎりで放出することに成功した。

ぜいぜいと肩で息をする私を尻目に彼女はさっさとシャワーを浴びるとすぐに着替えを済ませ去っていった。

ベッドに寝転がり額の汗を手で拭いながら私は遠い昔の夏の日のことを思い出していた。「こんなことな最初から手こきの方が楽だったな」

  • どこの技術職もそうだけど、いつからか経営都合で後継の技術者を育てられる環境がどんどんなくなっていくのほんとつらい

  • 先進国が途上国に価格競争で敗れるって、言い換えると「途上国の安い賃金労働者をこき使う」わけだよね。 それって日本人としてはとても優越感を味わえる出来事なのではないか。 3...

    • なおその高度技術の下地になる研究力をないがしろにしてる模様

  • こいついい加減にしてくんねえかな

  • くっそ。今回は最後まで気づかんかった。

  • 日本は全業種ヤバいよ。10年後リストラされた中年以降の人間で日本は溢れている。 日本より未来が暗い国を俺は知らない。

    • といいながら、日本にしがみついてる人って何者? 難民申請でもして海外行けば?

      • 別にしがみついてないけど?

        • じゃあ、何で日本にすんでるの?

          • 朝鮮から強制連行されてきたんだよ。向こうには知り合いもいないし韓国語を学ぶ機会も与えられなかった。

            • いや、難民とか言葉も出来ないし知り合いもいないけど、他国に渡るんだよ 自国が終わりって状況なら普通そうするだろ 甘えんな

    • すでに毎年10%ペースで少子化が始まり、その後くる超高齢化という道を突き進む中国

    • 言うてほら…ナウルとかあるやろ…

    • 衰退した日本がヤバいなら、単純労働しかできない膨大な移民が社会不安を形成しているアメリカはどうなっちゃうんだろう。

  • かつてっていつの時代の話をしてるんだろう 20年前にはすでにオワコン状態だっただろ

  • 中国や韓国にMOL COMFORTは作れない ハイ論破

  • どっかのフェリーで重量オーバーで喫水がおかしくなってたのあったけど、なぜあれが起きたのか解説頼む 船舶が完成したあとは引渡し前に必ず海上での試運転を行う。

  • ここで、このオチが来るとは思わなかった。

  • 日本オワタポルノ

  • 相応の料金を払うと一定の時間... この行まで気づかなかったな。見事に引っ掛かったw

  • デリヘル増田め。許せない。あとで読む💢

  • あっ  わかった 1テンポ遅れて

  • 新来島ドックが出てきたので引き込まれてしまった。今回は騙されてやる(負け惜しみ)。

  • なんでかこいつみんなチヤホヤしてるけど、興味深い増田があっても序盤から用心して読まないといけないコストを読み手に強要してるクソ増田なのは自覚してほしい。 普段ブクマ経由...

  • 悪い状況を素直に認められず、他国はーとかどこよりマシとか言う向上心、意識、現状認識レベルの低い奴らの多いこと多いことwwww そりゃ廃れるわ、そんな馬鹿な国民ばかりなら...

  • ■勤務先が清算となり、無職として放り出されてしまった https://anond.hatelabo.jp/20201028172038 ■父から受け継いだ不動産会社を倒産させてしまった話 https://anond.hatelabo.jp/20201210171619 ■1年半ず...

  • 果てて居眠りしてる間に金を盗まれるってのがナニワ金融道にあったな

    • 中居にぴったりだったなナニワ金融道 今はさらにぴったりになったからやればいいのに 社長役死んだからやりたくないのか

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