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2024-01-29

anond:20240129171749

のび太おじさん「『モザイク取り器』持って行かないと剛田サンリトグラフを買わなきゃいけなくなるんだよ~😭」

2021-06-15

ジャイアンの倒し方(あるいはPR会社としての出木杉くん)

日々のつらさに耐えかねたのび太は、出木杉くんに相談を持ちかけた。出木杉くんはその協力要請こころよく承諾し、のび太にこう助言した。

ジャイアンを倒したければ、学校を動かさなければならない」

剛田武くんは少し乱暴な子として職員室のあいだでも有名であった。しかし、公立小学校には様々な問題を抱えたクラスや複雑な家庭事情を持った生徒が数多く在籍しているため、教員たちは剛田武くんの言動にいちいち構っている暇はなかった。

いじめ慣れしている剛田武くんはひとの目に付かない暴力強奪がうまく、クラスで大きな問題になることはこれまで一度もなかった。それは彼のいじめっ子としてのセンスのよさであり、また「剛田武は少し乱暴な生徒」というレッテルによって彼の乱暴性を個性として許されてきたところがあった。

のび太くんの声なき声を出木杉くんが拾い上げたのは、彼の中にある揺るぎない正義感に加えて、政治的意味で次第に声が大きくなっていく剛田武くんに対して個人的に嫌気が差し始めていたからだった。のび太くんはそのことも承知の上で、助かるならなんでもいいという気持ちであった。

「でも、どうすればジャイアンに勝てるんだろうか」と弱気になるのび太に対して、出木杉くんはエリートらしい得意げな笑みを浮かべながら、もうひとつ踏み込んだ助言をした。

ジャイアンに勝ちたければ学校を動かすしかない。学校を動かしたければ、世論を動かすのが有効だ。そして世論を動かしたければ、メディアを動かすんだ」

出木杉くんはあくまでもクラス内戦に過ぎないこの紛争を、"学校ごと"に格上げさせる方針を示した。

まず出木杉くんは友人である朝日くんに情報提供を行った。朝日くんは学校新聞編集長で、学校新聞編集室の中でもっと発言力を持っていた。

出木杉くんはこれまでの剛田武くんによる悪行をまとめた資料(以下、デキス資料と呼ぶ)を朝日くんに手渡した。朝日くんはデキス資料に目を通しながら、出木杉くんに対してこう言った。

「確かに剛田武くんの行いは非人道的かもしれない。だけど、これくらいのことはどこのクラスにもよくあることだよ。それに、大きな声では言えないけど剛田武くんを敵に回すことは我々にとっても得策じゃない。我々学校新聞報道することに意義を感じないね

出木杉くんはその反応が返ってくることをわかっていたかのようにうんうんと頷く。

「確かに朝日くんの言う通りだ。5年2組のちょっとした暴力なんて、学校にしてみれば裏庭で起きている猫の諍いみたいなものだろうね」

「じゃあどうして持ちかけたのさ、出木杉くんらしくないぜ?」

出木杉くんはその言葉には応えず、にっこりと爽やかに微笑みながら席を立った。

「とにかく、これからも連絡はするよ。記事にしたくなったらいつでも言ってくれ」

のび太くんはこれまで殴られた回数や奪われたおもちゃの数を数えて、デキス資料をより具体的な数字で補強していた。それはもちろん出木杉くんの指示であったが、出木杉くんはそんな数字よりももっとセンセーションもの必要性を感じていた。

出木杉くんはデキス資料改訂版を何度か朝日くんに送っていたが、この日はたった一文だけを載せて送った。

「来週の朝礼で、野比のび太氏が剛田武氏に宣戦布告します。」

毎週月曜に体育館で行われる朝礼では、校長先生あいさつと各委員会からの報告が行われる。出木杉くんはのび太所属する美化委員からの報告時間を巧みにハッキングすることで、のび太宣戦布告を告げる機会を与える作戦に出た。

校長先生定型的なあいさつが終わり、学級委員から順に今月の報告が行われる。美化委員会の順番は最後であることは出木杉くんにとって都合がよかった。続いては美化委員会からのお知らせです、という進行役の声を合図にして、のび太くんが全校生徒の前に立った。

のび太は美化委員として、校舎前の花壇が何者かに破壊されていたことを報告した。本来であれば報告はここで終わりだが、のび太は続ける。5年2組の剛田武くんが教室備品勝手に持ち出したり、箒とちりとりを剣と盾に見立てて遊び、すぐに掃除用具を壊してしまうことを報告した。そして、剣のように振りかざされた箒によって、自分の肩や腹に青あざができていることを、お気に入り黄色カットソーをめくって見せた。体育館内がざわつく。

のび太の手足は緊張で震えていた。声も震えていた。しかし、出木杉くんにとってはそれも計算済みであった。全校生徒はのび太の震えを見て、緊張ではなく剛田武くんへの恐怖心を連想するはずだと確信していた。のび太の震えは、今まさに剛田武くんから殴られてきたかのようなリアリティを持たせていた。また、のび太の弱々しい外見が同情を引き寄せることも計算に入れていた。

教員たちが異常事態気づき、近くにいた教員のび太の近くまで駆け寄ってくる。だらだらと演説している時間的な余裕がないことを察したのび太は、演説最後剛田武くんを象徴する3つの行為「モノを奪う行為」「モノを壊す行為」「人に暴力をふるう行為」をまとめてこう呼ぶのだと強く訴えた。

「これはジャイアニズムだ」

朝礼は中断され、それぞれのクラスがぞろぞろと体育館を出て教室に戻っていく。その道中、全員が校舎前を通る。つまり破壊された花壇を見るのだ。そして全員のこころの中で先程の言葉リフレインされる。

ジャイアニズム

実際に花壇を破壊したのは出木杉くんであった。しかしあの朝礼が終わったあとに全校生徒が目撃する象徴的なものを壊すことによって、それが剛田武くんによる破壊行為であるかのように印象づけられる。それに、一見は百聞にしかずという言葉があるように、報告を耳で聞くよりも実際に破壊されたものを見てもらうほうが印象に残ると考えたからだ。

次の日には、学校新聞のび太演説トップ記事として伝えた。ジャイアニズムというキャッチー見出しもさることながら、これまで出木杉くんがデキス資料として学校新聞に送っていた剛田武くんの悪行が記事内容に厚みを持たせていた。のび太演説破壊された花壇は全校生徒が知っている。それ以外の皆がまだ知らない情報が載っていることにニュース性はある。新聞が貼られた廊下の前で、あれもこれもジャイアニズムだったんだと誰もが語り出した。メディアが動いたことで学校話題剛田武くんの悪行に一気に傾くのをのび太は感じた。

ジャイアニズム」という言葉はあっという間に一人歩きをし出した。具体的な事実であろうがなかろうが濫用され、よくある単なるケンカではなく、ジャイアンという特別な力による暴力であると印象付けることに成功した。

剛田武くんは怒りに震え、一度教室のび太の胸ぐらを掴んだことはあったが、周りの目が明らかに自分悪者として見ていることに居心地の悪さを感じ、それ以降はのび太無視するようになった。クラスだけでなく学校から悪のレッテルを貼られた剛田武くんが廊下をとぼとぼ歩いていると、教頭先生が「剛田くん。放課後校長室に来なさい」と声をかけた。しょんぼりしながら小さな声で返事をする剛田武くんの背中はこれまでにないくらい小さく見えた。

のび太はその様子を遠くから眺めていた。気が付くとのび太の隣には出木杉が立っていて、ふたり剛田武くんの背中を眺めていた。

情報を制するものが勝つんだよ」

最初にのび太に助言したときのように、出木杉くんはエリートらしい笑みを浮かべながら言った。

「でも間違った情報もあった。ぼくがジャイアンや妹の悪口を言ったがばかりに殴られたこともジャイアニズムとして処理されてしまったし、それに、花壇を破壊したのは出木杉くんだろう?」

「花壇を壊したのがジャイアンだなんて一言も言ってないよ。君の読み上げた原稿にも書いてないし、学校新聞にも書いてない。みんなが勝手に誤解したんだ。でもまあ、実際に剛田武くんが花壇を踏みつけたり蹴り飛ばしたり姿を見たことがあったんだ。後日誰かがきれいに整えたので、ぼくは破壊されたときの様子を忠実に再現した。つまり演出したんだ」

「危なっかしいね

「そうさ。情報誘導の仕方次第では、世論はどちらにも傾く可能性があったんだよ」

「でもきみは上手に情報操作することで、クライアントであるぼくを勝利に導いた」

ジャイアンに勝つにはそれしかないんだよ。ジャイアンが実際の暴力を行なってくるのであれば、きみは虚構の拳を振るわなくちゃならない」

虚像の拳か。情報武器になる、っていうのはこういうことなんだね」

感心するのび太の顔を見ながら、出木杉くんは微笑んでこう言った。

「いいかい、のび太くん。情報武器に仕立て上げる何者かが、その背後には常にいるんだよ。仕掛ける必要のなかった戦争次世代通信規格の主導権争い、あるいは新型コロナウイルスワクチン接種まで、情報武器扇動する者がいることを、もっと意識しなければならない」

おしまい

※この記事フィクションです。実在人物や団体などとは関係ありません。のび太ジャイアンといったキャラクターたちは実在しますが、記事中のような人格ではありません。ジャイアン誕生日おめでとう。

2020-12-05

自分名前が好きじゃない

私は、自分苗字も、下の名前も両方好きではありません。

苗字は、強そうな雰囲気します。剛田とか剛力ほどではありませんが、そういった雰囲気攻撃力が高そうな漢字が入っています。「なんかゴツい苗字だね(笑)」とよく言われて、その度にすごく腹立たしい思いがします。

名前は、ちょっと古風な感じです。トメさん、などといった名前の方ほど昔ではありませんが、今の時代には少し珍しい名前です。これまで数十年生きてきた中で、知り合いで同じ名前の人は一人しかいませんでした(漢字は違う)。もちろん、苗字名前場合は該当者ゼロです。「私の名前ちゃん+名付け」でググると、確かに古風だけど雅な感じがするし珍しいし良いと思う、という意見と、古臭くてかわいそう、という意見に二つに分かれていました。実際、初対面の人に「古い感じの名前だね」と面と向かって言われたことがあります。ちなみに、海外でも有名かつ国語教科書にも載っていたりする昔の小説家(もうとっくに亡くなっている人です)の妻と同じ名前です。あとは、比較的有名な女優さんで読みが同じ人が一人いらっしゃいます

私には姉がいて、私も姉も一般的には少し変わった名前なのですが、姉の名前個性的で素敵な名前なのです。意味ちゃんと込められていて… 本人もすごく気に入っていて、ずっと羨ましかったです。

物心ついた時から、気に入った苗字名前コレクションしては、もし自分で選べるならどの名前にしようかなといつも考えていました。あるいは、自分小説家の真似事をして、登場人物に好きな名前をつけて、その時一番気に入っている名前主人公に付けたりもしました。その当時から今に至るまで、自分名前が嫌でしょうがない、なんでこんな名前にしたんだ、こういう名前に変えたい、などと親に訴えたことはありません。そんなことを言えば、彼らがひどくショックを受けるだろうということはわかりきっていたからです。しかし、誰にも言えないせいで、フラストレーションますます溜まっていったように思えます

そもそも、どうして私は自分名前が気に入らないのかということを考えると、いくつかの理由が浮かび上がります。まずは、単純にその名前自体が好きじゃないということ。それと、色々な人から名前をけなされてきたこと。そして、私が自分で選んだものではないから、ということです。

私は寒い地域田舎で育ちました。今の季節はもう雪が降っているようなところです。イオンすらありません。両親は優しかったですが過干渉で、子供の頃は、数少ない服もおもちゃ家具も全部親が選んだものでした。

10年以上前故郷を出たときに、これからは全部自分で選んだものに囲まれて生きたいと思いました。それで、携帯電話の連絡先を家族以外全て消しました。それまでの知り合いにはその時から今まで誰にも会っていません。ごくたまに帰省したとしても2日ほどしか滞在しません。

今は、自分で選んだ家に住んで、自分で選んだ家具を部屋に置き、自分で選んだ洋服を着て、自分で選んだ食べ物を食べて、自分から好きになった人を恋人にして、自分が選んだことをやって暮らしています自分の選んだものごとに囲まれて生きています

でも名前は、自分で選んだものではありません。

大人になれば、自分名前が気にいらないという気持ちからは逃れることができると思っていました。そういうものだと受け止めることができるようになったり、諦めの境地に達したり、あるいはそんなことがどうでもよくなるくらい人生が充実したりすることによって。

私は今年30歳になって、自分では人生が充実していると思っているのですが、いまだに名前コレクションし続けています

いつになったらこの執着を手放せるのでしょうか。

2016-03-17

女を見下す方がもてる云々のブクマ乙女ゲー俺様キャラ道明寺が出てきていたが

あれこそ現実漫画区別をつけろ筆頭だろうが

それにお前は道明寺みたいにイケメンで大財閥御曹司なのかと

あの性格がもてるっておそまつさんが女に大ヒットだから底辺ニートがもてると言うようなもんだぞ

それに最近のヒット作は御曹司ですらそれなりに性格がいい、どうせ漫画キャラを真似したいなら風早くんや剛田猛男の方がまだ現実味があるレベル

2015-09-06

http://anond.hatelabo.jp/20150906170408

過去未来のび太血筋を見ると、かならず周囲にしずか・ジャイアンスネ夫血筋と思われるやつらがいる。

これを考慮すると、彼らは日本誕生の昔から22世紀に至るまで、かなり狭い付き合いの中でずーっと子孫を残してるんじゃないかと思われる。

きっと、のび太結婚相手がジャイ子のままでもその後のどこかで源家血筋が入るし、相手がしずかに変わってもどこかで剛田家の血筋が入って、セワシの代までにほぼ同じ遺伝子が出来上がるんだろう。

2015-05-15

俺物語!!ふたりで観ていると

奥さんが僕と剛田くんを比較してきてつらい

2015-05-12

なんでアスカ名前変わってんだよ!

「惣流でいいじゃないかよ。なんだよ式守って、行司かよ!」

式波ね、アスカ相撲さばくわけないでしょ」

「他のやつ変わってないのにアスカだけ変えんじゃねーよ。思春期に見てたやつの思い入れをなんだと思ってるんだよ」

「しらないよ。とにかく式波になったの」

「だいたい半端なんだよ。どうせなら剛田に変えろよ」

剛田アスカラングレー?」

剛田・たけし・ラングレーだよ!」

「もうただのジャイアンじゃん。ドラえもん思い入れが強すぎて見てられないよ」

「だいたいツンデレだろ。普段は意地悪でも映画版はいいやつ。ほら、ジャイアンのものじゃん」

2015-05-02

占いで「あなたと相性のいい相手はイニシャルG.G.の人です」ってでたことがある

どう考えても剛田ジャイ子以外思い浮かばなかった

2012-11-09

http://anond.hatelabo.jp/20121109195925

「あの豪邸に住んでるホネカワ君だから仲良くしておきなさい」

クラス一の秀才出来杉君だから仲良くしておきなさい」

「何でも叶えてくれる青狸を飼ってる野比君だから仲良くしておきなさい」

剛田君とは遊んじゃいけません」

っていうロジックだもんな

そいつの良さ悪さなんて子ども自分で付き合って見つけ出して仲良くするかしないか決めるもんだっちゅーの

2009-05-02

そして僕の恋は終わった。

「何かいうことあるんじゃないの?」僕はげんなりとした気分を気取られないように注意しながら、そう口にした。「いえ、ですから、これを。」彼女は困惑した表情を浮かべながら1万円札を差し出してくる。僕は社会人一ヶ月目にして同僚の、だけれど二歳下の女性に惚れて、そしてその二日後に絶望した。

飲み会を行う、そう聞いたときは「もう一ヶ月経つのに、同じ課の新入社員しか面識ないもんな、そろそろ他の人たちとも交流深めなきゃ」と何となく思っただけだった。けれど、その飲み会の内容を聞いたとき僕は驚いて、思わず呟いてしまった。「100人…だと…」

飲み会、それは大学に居た頃には身近なものだった。就職祝い、誕生祝い。そう何かに理由を付けては近くのバーに行き、とりあえずギネスを、時々ハイネケンをマスターに頼み、やたらと背の高い椅子に座って友人と他愛の無い話をした。そんな時間は非常に心地よく、どうでもいい話に笑い、そして時には研究内容について真剣に話し合い、そしてまた笑った。そう、僕にとって飲み会は、変わり映えの無い大学生活の中での精神安定剤。そんな僕には、その100人という言葉がまるで葬式の中の笑い声ほどに違和感を覚えたのだ。

#==========

「あーもう、辻田さん大丈夫ですか!?」そう僕は横の彼女に声を掛けて揺さぶった。「うーん……」「うーんじゃなくて、歩けます?」「うぅ……」飲み会が終わった夜11時、僕と辻田さんは魔都"新宿"を歩いていた。

仕事を早めに上がって集まった午後6時半、魚民をほぼ貸し切り状態にして飲み会乾杯音頭と共に始まった。慣れない大人数の飲み会、そして学部卒の人が多く、院卒のじぶんとしては少し居心地を悪く感じていた。しかし、やはり同じ新入社員として共通の話はいくらでもあり、気づいたら楽しく周りと飲み食い大盛り上がりをした。それが悲劇の原因となろうとは、そのときには気づかなかった。

吉田君、おーい吉田君?」「宮下さーん?この子も駄目だ。」入社一ヶ月、ピンと張った緊張の糸が緩んで、そして同期しかいないこの気軽な雰囲気で飲み過ぎてしまったようだ。「困ったなあ、こんなにつぶれる人が出るとは思わなかったよ。」「いやあ、流石にここまでは予想できないでしょう、どうしようねえ。」飲み会企画した幹事たちが、飲み過ぎて丸太のように転がった人たちの処理を相談している。周りを見渡してみると、完全に酔い潰れた人が20人は居るだろうか、惨澹たる状況を呈していた。「でもそろそろ店でないと不味いしねえ、頑張ってどうにかしようか。皆さーん、寝てる人を起こして、帰るの助けてあげてくださーい」その号令と共に、潰れてない人たちは各々周りの丸太をゴロゴロと揺すって、よいしょと抱え上げて店を後にする準備をし始めた。

「えー、君実家通いなの!?」そんな悲鳴が聞こえたのはそんな時だった。「ふぁい……すいません……」その声の方を振り返ると、同じ課の辻田さんがぐったりした様子で男に支えられているところだった。「どうしよう、これじゃまずいよなあ」「誰か送ってってやれよ」「いやー、流石に実家まで連れて行くのはなあ」そんな声が聞こえてきて僕はついイラっとしてしまって言ってしまった。「いいです、僕が連れて行きますから。彼女の鞄、それですよね。ちょっとこっちまで持って来て頂けますか?」

僕と同じエコプロダクト課の彼女は、環境負荷を下げる技術についての知識に長けており、エコプロダクト課の開発する商品に惹かれて入社した僕と意気投合して、課の中では一番仲が良くなっていた。そんな彼女意識し始めるのはそんなに時間が掛かる訳もなく。その彼女を誰が送って行く俺は嫌だとやりとりしている様を見ているのは気分が悪く、自分が送って行くと言ってしまったのだ。

終電間近の電車に乗り込み、彼女適当雑談をする。そうこうするうちに、列車は駅に着いて改札を出る。もう自分の家に戻るには間に合わない時間だ。諦めのため息をつきながら、「自宅は町田なんだっけ、大丈夫?」と聞いてみる。「大丈夫ですう」そう彼女は言ったけれど、明らかに呂律は回ってないし、歩みも覚束ない。僕は再びふぅと息をついてから、「分かった、タクシーで帰りな。ほら、これ使って。」と彼女に一万円を握らせた。タクシーに乗って目的地を告げる程度なら、今の彼女でも大丈夫だろう。そう考え、「それじゃ」とそこを後にした。そして歩くこと5分、ふと気がついた。「ここ、どこだ?」

花の金曜日とはほど遠い灰色の金曜日。雲が空を覆い雨粒を垂らす中、僕は2時間歩いて学生時代よく通った漫画喫茶になんとかたどり着き、そこで時間を潰した。そして始発の列車に乗って揺られ、チュンチュンと朝の雀の声をバックサウンドに家の鍵を開け、ベッドに倒れ込む前にメールチェックした。以前、大学生活の時に「今日の朝一に私の部屋まで来て下さい」というメールを昼過ぎに受信してひや汗をかいた経験から、朝一にメールチェックをするのが習慣となっている。すると、メール受信欄に"Tsujita"の差出人が目についた。「流石メール世代、メールでのお礼は早いもんだな」と僕は思いながらメールを開封した。「藤本さん 昨日は申し訳ありませんでした。色々ご迷惑をお掛けしたみたいで……」直ぐに、僕はこのメールに返信しようとメールを書きだした。「辻田さん 藤田です。余り気にしないで下さい。僕は謝られるような事はされていませんよ。」最初は「一万円の事はいつでも結構ですよ」だとか書こうとしたのだけれど、それだとこちらがお金の事をすごく気にしているみみっちい人間だと思われそうで、その下りは削除してシンプルメールを送った。そう、僕はいつでも余分な事は言わない、紳士なのだ。

朝帰りなんて社会人になってから初めてだな、そう僕は思いながらベッドに潜り横になった。どうやら思っていたよりも疲れていたようで、僕は思ったよりも長く眠ってしまい、気づくと午後6時を回っていた。本当なら今日は食器を買い足しに行こうと思っていたのに、と頭を振りながらパソコンの方を見やると、メールの受信ウィンドウが新規受信メールを知らせていた。また、彼女からだ。

藤田さん こんにちわ、辻田です。お優しいんですね、ありがとうございました。」

短いメールであったけれど、僕の心は嬉しさで溢れた。

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翌日、彼女からきっと感謝言葉お礼がしてもらえると思いながら、少し浮ついた気持ちで会社に向かった。お金は要らないから、今度食事に行こうと誘ったらOK貰えるかな、でもそれはいきなり過ぎるかな。でもチャンスだよな。そんな事を考えるだけで僕はウキウキした気分になる。周りはきっとブルーマンデーな人ばかりなのだろう、だけれど僕だけはハッピーマンデー、平日のハッピーマンデーだ。しかし、そんな僕の浮ついた気持ちは一気に叩き落とされる事となる。カーンカンカン、前方に船影あり、急速潜航準備!

課のブースに入って「はよざいまーす」と挨拶をしながら自分の席に付くと、彼女が目に留まる。挨拶をしながら会釈をすると彼女笑顔で会釈を返す。それだけで僕のハートはアップテンポのビートを刻む。さあ、コチラに向かってお礼を言いに来るがいい!僕は華麗に「問題ないよ、そうだ、そんなに言うならに今日のアフター飲みに付き合ってよ。いつも一人で飲んでると寂しくてさ」そんな台詞を僕は頭の中で反芻しながら、顔がニヤつかないように書類に目を通すふりをする。しかし、彼女は会釈をした後すぅと自分の席に着いてしまい、肩すかしをくらってしまった。いや、きっと昼休みお礼を言いに来るだろう。僕は自分に言い聞かせ、しかし彼女の方をチラチラと気にしながら仕事を進めた。

そして迎えた昼休み。僕は直ぐにでも彼女が来るだろうと予想して、少しの間仕事を進めているフリを続けた。エクセルの画面を睨みながら「うーん、予想と少し違ったかなー、過去データをもう少し洗い直すかー」などと適当な事を口にしながら。しかし、そんな滑稽な一人芝居をしていても彼女が僕の机の方に寄ってくる気配はなく、気づくと10分も経ってしまっていた。ヤバい、社員食堂はもう一杯になってしまったかもしれない。僕は、慌てて社員食堂へ向かった。

結局、遅れたお陰で休み時間食堂で食べるだけで潰れてしまい、僕は朝の浮ついた気分が嘘のように沈んでブスっとした顔で午後の仕事を進めることとなった。隣の松田からは「朝はルンルンな顔して、昼は真面目な顔して、午後はむっつり顔か、忙しいなぁ、お前」とケラケラ笑われてしまった。そんな彼の笑い声が僕の斜めな気分を更に急勾配にして、終業時にはもう我慢が出来ない程のイライラに包まれていた。きっと、その時にはイライラという文字を空中に吐き出す事が出来たかもしれない、そう剛田 武-ジャイアンの「ほげ〜」のように。

彼女は次の日まで僕の堪忍袋の耐久試験を続け、その耐久試験に音を上げた堪忍袋の中身をぶちまけに僕は終業後、彼女のもとへと向かった。「……何か言う事あるんじゃないの?」「え、あ!」彼女は一万円を財布から取り出すと僕に渡して来る。僕の体の中を苛つきが駆け巡る。それをダイレクト彼女に浴びせかけそうになり、僕は黙ったま自分の席に戻る。すると、タタタっと僕の席に来る足音が聞こえ「ああ、謝りに来たんだな」と僕は思った。しかし、その期待は更に裏切られる。ポケットに一万円札がねじ込まれたのだ。

「ちょっと!」僕は声を荒げ、彼女のポケットにねじ込み返す。「君、失礼だよ!色々と!」もう、僕の理性のブレーキオイルは完全に切れてしまっていた。「社会人たるもの、頂いたものをそのまま返すとか無いわ!」自分が何を言っているのか良く分からないまま、頭の中に浮かんだ言葉をそのまま彼女に叩き付ける。しかし、彼女は憮然とした顔で「じゃあ、一万円分何か買って返せって事ですか?」そんな、彼女の様子を見て僕は怒りを再び沸騰する。しかし、僕は社会人彼女よりも二つ上。先のように感情のままに暴走しても意味が無い。ぐっと怒りを噛み殺して言葉を繋いだ。「そういう考え方も……あるよね。でも、本当にそう思ってるなら、その一万円を持って早く帰ってくれないかな」「なんで……そんな冷たい事を言うんですか?」彼女は先ほどの憮然とした顔とは打って変わって、驚いたような、悲しいような表情を浮かべていた。もう僕はどうでも良くなり、「そういう付き合いが面倒だと思うのかな。だったら、もういいよ帰っても。」そう言って僕は出口を指で指し示した。すると、彼女は俯いて、走り去るように行ってしまった。

僕は彼女感謝の気持ちが欲しかっただけだ。何かしてもらったら、お礼を面と向かって言う。それは常識だ。たったそれだけの事を彼女はどうして分かってくれないのだろう。「ありがとう台詞を直接貰ってないよ」その一言を彼女に言うのは簡単だが、しかしそれで貰ったお礼言葉意味が無い。そう思ってその言葉を発するのは止めていたのだが、その気持ちは分かってもらえなかった。そう僕は怒りの悲しみの混ぜこぜになった気持ちになり、しかし少し言い過ぎたかもしれない、とも思い始めた。

女性、しかも先日までは淡い気持ちを抱いていた相手。やはり落ち込んで泣いている様子を想像すると、僕は心臓をギュっと荒縄で締め上げられるような感覚に陥った。すると、居ても立っても居られなくなった「ごめん、ちょっと辻田さんの様子を見て来てくれない?」そう隣に居た松田に頼むことにした。「お前も、色々難しいお年頃なんだね」そう苦笑しながらも、研修室に彼女の様子を覗いてくるのを快諾してくれた。

僕はふぅと息を吐きながら、もし彼女が泣いていたらどうしようか。僕が怒った経緯を一から順番に説明し、その上で謝った方が良いだろうか。それとも、何も言わずに謝罪の言葉を掛けた方が良いのだろうか。そう悩んでいると松田が戻って、彼女の様子を教えてくれた。「良かったな、彼女泣いてなかったぞ。談笑してた位だからさ、大丈夫だ。」そう笑いながら僕の背中をポムと叩いて来る。談笑、談笑。結局、彼女に僕の気持ちの一分も、一厘も伝わっていなかったのだ。僕の心は再び黒い感情に包まれ、僕は誓った。もう年下趣味ロリ趣味は捨てよう。これからの時代はお姉さんだ、ボディコンだ、と。これが、僕のささやかな恋の終わり。これが、僕が生まれ変わったきっかけ。

side-B: http://anond.hatelabo.jp/20090502112938

あとがき

原作: http://anond.hatelabo.jp/20090501193134

2007-08-24

[]ドラえもん のび太ジャイ子 〜Degerous My Sweet Hanny!〜

のび太おじいさんとジャイ子結婚させてはならない。のび太おじいさんは会社を立ち上げ、子孫さえも逃れることのできないような大きな借金を残した。これがどういうことだか分かる?のび太ジャイ子との結婚によって変わったんだ。それこそ、天地をひっくり返すような大物に。だからこそ、巨額の資金をのび太おじいさん個人の力で動かすことができたし、会社も世界に名だたる大企業になった。でも、のび太おじいさんは、、、経営者としてはやさしすぎたんだよ。結局、最後にはめられて、責任借金も全部負っちゃって。あの会社を丸焦げにした火事事故なんかじゃなかったんだ。のび太おじいさんはそれを知った上で、、、。」

「それが、のび太さんが本来愛したはずの人と引きはなす理由だというの?あんなにたくさんの子宝にも恵まれて、死ぬ間際には親族が百人以上も集まったっていうじゃない。それで何が不満なの?」

ドラミちゃん、君も分かってるはずだよ。のび太おじいさんがごく普通人間でさえあってくれたなら、何も悲劇は起こらなかった。」

剛田さん、だからって、自分のご先祖さまをダメ人間にするためにお兄ちゃんを送るなんて、ひどすぎるわ。火事止めればいいだけの話じゃない!」

「、、、火事を起こしたのはジャイ子おばあさんらしいんだ。」

「な、なんですって!?」

タイムテレビで当時の様子を見たんだ。すると、ジャイ子おばあさんが変な様子で会社に入って行って事務室に火を付けたんだ。」

「そ、そんな、、、。」

「僕だって信じたくはなかったさ。でも、僕のご先祖さまのせいで、のび君の一族が苦しめられていると思うと、僕は居ても立ってもいられないんだよ。だから、ね。協力してくれるよね。今度生まれるセワシくんのおもりとして、君とドラえもんにのび家に入ってもらいたいんだ。」

「わかったわ。」

.....

しかし、どうしても納得できなかったドラミは独自に会社丸焼け事件の調査を開始した。当時、のび太会社東南アジア進出に向けて日本アジア諸国と関税の撤廃や、出入国の自由化に向けた運動を展開していた。これにより、アジア諸国が連携して巨大なアジア経済圏を形成することで、欧米列強が形成する経済圏に対抗が可能であると、アジア諸国では期待を寄せられていた。しかし、それを心よく思わない欧米列強の閣僚たちはCIAを筆頭に特別チームを編成。まず、アジア連携の先駆けとなる、野比グループアジア撤退を目標に作戦行動を開始していた。その一方で、欧米からの妨害工作を予期していた公安9課は、日本自衛隊内部で蔓延しはじめた新型の電脳麻薬CIA関係を疑いはじめる。

また、当時汎用型の重機として民間の間でも一般化していたレイバーが突然暴走しはじめる事件が多発する。特車二課は事件に対応しているうちに、暴走したレイバーに共通しているのは最近新発売されたマッハシステム社のパイナップルOSを搭載していることを突き止める。そこでOS開発者であるスティーブンを調査するが、本人はOSウィルスによって不正操作されていると主張。事件は行き詰まっていた。

その時、新型電脳麻薬によって錯乱状態におちいった自衛官が開発中の作戦行動用新型レイバーに乗って、夜の繁華街を暴走する。すぐさま特車二課がイングラムで対応するが、新型レイバーの前に全く歯が立たない。

その時、電脳麻薬を追っていた公安9課のチームは繁華街監視カメラから現場を偵察していた。

[途中省略]

逮捕した自営官とレイバーを調査したところ、電脳麻薬レイバー暴走の関連性が立証された。そしてその自衛官麻薬入手ルートから一人の人物が浮かびあがる。それは近年、アジア諸国の連携に多大な貢献をしている大企業野比グループ会長野比のび太」という男だった。

[以下省略]

2007-02-17

ジャイアンこと剛田武が歌う事を強く愛している事は疑問の余地がない。また彼が独自のセンスと才能をもって楽曲をつくり出していることも数々のエピソードから伺える。オリジナリティヴィジョンパッション、どれをとっても剛田武は本物のアーティストの資質を持っている。

しかし剛田少年音痴だと言われる。彼の歌は、ひょっとするとノイズアウトサイダーミュージックの愛好者には受容される余地があるかもしれない。しかしそれは彼の望むところではなかろう。彼は自分の名前を正統なポップミュージック史に書き入れたいと望んでいるのだ。だが歴史は彼のつくり出す音響を受け入れない。

剛田少年は自分の歌声を録音して聴く事もあるはずである。彼はそこで、自分の歌声の"異質さ"に気付かなかったのだろうか。気付かなかったのだとすればそれは認知の歪みによるものだろうか。そうかもしれない。だがもう一つの可能性が考えられる。剛田少年音楽観は世間一般のそれより広いのだ。通常の限界を超えた領域にも、彼の耳は音楽の歓びを聴き取ってしまう。その震えるような歓びを分け与える為に彼は歌うが、聴いた者は耳を塞いで逃げ出してしまう。

剛田少年の歓びに満ちた、しかし孤独な魂を、我々が理解できる日はくるだろうか。

 
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