私は就職氷河期世代やロストジェネレーションなどと呼ばれる世代です。
twitterでは高校三年生の悲鳴などが話題になったりしました。
この話題に関して伝えておきたいことがあって、文章を書くことにしました。
勢いで書ききるつもりなので誤字脱字などはご容赦いただければと思います。
私から伝えたいこと、それは
です。
さて、以降は私が経験したできごとを大きくわけて2つあげてみます。
その前に私について軽く述べておきます。
小学生の時分瀬戸大橋の完成、バブル崩壊などを経て、消費税導入がありました。
中学卒業の頃には氷河期が始まりつつあり、早めに進路を決める必要がありました。それは大学に行くかどうかも含めてです。
私は大学には行くことはできず、専門学校とバイトを掛け持ちの進学。やっとIT系に就職したものの、ブラック企業ばかりの状態でした。
自己責任という名のもと、必死に耐え忍んで、20後半の年代。もっとまともな仕事に着こうと転職活動を始めた矢先にリーマンショック。
リーマンショックが落ち着いて、立ち直りつつ今度こそと思っていたところへ東日本大震災。
そういう世代です。
コロナの影響で日本の医療崩壊が懸念されてはいるものも、「何をもってして医療崩壊とするか」が個々人によってバラバラのため、議論が進まず、言葉だけが独り歩きしていると感じています。
さて、医療崩壊と併せてよく言われる言葉。「命の選別」というものがありますが、私の家族はそれによってこの世を去りました。
もう10年以上前のことです。
田舎の隅のほうに家がありましたので、先進的な医療は受けられません。
医療設備の整った病院まで車で一時間くらいかかるような田舎です。
ある日、心臓病が発症して県庁所在地の病院まで搬送されましたが、もはや助かる見込みは無い状態でした。
親戚もそれは解っているため「仕方ない」「田舎だから」と諦めた様子でした。
父の家、すなわち私の実家は少しだけ都市に近い場所でした。病院にも数十分で搬送されたとのことでした。
しかし助かりませんでした。
「医者がいませんでした。」
「手術まで数時間待ちでした。」
「なんとか手術は終えましたが、合併症で脳梗塞が発症したため助かる見込みはありません」
これが私の父そして祖父に対して強制的に行われた「命の選別」です。
医療制度が新しくなって、地方に医者(研修医)が来なくなりました。
(興味がある人は調べてみてください。研修で地方に来る人が居なくなり、その結果何が起きたか。)
その結果がこれです。
私が小学生の頃、瀬戸大橋が完成して本州と四国が一本に繋がりました。俗にいう「一本列島」ですね。
先行き明るいと思われていましたが、バブル崩壊や消費税導入が押し寄せてきました。
家の家計は数十年先まで給料が上がり続ける前提で組まれたローンとなかなか上がらなくなった給料で苦しかったようです。
それでも父と母が共働きでなんとか学費などを貯め続けてくれていました。
高校に進学する頃には就職が難しいという話題があがりはじめていました。氷河期です。
高校、大学と進んでも先行き不透明のため、中卒で力仕事に従事する道を選んだ子も居ました。
大学進学までを希望していた子でも、普通科ではなく商業高校や工業高校に切り替えたりしていました。
私の家は大きな被害は受けなかったものの、親戚関係で色々あり、、、省略。
そして本格的な就職氷河期が始まりました。就職先はほとんどありません。
就職組の競争率は2倍、3倍。公務員に至っては10倍近い倍率もあります。
なぜそうなるのか?
自分の高校だけの話ではなくて、全国的に就職先が無い状態です。
すると、偏差値の高い高校、本来大学に行くような人たちが公務員などの就職試験を受けに来ます。
では進学すればいいかというと、そうでもありません。世間では「即戦力」が求められた時代です。
そしてお金がない家庭に何が起きるかというと、とても居心地が悪くなるわけで、今でいう虐待に相当する行為が起きてしまうわけです。
それでも学校の先生はこう言います。「勉強していい成績とれば、家庭環境も良くなる」
前提として「勉強」があるわけですが、それを阻害する要因の「虐待」が発生しつつあるので、もはやどうしようもないです。
今にして思えば父も母も不安だったのだと思います。もし受験失敗したら、浪人するお金はない。すなわち高卒で働くことになる。
滑り止めで私立は無理。震災でお金が無く、そもそも受験費用の捻出だけで今は精一杯だったので。
公務員などの就職は難しい、、、では最初から少しでもマシな企業に就職するか?
色々考えた結果、私は専門学校という苦肉の策を選びました。自己責任です。自分の選んだ道ですから。
進学、就職をなんとか乗り越えても、次の罠がやってきます。派遣法改悪です。
就職先を増やすためとの名目ですが、実態は奴隷商売・人身売買です。
私は派遣ではなく正社員として就職したものの、派遣会社に限らず下請けのソフト会社などにありがちな二重、三重の下請けの一部が派遣に切り替わったりしていきます。偽装請負ってやつですね。
偽装請負や二重派遣は派遣法で禁止されていますが、派遣会社の社員がそれを言い出せるでしょうか?
もしそれを訴えてしまうと「誰が訴えたか」が伝わってしまい、次に仕事に就くのが困難になります。
労働基準監督署に依頼しても、そこまで保護してくれません。つまり誰も言い出せない。そんな状況です。
なんとか実務経験を積んで、転職を繰り返すことで少しずつ待遇は良くなりました。
送別会で初めて会うN次受けの営業さんに「お世話になりました」などと大人な対応で去り、次に行く。
しかし、転職はブラック企業をひくかどうかという、精神的に負担が大きいギャンブルです。
ギャンブルを繰り返し、少しづつまともなところへと向かっていった中で。。。リーマンショックや東日本大震災が襲ってきました。
東日本大震災直後の年収は額面240万でした。計算しやすくていいですね。
リーマンショックでは助成金があるから、その金額はおかしいのでは?と考えるかもしれませんが、残念ながらあの助成金は企業に対して支払われるもので、そこのやりとりに一般社員が関与することはできないんですよね。
労働基準監督署?もし訴えて未払い残業代を手に入れたところで、その業界で働けなくなったら意味なくないですよね。
脅しだから無視してよいと言われても、ずっとこういう生活を続けているとそれが当たり前になってしまうのです。
そもそも労働基準監督署もリーマンショックや震災などの有事の際は忙しいですし、一人ひとり真面目に相手になんてしてくれません。残念なことです。
・自己責任論で弱者(まだ世間を知らない学生さん等)に責任を押し付けてはいけない
自己責任論と言われて育ってきましたが、あれは間違っています。
まだ世間の荒波を知らない20台の若者に「責任をもて」「経営者目線で」と言いつつ安月給や非正規雇用で働かせる。それは間違いです。
コロナでの「自粛」と同じく、「自己責任」は当人が自主的に口にするべきものです。
そもそも選択肢が無い状態で仕方なくその道を選んでいるのに「自己責任」と投げかけるのは間違いです。
就職先無いけど、どうする?自分の責任で選んでね。というのは無茶ぶりです。
・仕事があるかどうかは時代の流れが大きい。本人の能力の問題にすり替えてはいけない
自己責任論とかぶる部分が大きいですが、就職先が無い状態で学生さんの能力が低いからと責めるのは間違いです。
たとえば競争率10倍の公務員試験であれば、100個しかない椅子に1000人押しかける状況です。
「学力をあげれば就職できる」論も間違いで、私の例でいえば家庭環境が終わっているのにどうやって勉強するのか?という話です。
当時の私には食事すらまともに出てきませんでした。生きるためにバイトをしましたが、そうすると勉強時間が減ります。
すなわち、環境が悪化している状況下で本人に問題があると論点をすり替えるのは間違いです。
twitterなどで話題になっていた高校生の悲鳴は「勉強できる環境づくりが難しい」という点だと思っています。本来なら大人がサポートするべきところです。
そして進学が不安だというのも納得です。
氷河期当初、進学するはずだった人たちが公務員試験を受けに来たという状況。それは当人にはどうしようもないし、平時であれば合格できたはずです。
それを「勉強不足だ」などと本人の責任にしてしまうのは間違いです。
私ももう40台となってしまいました。失われた時間は返ってきませんし、怒りや憎しみを次の世代になすりつけるつもりもありません。
度重なる過労と鬱で子供を作る能力すら失われてしまいました。だからこそ、この文章を見ている人にお願いします。
「年寄りだから」「若者だから」といがみ合って、物事の本質を見失っていないでしょうか。
身の回りの小さなことに苛立つのではなく、そんな状況にしてしまった世界や日本、そして政治をなんとかするべきです。
労働者階級同士でいがみ合い、会社間でいがみ合い、それでは誰も幸せになっていません。
当初の導入では福祉や医療などをまかなうため(という建前)の消費税でした。しかし実態はどうでしょう?
父の命に対して
「医者がいないので手術できませんでした」
都会/田舎、高収入/定収入、所属企業を問わず皆が平等に収めている消費税。
平等に収めた税金にもかかわらず「(田舎だから)医者が居ません」と人の命を切り捨ててしまった。故に消費税は不要です。
法人税はどんどん下がっているのに、消費税はどんどん上がっていく。そして消費税は生活を圧迫し続け、私自身は生活も苦しい状況が続いています。
勘違いしてほしくないので最後に少しだけ書くと、犯人捜しや不幸自慢を推奨しているわけではないということです。
消費税が悪、政府が悪といった「犯人捜し」に躍起になったところで、誰も幸せになっていません。
氷河期は不幸だと不幸自慢したところで救われません。
過去にこのような問題があり、私自身がそれを受けて多くの不幸に見舞われたからこそ、新しい世代にはそうあってほしくないと願っています。