はてなキーワード: 亮太とは
亮太は今まで見たことないドロドロな物に恐怖を覚えたのか、昨日から全く元気がない。ますます自分が下痢だということを伝えづらくなった。
それと同時に、亮太ぐらいの歳の子でも下痢の恐怖が迫っているのだと再確認した。下痢はいつ、どのタイミングでやってくるかはわからない。一生下痢とは無縁な生活をおくる人間がいる一方、毎朝のように下痢に悩まされている人間がいる。それでも表面上は平等や同じように生きている。
医者にはよく相談をする。最近は専門のカウンセラーを紹介してもらい、日々の下痢の悩みを聞いてもらっている。
それと同時に待合室にはいついっても多くの人が居て、下痢に悩まされている人は多くいるのだと再確認する。
今では下痢への認識が強まっており、不当な扱いを受けることもないが、昔は下痢は死ぬまで治らない不治の病ゆえに、不浄だとか不潔だとかまるで細菌兵器のようにいわれていた。また、空気感染するとも言われており、ウンコマンなどと呼ばれ江戸時代中期から平成の末期までは不当な扱いを受けていた。そう考えれば、医学の進歩や、過去の人の啓蒙活動のおかげで何ら変わりのない日常生活をおくれていることには感謝するしかない。
最近ではほとんどの電車にトイレが備え付けられているが、昔はトイレが備え付けられていない電車も多かったという。今では考えられない話であるが。朝の満員ラッシュで急にお腹が刺すような痛みを感じ、備え付けのトイレに助けられた事は下痢患者になってから数え切れないほどある。
冒頭で話した亮太の友達も、今日もしっかりと登校をしているようだ。
これもひとえに先生のおかげだとおもう。
医者から「下痢患者の集まりがあるのでそこで交流して、みんながどんな風に下痢と向き合ってるのかを解れば前向きになれる」のではないかと勧められた。
下痢患者が集まる病棟は、下痢特有の臭いがする。それを死の臭いだと表現するものも居る。
最初に交流したのはまだ中学生にもなっていない12歳の女の子だった。
彼女は自分が下痢だと理解しているが、みんなと何ら変わりのない生活をしていると誇らしげに言った。
「私は確かに下痢ですけど、それも個性だとお母さんや先生が言ってくれたから生活できています。」というと、隣りにいた母親が感涙していた。母親は「できることならこの子の下痢を私に移してほしい。でもそれは出来ないから、私は芽衣子(娘の名前)がやりたいことは全力で応援して、生き続けてほしい」と語っていた。
この母親の話を聞いて、もし、亮太が下痢だったら自分はどうしただろうと考えた。多分、この母親と同じく、自分に下痢を移して亮太には元気に過ごしてほしいと思うはずだ。それならば、下痢が亮太ではなく自分に発症したのは幸いではないかと思った。
二人目に交流したのは私と同じ年ぐらいの漁師だった。下痢が発症して、神聖な船や海を汚さないため、もう漁には出ないらしいが、それはとても後悔しているという話だった。親から受け継いだ船を、今は部下にあずけて自分は市場で働いていると話をしていた。それでも、漁ばかりで家内や子供の相手をしてやれなかったが、下痢のおかげで家族と沢山話しができたことで家族の距離はグッと縮まったという話をしていた。親から受け継いだ事業自体を潰すわけにはいかないので、この下痢を機にもっと大きな事をしていきたいという話だった。私は下痢のせいで仕事やめるようなことはなかったが、もしやめてたとしたら彼のように成れたのだろうか。自分は周りに下痢への理解がある人が多くて、下痢前と同じ生活を続けていられることが幸福だと思っていたが、本当の幸福は自らが掴むものなのだと感じた。
下痢患者と交流し、自分がしがみついているものはとにかく世間の常識や、人から幸福と評価されることなのだと考えた。
それらは固形だが、本当はもっと下痢のようにドロドロしていてもいいのだ、本当はそのドロドロを染み付かせずうまく処理することなのだ感じた。
そうケツ意した。
医者から「あなたは下痢です。」と言われた時、頭の理解が追いつかなった。
「なんで?俺が?下痢?」とパニックになりかけたが医者も多くの下痢患者を見てきたのか、冷静な声で
「確かに現在の医学で下痢を完治させることはできません。しかし、下痢患者の多くは日々の下痢の痛みに耐えて生活をしています。増田さん、一緒にがんばりましょう。」力強く応援をしてくれた。
家に帰ってから妻に「大事な話がある。子供が寝てから少し時間がほしい。」というと、察していたのか「わかった。」と一言だけ。
夜、妻に「実は下痢なんだ。」と告白したら、妻は「そっか。」と言ったきり黙ってしまう。
「下痢の夫なんて嫌だろう。離婚しよう。自分が出ていく。」と言うと妻は「馬鹿な事言わないで頂戴。あなたが下痢でも、亮太にとってはあなたがパパだし、私にはあなたしかいないの。一緒に頑張ろう。」と目を真っ赤にして泣いていた。今年小学校に入学した亮太にも、いつか話さないといけない。でも、妻となら、いい方向に迎える気がする。」
翌日、会社の上司に話をすると、「そうか、わかった。下痢の症状がでたらいつでもトイレに駆け込んでくれて構わない。退社をさせたりしない。増田君は我がチームの大切な仲間だ。最後まで一緒に頑張ろう。」と激励してもらった。下痢に理解がある上司で助かった。ネットで話を聞くと、「下痢と報告したらすぐに退職に追いやられた」や「廊下で漏らして以降、聞こえるように陰口を叩かれるようになった」などの話もあったため、心臓がバクバクしながらの告白だったが。
ケツ意したんだ。
下痢で生きていこうと。
~出る杭は打たれる~
おもしろいことをする奴の足を引っ張ろうとするのはどのコンテンツにも多く見られる。
今のハセカラはまさにこの状態が起こって面白いやつがいなくなってしまった状態である。
詳細を書くと長くなるので書かないが。
芸術路線でもいろいろゴタゴタがありパカソン、尊師MMD製作者が次々と引退する始末。残ったのはカスみたいな面白くないやつばかり。
自分の中で尊師MMD製作者でオモシロイと思う奴はあと一人しかいない、あとはみな引退したっぽい。
ハセカラの派生?としてaiueo700があった。ハセカラ全盛期を思い出すような勢いだったが、これもaiueo本人が動画を投稿しなくなりもう下火だ。
0chiakiもださいたまも逮捕されちゃったしもう終わりか…
もちろんサヒケーにはこんなこと書かない、サヒケーの雰囲気は好きだしそれを壊したくないからだ。とチンフェみたいに自分語りしてみる。
『俺は嫌な思いしてないから
それにお前らがこの記事で嫌な思いをしようが俺の知った事ではないわ
大袈裟に言おうがお前らが死んでもなんとも思わん
つまりお前らに対しての情などない』
2月3月は二週間の一度、ゴールデンウィークからは殆ど毎日規制されてる。
大体問題が分かってる。
「長谷川亮太」なる「千葉県」在住のなんJ民の個人情報晒し行為。
個人情報を2chに書き込む行為は違法だけど、何もしてない奴まで巻き添えを喰らうのは勘弁して欲しい。
何回も削除スレにIPで規制して欲しいと要望したのに結局プロバイダで一括規制なのが悔しい。
だって、荒らす連中って結局プロバイダを変えて多重に荒らすんだからプロバイダで規制する事自体無駄なんだよ。
2ちゃんねらーが年々減ってるのも無理はない。
年々規制の頻度が高まってる上に、他のSNSサイトが隆盛期になりつつあるんだからね。
一番解決できる方法はIPで規制する事。あるいは書き込んだ人間のIPやプロバイダを検索してプロバイダ元に通報あるいは警察に書き込みを連絡すれば済む話なのよね。
あいつらのせいで毎回関係のないZAQな俺を巻き込まんで欲しい。それは荒らし連中だけじゃなく2ちゃんねる運営にも言ってる。
(01:18〜)
最近ね、あのー、やっぱ、こー、いろんなヒトと相談とかよく受けるんですよ。
まあ、あのね、みんなもご存じのように、ぼくいちじくさんというサブネームもっていますから。
やっぱ、最近、芸人さんからもね、いちじくさん、こう質問を受けまして、その答えたりとかするんですよ。
で、でも答えられない、そのー、性の話になると、やっぱり、僕はやっぱり引き出しは少ないから
やっぱ、もっとよりね、すごい先生に、やっぱ大先生みたいな人に聞きに行くんですけども。
いま、結構、それにあたる人がですね、天津の木村さんなんですけども。
あのー、ま、こんなこと言うのも、どこまで言えるか分かんないですけど、
天津の木村さんは、最近あのー、ニューハーフのAVで抜いてます。
はい。
これは、もう、ホントにー、本人が言ってましたんで、私はもう事実を伝えているだけで、
で、聞いたんです。
なぜ、そこに行くんですか、と。
そしたら、あのー、ひとの、そのー、エロの周期みたいなものを教えて下さって、
まぁ、いまで言ったら、ま、えー、吉沢明歩ちゃんとか、 Rioちゃんとか、明日花キララちゃんとか。
そこらへん単体女優、みんな行くと。
そこに行って、オーソドックスな、そのー、興奮を覚えすると。
でー、そうするとやっぱえらいもんで、慣れてきちゃうと。
ま、ずーっと、毎日のように見続ける。
俺もね、本当に、初めてね。
あのー、お兄ちゃんのね。
あ、これがちぎれるってヤツだってくらいに、凄かったもんね。
手伝っちゃってさ。
もう、ホント、一日、三・四回やってさ、ずっとも。
でも、テープがさ、絡まっちゃっ時にさ。
俺、兄ちゃんがクソヤンキーだから、ボッコボコにやられたからね、ホントに。
オメー、亮太マジなにやってんだよー、つって。
テメー、中みてねーだろーなー、つって。
いや、見てないよ。
兄ちゃん、なんで嘘付いた。
前田日明の試合、お前、リングスの前田日明の試合無くなっただろー、つって。
そんなこともありながらさ。
ま、確かにそうなのよね。
まね、そっから、こー、電、あのー、電マシリーズに行ったりとかする、と。
で、そして、そっから次、どこ行くかっていうと。
逆に、可愛いけども、その脱いだり、そのエッチなところがないけども、エッチなところを想像しながら。
うん、あの、それで、俺はよくやってるの、俺がよくやってるって言っちゃいけないんだ。
音消して、あのー、エッチな単語をしゃべりかけながら見るっていう技ね。
飴とか食べてるときにね。
とか言うとー、あのー、すごいぐっとくるっていう技があるらしいよ。
聞いた話によると。
で、そのゾーン行って、なんかやっぱ物足りなげになってきて、またもっかい女優に戻んのよ。
ね、で、女優に戻んだけど、やっぱり、あー、結局やっぱり、ここの点までは行くなって。
もちろん、80点以上は出してくる。うん。
でも、やっぱり、0か120。0か200点いきたいなっていうので、あのー、ニューハーフに行くんだって。
ふふふ。
この話、終わり!
らしいよ。
なんか、なんかいろんなモノ。
あー、違う、ニューハーフの前に、あのー、熟女が入るんだって、つってた。
で、熟女もー、そのー、三十路、三十路はもー熟女と感じない、と。
まぁ、ちょっとしっとり目の、おかー、おかー、奥様、ぐらい。
うわー、なんかちょっと、俺、何こんなのでちょっと興奮してんだよっていう罪悪感も手伝って、ぐっとくると。
で、五十路、五十歳になってくると、うわー、俺もー、むちゃくちゃだな俺。
で、こんなおばちゃんがエロくなって、って思ってぐっとくんだって。
で、どこまで木村さん行ったんですか、ってつったら、八十路って言ってたね。
八十歳のコトだってね。
あれ、やそすけだから。
うーん。
すごいよねー、みんな。
俺わかんない。
そういうの。
うーん。
ねー、まーねー、そんなこんなでですね、ホントに汚い鬼を追っ払いたいと、一回自分に投げておきましょう。
(豆を自分にぶつけながら)
あー、あー。
もっと、もっと、投げて下さい。
あー、メガネに。
これ聞いてる人、どう思うの?
こういうのって。
それだけ教えて。
(〜05:34)
http://anond.hatelabo.jp/20091130015620から続き
一度口を開けば毒を吐きまくるために、美樹は今までにいろいろと嫌な思いを経験してきた。自業自得だと言えなくはないにしても、積み重なった日々は紛れもなく大きな傷跡となって記憶の奥底に刻み込まれてしまっていた。
美樹は、自らの悪癖に辟易しているきらいがあった。みんなと同じように会話することができない。したとしても、すぐに嫌な空気を作り出してしまう。誰かを傷つけてしまう。そのことに対して、美樹は激しく己を恥じていたし、憤っていた。どうしてこんなに嫌な奴なんだろうと自己嫌悪に苛まれたことも一度や二度ではなかった。
だから口を噤むようにしたのだ。誰とも話さないようにすることで、他人を傷つけることからも自分を嫌いになることからも逃げていた。そうすることが、美樹が思いついた唯一の解決策だったのだ。そもそもが、意識して簡単に直せるようなものではなかったのだ。できたらやっているし、何度も試みたのだと彼女は言った。
「でも駄目だったの」
彼女は悲しそうな目をしてそう言っていた。どうしようもなかったのだと。以来、美樹は生来の口の悪さを内に秘めながら、ずっと付き合っていくしかないのだと諦めるようになっていた。話さなければいいのだ。口を開かなければ問題は起きないのだから。そう自らに言い聞かせながら。
けれども、周りはそんな美樹を認めてはくれなかった。持ち前の美貌も相まって、なにをしていようとも美樹は際立って目立ってしまっていたのだった。
彼女が望もうが望まざるが、周囲の人たちは美樹に話しかけてきた。一人を好んでいた美樹に対して、女子生徒は持ち前のお節介やどろどろとした縄張り意識から、男子生徒は猛烈に尻尾を振りたくりながら、関わりたくないのに自ら近づいてきた。話しかけて、口を開かせて、真正面から針に手を突き出していった。
次第に美樹は影で悪口を囁かれるようになる。そうならないようにしたつもりだったのに、誰かを傷つけて恨まれてしまっていた。言われもない噂をいくつも立てられ、見ず知らずの人たちからも嫌われるようになってしまった。距離を置かれ、興味本位や嫌悪感から不躾な視線を向けられるようになった。その結果、美樹はどんどん口数の少ない女の子になっていく。
「あの頃、亮太が側に現われてくれなかったら私は潰れてしまっていたと思う」
真剣な目の色で過去を告白されたのは、つい先日のことだったのに。
高校時代、とりわけ僕と知り合ってからの一年半、美樹は僕の前でだけああやって気兼ねなく話すことができたのだ。ありのままの自分でいられた。考えてみれば、他の人よりも僕に対する口の悪さは際立っていたような気がするのだ。彼女にとって僕は、追い詰められながらも掴むことができた最後の救いに違いなかった。
美樹はまだ周りの人に対する怯えを拭いきれていないのだろう。おそらくは他人との距離感も的確に掴めないでいる。他人と普通にコミュニケーションが交わせない孤独感、心細さを、そしてどうしたって傷つけてしまうことへの罪の意識を、はち切れんばかりに膨れ上がった自己嫌悪を、今日に至るまでずっと抱き続けてきているのだった。
だからこそ、僕は美樹を攻めるべきではなかった。僕が攻めてはならなかったのだ。確かに腹の立つことが多いけれど、それでも僕は受け止めるべきだったのだし、受け止めてあげられたはずだったのだから。
しばらく町中を走り回って息が上がってきた頃に、僕はようやくとある公園のベンチに座る美樹の姿を見つけた。手にはハンカチを握り締め、ぼんやりとうな垂れている。様子から泣いていたのかもしれないと思った。僕の中の後悔が罪悪感へとその姿を変え始める。そして同時に、しみじみとした暖かな愛おしさが沸き起こってくるのも感じていた。その温もりは急速に僕の中を駆け巡ると、圧倒的な奔流となって僕の気持ちを覆い尽くしてしまった。
彼女は腹立たしくも可愛らしい、そして何があっても僕には憎みきれない奴なんだと、ついつい頬が緩んでしまう。
まるで長く我慢して、ようやくおいしく食べられるようになる渋柿みたいに、美樹と付き合っていくことには辛抱が必要なのだ。
「やっ」
俯く美樹に近づいて、できるだけ明るく声をかける。びくりと肩が飛び上がった。声だけで、彼女は僕の存在に気がついてくれる。まあそれでも顔は上げてくれないのだけれどもさ。
しばらく前に立って待ってはみたけれど、美樹は頑なに僕の顔を見るつもりはないようだった。ため息が出そうになる。でも、何とか堪えた。
そっと隣に腰掛ける。広がる公園を眺めることにした。枯れ草のような芝生の先に桜の木々が立ち並んでいて、その上に青く淡い空が広がっている。白いのんびりとした雲がゆっくりと浮かんでいた。これからどこへ行くのかぼんやりと想像してみたけれど、どれだけ考えてもどこへも飛んで行きそうにはなかった。
「さっきはごめん。ちょっと熱くなっちゃったんだ。ほんと、ごめん」
そう、雲を見ていたら自然と言葉がこぼれ出た。どこからか小鳥の伸びやかの声が聴こえてくる。軽やかに透き通ったその音色は、風に乗ってどこまでも響いていくような気がした。どこまでもどこまでも。今日という一日を祝福するかのようだと感じた。心地よい賛歌は、遠く恋人に語りかけるかのように青空を駆けていく。
ふと、柔らかな温もりを左に感じた。見れば美樹の頭が僕の肩に寄りかかっていた。顔は未だに下を向いたままだ。でも微かにのぞくことのできた唇は、小さく言葉を紡いで動いていた。
ごめんね。多分美樹はそう言ったのだろうと思う。
――素直じゃないんだから。
多分僕は美樹のことがかなり苦手なんだと思う。でも、だからと言って美樹のことが嫌いだったりするわけじゃない。美樹にとって僕が思う存分話すことができる相手であるように、僕にとっても美樹は大切な人なのだから。
だから、寄りかかる美樹の肩にそっと腕を回してみたんだ。
吹いた風は、もうすぐ暖かな春を連れて来てくれるのだろう。
そうしてまた一年。
僕たちはこうして一緒にすごしていくのだと思った。
(おわり)
http://anond.hatelabo.jp/20091128234950から続き
が、直後に球に美樹の瞳から激情が消え失せる。何事かと思った僕は、哀れむかのように眉を下げた彼女にじっと見つめられていることを理解した。
「ねえ亮太くん、もしかして私は分数の足し算引き算から教えないといけないのかな?」
その瞬間、僕の中で何かが切れた。同時に、一瞬目の前が真っ赤に染まった。気が付けば僕は勢いよく椅子から立ち上がっていた。口が勝手に動き出す。
「美樹さ、ちょっと酷過ぎるよ。そりゃ僕は美樹みたいに頭良くないけどさ、さすがに頭にくるよ」
続いて美樹が思いっきり机を叩く。噛み付くかのようにして立ち上がってきた。
「なに逆ギレしてんのよ。本当のことじゃない。こんな問題誰でも解けるわよ。分かんない亮太を馬鹿って言って何が悪いのよ」
「そんなこと言ったってしょうがないだろ。ちょっと公式を忘れちゃってたんだから」
「忘れてた? 馬鹿じゃないの。あんな公式一回覚えたら忘れるほうがおかしいわよ」
「誰にだって忘れることはあるだろ。第一、美樹は説明が早すぎるんだ。そのせいで僕は計算の仕方を聞かなくちゃならなくなったのに。何さ。足し算引き算から教えようかって」
「付いて来られないほうが悪いんじゃない。自業自得よ。ほんと考えられないんだけど。どうしてあんな簡単な説明を聞き逃すことが出来るのよ」
「説明だって? あれのどこが説明なんだよ。理解させようって気もなかったくせに。というかね、美樹はいつも一言多いんだよ。今だってそうさ。もっと違う言い方があっただろ」
「私にはね、しなきゃならないことがあるの。別のことに時間かけてらんないの。大体亮太だって――」
「お客様」
「なに!」
突然横から割り込んできた声に、僕と美樹の声は見事に重なった。
「他のお客様の迷惑になるので静かにお願いしたいのですが」
見れば店長らしきおじさんが、笑顔で僕たちのテーブルの側に立っていた。こめかみの辺りに青筋が立っている。口角がひくひくと痙攣していた。その表情に昂ぶっていた僕の怒りはすぐさま現状を理解して冷めていった。注がれる他の客たちの視線が痛い。とても痛い。涙が出てきそうだった。
「す、すみません……」
そう謝って、僕は静かに腰を下ろした。人前で喧嘩だなんて、物凄く稚拙なことをしてしまった。自分を見失ってしまっていてことも恥ずかしくもなってきた。椅子に座った僕には、ただ縮こまるしかなかった。小さく小さく息を潜めるようにして縮こまって、そのまま消えてしまえばいいと思った。
そんな僕を見てひとまず気が済んだのか、おじさんはくるりと踵を返すと、大きな歩調でテーブルから立ち去っていった。他の客の視線はまだ突き刺さってくる。僕は彼らに向かって心の中で謝った。騒がしくしてごめんなさい。恥ずかしいものを見せてごめんなさい。いや、本当にもう、何と言うかごめんなさい。そしてから――忘れてはならない――ゆっくりと目の前の人物に目を向けた。真っ赤な顔で直立していた美樹は、まっすぐに僕を睨んでいた。
「帰る」
そう言って美樹は、持ってきた資料やレポートを残したまま店から出て行ってしまった。取り残された僕は、激しい後悔に襲われながらも空になった席を見つめることしかできなかった。
――やってしまった……
思いと共に、さあっと肩から背筋にかけての部分が冷たくなっていく。やってしまった。どうしようもないほどにこじらせてしまった。
「どうしよう……」
呟きは落ち着く場所を見つけられないまま宙に溶けていく。
後に戻れないことは明白だった。美樹は真剣に怒ってしまったし、それを引き起こしたのは他ならぬ僕自身だった。
どうしよう。そのたった五文字が重なり合い、大きくなったり小さくなったり、フォントを変えて、斜体になったり、中抜きや色を変化させながら頭の中を埋め尽くしていった。
――どうしよう……
見れば、カップに少しだけ残っていたエスプレッソコーヒーがすっかり冷え切ってしまっていた。二つ分のコーヒーカップ。さっきまで目の前には美樹がいて、一緒に向かい合っていたのに――
堪らなくなって、僕は勢いよく席を立つ。好奇に満ちた視線になど、構ってはいられなかった。美樹が残していった持ち物をまとめて会計を済まし、慌てて外に出た。途端に肌に触れた外気の暖かさにちょっぴり驚いた。店内から見た時は枯れ木が立ち並ぶ路地に北風が舞っているのかと思っていたのだけれど、どうやらそうじゃなかったらしい。頬を撫でる風はどこか温かく、射し込む日の光は思った以上に暖かかった。
僕はいなくなった美樹を探すことにした。
長い付き合いだ、性格はよく分かっていたつもりだった。扱い方も、悪い口のいなし方も熟知していたつもりだった。
それゆえの慢心か、それとも現実逃避を含めたちょっとした気の緩みが油断につながったのか。もしかしたら休日の朝っぱらから、美樹の電話に叩き起こされたのが種火となって、ずっと燻っていたのかもしれない。事の根に潜んでいる根源的な原因は、小さなものがそれぞれ絡み合って原型を留めていないほどに複雑な造形を結んでいた。
それでも結果論として、理由が何であれ僕はあんな風に美樹攻めてはいけなかった。少し頭に血が上ってしまったせいで、我を失ってしまっていた。あの時、瞬間的に僕の中で燃え上がった真紅の灯火は、しかしながら今はもうその輝きを失い、責めあがってくるような群青の水面に変化している。
美樹のことが心配だった。あれで彼女は結構傷つきやすいのだ。ガラス細工のような性格をしているのだと思う。光を透し澄んだ輝きを放つ一方で、一度砕けてしまえば硬く鋭い切っ先をあらわにする。どんな状態であろうとも、他の干渉を拒絶しているようなところがあったのだ。そして僕は、その実彼女が大きな淋しさを抱えていることを知っていた。
(5/5に続く)
http://anond.hatelabo.jp/20091128000814から続き
恐る恐る視線を戻すと、美樹はレポートの作業を再開させていた。軽快な音を立てて、シャーペンが紙面を滑っている。まだずっと続くのであろう作業を呆然と見守っていてもつまらないし、そんなことをしていようものならばまた何か言われてしまうのが目に見えていたので、とにかく僕も何かをしようと数学の問題集を開いた。まだ先とはいえ、もうそろそろ今期末のテストが近づいている。授業にうまくついていけていない僕にとっては、まさしく恐怖のイベントだ。このままだとまず間違いなく、確実に単位を落とす。必修科目だから尚更やばい。
小さく深呼吸をしてから問題集に目を移す。シャーペンを片手に、頑張りますかと、気合を入れた。
そんな折にふと視界に入った二人分のエスプレッソコーヒーは、机の端でいやに肩身が狭そうで、微かな湯気をひっそりと立ち昇らせ続けていた。
生まれ始めた沈黙の時間。二人で一緒のテーブルを囲みながら黙々と作業を続ける最中、店内の音楽はジャズっぽくなり、クラッシックっぽくなった。ラウンジミュージックが流れ、ハウスミュージックの印象的なバスドラムが僕の集中力を飛躍的に高めてくれたような気がする。
そしておそらくそれは美樹にしても同じことであって、だからこそ僕はその一声をかけるときに、自分でも思いもみなかったほどに大きな勇気を振り絞らなくてはならなくなっていた。
「……な、なあ、美樹。ちょ、ちょっといいかな」
そうおずおずと尋ねた僕に、順調に進んでいた作業を中断させられた美樹は露骨に不快感を表しながら顔を上げた。微かに何か特徴的な物音が聞こえたような気がする。短く弾ける小さな苛立ち。おそらく舌打ちをされたんじゃないだろうかと考えた。眉間に寄ったしわは一段と深くなっている。僕の中で降り積もる恐怖は次第に厚みを増していく。
「あ、あのさ。ここの問題なんだけどね、さっぱり解き方が分からなくて」
生唾を呑んでから微妙に震える声でそう言って、僕は数学の問題集の左上に書かれた問題を指差した。美樹は僕の手からひったくるようにして問題集を奪うと、しばらくの間その問題をじっくりと見て、それから僕の方に視線を戻した。呆れ返った瞳が僕をひやりとさせる。
「亮太、こんなのも分かんないの? 基本中の基本でしょうが。数学の基礎でしょこれ。高校レベルの問題じゃない。……ねえ、馬鹿なの? それともなに、ただ私に話しかけたかっただけなの? 随分と面倒なやり方をするもんだね」
「いや、本気で分からないんだけど……」
言うや美樹が宙を仰いだ。なんてこったい。そう脱力しきった彼女の身体が物語っている。言葉になんかしなくてもひしひしと伝わってきていた。同時に、ずっと懸念していた嫌な予感がはっきりとした輪郭線を捉え始める。
美樹はひとつ大きなため息をついてから、再び僕に視線を戻した。浮かんでいた予想通りの表情を見て、僕は一瞬で気分が滅入ってしまった。
「亮太ってさ、一応大学生だよね。それも私とおんなじ大学の。ねえ、そうだよね。私、間違ってないよね。ね。じゃあさ、やったでしょこれと似た問題。やったよねえ。同じ高校だったんだしさ。できないと、ここにいられるわけがないものね。……あんたさ、どれだけ忘れるの早いのよ。大丈夫? 心配になってきたわよ。もしかすると、脳細胞がほとんど死んでんじゃないの? それともニューロンの絶対数が足りないのかしら。もしかしたら亮太の神経だけ伝達速度が遅いのかもしれないね。いやー、凄いね。珍しいよ。新人類なんじゃないの?」
言われたい放題だった。随分と僕という存在が小さくなったような気がした。
美樹はそこまで一気にまくし立てると、最後に小さく「考えられない」とぼやいた。そしてまたひとつ大きなため息を吐くと、さも面倒くさそうに僕に解法を教え始めてくれた。段々と店内の照明が赤暗くなり始めたような気がする。正直なところ僕も考えられなかった。
数学の問題がひとつ分からなかっただけなのに、どうしてここまで言われなきゃならないのだろう。確かに簡単な問題だったのかもしれない。高校の時に似たような問題を解いたかもしれない。けれど、だからと言って新人類などと馬鹿にするのは酷過ぎないだろうか。本質的に愚弄している。そりゃ僕は美樹に比べたら恐ろしく頭が悪いかもしれないけれど(確かにどうして同じ大学に入れたのか今でも不思議でならない)、こんなにぼろくそに言われる筋合いはないと思う。
腹の底に暴れる蟲を一匹仕舞い込みながら、それでも僕は低頭身を乗り出して解法を教えてくれる美樹の声をしっかりと聞いていた。美樹はこういう奴なんだから。我慢しなくちゃならない。仕方がないんだ。そう思っていた。思うように言い聞かせていた。
ずんずんと進んでいく説明を聞きながら、僕は公式をひとつ忘れてしまっていたことに気が付いた。なるほど、そのせいで出来なかったのかと、気が付いてなんだか清々しい気分になった。
一方で、そんな僕の発見など気にも留めない美樹の説明は続いていく。かなり早かった。端的に説明しながら、僕が理解出来ているかどうかにも関係なく進んでいく。お陰でいつの間にか進んでいた計算の過程がよく分からなくなってしまった。
「ちょ、ちょっと待って。ここはどうやってこうなるんだ?」
慌てて尋ねた僕を見上げた美樹の瞳に、苛立ちが燃え上がっていた。やばい。僕は更なる罵詈雑言が放たれることを覚悟する。機関銃やガトリング砲がガラガラと音を立てて照準を合わせ始めている。
美樹の唇がわなないた。
(4/5に続く)
例えば、昼下がりの喫茶店で女の子と二人きり、向かい合って淹れたてのコーヒーを飲むのって、結構幸せなことだったりするんじゃないかと思う。冬の柔らかな陽光が射し込む窓際のテーブル席で他愛もないおしゃべりに時間を費やしたり、静かに読書を楽しんだり。あるいは二人して課題に追われる羽目になっていたのだとしても、それはそれでいいような気がする。
同じ時間、同じ空間で、互いの気配を間近に感じ取ることができるのだ。これ以上、どんな幸福を望めばいいというのだろう。個人的な意見になるけれど、他にどんな幸福が存在するのか、僕にはまったく見当がつかない。
きっとそこでは、鳴り響く軽やかなポップスが暖房によって心地よく温められた空気を一層朗らかなものに変えている。あちこちに配置された観葉植物は、滲み出る緑に彩られて活き活きと輝いて見える。芳しいコーヒーの香りに満たされたその空間は、何故だか分からないけれど、とても理想的で感動的な幸せで満たされているような気がするのだ。
ただ、現実はそうそう甘いものではない。こんな風に、僕が現実逃避のごとく考えてしまう原因は案外すぐ側にあるのかもしれなかった。
例えば今、昼下がりの客もまばらなコーヒーショップで声をかけてきた女の子が美樹ではない他の誰だったとしたら、この何ともいえないやるせなさを感じる必要はなかったように思える。いや間違いなく、絶対にそうだった。もしも、今現在僕と向かい合わせに座っている女の子が、ただ黙々とシャーペンを走らせているだけ美樹じゃなかったのならば、僕は興奮した雄犬のように尾っぽを振りたくって、にこにこ顔で鼻の下を伸ばしていたはずだった。
目を閉じて額に拳を押し当てると、思わずため息が口から溢れてしまう。
――どうして神さまはいつもいつも人間に過酷な試練をお与えになるのだろう。
神仏に対する信心など皆無に等しいのだけれど、どこかでほくそ笑んでいるのであろう大いなる存在とやらのことが異様なほど腹立たしく思えてきてしまった。だって、目の前にいるのが他の女の子だったのなら、僕はすぐにでも時を止めてくださいませと膝を突いて真剣に祈っていたはずだったのだ。あるいは、代償として失うものを提示しながら遜ることも厭わなかった。
……まあ、出せるものは限られているのだけれど。いらなくなったマフラーとか、買い換えなきゃ行けないブラウン管テレビとか、あまり使っていないバイクとか、その他諸々の、あまり必要性を感じない品々ならばいくらでも出せると思う。たぶん。
そんな取りとめのない考えを展開したのは、頭皮に鋭い視線が突き刺さってきているのに気がついたからだった。そっと目を開けて正面を向くと、眉間にしわを寄せた美樹と目が合ってしまった。反射的に、強張った表情の下から乾いた笑いが込み上げてくる。
他にどうすることができよう。ヘビに睨まれたカエルが石のように固まってしまうみたいに、美樹に睨まれた僕は冷や汗を掻きながら嘘っぽく笑うことしかできないのだ。近づいてくる何かから逃れるために。もしくは、これ以上彼女を刺激しないために。
僕と美樹との間に生じている関係性という名のシーソーについて考えてみるとき、いつだって僕は宙高く持ち上げられている。不安に包まれたままどうしようもなく足をぶらつかせる羽目になっているのだ。原因として、そもそもの作用点が美樹のそれと比べて圧倒的に僕に近いことが挙げられるし、彼女がでかでかとアドバンテージと刻まれた分銅を抱えているのも理由にあるのだろうと思う。まったく理不尽だと思う。
意味もなく笑い続ける僕を心底憎んでいるように睨み付けてから鼻を鳴らして、美樹は続けていた作業へ再び意識を戻していった。週末に提出期限が迫ったマクロ経済学のレポートを仕上げなければならないのだそうだ。前年のカリキュラムで、レポートに既存の論文のトレースが見つかったために、手書きでまとめなくてはならなくなったらしい。最近の生徒は何でもかんでもインターネットとコピペで済ませてしまうという教授の嘆きが、そうであるならせめて論文を熟読するぐらいのことはしてくれと、自らの意見でレポートを製作している生徒にとって見れば甚だ厄介な妥協案に落ち着いてしまった結果だった。視界に入る長い髪を邪魔そうに左手で押さえながら、美樹の大きな瞳は熱心に資料とレポート用紙との間を行き来している。
様子を眺めながら、こうやって黙っていてくれるのなら僕の気持ちも明るくなるのになあと、もったいなく思った。美樹はファッション誌で読者モデルをやってるから、それ相応に、結構な美人ではあったのだ。手足はすらりとして長いし、十分な背丈もある。引っ込むところは引っ込んでいるし、物足りない気がしないでもないけれど、欲しいところもちゃんと膨らんでいる。外を歩けば男性諸君の目を集めることはしょっちゅうだったのだ。同性からさえも、時折潤んだ眼差しを受けることがあった。美樹と一緒に歩くことができる僕は、確かに、傍から見れば多少なりとも羨ましく映っていることなのだろう。自覚がないわけではなかった。友達からは率直に、いいなあ、と言われたこともいくらかくらいはあったのだ。
(2/5につづく)