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2020-01-08

ジャレド・ダイアモンドが指摘する日本問題点

『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイアモンドが、新著『危機人類』(小川敏子・川上純子訳、日本経済新聞出版社)の下巻第八章で現代日本について語っている。その中で、日本人問題と捉えられていない問題点が三つ指摘されていて、興味深かったのでまとめる。

移民の不在(pp.128-132)

 日本は「移民を歓迎せず、移住を望んでも移住するのは難しいし、移住できた人が日本永住権国籍を得るのはさらに難しい。」「難民庇護を求めた場合スウェーデン92%、ドイツは70%、カナダは48%を受け入れるが、日本が受け入れるのはわずか0.2%である。」日本政府は移民反対の態度を貫いており、その態度は「国民が示した移民に対する否定的意見を反映している。」「日本人の63%は外国人居住者を増やすことに反対であり、72%は移民犯罪率を増加させるという見解同意する。アメリカカナダオーストラリアでは国民の57-75%が移民が新しい考え方をもたらし社会改善すると考えているのに対し、日本人の80%は…否定している。」(「私は移民に対する日本人抵抗は『間違っている』とか変えるべきだといっているのではない」)

 日本は「他国移民によって緩和してきたことが広く知られているいくつもの問題に苦しみながら、移民に頼らずにそれを解決する方法を見つけられずにいる。」「これらのうち最大の問題は…少子化高齢化、その結果として…増え続ける年金生活者の年金医療費を、減り続ける健康若い納税者負担するということだ。」

 日本では「働いていない母親たちをもっと雇用することで労働力不足を解消するという策が取れない」。アメリカでは「移民女性を保育サービス提供者として個人で雇っ」たり、移民が「高齢者介護者や病院看護師スタッフとしてサービス提供し」たりするが、これらは日本では不可能からだ。

 また、日本では「研究開発費の大きさから期待されるほどには画期的イノベーションが生まれていない。」「それは、日本人科学者ノーベル賞受賞者数が相対的に見て少ない点にも表れている。アメリカノーベル賞受賞者の多くは移民第一世代かその子であるしか日本人科学者には移民やその子孫はほとんどいないし、日本全体でもそうだ。外国移民するにせよ高度なイノベーションに取り組むにせよ、進んでリスクを取り、非常に新しいことに挑戦する点が共通するので、移民ノーベル賞に関連性があるのは驚くべきことではない。」

 「もし日本移民を再評価すると決めるなら、カナダ政策がいい手本となるだろう。カナダでは移民申請者を評価する際、自国にとって潜在的価値があるかどうかという基準を重視している。」

(「近年、移民受け入れ拡大を求めた大臣が数人いる。たとえば、地方創生担当大臣だった石破茂は『かつて日本人は、南米に、あるいは北米に多くの人々が移民し、困難な状況の中で、日本人の誇りを持ちながら、そこの国民に溶け込み、役割をはたしてきた。日本人外国に行ってやってきたのに、外国人日本に来るのはだめだというのは、おかしいと思う』と述べた。」)

中国韓国(pp.132-136)

 「第二次世界大戦前と大戦中に、日本アジア諸国、とりわけ中国朝鮮半島に対して非道なおこないをした。」「今日日本ではこれらの虐殺否定する言説が広まっているが、当時の状況は中国人のみならず中国にいた外国人日本人兵士自身撮影した写真にしっかりと記録されている。」

 「その結果、今日中国および韓国には反日感情蔓延している。中国人や韓国から見れば、日本人戦時中の残虐行為について適切に認識することも謝罪することも遺憾の意を表明することもしていない。」「中国北朝鮮韓国はいずれも装備の行き届いた大規模な軍隊保有しているが、日本自衛隊アメリカ押し付け現行憲法今日日本に広がった平和主義のおかげで小規模だ。」「これらの事実を重ね合わせると、長期的には日本にとって大きな危険を招きかねないと私には思える。」

 日本中国韓国とその指導者をよく知る、元シンガポール首相リー・クアンユーは、「ドイツ人と異なり、日本人自分たちシステムの中にある毒を浄化することも取り除くこともしていない。彼らは過去の過ちについて自国若者に教えていない。橋本龍太郎首相は…中国韓国国民日本指導者に臨むような謝罪は行わなかった。…どういうわけか日本人は謝りたがらないのである。…日本人南京大虐殺が起こったことを否定し…満州において…捕虜を生きたまま残酷人体実験に使ったことを否定した。いずれの事例においても、日本人自身の記録から反論余地のない証拠が出てきてようやく、彼らは不承不承ながら事実を認めた。今日日本人の態度は将来の行動を暗示している。もし彼らが過去を恥じるなら、それを繰り返す可能性は低くなるだろう」と評価している。

 「私の日本人学生の数人は、そして多くの日本人が、日本の政治家がこれまで述べた数々の謝罪言葉を挙げ『日本はすでに十分に謝ったのではないか?』という疑問を述べる。短い答えは『ノー』だ。なぜならそれらの謝罪には真実味がなく、日本責任を最小化、あるいは否定する言葉が混ぜられているからだ。」

 「自国最近歴史がもたらしたものへの対応について、…ドイツ手法がかつての敵国をおおむね納得させているのに対して、日本手法は主要な犠牲者である中国韓国を納得させ損ねているのはなぜだろうか」。日本ドイツが実際に行ったように「首相南京を訪れ、中国人が見守る中でひざまずき、戦時中日本軍による虐殺行為への許しを乞うてはどうだろうか。日本児童国内および南京サンダカンバターンなど海外のこうした場所修学旅行遠足で定期的に訪れるようにしてはどうだろうか。あるいは、戦争犠牲者としての日本よりも、戦時中日本の残虐行為犠牲となった非日本人を描くことにもっと力を入れてはどうだろうか」

自然資源管理(pp.136-140)

 森林資源水産資源の縮小は「世界最大の自然資源輸入国である日本にとって喫緊問題だ。資源が「世界中で枯渇すれば、日本は真っ先にその影響を被る国になるだろう。また、日本食糧輸入依存度の高い大国でもある。」となれば「自己利益の追求から世界に先駆けて持続可能資源活用国を目指すはずだと期待する向きもあるだろう。」

 「奇妙なことに、現実は逆である。」「日本海外の持続的な資源政策に対して、指示はもっとも小さく、反対はもっとも大きい先進国であるようだ。」

 「遠洋漁業捕鯨に関するまっとうな規制についても日本は反対勢力の先頭に立っている。」例えば、持続可能クロマグロの漁獲のために「クロマグロワシントン条約対象リストに載せる提案2010年におこなわれたとき日本提案主唱者ではなかった。それどころか、この提案が見送られたとき日本はそれを外交的勝利とみなした」。また、日本は「世界最大かつ強硬捕鯨推進国であ」り、国際捕鯨調査会の割り当て数を大きく超えて捕鯨を行っている。しかも、「鯨肉人間用というよりむしろドッグフード肥料無駄遣いされ」、捕鯨への大きな補助金のために「捕鯨の維持は日本にとって経済的損失」であるにもかかわらずだ。

 「なぜ日本はこのような立場を取るのだろうか?日本人の友人たちが述べる三つの説明は以下の通りだ。第一に、日本人自然調和して暮らしているという自己イメージを大切にしており、伝統的に国内林業漁業においては持続的に管理してきたが、現在搾取している海外森林漁業資源についてはその限りではない。第二に、日本人国民自尊心国際的圧力に屈することを嫌う。とくにグリーンピースシー・シェパード…に屈したと見られたくないのだ。日本捕鯨推進というより『反・反捕鯨』だといえるかもしれない。最後に、日本には国内資源に限りがあるという強い意識があるために、過去百四十年にわたって…世界自然資源を無制限に利用する権利を主張してきた。」

 「日本人ではないが日本を愛する私のような人間にとっては、海外資源の持続可能な利用に反対する日本の態度は悲しく、自己破滅的にみえる。」

 「もし私が日本を憎み、戦争以外の方法破滅させたいと思う国の邪悪独裁者だったなら、いま日本がみずからおこなっているとおりのことをするだろう。つまり日本依存している海外資源破壊するのである。」

2008-07-20

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