2018-11-07

村上くんのために保存しておいてあげる

大学時代マテリアル系を専攻していた。

その中でも結構有名というか、研究内容を言ったら特定される分野なので詳細は省く。

GPAバトルを制し新進気鋭の研究室に入った俺を待ち受けていたのは、今考えても普通に訴訟もんだろというレベルブラックな「現場」であった。

同業者の方はご存知と思うが、マテリアルというのは日本がかなり強い分野であり企業の注目度も高く、

なおかつ実用度が非常に高いため「金の成る木」としてバイオと並んで世界との競争が激しい分野でもある(らしい)

比較する先が世界なので、当然世界レベル努力と実績を要求されることは入って知った。

20時間ぶっ続けでサンプル作った実験結果を当日のゼミで発表すると「もうちょっと綺麗に資料作れないの?」とか平気で言ってくる准教授

真面目で頑張り屋なのにインパクトファクターを稼げずドクターを6年続けて鬱になった先輩。

めっちゃ上から目線日本国の公的手続きの手助けを求めてくる外人ポスドク

当たり前だがすべての研究無償ボランティアであり、どころか金払って受ける教育なのだが、

求められるのは仕事としてのクオリティ。遊びでやってんじゃないんだよ!

頑張って書いた論文ファーストオーサーはもちろん…教授「俺だよ」

いろいろなことに嫌気がさした俺はアカデミックの道を早々に諦め就活を頑張ることにした。

教授からは「好きでやってる研究だろう。好きなことにすら不真面目な君が社会に出てやっていける訳がない(意訳:研究室で奴隷続けろ)」と全力で人格否定を受けつつ、

少子化の影響もあってか、まあまあ有名といえる程度の大手企業にどうにか滑り込むことができた。

会社に入るとまず待っていたのは教育に次ぐ教育だった。

今時小学生でもわかるだろというようなレベル情報処理の授業、

中学生国語でやるだろというようなレベルビジネス作文の授業、

理系なら全員知ってるだろという感じの電気の授業、

あらゆる授業を仕事として受けることになる。もちろんおちんぎんが発生する。

すべての課題を秒速でクリアし、定時より手前で帰る日々がしばらく続く。

まり簡単なので研修よりは同期とのレクリエーション目的なのだろうと勝手忖度していた。

遊びながら金がもらえるとかいう夢のような環境である

ある程度の教育を終えると晴れて部署配属となる。部署SE部隊

情報出身ではない俺だったが、趣味プログラミングはかじっていたし興味もあった。

入ってすぐの仕事はあるシステム(社員が使っている自作ツール)の改修だった。

新卒簡単仕事を与えつつ、プログラミングスキルを伸ばしつつ、自分たち仕事効率化できる、という上手い采配である

プログラミングはかじっていたとはいものの、ゲームを作ろうとして挫折したり、あとはHelloWorldレベルくらいで、

まともに運用したのは精々MATLABのような特殊ものだけ。所謂プログラミング言語で利用者がいるソフトを触るのは初体験だった。

詰まっては調べを繰り返しながらも趣味の延長のような感じで楽しく取り組むことができ、上司の引いた工程3分の1で完了した。

ここで上司から10年に1人の逸材」の評価を賜る。

俺は平静を装いつつも内心歓喜した。

なにせ不真面目学生である俺は教授から目出しをくらったこしかなかったのだ。久々に得られた自己肯定感である

これはいけると判断したのか、同じく社内ツール改修の仕事をいくつか振られる。

片付けていくうち、俺のPCスキルが先輩社員と比べても高い部類にいることに気付く。

自作ツールを社内LANで動かすとファイヤーウォールに引っかかったりなどするが、先輩社員がそれを対処できないのだ。

どうやらそういう感じで動かなくなり、放置されていた部分を俺が解決しているらしい。

だがWindowsFWの設定なんてNasneアニメを撮りためたりFPS海外鯖に接続するようなヒキニートにとっては半ば常識である

陽キャパリピっぽい先輩が知らなくても無理はないが、SE部隊で長年社会人やっておいてわからないことには軽く失望する。

プログラミング派遣仕事とは言っても使役する側に知識がないのではやはり困ると思う。

ちょうどその時、働き方改革かい名目で各職場独自でやっていたシステム統合し、

営業所独自に動いていた勤休登録システムが全社的に統一されることになった。

新しいシステムUIモダンで、前のよりぶっちゃけ使いやすくすぐに慣れた。

だが先輩は勝手がわからないらしく、俺が先輩に質問する回数が減るのと同時に、先輩が俺に質問する回数が増えた。

働き方改革の魔手は勤休にとどまらず、いろいろな社内システム統合されてゆく。

頼られる頻度は増し、頼ってくる相手も先輩だけではなくなってきた。どこから噂を聞いたのか他部署の人から質問の内線が来るのである

上司に聞けや。知っとると思うがワイ新卒やぞ?と思いながら(つーか言いながら)回答する。

まあ新しいものには若い方が強いみたいな感覚理解できるが同期に聞けよ←残念同期からも同じ内容の質問が飛んでくる‥現実です‥これが現実‥!

このあたりで自己肯定感よりぶっちゃけ不信感を感じることが多くなってくる。

かに中学生以降は家族でも学校でもパソコンに強いニキではあったが、

まさか面接選抜されたひとだけで構成されている筈の会社パソコンに強いニキをやるとは思わなかったのだ。

まあそんな人が一人もいないはずがないので、多分、本当に詳しい人はうちではなく客先に居て、かつ忙しいということだろうと思うが。

さすがに面倒に感じていたある時、PukiWiki社員編集して公開できる神システムを見つける。

当然というべきか、数年前に何某が色々編集していた痕跡だけを残し、現在廃墟と化していた。が、サービスは生きていた。

ゲーム攻略を頑張って書き込んでいた時代を思い出しつつ、新しい社内システムの利用法を懇切丁寧に解説するWikiを作る。

これが大受けし営業所内でも一躍有名人に。

上司からは「その辺の社員100人より貴重」「絶対やめないでくれ」的な評価を賜る。

社内ツールの使い方記述しただけで褒められる異常事態に少しずつ価値観麻痺してくる。

ここらで満を持して炎上プロジェクトに投入される。

炎上の原因は、代々伝わる秘伝のソースと化したソースだった。

仕様書がないのはもちろん、そもそも社内環境ビルドできない、なんと.NETではないVBである

当たり前のように1ファイル50kstepを超えるソースがずらずら並ぶ様は威圧感すら感じさせた。

そんなのが現役で動いていたんだお客様セキュリティとは

上司を含めて誰もソケット通信が分からない中、元々チャットツールを作ろうとして失敗した経験のある俺は、

先輩が3人×3時間=9工数かけて解決しなかったあるバグをちょいとググっただけで10分で解決

まあぶっちゃけますエンディアン系のバグである

というようになんかやたらと活躍し、どうにかプロジェクトが終わるころには上司評価天元突破した。

地味に詳しい人は他にもいる(外にいて忙しい)ということもわかり推測は当たっている様だった。

会社に入って以降「君は社会ではやっていけない」と言った教授言葉信憑性は下がる一方である

なにせ主観的にはヒキオタがヒキオタっぽいことをやっているだけで褒められるのだ。

募る違和感の中、経団連会長室にメールが導入されたニュースと、そのコメントを見て気付いた。

俺は異世界転生したのだと。

そう、俺の就職先は、パソコン強いニキが崇め奉られる異世界だったのだ。

異世界なので何やっても訳の分からない褒め方をされる。

自席で堂々とYouTubeを見てたときには流石に上司に苦言を呈されたのだが

ゼネラリストには情報収集も必要」と言い訳すると「おお…」「さすが村上君だ…」となって許された。(マジ)

ちなみにマーケット調査名目業務YouTuberを見ることを冗談のつもりで提案したら、真面目に検討された。(マジ)

他の人にはありえないが俺だけ許されるところに落ち着くのではないだろうか。

うける。

anond:20181107032904

正直言って危機感はある。

世界と戦うを標榜していただけあって確かに研究室のレベルは高かったと思う。非情報系でもプログラミングはできて当たり前だったし。

この会社は(最近一定以上大きければどこもそうじゃないかと思うが)半官半民みたいなもんなので、皆どことなのんびりと仕事をしているように見える。

その結果、当然ながら競争力が落ちる。落ちはするが、会社組織は存続し続ける。

そして存続し続ける会社の中には「異世界」が広がっているのである

他の会社もそうだと思うが、各地で頑張ってる派遣プログラマーの方がよほど技術力が高い状態

大丈夫日本大丈夫か弊社。

まあでも転生した側としては居心地いいのでこの異世界に骨を埋めるのも悪くないと思っている。

  • なっっっっっっっっっっっっっっっっっっっが

  • 村上は普通の名前過ぎるから、別にバレても…とは思うが。業界が狭そうだから判るのかな?判っても問題無くない?そうでも無いか…

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