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2021-05-25

自衛隊コロナ制圧に大活躍して憲法改正解散」の流れが完成した

元増田見立て自分見立ては、半分合ってて半分違う。「朝日毎日共通の敵にして叩く」というのは計画的なことではなくて、単に偶発的なイベントだと思う。セキュリティ関連法的にはこれで両メディア法的責任を問うのは難しく、朝日/毎日叩きの界隈では(サンゴKYのように)長く言及されても、世間的には尻すぼみの話題になるだろう。

官邸にとってはともかく「自衛隊活躍させる」ことが重要だった

増田の書いてることで的を射ていると思うのは、「今後何とかワクチン接種が進む度に防衛省は称賛され」の部分だ。今回の自衛隊による大規模接種プロジェクトには、第一にこの効果を狙った政治戦略メディア戦略という側面がある。そしてそれは、より大きな政権目的と結びついている。

そもそもこのプロジェクトはどう始まったか産経報道(5/17)によれば、1月下旬に「菅義偉首相の「特命」を受け、杉田和博官房副長官トップ防衛省厚生労働省総務省などから集まった約10人のチームが編成された」が、その事実は外部には3ヵ月以上秘密にされていた。理由は「自治体の接種態勢が緩む懸念もあったこから計画には箝口(かんこう)令が敷かれた」からだ。そして「河野太郎ワクチン担当相とは、異なるライン計画は進められた」。

常識的に言えば、相当めちゃくちゃなやり方だ。自治体側のラインと国側の特命チームラインがあって、それぞれが互いに情報交換せず、箝口令まで敷いて、完全に二重行政のまま進んでいた。しか自衛隊自身が大規模接種のためのリソースを潤沢に持っているというわけではなく、医療従事者の一部とイベント運営全体はそれぞれ医療派遣会社旅行代理店外注する形になっている。なんでこんな不自然なことをしたのか。

自民党にとって一番重要なのは五輪でもコロナでもなく今年の衆院選

この問題もっと大きな枠組で見る必要がある。自民党の中枢や国会議員から見て、今年最大のイベントは何か。それは五輪開催でもないし、コロナ鎮圧でもない。衆議院選挙だ。このまま菅首相解散を行わなければ、2021年10月21日に衆議院任期満了となり、総選挙となる。そしてよく知られている通り、戦後に行われた25回の衆議院選挙で、任期満了による選挙は1回しかない(1976年ロッキード選挙自民結党後初めての過半数割れ)。支持率が上がる政策をぶち上げてから解散権を行使できるのは政権与党が持つ最大の武器で、逆に任期満了による選挙、あるいはその近くでの追い込まれ解散では与党が負ける、というジンクス政界には根強くある。

から自民党は何としても任期満了前に解散総選挙に挑みたい。といって、むやみに「大義なき解散」はできない。党内でも菅降ろしマグマは燻っていて、スジを整えなければ解散の流れが(ロッキード選挙時の三木内閣のように)党内で押し止められる可能性もある。だから国民に好感されるネタをぶら下げて「国民に広く信を問う」体裁必要になる。そして今年は、平時では難しいが、今だからこそ「国民に広く信を問う」ことが可能テーマがある。そう、憲法改正だ。

どういう切り口でやるのか。自民党の憲法改正提案のページでは、4つの項目を「変えたい」と言っている。

  1. 安全保障にかかわる「自衛隊」の明記と「自衛措置」の言及
  2. 大地震が発生した時などの緊急事態対応を強化
  3. 参議院の合区解消、各都道府県から1人以上選出
  4. 家庭の経済的事情に左右されない教育環境の充実

参議院の合区解消/家庭の経済的事情に左右されない教育環境の充実

このうち一番下の「家庭の経済的事情に左右されない教育環境の充実」については、大きな方向性としては反対する国民は少ないだろう。下から2番目の「参議院の合区解消」は、一種のゲリマダリング(自党有利に選挙区を改編すること)だ。現在合区になっている「鳥取島根」と「徳島高知」(いずれも自民党地盤)を分割することで自民党議席を増やせるという露骨党利党略案件で、与党公明党にも疑問視され、日経でも厳しい批判を受け産経にすら叩かれるという相当ろくでもない代物だ。これはこれで厳しく批判されるべきだろうが、いま注目すべきはその上の2つのほうだ。

安全保障にかかわる「自衛隊」の明記と「自衛措置」の言及

これは後期の安倍内閣が目指していた「自衛隊明記改憲」という奴そのまんまだ。統計の取り方で国民賛否がかなりブレるこの案件だが、新型コロナワクチン接種に自衛隊を担ぎ出した時点で、勝負はほぼ決まった各自治体のワクチン接種が(主には国側のロジスティクス問題で)遅々として進まない中、国と自衛隊が大規模接種をアレンジして、1日100万人の接種水準を達成する。計画通りに行けば、高齢者たちは国と自衛隊に大いに感謝し、国民全体に「やっぱり自衛隊を大切にしよう」という雰囲気が醸成されていくだろう。

おそらく内閣岸信夫防衛大臣はこのゴールを見据えて、ワクチン特命チームPT以外にもさまざまな仕込みをしてきた。大臣就任した去年末から今年5月にかけて、民放テレビ枠で自衛隊露出が確実に増えている防衛庁自衛隊の全面協力による番組コーナーが、ゴールデン帯で何度も放映されている。これまでの自衛隊では情報公開を渋ったような基地構造や訓練・兵装なども惜しみなく紹介し、番組側は「初潜入」「初公開」を謳って大々的にアピールする。元旦放映の「鉄腕DASH!」、幾度となく自衛隊をフィーチャーし、岸大臣自らも出演した「沸騰ワード」。さら今日(5/24)は「深イイ話」で護衛艦「やまぎり」トップ女性艦長密着取材をやる。おそらくあと3ヵ月程度は、こういう防衛庁自衛隊メディア露出が続くだろう。

防衛省自衛隊機微防衛関連情報ネタにして番組制作者を惹き付け、「選挙まで最長でもあと数ヶ月」という今のタイミングを狙って、国民自衛隊との接触機会を高める。人間接触回数が多い対象に親しみを感じるようになることが知られている(ザイアンス効果)。「親しみやす自衛隊が、コロナ制圧でも頑張ってくれた」。「ワクチンを打ちに行ったおじいちゃんに、自衛隊の人が敬礼してくれた」。こういう風に感謝と感動と親近感をトリガーする建て付けさえ成立していれば、多少のアラはどうとでもなる。

大地震が発生した時などの緊急事態対応を強化

新型コロナウイルス感染症の第4波拡大と変異株の急増に伴って叫ばれるようになった「私権制限」がここにつながる。「今の国や自治体権限では効果的な営業抑制や人流抑制ができない。法的な根拠正当性をもって、ロックダウンをはじめとする強力な感染症抑制政策実施するには、こうした緊急時一定私権制限可能にするような憲法改正必要だ」---5月になって、そんな議論が盛んにされるようになった(たとえば、いま話題高橋洋一こんなことを言っている)。

私権制限論については橋下徹吉村府知事など大阪維新筋が積極的に発信しているが(ちなみに高橋洋一政策工房経由で大阪維新と繋がっている)、政府与党も折に触れて「現在政府権限では、これ以上の対策は無理」という言い方をしてきた。もちろん感染拡大は一面では政府失策でもあるのだが、エクスキューズとして「私権制限ができないのが悪い」と言い張れば、国民の不満の矛先は、政府失策ではなく法の不備、つまり「現憲法における強すぎる私権保護」に向かう。実際、変異株が急増して切迫感が高まるとともに、私権制限をめぐる国民感情は明らかに「NO」から「YES」に傾きつつある

憲法改正解散」の見通しと障害

こう考えてみると「合区解消」以外の3テーマについては、過半数国民「YES」と考えるような情勢が整いつつある。国と自衛隊主導でのワクチン接種拡大が「自衛隊明記論」を後押しし、変異感染の増加と医療逼迫により「私権制限導入」が現実的選択肢として受け入れられていく。平時には国民賛同を得るのが難しい私権制限論だが、コロナ禍真っ直中の今だからこそ「アリ」なのだ

残る課題タイミングだ。高齢者へのワクチン接種が一巡し、パラリンピック(8/24-9/5)も終了した9月中旬頃。おそらく菅義偉首相衆議院任期満了の1ヵ月前に「憲法改正について国民の信を問う」として衆議院解散に踏み切り、そこで大勝して、自民党改正案上記4項目を盛り込んだ形で憲法改正道筋をつける。第二次安倍政権が9年かけても実行できなかった憲法改正を、安倍元首相実弟岸信夫大臣、そして昵懇の仲である大阪維新の会をうまく使うことで達成するわけだ。

ただ、このシナリオが成立するにはいくつか条件がある。国と自衛隊による大規模接種プロジェクト破綻なく進行し、8末までに(自民公明の大票田である高齢者層への接種を完了すること。オリンピックパラリンピックを、形式はどうあれ予定通りの日程で開催すること。コロナのこれ以上の拡大を選挙時点までうまく抑制すること。このどれかが破綻すれば、選挙戦略も大幅に見直さざるを得ない。あとはお手並み拝見というところだが、コロナの推移を見るに、正直かなり暗雲が立ちこめてきた感はある。

anond:20210524153356

 
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