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2012-07-28

2012年上半期ラノツイ杯(新規) レーベル

0票のやつを見たかったついでにまとめた。

電撃文庫
15票楽聖少女
14票エスケヱプ・スピヰド
13票ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン
8票ウィザード&ウォーリアー・ウィズマネー
7票VS!! ―正義の味方を倒すには―
6票あなたの街の都市伝鬼!
4票ミニッツ ~一分間の絶対時間~
4票楽園島からの脱出
3票乙女ゲーの攻略対象になりました…。
3票天使の3P!
2票明日から俺らがやってきた
2票6 ―ゼクス
2票バニッシュ・ドロップス! 家出中アイドルをフォローしますか?
2票シュガーシスター 1/2
1票ようこそ、フェアリーズ・インへ!
1票勇者には勝てない
1票らぶなどーる!
1票チェンライ・エクスプレス
1票ハレルヤ・ヴァンプ
0票金は彼女の回りもの
0票魔王のしもべがあらわれた!
0票オズダイヤ使い
0票アンダーランドドッグ
0票ベッドルームで召し上がれ
0票いるか寮の少女たちは恋できない
0票ちびとも!
0票インテリビレッジの座敷童
0票デュアルイレイザー
0票小悪魔ちゃんとMP0の少年
0票筋肉の神マッスル
0票ペルソナ×探偵NAOTO
0票朝岡ひよりのドキドキカルテ
0票きみのぱんつを守りたい!
角川スニーカー文庫
7票サイハテ救世主
5票クロス×レガリア
4票俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している
1票ベイビー、グッドモーニング
0票機動戦士ガンダムAGE
0票未来日記
0票ストライクウィッチーズ アフリカ魔女 ケイズ・リポート
0票ここから脱出たければ恋しあえっ
富士見ファンタジア文庫
5票スカイワールド
3票消えちゃえばいいのに
3票対魔導学園35試験小隊
1票勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。
1票期間限定いもうと
1票グロリアハーツ
1票シークレット・ハニー
0票いもうとコンプレックス! ―IC―
0票絶対服従カノジョ
0票ライジン×ライジン RISING×RYDEEN
0票鳩子さんとラブコメ
0票姫狐の召使い
0票双界のアトモスフィア
0票ルースターズ
0票デーゲンメイデン 台場、両断
講談社ラノベ文庫
1票小夜音はあくまで小悪魔です!?
1票デッドエンドラプソディ
0票スクールデモクラシー
0票好敵手オンリーワン
0票この素晴らしく不幸で幸せ世界と僕と!
0票いけめん彼女 ~学校一のイケメン告白された俺~
0票まお×にん!
0票雨乞い部っ!
0票FAIRY TAIL 心に宿るcolor
0票謎の彼女X 謎の小説版
一迅社文庫
4票きゃんでぃっど 乙女カメラ地獄突き
3票誰よりも優しいあなたのために
2票覚えてないけど、キミが好き
1票死にたくなければ××! 脱ぐのは絶対にイヤ!
1票から少女はおもいでをたべる
0票まほねーず☆とらいあんぐる
0票鈍感な僕と鋭い彼女
0票この家に勇者様もしくは救世主さまはいらっしゃいませんか?!
0票JSが俺を取り合って大変なことになっています
0票淫魔に狙われた俺のDTが危険なんだが
0票XIII番の魔符詠姫
0票あくまでも、妹が欲しいんです。
0票憧れのあの娘が突然迫ってくるんだが、どうしたらいい?
0票八丈島と、魔女の夏
0票世界魔法使いがうちに居候中です!?
ファミ通文庫
9票も女会の不適切な日常
8票龍ヶ嬢七々々の埋蔵金
7票黒鋼の魔紋修復士
3票デキる神になります
2票ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件
1票キュージュツカ!
1票SUSHI-BU!
1票はなぢ店長じゃ、だめですか?
1票武装中学生2045 ―夏―
1票バタフライ×ブレイクダウン 君が世界を救うというなら
0票明智少年のこじつけ
0票アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG
0票連鎖カルネアデス
0票みぃくんのちくわぶ(+俺)
0票フォトカノ ペンタプリズムメモリーズ
0票うさぎロボ 謎の妹と俺たちのUFO探索記
0票夢見のサクヤ 死の予知はキスで訪れる
ガガガ文庫
14票森の魔獣に花束
6票俺、ツインテールになります
5票飛べない蝶と空の鯱 ~たゆたう島の郵便箱~
3票ボンクラーズドントクライ
3票空知らぬ虹の解放区
3票人生
1票猫にはなれないご職業
0票競泳戦隊ミズギーズ
0票こわれた人々
このライトノベルがすごい文庫
8票魔法少女育成計画
2票しずまれ!俺の左腕
1票オカルトリック
スーパーダッシュ文庫
1票魔王な使い魔と魔法少女
0票ソウル・キャリバー 魂を刃にこめて
0票アプローチアプローチ そして彼女は救いを言った。
0票銀のプロゲーマー
HJ文庫
2票月花の歌姫と魔技の王
1票ヤツの眼鏡は伊達じゃない
1票吼える魔竜の捕喰作法
0票アウトスタンディング ―常識ハズレな奴ら―
0票私のために創りなさい!
0票シンマと世界と嫁フラグ ~びっくりするほどハーレムです~
0票タタリ・ブレイカー弑子
0票前門の魔女っ子オタク?)、後門の守護霊さま(やっぱり役立たず)
0票悪に堕ちたら美少女まみれで大勝利!!
GA文庫
7票異能バトルは日常系の中で
2票神曲奏界ポリフォニカ エイフォニック・ソングバード
0票眠らない魔王クロノのセカイ
0票ラパン
0票うちの居候世界を掌握している!
0票反抗期の妹を魔王の力で支配してみた。
0票アリス×アカデミィ ―彼女のついたウソ
0票ありす×ユニバース ―キャプテンはJK―
0票木崎くんと呼ばないで!
0票おまえは私の聖剣です。
0票彼女の恋が放してくれない! 俺たちは手錠で繋がっているだけの健全な友達です。
0票妹は僕に手を出すなっ!
メディアワークス文庫
1票金星で待っている
1票アウター×トップ
1票ネバー×エンド×ロール ~巡る未来の記憶~
0票不思議絵師 蓮十 江戸異聞譚
0票ソラの星
0票源氏 物の怪語り
0票時間の落とし物
0票NNOCENT DESPERADO
0票月だけが、私のしていることを見おろしていた。
0票侵略教師星人ユーマ
0票奇祭狂想曲
0票シャロン 死者は神を語らない
0票ラフィル 竜ヶ坂商店街オーケストラ英雄
0票円周率殺人事件
0票花の佳音
0票サクラの音がきこえる あるピアニストが遺した、パルティータ第二番ニ短調シャコンヌ
0票夜明けを知らずに ―天誅組余話―
0票僕たちはドクターじゃない
0票鴨川貴族邸宅の茶飯事 恋する乙女先斗町通二条上ル
0票還りの会で言ってやる
MF文庫J
9票ノーゲームノーライフ ゲーマー兄妹がファンタジー世界を征服するそうです
3票そんな遊びはいけません! ~君がいると風紀が乱れる
1票あおはるっ!
1票あの夏で待ってる
0票俺が彼女に迫られて、妹が怒ってる?
0票輪廻のラグランジェ
0票アクエリオンEVOL
0票剣神の継承
コバルト文庫
1票英国マザーグース物語
0票光源氏花嫁
0票レドラナール恋物語 
0票貴公子ラッドの受難 
0票ニートメイド花嫁
その他
2票南極点のピアピア動画
2票RAIL WARS
1票マージナルオペレーション
1票柳生浪句剣
1票妹がスーパー戦隊に就職しました
1票ノートより安い恋
1票君が衛生兵で歩兵が俺で

2011-06-27

BLと在日

注:加筆修正しました

最近商業BL作品ばっかり読んでるから、たまにはネット同人作品も読もうかなと思い立って、某ジャンルのサーチから二次創作サイト巡りをしていたときのこと。リンクを辿っていった先に、管理人韓国人であることを明記しているBL小説サイトがあった。日本語ネイティブじゃないとこれはムリだろと思わせる豊かな語彙の小説や日記・掲示板の内容から判断するに留学生やニューカマーなどではなくて、日本で生まれ育った在日韓国人の方であるようだった。

なんかね、これちょっとびっくりしたんですよ。在日の人もBL書くんだなぁって。

いや、こんなにもアニメ漫画の氾濫する日本社会で生きている以上、日本人だろうが外国人だろうがオタク趣味に染まる人は染まるのが当然だろうし、中にはヤオイ二次創作に興味を持って腐女子腐男子になる在日コリアンがいるってのも理性では理解しているんだけど。実際目にしてみると、なんかこう、感慨深いものがありましてね。

そうかー、在日のBL好きってのもやっぱりいるもんなんだなー、っていうか他にもいるけど明かしてないんだろうなー、としみじみしてたんですが、途中でふと思い出した。あれ、ちょっと待てよ?よく考えてみれば、数少ないながら今までにも在日韓国人が登場するBLがあったりするし、在日朝鮮人のBL作家というのもいたりするんじゃないの?そういえば私、そういうの読んだことあったような……、と。

というわけで、今回はBLと在日と私というテーマで今まで読んだ作品を振り返ってみようと思う。長いよー。私が以下で言及している作品には18禁のものもありますのでお気をつけください。




倉科るり=金蓮花   在日のBL小説家

倉科るりというペンネームで、商業誌からBLを出版している小説家がいる。正確にはいた、と言うべきかもしれない。著作の中には絶版になっているものも多く、また1996年の『王様夏休み』を最後に10年以上発刊はしていないようだから公式サイトにも「倉科るりの商業活動は諸々の事情から不可能だと思います時間がないのです。」と書いてあるので、今後も商業誌でBL作品を発表する可能性は限りなく低いと思う。

けれど、在日とBLというテーマを語るなら、彼女を外すことはできない。

実はこの作家さんは、コバルト文庫金蓮花という名義で少女小説も書いている。むしろ金蓮花(きんれんか)というペンネームの方が世間的には通りがいいだろう。私も残念ながら倉科るり名義の本は読んだことがないけれど、金蓮花名義の本は小中学生の頃にわりと読んでいる。『銀葉亭茶話』、『水の都物語』、『月の系譜』は何度も読み返すくらい好きだった。私が金蓮花=倉科るりというのを知ったのは大学生になってからだったけれど、BL読者やコバルト読者には結構有名な情報だったようで、ネット検索するとペンネームを使い分けるようになった経緯や、その他もろもろの噂が出てくる。それらの噂がどこまで本当かわからないのでここでは紹介しない。

さて、金蓮花は1962年生まれの在日朝鮮人3世である東京に生まれ育ち、大学も都内の小平市にある朝鮮大学師範教育学部美術科を卒業した。作家デビューは1994年、『銀葉亭茶話-金剛山綺譚-』で集英社の第23回コバルトノベル大賞を受賞したのがきっかけだった。この『銀葉亭茶話』シリーズは、朝鮮半島舞台仙人精霊、竜や虎、人間たちが織り成す恋愛を描いた朝鮮ファンタジー小説で、仙境にある一軒の茶屋銀葉亭にさまざまな客が訪れ、店主の李月流(り・うぉるりゅ)に身の上話を打ち明ける、という趣向になっている。

金剛山綺譚』の金剛山は、もちろん朝鮮半島に実在する景勝地金剛山をさす。韓国人外国人北朝鮮国内金剛山観光地区に観光をしに行くニュースを見たことのある人は多いはずだ。『銀葉亭茶話』シリーズ物語に登場する実在の固有名詞は地名だけではない。例えば『蕾姫綺譚』では重要なキャラクターとして李氏朝鮮建国の王李成桂が登場するし、『舞姫打鈴』のヒーロー新羅英雄金庚信である

ところで、学校で歴史を習う前に本シリーズを読んだ影響で、私は現在でも「新羅」という単語を見ると反射的に「しらぎ」ではなく「しるら」と読んでしまうし、「李成桂」を見ると「りせいけい」ではなく「りそんげ」と読んでしまう。私にとって、このシリーズこそが生まれて初めて触れた‘朝鮮文化’なのだった。馬鹿子供だったので現役読者だった小学生の頃は朝鮮半島というのがどこにあるのか知らなかったし(私は当時本気で外国=アメリカであり、世界には日本アメリカの二国しかないのだと思っていた)、儒教文化だとか在日朝鮮人だとかさっぱり理解できない上に興味もなかったので読み飛ばしていたけれど、雪華(そら)や明蘭(みょんらん)という美しい漢字と不思議な響きの名前、美味しそうなチヂミ、ふわりとチョゴリを広げて鞦韆をこぐ明朗な少女、霊山の天辺に位置する天池(ちょんじ)の聖水……どこか好奇心を刺激する異国のイメージの数々を私は大いに楽しんだのだった。特に金剛山の壮大な瀑布や峰々が鮮やかに染まる絢爛豪華な秋の描写などは、幼心にうっとりするような綺麗な文章だなぁとドキドキしながら読んでいた。金蓮花という作家のおかげで、私は隣国と幸福な出会い方をしたのではないかと思っている。そういう意味で、『銀葉亭茶話』は私にとって印象深いお話なのだった。

金蓮花自身にとっても、作家として第一歩を踏み出したシリーズであると同時に、祖国を舞台にしたロマンスであることを考えれば、『銀葉亭茶話』はやはり特別思い入れの深い作品なんじゃないだろうか。

彼女の著作のあとがきでは、自らのルーツを意識した話題が多い。北朝鮮に観光に行って金剛山の絶景に感動した話、伯母が北朝鮮に帰国した話、親戚が日本北朝鮮と中国に住んでいるという話、子どもたちの通う朝鮮学校お祭りのためPTAとして準備に奔走する話など。

そんな彼女がBL小説を書くときは、金蓮花ではなく倉科るりというペンネームを用いた。倉科るり名義の本では特に朝鮮半島と関連のある物語を書いたりはしていないようだ。少女小説コバルト作家としての自分とをきっちり分けたかったのかもしれないし、儒教を尊ぶ在日コミュニティ価値観からするとさすがにBLを在日朝鮮人と明かしている金蓮花名義で出すのは難しかったのかもしれない。少女小説家としてデビューする際も家族からかなり強硬に反対されたと聞く。少女小説を書いているのがバレて家族会議土下座までしたそうな。ましてやBLをや。

まぁ、BLを書くときと少女小説ラノベや一般漫画を書くときでペンネームを変えるのはbasso秋月こお榎田尤利もやっていることで、金蓮花に限った話ではないけれど、少女小説では在日ネタをふんだんに出していた人がBLではそれを一切出さないというのも興味深い話ではある。

ちなみに金蓮花名義の本に一切男性同士の恋愛や性愛が出てこないか、というとそういうわけでもない。

ここでちょっと萌え語りをさせてもらうと、『銀葉亭茶話』シリーズで私が一番好きなキャラクターは長白君(ちゃんべつくん)だった。彼は、朝鮮半島の付け根、北朝鮮と中国の国境にまたがる山(朝鮮語では白頭山中国語では長白山)の守護仙人精霊だったかもしれない)で、シリーズ通してのキーパーソンである李氏(注:男性)に想いを寄せている男性である。李氏に冷たく拒絶されたり、周囲の神仙たちに揶揄されたりしつつも、変わらず李氏に暖かい真心を捧げ続けている好漢なのだ。李氏には他に想い人がいるのでまず間違いなく長白君の恋が成就することはないのだろうが、私は彼の男らしい包容力にときめいたのでぜひ幸せになってもらいたいと思っている。別に相手は李氏じゃなくてもいいから。というか長白君には楓英とか緋鯉の精みたいな豪胆で誠実な男性とか似合うと思うんだよね。




高城響、鷹匠早紀    在日の攻め

studio may-beを結成して仕事をしている高城響と鷹匠早紀は、BLゲーム乙女ゲームシナリオライターとして活動している他に、連名でBL小説を書いて出版したり、漫画原作をしたりしている。音楽業界を舞台にしたBL小説『たぶん、きみが好き』『いつか、翼を広げて』『きっと、空も飛べる』という3冊がマイクロマガジン社から発行されたのは2004年のことだった。この3作は天才指揮者と男性アイドルカップルを描いたお話なのだが、実は高城響と鷹匠早紀がやっているサイトに長年連載していた大長編小説『KT』を手直しして発表したものだという。

そのサイト大長編(まだ完結していないらしい)には、脇役として若手の指揮者同士のカップルが登場する。彼らを主人公にした話もサイトには掲載されており、出会い恋人になるまでを描く『'O sole mio』、体の関係を持つまでに至る続編『hard day's night』、いちゃいちゃらぶらぶしてる『jealous guy』などがある。珍しいことにこのカップルの攻めは在日コリアンである

『'O sole mio』と『jealous guy』では、攻めが在日であることはストーリーの主軸にはほとんど絡んでこない。民族が違うということよりも同じ夢を抱く音楽家同士であることの方が、この物語の中では圧倒的に比重が大きいのだ。

しかし、『hard day's night』の中ではそれらしいエピソードが挿入されている。演奏会の予定が突如キャンセルされてしまった攻め。晴れがましい仕事を一つ失った原因を、受けに問われた攻めはしぶしぶこう語るのだった。「オレ、在日やん」。BLで、差別に直面する在日の姿が描かれているのは大変珍しい。そもそも在日としてのアイデンティティを持ったキャラクターが登場するBL自体ほとんど見かけないんだけどね。

ところで、この物語の攻めは、大阪出身関西弁を喋る陽気な男性だ。大らかで人懐っこい。阪神タイガースファン。長身ガタイが良くて、美男子ではないけれど、受けから見れば十分に魅力的な容貌をしている。そして新進気鋭の指揮者である。実際、読んでいて、彼は魅力的な人物として描かれているように思った。なんとなく関東生まれ関東育ちな自分からすると良い意味で典型的関西人という印象を受けた。

神経質で繊細、あまり感情表現が得意ではない日本人の受けは、自分と正反対の気質の攻めに惹かれていく。自分にないものを持っている相手を反発心を抱きながらも愛してしまパターンというのはわりと恋愛物の王道だが、受けが攻めの才能に嫉妬をして苦悩したり、振り切ってもついてくる攻めに苛立ったり、励まされたりと感情をぶつけ合ううちに自分の恋心を認めざるを得ない展開になるというのは微笑ましくて良かった。




檜原まり子   日韓ハーフの受け

BL小説家檜原まり子の作品の一つに『マリンブルーは密やかに』という小説がある。2008年、講談社X文庫ホワイトハートから発行された。舞台アジアオセアニアクルーズ中の豪華客船。そこに乗り込んだ保険会社から委託を受けた調査員の受けと、元自衛官の攻めのラブストーリーだ。

正直なところ、この物語の一番興味深いところは、ストーリーなどよりも受けの両親だと思う。

受けの母親日本人医師だった。そして父親は在日韓国人の寿司職人。両親が渡米して、一家がカリフォルニアにいたとき受けは生まれた。医師免許が認められなかった母親は畑違いの仕事をして受けを育ててくれたらしい。後に離婚したようだが、受けの両親の話こそ読んでみたいと思った。寿司職人と女医さん夫婦米国滞在記なんていろいろ波乱万丈なドラマがあって面白そうじゃん。

というわけで、本作の受けは間違いなく在日韓国人の血をひいているのだが、特に在日とか韓国に関するエピソードは出てこない。受けが韓国語を喋ったりキムチを食べるシーンがあるわけでもない。彼が民族的なコミュニティ朝鮮半島に思いを巡らすシーンがあるわけでもない。冒頭、地の文でさらりと受けの生い立ちが説明されているだけで、その後はとくに彼が韓国系であることには触れないまま物語は終わるのだ。

なら別に受けが在日の血を引くキャラクターである意味ってないのでは?と思わないでもないけれど、まぁ深い意味がなきゃ在日がBLに出てはいけないってこともないし、これはこれでいいのかもしれない。なんと言ってもこの作品の舞台はいろいろな国籍のクルーが働く豪華客船なのだから。南太平洋を悠々と航海する船上のキャラクターにちょっとしたマージナルな要素を付与したいと作者が思うのもわかる気がする。船長の喜屋武も、受けと同様にマージナルな人物である米軍勤務の軍人を父に持つ沖縄出身の男性で、金髪碧眼という日本人離れした容姿だが自らを日本人だと主張する。とても珍しい韓国系の受けや、沖縄と米軍というデリケートバックグラウンドを持つキャラクターが登場するという点において、このお話はなかなか印象深かった。




タカヒサ亨 渡来人カップル

『うつしみの花』は、幻冬舎リンクスロマンスから2008年に出版された全2巻のBL漫画である。作者はタカヒサ亨。舞台飛鳥時代日本で、有名どころでは葛城皇子中大兄皇子)、皇極天皇、間人皇女などが登場する歴史ロマンBLである。ちなみに中大兄皇子と受けがキスする場面もあったりする。

主人公(受け)は、百済から渡来人で金工職人である実父を持つ美少年。攻めは、受けの父親の弟弟子で、乃楽山(ならやま)の麓に住む百済系渡来人であり以前は都随一と呼ばれた腕を持つ金工職人だった。受けが攻めの弟子となるので職人師弟ものBLであると同時に、渡来人渡来人の子孫が出会って恋に落ちる物語なのである

職人の村で修行をする受けは、師匠であり恋人である攻め以外の渡来系の職人たちとも交流を持つようになり、技術を磨いていく。いつか攻めの故郷である百済に帰還することを夢見るようになるし、自分たちの存在は発展させ続けていく技術に拠って立つのだという強い自負心を持つに至る。彼らのアイデンティティは明確に百済系渡来人であることにあり、ヤマトにはないんだなーと読んでいて思った。

日本舞台なのにあえて渡来人カップルを描くなんて随分通好み(?)だなと思う。こういうのは珍しくて面白い試みだ。同時に、ちょっと私の中の日本人としての感覚が一抹の寂しさというか疎外感を感じなくもなかったような……。この記事のテーマである在日と古代日本渡来人はちょっと違う存在なのでこの作品には簡単に触れるだけにとどめるけれど、思いがけずヤオイを読んでいて自らのナショナリズムが浮上したという点で本作は印象深い作品だった。私が気にしすぎなだけだけなんだろうけれどさ。

もちろん、健気で頑張り屋な受けとクールで格好良い攻めは萌えたし楽しめた。

ところで、作者のタカヒサ亨は、角髪(みずら)に萌えてこのお話を描いたらしい。わかるわー私もみずら萌えです。特に青年の下げみずら姿は可愛くて良い。不評でなかなか描かせてもらえなかったとのことだが、残念だ。もっと見たかったよー。






コメント返し

ハテブやツイッター増田2ちゃんねるコメント下さった方ありがとう。せっかくだし嬉しかったので、いくつかのコメントにお返事します。


興味深い記事/勉強になった。/ほう。/おもしろい。

恐縮です。ありがとう

なんでこんな興味深い記事が増田なんかで書かれるんだ……いやまぁ理由は明確に推測できるんだけど。

自分のブログではこういう記事を出したことがないのでうまく書けるかわからなかったし、書いたとしてもこの記事だけ場違い感がぷんぷんして浮き上がってしまうだろうと考え増田しました。悲しいことですが、BLも在日も荒れやすい話題ですから

金蓮花くらいしか思いつかなかった。/金蓮花さんは有名だよね。/ 金蓮花は私がコバルトを熟読してた時代の後の人で懐かしい。/金蓮花の作品なら子供の頃読んだことあるな。/金蓮花さんなつかしい

私は金蓮花の初期の作品が好きでここ7~8年の著作は読んでないのですが、作品だけじゃなくて作家自身も本当に興味深いなと思ってその動向は注目していますラノベ界でも稀な在日外国人であることを明かしている作家さんですよね。まして日本と関係が良好でない国を祖国に持つ人ですから日本社会で生きる彼女自身、悲しみや自負心を含め複雑な感情はあったんじゃないかなと想像しています。日朝首脳会談が開かれ拉致問題が発覚した2002年、この年に発売された『伽椰琴打鈴』を最後に、彼女の著作の中で一番‘朝鮮’を押し出している銀葉亭茶話シリーズが発行されていないというのは、偶然かもしれないけれどなんとなく象徴的に見えたり……。

違う文化がベースから、私から見たらよく分からないのかもねと当時は思ってた。アメリカ人日本とか中国に感じてるオリエントな感じってこういうのを言うのかなーと中学生の私には興味深かった。/舞台設定もそうだけど、登場人物たちの価値観や倫理観が自分の知っているものと異なる面もあって、それはそれで興味深かった。

確かに文化が違う、価値観や倫理観が異なっている、と強く感じる点はいくつかありましたね。面白いなと好ましく思う相違もあれば、モヤモヤする思いを抱える相違もありました。私の場合女性の描かれ方や女性の置かれた立場というのが結構気になりました。『蝶々姫綺譚』で、女性が子を成さずに死ぬのは罪である、罰として死後の世界で償わなければならないという設定には、儒教ベースにしたファンタジーだとこうなっちゃうのか、とびっくりしたなぁ。日本日本よりフェミニズムの強い欧米発のファンタジーじゃそういう設定ってないでしょう。まぁ、当時の価値観を反映させた設定であることが良いという考えもあるとは思いますが、現代女性としてはファンタジーとはいえその世界の女性は生き辛そうだなという感じたのも事実でした。

「オレ、在日やん」。か。読んでみたい。/記事中の作品をどれも読んでみたい。

ネットで読める作品もるし書店図書館に置いてある作品もあります。個人的に、興味や関心の度合いが在日>BLという人よりは、BL>在日の人の方が楽しめるとは思いますが。

日本では掛け算、欧米では×ではなく/(スラッシュ)なので割り算。

全然関係ないけど、最近アメリカスラッシュ翻訳されて日本書店の店頭に並び始めましたよね。日本語海外スラッシュが読める日が来ようとは思わなかった。嬉しい。

「「新羅」という単語を見ると反射的に「しらぎ」ではなく「しるら」と読んでしまうし、「李成桂」を見ると「りせいけい」ではなく「りそんげ」」あるあるwww

お仲間発見。やっぱり他にも同じ経験のある方がいるんですね。

この語り口、既視感が。/この特徴的な文体Twitterのどこかでみたような?

皆さんがどなたをイメージしているのか興味あるなー。私は弱小ブログを書いてますが、Twitterはやっていないんですよ。

韓国人って恋愛もの入れ込むよね。日本人もだけど、なんかより情熱的っていうか

韓国人日本人よりも情熱的、確かにそういうイメージありますよね。こんな記事書いといて言うのもなんですが、家族友人知人に韓国人や在日の人っていないんで実際そうなのかはよく知らないけれど。

しかし、作者や登場人物が在日だろうとハーフだろうと、作品に影響なければ関係ないのでは?/BLを前にしたら作者が在日とかどうでもいいんだけど、気になる人もいるんだ

確かに作品が面白ければ作家は関係ないというのは仰る通り。私も普段は書き手には興味がないんですが、今回は冒頭で書いた某サイトにはなんだか妙に感慨深くなってしまいまして。

在日コリアンに限らずこういう風に創作の中に登場するマイノリティを振り返ってみるというのは興味深いよね。/こういう考察もあるのだねー。/いわゆる『キャラ属性』のフレーバー要素として、在日コリアン・その他を入れるか等。ただ、ふらっと使おうにも"実はよく知らない"事が多いのも、また事実。/彼も特にエスニシティ面で特筆されるような描写はないが、魅力的。

創作の中のマイノリティ、本当に興味深いですよね。読み専なので創作の苦しみは知らないのですが、創作物にマイノリティを登場させる際書き手さんはやっぱり慎重になるんだろうなぁ。セクシュアル・マイノリティが登場するBLは殊にそういう姿勢を求められているジャンルですし。常に政治的に正しいお行儀のよいBLである必要はないと思うけれど、読者が引くような差別的な描写が垂れ流しにされてるBLは読みたくないと思います。私はまだガチでがっつり民族問題を盛り込んだBLというのは読んだことがありません。今後もそんな作品は出ないんじゃないかなと思うし、たとえ出版されたとしても読みたいとは思わないかも、と考えています。娯楽作品には悲惨な差別とか貧困とかの要素は求めていない性質で、どちらかというとイチャイチャ、ドキドキ、ワクワク、エロエロアマアマラブラブって感じのノリの方が好きなんですよ。なのでフレーバー的な登場のさせ方や特筆されるような描写がなくても私はOKなんですが、作家がまったくその問題の背景に無知ではキャラクターの魅力的な属性にはできないわけですしね。作家は10調べたことのうち1を書く(100調べたことのうち1を書く、だったかもしれない)と聞いたことがあります。BLを愛する者の一人として、そういうBL作家さんが今まで以上にたくさん出てくれるといいなぁと願っています

2011-02-19

http://anond.hatelabo.jp/20110219183205

集英社コバルト文庫のころですね。

折原みと(今も現役)、氷室冴子(故人)、藤本ひとみ(現役)懐かしい

氷室冴子さんにはもっと長生きしてもらって各シリーズ完結して欲しかったし、もっと沢山書いていただきたかった。

セカチュー」が話題の時にこれって折原みとの「時の輝き」とか恋人が不治の病で亡くなってしまう内容を男向けにした内容だと思ったよ。

2008-12-24

http://anond.hatelabo.jp/20081224182336

でもBL出してるぞ?コバルトなんて大々的に「BLフェア」とかやってる。

これで除外したら、「BL以外も出してるからって巨大出版社を排除するな!」とか言うんじゃないのかww

http://anond.hatelabo.jp/20081224182701

そこで男性向けに合わせられると難しいな。

それぞれ戦略も文化も違うわけだから。

コバルトもX文庫もパレットも、比較的少ないとはいえ、エロありBLを出してるし、

コバルトなんて上記のとおりBLフェアとかやってる。

男性向けはレーベルが比較的綺麗に別れてるけど、女性向けは綺麗には分けられないんだよ。

売り方の違いとでもいうか、歴史の違いとでもいうか、BLと非BLがかなり混じってる。

少なくとも部数として無視できるレベルじゃない冊数出してるのは確か。

個人的には、レーベルもあるけど「BL作家の書いた、男性同士の恋愛小説エロもあるでよ)」がBLかな、と思っている。

再帰定義になってるけどww 

BLレーベル以外でも、BL作家男性同士の恋愛メインに書いてたらBL、ってことね。

あくまで個人的定義だけど。

ちなみに、件の図書館コバルト文庫とか女性向けラノベレーベルの、男性同士の恋愛がまるで入ってない本だの、

栗本薫耽美小説だのも「BL」認定して書庫に入れてる。

図書館の「5500冊」について争うなら、これらを除外するのは逆におかしいことになるね。

http://anond.hatelabo.jp/20081224180828

つ chara文庫コバルト文庫、X文庫、パレット文庫

この辺はBLレーベルでもあるけど、 エロは殆ど無い。

ディアプラ系は作品によってエロのあるなしが分かれる。

元記事を読んでも、「5500冊中100冊程度に過激な挿絵」ってことだから、

こっち系のが多かったんじゃない?と思う。

#つかそもそも、BLでさえないコバルトが書庫行きにされたという話も…

2008-12-13

http://anond.hatelabo.jp/20081210173200

都会で何をするかだけど、一例ですが、小説家はどうでしょう。たとえば岩井志麻子とか、ロールモデルになるかもね。彼女デビューは35歳です。はしごたんの文章力なら可能性はけっこうあるはず。

違うよ、全然違うよ。岩井志麻子は10代の時に「竹内志麻子」という筆名でデビューして、コバルト文庫少女小説家を長くやっていて、ノベライズも多く手がけてる。ホラー小説で賞を取ったのがずいぶん後だっただけ。実績も何もかも違うよ。

2008-09-29

http://anond.hatelabo.jp/20080929072018

>昔集英社コバルト文庫で、一行一センテンスの作家がいたんだが、名前が思い出せない…。

http://ja.wikipedia.org/wiki/花井愛子

見かけなくなったと思ったら、こんなことがあったのか。

http://anond.hatelabo.jp/20080929062315

集英社コバルト文庫で、一行一センテンスの作家がいたんだが、名前が思い出せない…。

当時ものすごく人気があって、かなりの数の本が出ていた。

2008-09-11

http://anond.hatelabo.jp/20080911044525

腐兄増田です

BLも色々だけど、どこかで線引きは必要だよ

少なくとも問題のBLは「ロードス島攻防記」ではなくて

表紙からしてあからさまのガチ系なわけじゃん。

男性向けで言ったらフランス書院とかその辺

確かに、コバルト文庫みたいにBLもそうでないのも、エロいのもそうでないのも混ざっているレーベルが多いからややこしいとは思うけどね。

2008-08-29

BLを読まないなんて人生を損している!

この前、「BL世界はすごく良く出来ている」というテーマで友人と討論になったんですが、

・数百人の作家切磋琢磨=質の向上

・読切や短期連載中心=質の向上、購入しやすい

・毎月漫画50冊+小説80冊出る=作家が生活出来る

雑誌もたくさん出る=作家が生活出来る

作家さんは1、2年先まで予定が組まれる=作家が生活出来る

・購入層の財布の紐がゆるい=作家が生活出来る

・購入層の心が広い=多少問題のある作家も生活出来る、トンデモ展開?面白くない?絵が汚い?古い?なんでもいいよ萌えられれば。

という非常に安定した輪の中で完結しているのですね。

でもそれにも問題があって、

・力量のある作家さんがBLファンのみの中で消費される=人気の頭打ち

・男同士の恋愛を主軸にするため話のワンパターン化=人気の頭打ち

・購入者の心が広いのでアレな内容でもそれなりに売れる=質の低下

といった面もあります。

中でも特に私が思うのは、この人は天才作家だと思う人がきちんと評価されてない感です。もちろん男同士の恋愛という時点で、ものすごく読者が限定されるのは分かっているつもりですが、24年組少年愛作品を平気で読んでおいて、BLレーベルだからという理由で名作が読まれないのはなんでなの。腐女子の中ですらBL読まない人の方が多いし。お前ら男同士が大好きなんだろ!読めよ!

リブレ出版とか言う聞いたこともない出版社名なのがいけないのですか。それなら白泉社花丸文庫とか読めばいいじゃない(花丸の質はあまり保証できないけど)。集英社コバルト文庫のゆるいBLとか講談社ホワイトハートの長いBL読めばいいじゃない。角川書店だって徳間書店だって芳文社だって竹書房だって新書館だって頑張ってますよ。あ、初めて触れる人には新書館オススメする。

BLはひっそりこっそりやればいいと思っている人もいるだろうし、私もあまり大々的に喧伝することは良くはないとは思うけど、よしながふみオノ・ナツメを挙げるまでもなく、数百人も作家がいたらいつ天才作家が現れてもおかしくないんだよ。そんな作家さんをBL好きの間だけで独り占めしていていいのかなぁと思うんだ。

まさにこれ。

http://anond.hatelabo.jp/20080513132239

木原音瀬のような類まれな才能作家性を併せ持った作家を、私たちは天井のある籠の中で飼い殺している。そのことに対して罪悪感を持つ程に、私は彼女の作品を愛している。

そんな思考回路だから、「○○を読まないなんて人生を損している!」なんてことを臆面もなく言っちゃうわけですよ。山田ユギ京山あつきを読まないなんて人生を損しているよね!ねぇ頼むよ、せめて腐女子の人。BL読もうぜ。

2008-08-13

anond:20080813233137

ケータイ小説というより「コバルト文庫」かも。

少なくとも「クジラの彼」にはそんな感じがしました。

(元)

2008-05-19

http://anond.hatelabo.jp/20080519145807

コバルト文庫出身の唯川恵直木賞とったみたいに、

エロゲ作家直木賞をとる日も来るんだろうか。


10年後くらいに。

2007-11-29

http://anond.hatelabo.jp/20071129204626

銀の海 金の大地 <入手が難しいが叶うなら全員読むべき。私的には人生バイブル

ほうほうコバルト文庫か読んでみようかしらん。

砂糖菓子の弾丸とかはどうよ?

2007-04-01

ハルヒの読者に男が多い理由

http://anond.hatelabo.jp/20070401211909

女性にとって知名度が高くないというのが一つの理由では。

同じラノベでもマリみてに代表されるコバルト文庫のように、女性読者の方が多いものもあるし。

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