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そのとき、姉さんのほうから僕にキスをしてくるんじゃないかって思った。
でも違った。
姉さんは僕の尻を軽くポンと叩き、「こら、そういうのは好きな子としなきゃ駄目だよ?」と諭すように言ってきた。
それから手で涙を拭い、笑みを見せると窓に目を移す。
「綺麗だね」と姉さんが窓に目を向けながら、微笑んで言った。
だから
被害総額50万の詐欺師でも、田舎ではそれなりのニュースだったのかもしれない。
けれど僕は興味がなかった。
「よう、泡姫」
クラスメイトに呼びかけられ、振り返る僕。にやけ顔を目にしたとき、気付けば相手を殴っていた。
クラスメイトは不意をつかれて吹き飛び、クラスに悲鳴が上がった。
放課後、姉さんが呼ばれた。当然、向こうの親も。
その場には僕と担任の先生しかいなかった。ガラガラと戸が開く音。僕は振り返らず、背中越しに聞いた。
担任は立ち上がって会釈するように軽く頭を下げ、僕は振り返らなかった。
足音がすぐに近付いてくる。
でも姉さんは僕の横に来るといの一番に「すみませんでした!!」と大きく頭を下げた。
深々と頭を下げ続けた。
僕はなにもできなかった。
それに母親も。坂井なんとかっていう女優に似ていた。黒っぽいワンピースのような服を着ていて、何かの帰りに見えた。
姉さんは二人にも深々と頭を下げ、僕はそれでも頭を下げたなかった。
僕はまだ、怒りが収まりきれてなかった。
姉さんは深々と頭を下げ、僕の手を引いて廊下を歩こうとする。
僕はそれに従い、けれどこんな姿を誰かに見られなくもなかった。
すぐに手を離し、姉さんは困惑した表情を見せた。
それから僕と姉さんは学校を出るまで一メールぐらいの距離を隔てて歩いた。
帰り道、「もうこんな時間だし…晩御飯、ファミレスで食べてく?」と姉さんが言う。
僕は拒否した。迷惑を掛けたのに、さらに無駄遣いさせるのは忍びなかったから。
だから「いいよ、そんなの」と断ると、姉さんは「あっ」と言った。
でも違う。けど正しい。
姉さんはお店の客を自宅で相手することもあった。
僕はそのお金でゲーセン、カラオケ、たまに漫画喫茶へと足を向け、時間をつぶした。
それからお金をいくらかもらって姉さんと別れると、僕はゲーセンに向かった。
2時間ぐらい、時間をつぶしてから帰ると家の近所からカレーのにおいが流れてきた。
物心付いたころには”家族団らんでカレーを食べた”なんていう記憶はない。
にも関わらず、そのにおいは僕の哀愁を刺激した。
家に入ると「あ、おかえり」と姉さん。
「えっ?」と僕。微笑む姉さん。
姉さんは、そういう人なのだ。
だからこそ
省略されました。全てを読むにはわっふるわっふると書き込んでください。
被害総額は50万ほど。
詐欺師としては小物で、大した額じゃない。
いや、違う。僕たちのお金だ。
男は急に僕の家を訪ねてきて、急にお金が必要になったからこの時計を買い取ってほしいと言ってきた。
そのときの僕はどうかしていたのかもしれない。
でも、本当に高そうな時計に見えたのだ。
悪気はなかったんだ。100万以上する時計なんだから、売ってすぐ返せばいい。というか10万円を財布に戻しておけばいい。残りは貯金する。生活費のために。
男が去って行った後、僕はすぐに時計の価値を調べた。偽者だった。1万もしなかった。
父さんは入院してる。母さんは出て行った。連絡はない。だから、僕の家には僕と姉さんしかない。
そして、姉さんが働いている。
お風呂屋さんで。
僕はもう、それを知らない年齢ではなくなっていた。
姉さんは時計の件で僕にとても怒ったが、お金を欲しがる理由を話したら姉さんは許してくれた。
姉さんが、少しでも働かなくて済むように。
詐欺師はすぐに捕まった。
詐欺師が来ると、男の顔を見てすぐにピンと来たそうだ。
男はそこで捕まった。警察が来るまでにはたっぷり時間の余裕があったから。
この事件が新聞に載ったかは分からない。新聞は取っていないから。
姉さんは笑って言った。間抜けな奴だったよと。
僕は悔しかった。本当は涙を流すにしても、隠れて流すつもりだった。
でも姉さんのその笑顔を見て、僕は不覚にもその場で泣いてしまった。
姉さんは言った。
「騙された10万を、私が直接取り返したようなものだからいいじゃない」と。
それを聞いても僕は納得できなかった。でもなんていい返していいのかも分からず、僕は声を殺して泣き続けた。
泣き続ける僕に姉さんは寄り添い、優しい言葉をかけてくれた。
僕は申し訳なかった。僕は、姉さんが好きであそこで働いているわけじゃないことを知っていた。
僕は顔を上げて姉さんの顔を見た。
姉さんの目は、釣り上げられた魚のような目をしていた
「死んだ魚みたいな目をしてるね」
こう言われて、いい気分の人はいないはずだ。
覇気がない。生気がない。やる気が感じられない。何事にも絶望しているような目。
小さいころに僕はたずねたのだと思う。父に。でもなんて答えをもらったかは覚えていない。
でも知ってる。
釣り上げられた魚は、決して死のうなんて思ってないことを。
必死で、もがいて、あがいて、生きようとする目だ。
でも、僕にとって釣り上げられた魚の目は、生きようとする意志が感じられる目だ。
だからこそ僕は怖かった。
姉さんが変わってしまうんじゃないかって思いが、いつも心のどこかにあって、それをひしひしと感じていたから。
僕は姉さんの部屋をノックした。反応がないから僕はドアを開けた。姉さんは窓辺に立っていて、新緑色のカーテンを隅に寄せて外を見ていた。
僕の位置からでも見えた。聞こえた。打ち上げ花火の閃光が。轟く花火の爆音が。
僕は姉さんの部屋に足を踏み入れて、姉さんの隣で花火を観賞しようと思って足を進めた。
でも僕の足は窓辺へとたどり着く前に止まった。
姉さんの様子がおかしかったからだ。僕は立ち尽くす姉さんの隣に、そっと近付いた。
姉さんは泣いていた。声も出さず、僕の耳に入るのは打ち上げ花火の音ばかりで、姉さんの泣き声はこんなに近くにいるのに決して聞こえなかった。
僕はそれに気付きながらも姉さんの顔を見ずに、窓の外に目を向けた。
目を見るのが怖かった。もし姉さんの目が変わってしまっていたら。僕はどうしていいのか分からなかった。
花火はとても綺麗で華やかで、打ち上げられるごとに歓声が上がるのが聞こえてきそうだった。
本当は分かってる。分かっていでも疑問にすることで体裁を保とうというのかもしれない。
でも、違うだろうか?
釣り上げられた魚と、打ち上げられた花火はそんなに違うものだろうか?
僕は思い切って姉さんの顔を見た。
姉さんの横顔は綺麗で可憐で、頬には涙がまだ流れていた。
「…姉さん」
僕の声に、姉さんはゆっくり反応して僕のほうを見る。
僕は姉さんにキスをした。
姉さんは驚いて目を見開き、すぐに口を離してきた。
僕の目を見つめ、目を逸らす。そして俯いた。
僕は謝ろうと声を掛けた。
「姉さん、ごめ――」
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なんだかいまだに落ち着かないんだけど、自分を落ち着かせるためにも書き留めようと思う
ぼくの会社はほそほぞとも何とかやってる会社で、この前の緊急事態宣言で解除が宣言されたある田舎県に住んでる
それでうちもそれまでは一応リモートワークしてたんだけど、明日からは一応出社しろといわれた
でも実は会社にちょっとした忘れ物があって、それで明日出社したとき同僚から「お前、あれ置きっぱなしにしてたのかよ」って揶揄されるのもいやだったんで、昨日それだけとりにいったんだ
土曜だから誰も居ないだろうと踏んでたんだけど、そこにまさかのぼくの直属の女上司がいたんだ
その女上司はたしか30過ぎで顔は柴崎コウに少し似ていて、でもそれをちょっと幼くした感じ
まさか土曜にそれも会社でばったり出くわすなんて思いもしなかったんだけど、直接にあうのは久々だったから思わず笑っちゃって
そしたら向こうも笑ってくれてさ、なんだかこう久々に知人に会って嬉しくなったみたいな感じでいつもだったら絶対こんな雰囲気にならないな、ってぐらいに穏やかな雰囲気になってさ、それで「このあと暇?」って聞かれたから「暇です」って答えた。実際に暇だったし。
そしたら「じゃあ飲みに行かない?」って誘われて「今からですか?」って当然聞き返した。だって未だお昼ごろだったから
でも、その女上司は「知り合いのお店で昼からお酒出してるところあるから」とそんな風な事を言うわけだ
別に悪くないなと思ってぼくも承諾して、じゃあ二人で行こう!って話になったんだよ
そこは案外会社の近くにある居酒屋でさ、こんな時期だから緊急事態宣言が解かれたといってもやっぱり空いてた
ぼくとその女上司しか客は居なくてさ、それに本当に女上司と店の人は知り合いらしくて、昼なのにも関わらずお酒やつまみを出してくれたんだ
それからはもうなんだか今でも信じられないんだけど、とても打ち解けられてさ、今までは仕事上のみの関係で正直ギスギスしていた感もあった
でも今はこうして二人で一緒にご飯を食べて、女上司の身の上話とか聞いて、といってもおおよその話題はやっぱりコロナのことで、外に出られなくて仕事以外の時には何をしている?見たいな話でだいぶ盛り上がったりしたんだ
でも既に結構飲んでしまっててほろよい気分で店を出ると、車だから足もないし帰りはどうしようかな?
そう思ってると「うち近いから、よかったら来る?」ってその女上司が誘ってくれた
悪いなあと思って断ろうとすると女上司のほうも寄ってるみたいで「よし、じゃあ行こう!」っていってぼくを引っ張るから、それにつられてほいほいと歩いていった
意外と女上司のマンションも近くにあって、もしかして徒歩で出勤してる?自動車がないのはそういうわけ?なんて思いながらも女上司の家に上がらせてもらって、そのあとにはリビングのソファにちょこっと座らされて「ちょっと待ってて」なんて言うわけ
半分はもう夢心地でぼっーとしてたら「お待たせ」って声をかけられて、振り返ればいつの間にかスウェットに着替えてしかもちょっとサイズが小さい?なんて思えるほどには体のラインが強調させれ入るもんだからなんだか妙にドキドキしてしまって目のやり場に困った。
「それ脱ぎなよ」って言われてさ、そうかとぼくも上着を脱ぐとすぐに受け取ってハンガーにかけてくれてさ、そのあと女上司が作ってきてくれたチンジャオロースで二度目の晩酌、乾杯した
底ではもう何を話したのかよく覚えてないんだけど、楽しかったことだけは覚えてる
気づけば外はもう暗くなってて、ぼくの酔いもだいぶ回ってふらふらしてたからか「よかったら泊まってく?」なんて冗談半分みたいに女上司は笑っていうんだ
それは流石に…と思ってやんわりと断ると、じゃあ少し休んでからでも良いんじゃない?と言うからそれには同意した
だからテレビを見てるようで見てないような状態が続いて、水をたくさんもらって、あと暑くて結構汗をかいていたんだ
それをみて「シャワーだけでも浴びてく?」っていうからタオルもないし断ろうとしたらタオルぐらい貸すからっていうし、なにやら結構強くおしてくるから従うことにした実際結構汗はかいててシャワーは浴びたかった
お風呂は普通ぐらいの広さで、シャワーを浴びはじめて少しすると後ろで物音がして、でも気のせいだと思ってそのままシャワーを浴びてた
でも次にははっきりと、お風呂の戸が開く音が聞こえたんだ
びっくりして反射的に振り返ると、そこには生まれたばかりの姿をした女上司がいて、ぼくに
省略されました。全てを読むにはわっふるわっふると書き込んでください。
「びっくりするほどユートピア!」とか「わっふるわっふる」とか、「そんなわけで帰り道にある公園の. トイレにやって来たのだ」とか20年位言ってるような気がするよ。ふと鏡をみると白髪増えたなって思う。