2022-08-17

僕は打ち上げ花火が嫌いだ。

地元詐欺師が捕まった。

被害総額は50万ほど。

詐欺師としては小物で、大した額じゃない。

けど、そのうちの10万は僕のお金だ。

いや、違う。僕たちのお金だ。

男は急に僕の家を訪ねてきて、急にお金必要になったからこの時計を買い取ってほしいと言ってきた。

軽く100万を超える時計を、10万で売るというのだ。

そのときの僕はどうかしていたのかもしれない。

でも、本当に高そうな時計に見えたのだ。

から姉さんの3つ目の財布から10万を借りて、買った。

悪気はなかったんだ。100万以上する時計なんだから、売ってすぐ返せばいい。というか10万円を財布に戻しておけばいい。残りは貯金する。生活費のために。

男が去って行った後、僕はすぐに時計価値を調べた。偽者だった。1万もしなかった。

父さんは入院してる。母さんは出て行った。連絡はない。だから、僕の家には僕と姉さんしかない。

そして、姉さんが働いている。

風呂屋さんで。

それがどういう意味場所で、どういうことをしているのか。

僕はもう、それを知らない年齢ではなくなっていた。

姉さんは時計の件で僕にとても怒ったが、お金を欲しがる理由を話したら姉さんは許してくれた。

僕はただ、純粋生活費に当てたかったのだ。

姉さんが、少しでも働かなくて済むように。

詐欺師はすぐに捕まった。

詐欺師が来ると、男の顔を見てすぐにピンと来たそうだ。

ちょうど受付の人が、警察から注意喚起を受けていたらしい。

男はそこで捕まった。警察が来るまでにはたっぷり時間の余裕があったから。

この事件新聞に載ったかは分からない。新聞は取っていないから。

ネットニュースでも見かけなかった。規模が小さいから?

姉さんは笑って言った。間抜けな奴だったよと。

僕は悔しかった。本当は涙を流すにしても、隠れて流すつもりだった。

でも姉さんのその笑顔を見て、僕は不覚にもその場で泣いてしまった。

姉さんは言った。

「騙された10万を、私が直接取り返したようなものからいいじゃない」と。

それを聞いても僕は納得できなかった。でもなんていい返していいのかも分からず、僕は声を殺して泣き続けた。

理不尽に思えたから。

泣き続ける僕に姉さんは寄り添い、優しい言葉をかけてくれた。

僕は申し訳なかった。僕は、姉さんが好きであそこで働いているわけじゃないことを知っていた。

大丈夫大丈夫から。私は大丈夫

姉さんは僕に何度もそう言う。自分自身確認を取るように。

僕は顔を上げて姉さんの顔を見た。

姉さんの目は、釣り上げられた魚のような目をしていた


「死んだ魚みたいな目をしてるね」

こう言われて、いい気分の人はいないはずだ。

言っている人も悪口で使っているだろうから

覇気がない。生気がない。やる気が感じられない。何事にも絶望しているような目。

釣り上げられた魚はい死ぬの?

さいころに僕はたずねたのだと思う。父に。でもなんて答えをもらったかは覚えていない。

でも知ってる。

釣り上げられた魚は、決して死のうなんて思ってないことを。

釣り上げられた魚は、自分死にたいなんて思ってないことを。

釣り上げられた魚の目は、死んだ魚の目じゃない。

必死で、もがいて、あがいて、生きようとする目だ。

僕は釣り上げられた魚がいつ死ぬか知らない。

でも、僕にとって釣り上げられた魚の目は、生きようとする意志が感じられる目だ。


からこそ僕は怖かった。

姉さんが変わってしまうんじゃないかって思いが、いつも心のどこかにあって、それをひしひしと感じていたから。

僕は姉さんの部屋をノックした。反応がないから僕はドアを開けた。姉さんは窓辺に立っていて、新緑色カーテンを隅に寄せて外を見ていた。

僕の位置からでも見えた。聞こえた。打ち上げ花火の閃光が。轟く花火爆音が。

僕は姉さんの部屋に足を踏み入れて、姉さんの隣で花火を観賞しようと思って足を進めた。

でも僕の足は窓辺へとたどり着く前に止まった。

姉さんの様子がおかしかったからだ。僕は立ち尽くす姉さんの隣に、そっと近付いた。

姉さんは泣いていた。声も出さず、僕の耳に入るのは打ち上げ花火の音ばかりで、姉さんの泣き声はこんなに近くにいるのに決して聞こえなかった。

僕はそれに気付きながらも姉さんの顔を見ずに、窓の外に目を向けた。

目を見るのが怖かった。もし姉さんの目が変わってしまっていたら。僕はどうしていいのか分からなかった。

僕は隣で無言のまま打ち上げ花火を観賞し続けた。

花火はとても綺麗で華やかで、打ち上げられるごとに歓声が上がるのが聞こえてきそうだった。

本当は分かってる。分かっていでも疑問にすることで体裁を保とうというのかもしれない。

でも、違うだろうか?

釣り上げられた魚と、打ち上げられた花火はそんなに違うものだろうか?

僕は思い切って姉さんの顔を見た。

姉さんの横顔は綺麗で可憐で、頬には涙がまだ流れていた。

僕には姉さんが、世界一美人に見えた。

「…姉さん」

僕の声に、姉さんはゆっくり反応して僕のほうを見る。

僕は姉さんにキスをした。

姉さんは驚いて目を見開き、すぐに口を離してきた。

僕の目を見つめ、目を逸らす。そして俯いた。

僕は謝ろうと声を掛けた。

「姉さん、ごめ――」

そのとき、姉さんのほうから僕にキス

省略されました。全てを読むにはわっふるわっふると書き込んでください。

  • うんこ

  • 途中までよかったのにキスした時点で読む気がなくなってしまった…

  • わっふるなつかしいな、もう十数年前の話だろ、素でわからない人達いそう。

  • わっふるわっふる

  • https://anond.hatelabo.jp/20220817003734 そのとき、姉さんのほうから僕にキスをしてくるんじゃないかって思った。 でも違った。 姉さんは僕の尻を軽くポンと叩き、「こら、そういうのは好きな...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん