当たり前のことを深いと思っている馬鹿なのか、浅く見えるだけで一周して深い考えを持っているのか、悩みどころだ。
松本人志が前回のたむけん7変化の回でついにタンクトップになった。
たむけんのボケつぶしかと思いきや、浜田は何も触れない、ああ、これはついにタンクトップ化したか、
身体を鍛えると、人に見せたくなるというのはなんとなくわかる、
しかし、その力を誇示しだしたら終わりだ、器の小ささを露呈しているようなものだ、
力を誇示するということは自分本位であり、相手への思いやりが欠ける人と私は思うのだ、
タンクトップと化した筆頭は長渕剛、最近では金子賢とか、そしてピチTにとどまっていた松本もついに
タンクトップへと堕ちていった。
国は創作するよ。
『歴史』は普通に創造物になりうるし、歴史認識は完全に創作物だよ。
『歴史』の場合はどちらか一方に都合の良い出来事のみを記載し、
『歴史認識』はさらに自由度が高く、出来事の評価を自在に書き換えることが出来る。
例えば、後世に影響のない些事に意義を付加して愛国心を煽るエピソードになったり、
併合された国が併合した国の投資や教育の成果を単なる良かったこととしてではなく、
あまりに強固な『歴史認識』を教育された人間とは事実ベースの会話ができなくなる。
全く恐ろしい話だよ。
20~49歳までの未婚者のうち、年収400万円未満の男性は83.9%
「いくつになっても産めると思ってた」女性なんて殆どいない、いるとしてもごくごく少数だろう
ボクと妻、6歳になる息子、そしてカブトムシ
三人が三人と一匹になったのはまだ日差しがそれほど強くない頃だった
居間でテレビを見ていると、息子がさっと立ち上がり一瞬視界を遮って妻のほうに駆けていく
「カブトムシ見に行ってくる」律儀な報告をすませると今度は玄関の方へ早足で向かう
こっそりと音の去った方向を覗き見る
そこにはキラキラと目を輝かせてやまない、カブトムシに恋をしてしまった少年の姿を見つけた
その楽しげな息子の姿を見ていると、ふと昔の自分を思い出す
ボクもカブトムシを飼っていた
小学校に入る前のことだったと思う
20年以上も昔のことだ、ボクはまだ幼く、その頃の全てを憶えてはいないのだろうが
大きなカブトムシと、笑みをたたえる幼いボク
両親を亡くしたボクは祖父に育てられた
祖父は決して自分のことを父と呼ばせることはなかったが、ボクにとって祖父は父であったし、祖父にとってもそうであったと思う
小学校へ入る頃にはとうに60を超えていたはずだが、幼い頃、その記憶の中に出てくる祖父の姿はとても力強く
駆けまわるボクをひょいと捕まえ上げ、肩に乗せ豪快に笑う祖父のその様に、老いを感じたことはなかった
家族について話をする時、決まって寂しかっただろうと言われるが
ボクも決まって、祖父の息子であることに寂しさなんてなかったよと答える
カブトムシを買ってくれたのは祖父だった
大きなカゴに飼育キット、生き物を飼うというのも初めてだった
家へやって来た当初、カブトムシはまだ土の中で眠っていた
大きなカゴは通路の半分を塞いでしまい、妻の機嫌を損ねないか心配もしたが
そんな心配り自体が失礼に思えるほど妻はまだ主の見えない虫カゴを歓迎してくれた
結婚してくださいと、緊張と共にその言葉を妻に送ったあの日のことを思い出す
ボク達の結婚は早かった
家庭と子供、それによって一人前になれるというのは古い価値観かもしれない
でもボクは、なによりもはやく一人前になりたかった
祖父の息子として恥ずかしくない、これからは祖父を支えていける一人の大人になりたかった、それを成し遂げたかった
そしてボク達の子を、妻とボクの子を祖父にはやく見て欲しかった
土の中で眠っているカブトムシ
つぶの大きな土と年輪の浅い丸木、何も動くもののない空間を眺めては
うれしそうに「まだかなまだかな」と呟く
カブトムシが地中から顔を出したのは、しばらくしてからの事だった
息子が盛大に騒ぐ姿を見て1週間
祖父がなくなった
年齢を考えればいつでもおかしくはない、もう何年も前から心の準備はできていた
急なことではあったけれど、元気な姿のままいってしまったのは祖父らしいとも思えた
お別れらしいお別れを出来なかったことが、それらしいことを何も言えなかったことが、それだけが少し残念であった
だからだろうか、式を終えた次の日、祖父の夢を見た
夢の中でボクは、良かった……と、元気な祖父の姿を見て、ただそう思った
最期に話をしたのは祖父が家へ遊びに来てくれた日だった
亡くなる三日前、カブトムシの話で興奮する息子と意気投合した祖父
息子共々とても楽しげな様子だったのを憶えている
ボクは息子に自分を重ねながら、幼かった頃を思い出していた
祖父は息子に泣いてはいけないと教えた
その日が来たら静かに見送ってあげよう、と
地上に顔をのぞかせて30日が経った頃、「大丈夫?」「大丈夫だよね?」と息子がよく聞くようになった
「うーん」と答えに窮する妻、彼女も祖父のこと以来、元気をなくしているように思えた
息子が棒でツンツンとカブトムシをつついている
つつかれたカブトムシの反応を観察している様子だった
妻はやめてあげようね、とやさしく諭すと同時に
元気でいて欲しいならそっとしておいてあげればいいのにと不思議そうに言った
ボクには息子の気持ちがよく分かる
ボクも同じことをしていた
幼いころのボクと幼いボクの息子がまた重なる
元気でいて欲しい
ずっとずっと元気でいてくれると、そう強く信じたい
その気持ちを口にすることが出来ず、言葉とは別の方法で確かめてしまう
日が経つに連れ息子の心配は大きくなっていくようだった
妻はなんとか説得を試みていたが、なかなか頑固な様子だ
結局ボクも息子と一緒にカブトムシの隣に枕を置かしてもらうこととなり
夜中ぶんぶんと羽音をたてるカブトムシのおかげか少し遅起きとなった息子は
朝、起きがけのままに、出かけるボクのことを見送ってくれるようになった
祖父も同じだった
手を振ってボクを見送ってくれた
いつも、ボクが中学を卒業しても、高校を卒業しても、成人してもそれは変わらなかった
そして祖父がボクに手を振ってくれる時、決まってボクも祖父に手を振り返した
最期に話を、元気な姿をみたあの日も同じ
「じーちゃん、さよなら」息子の声に祖父は手を振って答えてくれた
大きく、またなと手を振って息子を見送ってくれた
一週間後、その夏一番の暑さが日本列島を襲い
妻が息子の体調を心配し始めた頃
カブトムシが死んだ
「カブトムシ、死んじゃった」そう、妻から連絡がありボクは急ぎ家に帰った
扉を開けると、エアコンの効いた冷たい空気、そして静けさがボクを出迎えた
玄関の扉をゆっくりと閉め、靴を整えていると妻がそっとやってきて、息子は寝てしまったと教えてくれた
そう……か、としばらく玄関で立ち尽くしていた
数十秒か、数分か、少し経った頃
妻だった
「カブトムシ可愛がってたから……」と言うと遠慮がちに、昨日も昆虫ゼリー沢山買ってきていたでしょう、と続けた
「だから……落ち込んでないかな、と思って」
そうか……もういらなかったのか、ボクは家の中、昆虫ゼリーのある方へ目をやった
「最近、口数も少なくて元気もないし……」
「カブトムシと一緒に寝たり、すごい可愛がってて、心配だったけど……」
静かに、それでいてハッキリとボクに向けて言葉を発する妻
ボクは何もいうことが出来なかった
声がする
「お母さん、お父さん……」
目をやると、息子が立っていた
たった今起きてきたのだろう、いかにも眠たげな表情でこちらを見ている
妻が息子の傍へ行き、眉に垂れる前髪をそっと脇に分けていると、「夢を見た」と一言、息子がいった
前髪をやさしく整えながら「どんな夢?」と妻は聞いた
「カブトムシが死んじゃう夢」
妻が手を止める、表情は見えなかった
冗談を言うような子ではない
どう、何を言えばいいのか……
ボクと同様、妻も何と言えば良いのか分からない様子で、ただ息子の頭を撫でていた
カブトムシ……
そう、カブトムシだった
6歳だった、そうだ息子と同じ
祖父が優しくボクを迎えてくれた
いつも優しかった祖父が……
変わらず元気だった祖父が……
たった一人の祖父……
ボクは震えた声で「カブトムシ死んじゃったんだよ」と言った
息子は少し驚いた素振りを見せ
そして小さく「そっか……」とだけつぶやいた
何秒かの時間を置いて
妻の足をぎゅっと掴むと、息子は大きな声を上げて泣いた
息子を優しく撫でながら、妻は言った
「我慢してたもんね」
「寂しいね」
その声は微かに震えて聞こえる、妻は続けた
「ずっとずっと元気で、ずっとずっと一緒にいられたら良かったのにね」
「大好き……だったもんね」
傍らでボクは
頭に思い浮かんだ言葉、そのどれもを口にすることは出来ず
ただ妻の言葉を聞いていた
ボクが幼い頃、カブトムシを買ってもらった事があった
大きなカゴに飼育キット、生き物を飼うというのも初めてだった
決して泣かないと、そう約束したけれど幼いボクはカブトムシが死んでしまった時、泣いてしまった
あの時とは逆の立場になった今、なぜかやっぱり泣いてしまっている
あの日、二人きりだった家族は、三人に増えた
隣を見ると不思議なことに妻も、それも信じられないほど大粒の涙を流しながらわんわんと泣いていた
大きなカブトムシと大きな虫カゴそして大きな家、ボクの居場所、祖父がボクに最初に与えてくれたもの
祖父とボクは今同じ場所に立っている、そして、幼かった頃のボクと幼いボクの息子も
カゴもその日の内に洗って乾かしてしまい、ほんのちょっと広くなった我が家には少し多めの昆虫ゼリーだけが残った
ゴミの日に捨てなくちゃいけないな、とか
そういえば昆虫ゼリーって口に入れても大丈夫って聞いたけどホントかな、だとか
そんなことを考えながら帰宅すると
「ほら、カブトムシ、好きでしょ?」
顔を赤くしながら妻は言った
まだまだ暑い日が続く