2013-09-26

日経新聞小学校ネット教育に関する記事」に対する疑義

どうも、お久しぶりです。

今月はじめに、「日経新聞で紹介された小学校のネット教育」について、「このネット授業に賛成する人の意見が聞きたい。」という増田記事でみなさんにコメントを求め、基本全レスしてた元増田です。

あの記事中にも書いたけど、このネット教育について件の小学校に問合せた。するとなんと、この授業を行い、なおかつ教材の開発者でもある、岐阜聖徳学園大学石原教授ご本人より、返信のメールをいただいた。

はてな匿名ダイアリーへお名前を出して掲載する旨も了承を得ているので、ここでそのメールを紹介する。

このメールは9/5にいただいたが、ひとえに私の怠慢により3週間後のこのタイミングとなったことを石原教授にお詫びします。きっと少なからず気をもんでおられたと思います。申し訳ありませんでした。

《問題となった日経記事》

まずは日経記事の問題になった箇所を以下に引用する。

岐阜聖徳学園大学付属小学校岐阜市)の6年生の授業をのぞくと、児童たちがタブレット(多機能携帯端末)のチャット機能コメントをやりとりしていた。匿名なので書き込みは徐々にエスカレート。5分ほどで相手を誹謗(ひぼう)中傷する言葉が増え始めた。そこで教師が手元のボタンを1つ押す。するとチャット画面上に実名が表示され、楽しそうに騒いでいた声がやんで気まずい空気が流れた――。

なお、URLタイトル9月上旬に私が初めて見た時から変更されているので参考までに載せておく。引用部分については変更されていない。



ネット上の反応》

この授業のやり方に対して、2ちゃん2ちゃんまとめサイトはてブツイッターなどで散々な批判が浴びせられた。まとめサイトは400以上のブックマーク、2000のツイート、800のFacebook「いいね」を集め、私の増田投稿も100以上のブクマがついた。Google検索結果を見ても日経記事を発端に、この授業が批判混じりに面白おかしく取り上げられている様子がわかる。

主な論調は「匿名と言ってチャットさせて後から実名さらすのは酷い」といったものだ。私も記事を読み、そう思った。

思っただけでなく、「どうなのこの授業?」という主旨で増田投稿し、授業に賛成する人(・・・も約半数みられた)の意見を聞かせてもらった。冒頭で「全レス」したと書いたのはこのときの話だ。

その中で、やはりどうしてもこの授業について当事者の話を聞いてみたいという思いにかられ、問合せをしたところ返ってきたのが、これから紹介する返信ということになる。

とにもかくにもメールをご紹介します。メールの改行されてしまったところの調整等をのぞき、そのまま貼り付けています

ネット授業の当事者からの返信》

岐阜聖徳学園大学教育学部に勤務しま石原一彦と申します。

岐阜聖徳学園大学附属小学校情報モラルの授業に関して、多くの関心が寄せられておりますが、スレッドを拝見しますとその中にはいくつか誤解も含まれているようですので、教材の開発者として、また今回話題になっている授業を行った授業者として実際の話をさせていただきます

実はこのスレッドの元になった日経新聞の記事は実際の授業の様子を正確には伝えておりません。

記事を書かれた記者の方は、実際に授業をご覧になったわけではないからです。

記事では実際にご覧になったような臨場感を感じられますが、教材の開発に関わった企業広報や授業の一部のビデオ映像などを取材されて書かれたものです。

そして記事の内容は、私が授業で意図したものと全く異なります。この点について説明させてください。

記事では「5分ほどで相手を誹謗中傷する言葉が増え始めた。」とありますがこれは事実に反しています

実際の授業でも実名匿名でそれぞれ5分間書き込みをさせたのですが、匿名チャットでは一部の児童意味不明の文字を連打したり、少し乱暴な言葉を使ったりしただけで、相手を名指しして中傷したり、誹謗するような書き込みをした児童は一人もおりませんでした。「・・楽しそうに騒いでいた声がやんで気まずい空気が流れたーー。」も実際の授業を見られたわけではないので記者想像して書かれたものです。気まずい空気が流れたわけではありません。

実際の授業を想像してください。担任が見守る中でクラス全員でチャットを行って、わずか5分で相手を誹謗中傷する書き込みをする児童が現れることは常識的にあり得ないことです。

もしそのような状態であれば、情報モラル以前のクラスだといえるでしょう。

端的に言えば、私の行った授業は、「児童にわざと誹謗中傷の書き込みをさせたうえで、見せしめのために実名さらす」というものではなく、実名匿名の違いを理解させ、匿名でも実際には本人を特定できることを体験的に知らせることがねらいです。

児童人権に関わることなので、チャットを始める前に「相手を傷つけること」、「意味の分からないこと」、「乱暴な言葉遣い」、「汚い言葉を使うこと」はやめようと、それぞれ実例を示して指導しました。また、匿名の書き込みを実名に変換する前に、児童に「実名に書き換えてもかまわないか」と確認を取り、もしひとりでも「いやだ」と言う児童がいれば実名には書き換えないつもりで授業に臨んでいます

日経新聞の記事が一人歩きして、教師による児童へのだまし討ちの授業のような印象を与えてしまって多くの方に心配をおかけしましたが、実際にはそのようなことはありません。この授業のせいで学級内でいじめが起きたり、人間不信が生まれたりするようなこともありません。附属小学校スタッフの皆様や何より子どもたちや保護者の皆様の名誉のために、あえてこのような場で実名で発言させていただきました。

読んでいただくとわかるように、2ちゃんまとめサイト、私の増田などを大いに騒がせたような「事実」はほぼ無かったと、日経記事での報道内容をほぼ全面的に否定している。具体的に、記事と異なる点をあげると下記のとおりだ。

石原教授の回答と日経記事の食い違いの整理》

記事の引用箇所たった185文字の中に、当事者の話と異なる点がこれだけあることが驚きだ。

このお返事をいただいてすぐ記事の内容について日経に問合せたが「新聞社の原則として、特定の記事に関して個別に見解を表明するというようなことは致しかます」ということで、返事は得られなかった。

ここまでが一連の流れである。よければもう少しお付き合いください。

そしてもし気が向けば、この増田ブクマしていただけると嬉しいです。

《本授業について現状での自分の考え》

ここで「日経記事は間違いだった!」と短絡するつもりはない。

しかしながら、石原教授の主張には、名前を出して掲載することを許可いただいた時点で一定の信頼性が担保されていると考えてよいだろう。

もし主張に間違いがあれば、もっとダメージを受けるのは石原教授からだ。

元増田で「日経記事をうけてJ-CAST小学校教頭インタビューした記事がある」ことをブコメ示唆してくれた人がいた。

そのとき私はJ-CASTの記事は、授業の具体的内容や日経記事の誤りについて指摘していなかったし、学校代表して教頭が当たり障りのないコメントをしているのかな?程度の印象しかもたず、判断保留としながらも、日経記事に重きをおきたい旨を書いた。

しかし上のような状況で、明確に日経記事を否定された今となっては、まったく逆の心証を抱いている。

仮に記事中に事実と異なる記述がなかったとしても、それでもまだ問題がある。つまりチャット児童実名を出す前に確認をとったことを書かず、事前に説明や指導がなされたことも書かず、私も含め多くの人に授業方法に問題があるかのように錯覚させる記事となった。

まとめるとこうだ。日経はこの授業を実際に記者が見て取材することをせず、事実ではないことを書いた可能性がある。また、授業の説明として必要と思われることを書いていない。その結果、岐阜聖徳学園大学附属小学校指導者児童はじめ、関係者名誉を損ねたおそれがある。

石原教授には、上に紹介したメールはもちろんのこと、その前後のやりとりにおいても真摯対応していただき、大変感謝しています。にも関わらず、この投稿が遅くなってしまったことをあらためて、お詫びします。

なお、この増田記事自体が「石原教授」自身が自演で書いているのではないかという勘ぐりもあろうが、冒頭の元増田にこの記事へのリンクを貼ることでその可能性は排除できると考えている。

《あの記事が出た時点でなにができたのか?どうすべきだったのか?》

例によって長くなったがここまでで書くべきことは書いた。

ここからはおまけみたいなものだが、自分にとって必要ことなので書いてみる。

まずは結果として事実でないかもしれない記事を元に増田投稿したことについて。

一般的に、新聞記事を元にネットであれこれ議論するのは、それが匿名増田のような場所であっても、それほど不当なことではないだろう。

もちろん誹謗中傷が含まれるのは論外だが、そうでなければ一次情報に当たらなかったからといって非難されることはないように思う。

その上で書くが、もうすこし慎重になることはできた。

実は投稿する前に、記事の真偽について吟味する手間を省いたことを認めないといけない。

俺はあの日経記事には、そのまま鵜呑みにしてはいけないサインがあったと思ってて、俺はそのサインに気づかないふりをして増田を書いた。そこを今反省している。

サインというのは石原教授も触れている「5分で誹謗中傷が増え始めた」というくだり。ここはブコメで指摘している人もいたが不自然だ。普通に考えると5分で誹謗中傷が「増え始めた」と表現できるような状態になるとは想像しづらくて、記事の表現に無理があるように思える。

からといって他の部分まで「嘘」はいえないが、記事の信憑性に疑問を持つことはできたかもしれない。そして増田への投稿をやめようかとブレーキをかけるくらいのことはできたかもしれない(ただそうすると小学校に問い合わせることもしなかっただろうし、結果としてこの記事の信憑性についてより深く疑問をいだくこともできなかった)。

日経というかマスコミの取材について》

次に、やはり避けて通れない日経の取材について。これはちょっとからないところがあるので、もし知っていたら教えて下さい。

  • 実際に見てないものを見たかのように書いていいものなのか?
  • 業界では常識なのか、常識ではないが黙認されてるだけなのか、黙認もされておらずバレれば社内でもそれなりに問題となることなのか、いったいどの辺の位置づけなんでしょう?
  • 100歩ゆずって「そんなのギョーカイではジョーシキ」だとしても業界の外で通用する常識ではない、よね。
  • 1000歩ゆずって業界の外でも常識だったとして(そんなことはないが)、だからといって嘘書いたらいけない。

石原教授言葉事実だとした場合、今回の記事がこの記者の個人的な失策で、かつ、普通ならまず起こりえない失策あることを願います

子どもネット教育について》

さらに余談を重ねる。

事実ではないかもしれない記事をベースに騒いでしまったという反省はありつつも、今回の件を通して自分なりに子どもネット教育について考えを深めることができた。俺自身は教育者ではないが、親としての意見だ。書いてあることはたぶん色々なところで言われていることの焼き直しみたいな内容になっていると思うのであしからず・・・自分の考えを整理するために書いています

このような状況下で「失敗を通して学ばせる」というのは少々乱暴な話で、失敗の程度は大人が積極的コントロールすべきだろう。いくら野球が大好きでも、小学生メジャーリーグ試合に出場させたら命の危険さらされる。成長度合いに応じてステップアップさせるのが最善なのは言うまでもないことだが、なぜかネットの話になると「とりあえず放り込んどけ」みたいな論がまかり通る。それは大人が責任放棄していることだと気が付かないといけない。

などなど、個々の家庭レベルでもやれることはたくさんある。

ちなみに中学生高校生大学生)になるまではスマホケータイPCも触れさせないという選択もありそうだし、実際やっている家庭もあるだろうが、それだと子どもネットとのつきあい方を教える機会を持てないし、やっぱりネットを正しく使って欲しいという気持ちがあるので、小学生のうちでもどんどん使えばいいと思っている。

日本経済新聞社へ》

返事ください。

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