2022-05-06

YOUTUBE書籍解説動画読書代替になりえない3つの理由

普段そんな本読まないけど折角のGWからユヴァル・ノアハラリの『サピエンス全史』を読んだ。

この本を知ったのは中田敦彦youtubeチャンネル投稿されてた書籍解説動画が切っ掛け。

(URL:https://m.youtube.com/watch?v=fud4-L2lnqQ)←一時間で見れるよ。面白いから見よう!

流石に書籍の内容は難しく、読了までに丸5日はかかったけれどその価値はある体験だった。結構難解かつグロテスクな内容なので余裕があるときおすすめ

読了後、内容の復習も兼ねて前に見た中田敦彦書籍解説動画をもう一度視聴した。

俺はあれだけの濃密で膨大な内容を3本1時間動画にまとめた中田の手腕に感心したし、YOUTUBE大学ファンなのでこのチャンネルオンラインサロン否定するつもりではないと予め記しておく。

また今回見たのが上の動画だっただけでこれからする主張は他のチャンネル動画にも当てはまる。

その上で、解説動画を見ることは読書をすることとは別物、言ってしまえば別格の体験だと感じた。

以下その理由

なお『サピエンス全史』読んでない人には伝わらないところが多々あると思うがご容赦を。読んでくれ。

中田敦彦動画も話に出すから見てない人は下に行く前に見てくれると嬉しい。

それでは。

~~①動画という媒体では本の内容の全てを収録することはできない。

中田敦彦動画を例に出す。

動画内で解説されていた本の内容をものすごく短くまとめると次のようになる。

20万年前に東アフリカ誕生したホモサピエンスは、認知革命で得た「想像のものを実際にあるかのように扱う」能力を以て他人類を絶滅させ地球覇権を握った。

その後、得た認知能力を基盤として農業革命科学革命に至り飛躍的に文明を発展させていった。

しかし発達した文明がもたらした幸福自由人間以外の生物の膨大な犠牲の上に成り立っている。

また生化学工学等の科学進歩によって人間はいつか人間以上の存在を創り出し、地球の頂点の座を取って変わられるかもしれない。

とこのようになる。

以下は動画内では触れられていなかった内容の一部殴り書き。(再三になるが読んでない人はマジで意味からないので注意)

狩猟採集時代サピエンス世界進出することで他生態系に与えた破滅的影響

食糧の増加とそれに伴って増える食い扶持を満たす農業無限地獄

・脳の記憶能力凌駕する膨大な生産物管理するための記憶媒体文字

認知革命虚構によって成り立った団結と秩序、そして差別ヒエラルキー

・”貨幣”という概念のヤバさ(普遍的な転換性と信頼性及び浸透力)

・”帝国”の性質、拡大と変革のサイクル

ヨーロッパ帝国と他地域存在した帝国比較

帝国拡張科学の発展によって人類史上初めて築かれた将来への信頼

・”拡大するパイ”の前提に成り立つ経済の好循環

産業革命本質エネルギー変換という発想の発明

国家市場経済個人支配する過程で奪い、与えたもの時間地域コミュニティ人権職業想像上のコミュニティ平和

・神になった動物が問われる「我々は何を望みたいのか?」

軽く書き連ねるだけでもこれだけの内容が動画の中では触れられていなかった。

繰り返しになるが認知革命を軸としてサピエンス全史をまとめきったこ動画センスには脱帽するし、この動画を見ることで俺の中で新しい発見も生まれた。

だがしかし、これは認知革命一本だけでまとめられる程度の内容ではなく、認知革命も一つとして含めた様々な要素が複雑に積み重なった壮大な本なのだ

帝国”についての事前の理解がなければ、その後に続く科学×帝国×資本主義の最強コンボの強さが分からない。

狩猟採集時代サピエンス生態系破壊を知らなければ、環境破壊産業革命以後だけの近代現象勘違いしてしまう。

中田敦彦サピエンス全史が読まれない理由として「話が長く、脱線するから」と言っていたがその脱線は後の章への伏線であり、その長さは意味のある長さなのだ。(中田自身はそのことを百も承知だろう、とは思うけど)

膨大な内容を動画に納めようとすると、どうしても内容に影響のある圧縮をしなければならない

からその動画を見ることは読書にはなりえない。これが理由ひとつ

~~②本の中の分からないことを新たな知識にすることができない。

どういうことか、俺の読書を例に取る。

まず俺は本を読んでいた5日間の中で50回以上google検索をした。

話についていく上でどうしても必要だった知識もあれば、本筋に関係ないけど興味本位で調べた単語もある。

しか中田動画の中では分からない言葉は無かった。

前者は誰でも分かる平易な言葉に言い換えられていた。後者についてはそもそも出てこなかった。

ヒトラーキリスト教の話は出てきても古代シュメール人16世紀オランダの話が動画内になかったのは我々視聴者がそれを聞いてもピンと来ないからだろう。

シュメール人オランダのことを知らなくても本の粗筋を頭に入れることはできる。

そういった”無駄”を削ぎ落とすことはは”わかりやすさ”への親切な最適化なのだ

だがそれは同時に新たな知識との出会いの鍵を失うことを忘れてはならない。

から解説動画視聴者することは読書したことにはならない。理由のふたつめ。

~~③読書している最中に何かを思い付くことができない。

俺は読書の途中で考えごとに耽ること度々があった。

食糧が増えることで人口が増加したのであれば(マルサス人口法則というらしい)、食糧含め最低限度の生活保証されている筈の先進国少子化は何が原因なのか。教育コスト生活レベルの上昇によって現代人の考える”食い扶持”は昔のそれより遥かに大きくなったのか?

未来好転するという思い込み経済の好循環を創るのであれば悲観論が多数を占める日本の今後は?

↑これは悲観論根拠悲観論を唱えるマトリョーシカになって面白かった。

読書することと本の解説動画を見ることって何が違うんだろう?

↑これを考えて結構自分なりに納得のいく結論が出たのでここに投稿している。

等々、本に関係のあることないこと色々なところに思考が飛んだ。

読破に5日もかかったのは難しかったのもあるが、この考える作業時間を取られたのも大きい。

まぁ俺ごときが考えることは既に先駆者がいるもので。

先ほど挙げた上2つはググったら同じことを言ってる人がいたし、多分これも探せば既出なのだろう。

というか当たり前のことをアホがドヤ顔エウレカ!と叫んでいるだけなのかもしれない。恥ずかしくなってきた。

でも思索自体が楽しく脳味噌を鍛えられる体験だったし、その過程で更に洗練された他人思考出会うことができた。

これは動画を見るだけでは決して得られないものだ。

何故なら動画自分思考情報を受信することで一杯になってしまうからだ。

本を圧縮した密な情報を、語り部という他人のペースで受け取らなければいけないので脳の処理がそれ以外に使えなくなる。

文字という情報媒体自分の読む速度に合わせて情報が入るので動画よりも、脳のメモリに余裕ができるのだ。

youtubeにも一時停止機能はあるが、手間で面倒なので考え事をするためにわざわざ動画を止める人は殆どいないのではないだろうか。

第一書籍よりも情報が少ないのでそれを土台として思考するにも限られてしまう。

なので解説動画読書にはなりえない。

~~さいごに

話は脱線するが中田のこの動画は「生物学」+「歴史」+「科学」をまとめた本書の外から見た独自性動画最初で触れたところが凄いと感じた。これのお陰で内容を理解する下地ができて、話がわかりやすくなっている。

持論になるが解説動画価値、求められている「わかりやすさ」とは本の内容をいか単純化するか、ではない。

その本に書かれていない情報を本の中身に追加し、不足を補うことで視聴者理解の手助けをすることにあると思う。

またyoutube動画視聴者と本の架け橋となるのは素晴らしいことだ。俺自身サピエンス全史を知ったのはこの動画が切っ掛けだ。

から中田敦彦動画は最高だ。それは揺るがない。あっちゃんありがとう

ただコメント欄動画を見ただけで終わってしまう人がいて、それが俺には物凄く勿体ないことだと感じた。

今回改めて気づいたのは読書という体験の複雑さと楽しさだ。作業ではなく体験として読書にはそこへ時間を注ぐだけの価値がある。

インターネットが発達した現代からこそ、みんな!本読もうぜ!!

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