既視感あるなと思ったら、そもそも大学って3年生まで下積みで専門的な研究は4年生から!とかホームページに書いてあったのを見て軽く失望したことを思い出した。
ガチに見えてるだけですよね。
カウンセリング受けたけど、聞かれたのは「眠れているか?」だった。
「とりあえず毎日つらいけど、体調と睡眠は大丈夫だと思う」と答えたら、問題なしとされた。実際寝るのは十分眠れていると思うので。
まあ楽しめよ
素直な気持ちが素直に書けるというのは能力だなと思った。よいよ!
気になったのは、自分が頑張らなきゃ、自分が我慢すればどうにかなる、と苦労を抱え込みがちな思考の癖がありそう。ケアされる側に回ったら、しっかりそれを自覚して甘んじてケアされるように意識してね。
そだね、しかしニセコにもいろいろ闇側面あるのかなー。うまく回ってそうなところの闇みたいのはあるなら知りたいな。外国人が増えすぎて日本人が行きづらいとかはあるようだけど、それは闇でもないしな。
「何でこんなことをしたんだ! 盗みが犯罪だなんて分かっているはずだ。それともバレなきゃいいとでも思っていたのか?」
この事件で危うく犯人にされかけたこともあって、表情からは怒りが滲み出ていた。
しかし従業員の怒りは収まらず、余計に火に油を注いだようにみえる。
従業員はかなり感情的になっており、今にも掴みかかりそうな勢いだ。
「しかもこんなにたくさん盗んで、持って帰る気マンマンじゃないか」
「えーと、家族にも食べさせようと……」
「盗んだパンを家族に食べさせるって? そんなので腹を満たせて家族は喜ぶか?」
従業員の詰問は高圧的であったが、言っていること自体は正論だったので間に入りにくい。
おかげでコッペパンを食べ損ねたのだから、文句の一つくらい言ってやりたくもなる。
ただ、怒りに割くエネルギーすら惜しい状態だったので静観していた。
「ごめんなさい、許してください!」
「ちょっと待ちな!」
従業員の怒りがいよいよピークに達そうとしたとき、それを静止する言葉が食堂内に轟く。
その声の主はオバチャンだった。
「事情はよーく分かった。今回は勘弁してやろう」
「ええ!? どんな事情があれ、盗みは盗みだろ。それを許すってのか?」
「そうするしかない理由があったんだから、大目に見てやろうじゃないか。『盗みは盗み』だからと冷たくあしらう、“罪即罰”なんて世の中は寂しいだろう」
犯人探しを血気盛んに始めた張本人にも関わらず、この場においてオバチャンは慈愛の心に溢れていた。
「ちっ……分かったよ」
「ありがとうございます、ありがとうございます……」
なんだか酷い茶番を見せられている気がするが、とりあえずこれで一件落着ってところか。
この場にいる人間が許すというのなら、水を差すようなことを言うつもりはなかった。
その様子を静観していた俺に、カジマが話しかけてくる。
「ほら、マスダ。待望のコッペパンっすよ」
そう言って犯人のバッグに入っていたパンを手渡してくるが、もはやそれは俺の望むものではない。
無造作に詰められていたものだから拉げていて、ジャムのせいで全体的にベトベトしている。
とてもじゃないが俺のコッペパン欲を満たせるものではなく、すぐに突き返した。
「いや……いらない。ジャムでグチャグチャになってるし、食う気しねえよ」
「ジャム……?」
そんな俺たちの何気ないやり取りを聞き、オバチャンが妙な反応を示す。
「まさか、アンタ……このコッペパンにジャムをつけたのかい?」
さっきまでの態度が嘘のようなドスのきいた声色で犯人に尋ねた。
「え……は、はい」
そして犯人の返答を聞いた瞬間、オバチャンの仏のような表情がみるみる内に鬼のように変貌していく。
「どうやら、アンタを許すべきじゃないようだね」
「ええ?」
オバチャンの心境の変化に、俺たちまで戸惑った。
一体、何が逆鱗に触れたんだ。
「え、さっきパンを盗んだの許してくれるって……」
「アタシが許せないのはね、“パンを盗んだこと”じゃないんだよ。その“盗んだパンにジャムをつけた”ことだ!」
そう言ってオバチャンは犯人の首根っこを引っ捕まえ、食堂の奥へ消えていってしまった。
取り残された俺たちは、その場に呆然と立ち尽くす。
「ね、ねえマスダ。オバチャンはパンを盗んだことは許したのに、何でジャムをつけた途端に怒り出したの?」
そんなの、こっちが聞きたい。
「多分だけど……“盗んだパンにジャムをつける”のは、“味を楽しむ程度の余裕がある”ってことになるから……じゃないか?」
なるほど、そういうことか。
飢えて心身共に余裕がないとか、或いは誰かのためにやったとかならオバチャンは許すつもりだった。
だけどジャムをつけるという、余計な欲やエゴを認めるほど寛容ではなかったようだ。
「はえ~、ジャムをつけただけで、そこまで話がややこしくなるなんて変な話っすねえ……そうだ、これを『パンジャム理論』って呼ぶのはどうっすか?」
「何言ってんだ、お前」
この出来事が俺の期末レポートにどのような影響を及ぼしたかというと、結論からいえば何も関係ない。
腹を満たしたわけでも、代わりに何かを得たわけでもなく、結局はBのマイナスだったので全くもって無駄な時間を過ごした。
だがカジマは学び取れるものがあったらしく、『パンジャム理論』を考案。
レポートにまとめて提出し、見事D評価を貰って補習が決定したらしい。
もうすぐ入社して4年目の春を迎える。
4年ペースで異動とされているので、
今の部署はあと1年で終わる。
幸いなことに今の配属は
用事があれば断ることもできる。
定時で帰れるし、
そんな状況があくまで自分的になんともアンフェアな気分になって、入社3年目だけれどほぼ自ら志願したような状態で労働組合の執行委員になった。
支持政党の候補者支援だったり、企業間の横の繋がりを保つ会合で金土日の予定が埋まったりもする。
だけど、これは自分の意志で選んだ事だから全くもって不満はない。
社内ボランティア活動にも少し参加するようになった。
他の社員の話を聞くたびに、自分の恵まれた環境に感謝する気持ちが湧いた。
ただ、この環境もあと1年。
異動した先でもこのままの自分でいられるだろうか。
郷に入っては郷に従え。
変わらないといけない部分はもちろんあるだろうけれど、
変えたくない確かな自分もここにいる。