はてなキーワード: ハーラン・エリスンとは
「最後にして最初の人類」は現代の人類から数えて第18番目の人類の進化を描写する奇書で、巨大な脳みそだけの存在になったり、知性を退化させてトドかアザラシみたいになってしまったりと、何億年にも及ぶ人類の歴史が豊かな空想力で描かれる。プロットとキャラクターは極めて希薄で、現代の作家がこんな作品を書いて売れることは考えにくいのだけれど(ほぼ設定資料に近いかも)、個人的にはお気に入りと言うか性癖に近い魅力を感じる。
「スターメイカー」はそれをさらに発展させたもので、時間と空間を越えて精神が銀河を飛び回り、エキセントリックなエイリアンの生態の設定を惜しげもなく披露しつつ、それが銀河の歴史にどのような影響を与えたかを語る。そして、この宇宙を創造した存在の意図を探求する旅をする。光速の限界があるため、その旅やエイリアン同士の交流はテレパシーで行われるという設定はSFとしては苦しいが、宇宙創造の目的たる究極の歓喜の瞬間を目指すヴィジョンは美しい。残念ながら、その瞬間までには人類はとっくに滅亡していることが示唆されるんだけどね。冷えて寿命を迎えつつある宇宙で必死に命をつなごうとする生命の描写は壮絶。
「アッチェレランド」は指数関数的に発展するAIを10年ごとに描いた小説で、タイトル通り加速のスピードがとんでもない。最初の21世紀は現実世界と地続きなんだけど、21世紀半ばには進歩しすぎたAIが地球を解体してダイソン球を作り始め、その過程で地球のすべての化石だとか地質だとかをアーカイブ化しはじめる。人類は暴走するAIを止められなくて太陽系の辺境に追いやられていく。その途中でエイリアンともコンタクトを取る。
これはとある一族の三代にわたる因縁話でもある。最初の世代では夫がAI・特異点信奉主義者でコピーレフト大賛成、妻がガチガチの保守主義で著作権とかに厳しく、しかもSMプレイの女王様だ。2代目は妻が夫を無理やり犯すことで妊娠した子どもだという、ドロドロの設定。
「皆勤の徒」は遠い未来の地球で、地球外生命体に奴隷として使役されるコピー人間の苦悩を描いている。この短篇集は優れた言語感覚、日本語の漢字表記とルビの可能性を拡張した造語であふれており(というか酉島伝法の作品はだいたいそう)、異文化に触れたときの驚きや、似ているけれども少し違う文化に対する戸惑いが感じられる。ただし、かなり読解に力を要するので、場合によってはネタバレ覚悟で世界観を通常のSFの用語で説明した巻末の大森望の解説を先に読んでもいいのかもしれない。
「宿借りの星」はとある惑星で地球人類との宇宙戦争に勝利した昆虫型生命の弥次喜多道中記で、舞台や固有名詞こそ異質だがストーリーそのものは非常に読みやすくなっている。まったく異質なものを作り出すことにかけてはこの作家は他の追随を許していない。そして、滅ぼしたはずの人類がどこかに生き残っているのでは? という疑惑から物語は不穏になっていく。
天文部だった主人公が宇宙に出ていくという意味でもすごく夢がある。
まずは前述したH・G・ウエルズの「タイム・マシン」の遺族公認続編「タイム・シップ」が面白い。前作で行方不明になってしまったヒロインを救うために、再び未来に旅立ったはずが、なぜか前回とは似ても似つかない未来にたどり着いてしまう。
時間旅行のたびに歴史改編がなされ、パラレルワールドが生成されてしまうとしたら、主人公はどうやってヒロインと再会するのか? いっそ歴史を改変してしまってもいいのか? さまざまなジレンマに悩まされる冒険小説だ。
また、この著者は「時間的無限大」という作品も書いている。これは宇宙最強の種族ジーリーを扱った「ジーリークロニクル」の一編だ。作中世界では、人類はクワックスというエイリアンの支配を受けており、それに対抗する手段を知っているという「ウィグナーの友人」という、とある思考実験にちなんだ名前を持つ謎の団体が暗躍する。主人公は父親との(正確にはその再現人格との)屈折した関係に悩んでいる。作中に出てくるタイムマシンは、少なくとも現代の物理学とは矛盾しないらしい。ちょうど90年代の「ニュートン」で紹介されていた。
で、確かこの作品だったと思うんだけれど、人類もクワックスもジーリーという宇宙最古・最強の種族のテクノロジーのおこぼれで生活してるんだけど、そのジーリーでさえ恐れている存在がいる……というのがこのシリーズの基本設定。
なお、同一世界観の短編集が「プランク・ゼロ」「真空ダイヤグラム」にまとめられていることを最近知った。それに、長編も結構邦訳がある。未読だけど気になる。
短編集「ウロボロスの波動」は高校生時代に読んですごく好きだった。実際にかなりありそうな宇宙探査が描かれていたからだ。太陽系に侵入してきた小型ブラックホールを捕獲して天王星を周回する軌道に乗せるという設定と、作中の謎解きがすごく魅力的だった。
ただ、なぜかそれ以降の「ストリンガーの沈黙」「ファントマは哭く」が読めなかった。キャラクターの会話や背景となる政治の設定がかなり説明的で、ぎこちなく感じられたからだ。読むのに気合がいる本は、持っていてもあえて図書館で借りることで、期限を決めるという強硬策があるが、まだ試していない。
「オーラリーメイカー」「法治の獣」。とにかく事前情報なしで読んでほしい。日本のファーストコンタクトものの第一線に立っている。とにかく奇抜なエイリアンが出てくるし、どうやら知的生命体の連合らしきものが確立されていく歴史の一部らしいのだが、この「オーラリーメイカー」という宇宙人の種族の作り上げたシステムは、素晴らしく絵になる。
おなじみクトゥルフ神話の創始者の一人。前にも書いたけど、ラブクラフトの作品は知識欲に負けて禁断の知識に触れて発狂するか未知の存在に拉致されるかするオチばっかりなんだけれど、人類は宇宙の中では取るに足りない存在なんだという絶望感が僕は好き。
SFを紹介するのが趣旨なのでエイリアン(地球外の神々や人類以前の種族)の歴史の壮大さを感じさせてくれるのをピックアップすると、南極探検で発見した人類以前の知的種族を扱う「狂気の山脈にて」や、異種族の図書館に幽閉される「時間からの影」だ。侵略ものとしては「宇宙からの色」かな。ニコラス・ケイジがこれを原作した映画で主演を務めていたはず。
ダンセイニ風のファンタジー作品も好きだ。読みやすいとは言えないが、ラブクラフト全集を読んでほしい。というかアザトースの設定が好きすぎる。元ネタのマアナ・ユウド・スウシャイそのままだとしてもね。
「ブラインドサイト」についてはこちらに書いたので、「6600万年の革命」について。巨大小惑星の中で暮らす人類と、それを管理するAIの物語だ。彼らは銀河系にワームホールのネットワークを作る旅路に出ているのだが、もはや地球の文明が存続しているかどうかも定かではない。すでに正気を失いそうな時間が経過しているが、使命をひたすらこなしている。
管理AIは人間の知能を越えないようにギリギリ調整を受けている。そのことから「チンプ」つまりチンパンジーとあだ名がつけられている。とはいえ、地球時間で6600万年が経過していると、「もしかしてシンギュラリティ迎えたんじゃない?」みたいな出来事があり、人間がAIに対してレジスタンスというか隠蔽工作をする。バイタルを始め何から何まで知られている人類は、AIに対して何ができる?
アシモフの例えば「銀河帝国の興亡」なんかはシリーズが進むと「鋼鉄都市」や「はだかの太陽」などの「ロボットシリーズ」とクロスオーバーして行って、確かにアシモフが発表順に読んだほうがわかりやすくなるんだけど、さすがに全部読む前提で書くのはちょっとしんどかった。個人的にはアシモフは「黒後家蜘蛛の会」というおっさん萌えの短編ミステリがおすすめ。英米の文学や地理に関する雑学が無いとわからないところもあるけど、口の悪い仲良しなおっさんの同士のじゃれあいを読んでなごんでください。
堀晃の「太陽系から3光日の距離に発見された、銀河面を垂直に貫く直径1200キロ、全長5380光年に及ぶレーザー光束」が出てくる「バビロニア・ウェーブ」はハードだなって思ったんだけど、どういう話か思い出せなかったので省いた。まずは「太陽風交点」かな?
あと、SFじゃないんだけど「マン・アフター・マン」あたりも未読だったのでリストに入れなかった。人類のグロテスクな進化という意味では、上記条件は満たしていたと思う。「フューチャー・イズ・ワイルド」は読んだ。
ダン・シモンズの「ハイペリオン」四部作はSF全部乗せだし、AIの反乱だとか人類が進化した宇宙の蛮族だとか愛が宇宙を救うとかとにかく壮大なんだけど、とある場所で増田では評判の悪い(?)「夏への扉」以上に男性主人公に都合のいい描写があるのが欠点。あと、それ以外の作品はもっと男性に都合がよくなっていて、保守的な僕もちょっと「おや?」って感じた。でも、「三体」にどっぷりハマった人だったら好きになると思う。「三体」よりも前の90年代SFだから時代背景を知ったうえで、加点法で楽しんでください。
あと、全然エイリアン・宇宙SFじゃないんだけど、今注目しているのは空木春宵で、この人は東京創元社の年間傑作選やGenesisですごくいい作品を描いてる。どれもいいんだけど、たとえば「地獄を縫い取る」は「アリスとの決別」や「allo, toi, toi」に並ぶロリコン・ペドフィリアを扱った名作に並ぶ。
エイリアンSFも出てくるけど、「世界の中心で愛を叫んだけもの」「ヒトラーの描いた薔薇」のハーラン・エリスンは人種差別を扱った作品も書いていて、これもいい。穏健派の黒人男性がテロリストに転身してしまう作品はつらい。とかくエリスンの絶望と怒りは若い人に読んでもらいたい。
自分が一番SFを読んでいた時期は、今と比べて女性作家が推されるずっと少なかったし、さらに自分は古典を好んで読んでいた。アジアの作家が紹介される機会も少なく、そういう意味では感受性のみずみずしい今の若い読者がうらやましい。
後は、女性作家で今回のテーマである宇宙を扱った作品は男性よりも少ない気がするのだが、よく考えてみればル・グインの「ハイニッシュ・ユニバース」があるし、ティプトリー・ジニアも「たった一つの冴えたやり方」で始まるシリーズがある。スペースオペラでは「叛逆航路」のアン・レッキーもいることだし、単純に探し方が悪いのかもしれない。
最近短編ばっかりで腰を据えて長編を読んでないな。銀河系で忌み嫌われた人類の唯一の生き残りが活躍する「最終人類」とか、面白そうなのがいっぱいあるので、そのうち読みたい。
というか、僕の選んだ作品の他にもっといい作品を知っている、勧めたいという方は、どんどんトラバやブクマで追記していってほしい。
気が向いたらまたなんか書きたいな。まだおすすめしたいSFもあるし、池澤夏樹の世界文学全集を9割読んだのでその感想も書きたいし、かなり疲れるから数ヶ月後にはなるだろうけど。
【翌朝追記あり】劉慈欣「三体」の好きなところと微妙なところについて
はみ出たのでこちらに。
http://anond.hatelabo.jp/20170414013324
名前 | 2016年のベスト(一部2015年) | リンク | 所感等 |
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週刊文春ミステリーベスト10 | 国内 『罪の声』塩田武士 海外『傷だらけのカミーユ(文春文庫)』ピエール・ルメートル | 年末恒例! ミステリーベスト10 - 週刊文春WEB | 40回も続いている老舗。 |
このミステリーがすごい! | 国内 『涙香迷宮』竹本健治] 海外 『熊と踊れ(ハヤカワ・ミステリ文庫)』アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ | ― | 1988年~ |
本格ミステリ・ベスト10 | 国内 『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』井上真偽 海外 『ささやく真実 (創元推理文庫)』ヘレン・マクロイ | ― | 1997年~ |
ミステリが読みたい! | 国内 『真実の10メートル手前』米澤穂信 海外 『熊と踊れ』アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ | ― | 2007年から早川書房が実施。 |
SFが読みたい! | 国内『夢みる葦笛』上田早夕里 海外 『死の鳥 (ハヤカワ文庫SF)』ハーラン・エリスン | 2016年のベストSF小説は? 『SFが読みたい!』ランキング特別公開 | 1990年から早川書房が実施。 |
映画本大賞(キネマ旬報) | 『日本映画について私が学んだ二、三の事柄〈1〉―映画的な、あまりに映画的な』山田宏一 (2015年発行が対象) | 【公式】映画本大賞 2015 結果 | キネマ旬報 | KINENOTE | ハイコンテクスト。 |
歴史・時代小説ベスト10(週刊朝日) | 『室町無頼』垣根涼介 | 週刊朝日「2016年 歴史・時代小説ベスト10」を発表! 〈PR TIMES〉|dot.ドット 朝日新聞出版 | ちなみに『この時代小説がすごい!』(宝島社)は過去3年は12月に発行されていたが2016年版は発行されていない。 |
【法華狼くん、plummet氏へ】
プロフィールやブログタイトルで「中の方から」「世界の中心で」左右をヲチと称しながら、そう自認されているのは以前から違和感がありました。もし「自称中の方」や「自称左右の中心位置(※1)」と呼ばれたなら、受け入れるのでしょうか。
なお、「自称中立」は「ググレカス」と同様の定型的な語句であり、「中立」といった語句で自称していることが絶対の条件ではありません。誰の発言も党派性を帯びることを避けられないのに、他者を「デムパ」等と評しつつ、自身が「自称中立」と評されることは拒絶するような態度を指します(※2)。
日記のタイトルが『世界の中心で左右をヲチするノケモノ【勃興編】』で、プロフィールにも「中の方から左右をヲチしている。ねら。おおむね無職。だいたい無気力。やや植物気味(椰子)。」と書きながら、「中立」を自称していないと思える感覚が全くわからない。
(以上、全てhttp://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20091001/1254352833)
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【plummet氏の反論】
『俺は「保守」ないし「保守リベラル」と自称していますし、プロフィールページにも政治的立ち位置は書いてありますし、そこに「世界の中心」の意味も書いてありますし、「中の方」は「中の人」のもじりです( ゚Д゚)』(http://d.hatena.ne.jp/plummet/20091002/p1)
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【JSF氏の批判】
『plummte師は普段から「保守リベラル」を自称しており、朝日新聞に保守としてインタビューを受けた際にも自称「保守」だが「ネット右翼」と他称されても仕方無いと言っています。』
貴方は毎日新聞のWaiWai変態記事報道について「毎日新聞はあくまで紹介しているだけだ」と毎日新聞を擁護し、問題は読者にあるとしています。しかし「自称中立」の件になると途端に180度主張を反転させ、「紹介しているだけ」で逃げようとする態度を批判しています。このようなダブルスタンダードは、通らないでしょう。
(http://obiekt.seesaa.net/article/129458715.html)
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【CaptainTerk氏、コメント欄にて批判】
『1、「中の方」はそれこそ「中」であって立ち位置云々ではないよ。2、「世界の中心で」はハーラン・エリスンネタ。3、中立以外を表明する人を、そんな事を指して勝手に「自称中立」だと表明している事にして、更にそれを元に人を評価するのはおかしくね?』(以下、http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20091001/1254352833#c)
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【法華狼くん、CaptainTerkへ】
『1、中の方から「左右を」とまで書いているので、何らかの位置関係を示していると解釈できるでしょう。2、だから何? 3、「自称中立」だと表明している事になんかしてません。』
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【CaptainTerk氏】
『1、「中の方」ってのは「中の人」みたいな意味。2、え? 3、”「中の方」から左右を・・・世界の中心から"と言いながら、中立という評価を拒絶するというのはおかしい(※4)、おまえみたいなのを「自称中立」と言うんだ、という風にしか読めませんが・・・?』
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【法華狼くん】
ああ、それは読解力がないだけですね。
まずplummet氏が中立を自称しているように「誤解」(※3)される文面を指摘しました(plummet氏も「ただまぁ、もじっている時点で伝わりにくいのは承知しています」と認めています)。
※1:「世界の中心で」が「(思想的)左右の中心位置」に読み替えられているが、なぜそんなことができるのかは不明。
※2:たとえば自称極右が左翼をデムパと評し、他者の評に「俺はあんたのいうみたいに中立じゃねえよ」と抗弁すると「自称中立」になる…という論理だが、なぜそうなるのかは不明。
※3:「誤解」される、と人ごとのように言うが、「(plummet氏が自分を「中立」などと言ったことはない、と)自認されているのは以前から違和感がありました。」、つまり「自称中立の否定」に「違和感」を感じているのは法華狼くんである。また、「『中立』を自称していないと思える感覚が全くわからない」と言っているのも法華狼くんである。はやりの「アウトソーシング」だろうか。
※4:追記。このあたりはコピペなのだが文意がよく分からないので改変した。元は「中立というのはおかしい」。