2019-10-19

[番外編]ラグビーW杯 準々決勝 日本 vs 南アフリカ プレビュー

1週間のご無沙汰、レビュー増田(ありがたく名乗ることにした)です。

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これがポストされる19日は、イングランド×オーストラリアニュージーランド×アイルランドという非常に興味深い対戦が行われ、レビューのしがいがあることは間違い無いのだが、実は増田はこの1週間、所用で日本におらず、帰国日がまさに19日の夜になる。

なので、これらの対戦をレビューしてポストする頃には、日本×南アという大一番に皆が集中していることになるだろう。

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そこで、今回は番外編として、前回の日本×スコットランド戦でも触れたように、増田マレー半島北上しながらボーッと考えた南ア日本が取りうる選択肢展望について触れ、プレビューとしたい。

プレビュー分析すると良いのが、「双方や一方の戦略戦術機能せず、パッと見で凡戦や圧勝劇なったとしても、そこに遂行にまつわるドラマを感じることができる」という所だ。

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このプレビューで、みんなが事前に自分なりの注目ポイントを見つけることができ、より楽しく観戦できれば最高の喜びだ。

因みに前回のレビュー羽田空港外国人に囲まれながら試合を観戦し、翌朝クアラルンプールからポストした。

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4年前のW杯アップセットを演じ、今回も驚異的な戦績でプールAを突破した日本だが、直前のテストマッチの結果が示すように、地力南アには及ばないのは間違いない。

10回やって6回勝てる相手なら地力で優っているとも言えるだろうが。

NZ地元紙が予想した日本勝率24%というのは妥当とも言えるし、むしろ好意的だとも増田は思う。

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まずもっての所、ノックアウトランド勝ち点制でないので、すべての国が点数の大半をペナルティーゴールであげるような「堅い」展開になりやすい。

南アフィジカルを盾にしたディフェンシブでセットプレー中心のぶつ切りラグビーを得意とする国で、そういったゲーム大好物だ。

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また、それは現在メンバーにも現れており、司令塔、SOのハンドレ・ポラード地元南アスーパーラグビーチーム、ブルズで正にそういうゲームタクトを振っている。

ここで出てくるのが、ツーブロックなのかモヒカンなのか微妙髪型の控えSOエルトン・ヤンチースであれば、小柄ながら強気プレーでもって鳴らすSHファフ・デクラークとの連携ボールを回すオープンな展開になるのだろうが、初期代表チームでこのコンビの結果が出なかったため、ポラードの固定となった。

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その後、南アはでかい身体ですぐキレるLOエベン・エツベスや、大会最高クラス長身で掴み合いになると笑顔になるのが怖いLO RGスナイマン、一転してナイスガイオーラが滲み出る大男FLピーター・ステュフ・デュトイ、怖いとかナイスガイとかもうそういう話じゃなくてプレー身体も顔もなんかサイボーグっぽいHOマルコム・マークス、そんな中でどこか哲学者のような雰囲気を漂わせるキャプテンFLシア・コリシなどのFWが中心となった堅いラグビーを基本としながら、「ポケットロケットWTBチェスリン・コルビや、海外中継などだと「マッピンッピ!」と独特のアクセント名前を呼ばれる俊足WTBマカゾレ・マピンピ、直前のテストマッチ連続トライを挙げたワンダーボーイSHハーシェルヤンチース(本日2回目のヤンチース)などを加え、身体をぶつけてよし、走ってよしの非常に攻略しづらいチームになってしまった。

因みにシア・コリシは極貧の身からラグビーのし上がり、功なり名を遂げると、幼い頃に生き別れになった腹違いの妹を自力で探し出し、非常に煩雑な法的手続きを経て養女として迎え、共に暮らしているという。

知的人物として知られ、FW戦には付き物のジャッジ解釈をめぐるレフェリーとのコミニュケーションバッチリだ。

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おそらく南ア戦略ファーストチョイスは、ここ一番の時にオールブラックスさえ封じ込めるやり方、ハイパントを上げて着地点の競り合いやキャッチ後の攻防で直線的にドカンカン身体を打つけ、ボールを前に落とすノックオンからスクラムを狙ったり、ボール争奪戦で時に頭を突っ込み、時に圧力をかけて日本規律を崩してペナルティー獲得を狙うというものになるのではないかと思う。

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マイボールスクラムになったらまた直線的に走ってスクラム脇を急襲し、身体を打つけて1コマ前に戻る。

接点の圧力対応するため日本が人数を集めれば、さあ外のスペースに展開だ。

強力なランナーがいる。

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もっと良いことにペナルティーを獲得した場合、素直にペナルティーゴールで3点を狙うか、タッチキック前進してトライを狙うかは考えどころだ。

タッチ前進したあとの狙いは、立っての密集、ドライビングモールとなる。

日本は今大会スクラムになかなかの強さを見せるが、モールは止め切れていると言い難く、フィジカル絶対の自信を持つ南アが3点で満足せず、これを狙ってくる確率は高いとみる。

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日本としてはこの展開になりたくない。

なので、アイルランド戦やスコットランド戦で見せた、「ボールキープして攻撃時間を使う」という戦術が考えられる。

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しかし、ここで問題になるのが日程と経験値だ。

今回、南アは十分な休養日があり、たとえ守り通しの展開になっても、体力切れは起こしづらい。

それに、地上戦身体をぶつけ続けると、その衝撃で消耗してしまい、日本の方が先に体力切れになってしま可能性がある。

キープするならどのタイミングで繰り出すかが悩みどころとなる。

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さらに悪いことに、南アの多くのプレイヤー日本の早さや多彩な攻撃、意外と侮れないフィジカルの強さなどを「感覚的に」知っている。

これは日本代表クローンチーム、サンウルブズスーパーラグビーに参戦して数年来南アのチームと対戦し続けているのと、南アの多くのプレーヤーがジャパンラグビートップリーグプレーしているためで、お互いに顔見知りの選手も居るくらいだ。

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そこで考えられるのが、サモア戦で日本がとった、「ボール相手の背後に蹴って背走させ、身体接触を避けながら前進し、走力を削る」というやり方なのだが、これも蹴ってしまう事には変わりないので、相手が充分なところに蹴ると、正に相手好みの展開の呼び水となってしまう。

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大会日本ディフェンスはよく機能しているが、国際的日本評価は「恐ろしく早いテンポの多彩で素晴らしい攻撃と、脆弱守備を併せ持つ、『よく取るけどよく取られるチーム』」というもので、増田から見てもそういうチームであって、できれば守勢には回りたくない。

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南アが唯一対応に後手を踏む可能性があるのは、ボールがあっちに行ったりこっちに行ったり、攻守の交代が目まぐるしくなる「アンストラクチャーラグビー」の展開だが、その起点がハイパントだったりすると巨人揃いの南ア空中戦で競り勝たないといけない、ということになる。

ハイパントキャッチが「当たりの日」じゃなかったら果たしてどうやってここまで持ち込む?

アンストラクチャーのもう一つの起点は相手が持ち込んだ密集、ラックボールを無理やり引っこ抜いたり、激しいタックルで落球を誘い、有利状況の反則流し(アドバンテージ)で相手が攻めから守りへ切り替えられないうちに走り抜けるというやり方だ。

こうなってくると姫野やリーチ大阪弁第二外国語のトモさん(トンプソンルーク)に頑張ってもらうしかない。

エツベスがまたキレるかも、とか考えてる場合ではない。

というか、むしろソレについて考えなければいけないのはシア・コリシの方で、大体において宥めてしまうので期待薄だ。

あとデクラークも小さい身体で掴み合いには一歩も引かず、何だったら自分から掴みに行く勢いなので、危なっかしい事この上ない。

シア・コリシの胃壁の強さには感嘆するばかりだ。

あ、マルコム・マークスは大丈夫。彼は多分そういうの超越してる。

まあそれは良いや。

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日本はこれらの考えられる展開の中で、今まで挙げた戦術を切り替えて勝利の緒を探すかもしれない。

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ランキング1位だったアイルランドと5位だったスコットランドを倒したからいけるっしょ、と思いたくもなるが、このように概観した上で考えると、相性で見たところはそれら2チームより遥かに悪いのが現状ではないだろうか。

日本は相性最悪の強敵を前に、わずかな隙間に手を突っ込んで勝利へのドアをこじ開けるプランを見つけなければいけない。

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注目は最初の15分に日本ボールを持った時に蹴るか・キープするか、その後さりげなく戦術が変わっていないか前後半で戦術修正が入るかというプランのところと、地上の密集・ラックでどちらが優位に立つか、ファーストスクラムがどちら優位になるか、エラーや反則の数が時間と共にどう増減するかという遂行のところだと思う。

みんなはここを見てみてほしい。

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果たして試合は4年前の再現となるか、4年越しのリベンジとなるか。

増田普段序文で書く話を今書いてしまったので、レビューで何を書こうか、ちょっと不安だ。

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あ、あと日テレの実況が酷いという意見散見されるが、以前はラグビー界の松木安太郎にならんとして感情爆発実況をしていた元代表とか「いや、展開の複雑なラグビーでそれはちょっと」みたいなのもあったんだから、それを踏まえた上で、今回、数年来みずから映像編集してまでミニ番組Youtube配信ラグビー普及に尽力してきた日テレ安村アナはなかなかい仕事をしている思うぞ。

anond:20191014075520

  • 日曜に行われたアイルランド×スコットランドのレビューも望外のブクマ数をいただいて嬉しい。 W杯が開催された最初の3連休で増田が書いたレビューが多くの人に読まれ、ラグビーを楽...

    • 地上波放送がなかったにも関わらず、先週のウェールズ×ジョージア戦のレビューが多数のブクマをいただけて嬉しい。 あの試合はフィールドの46人とコーチたちのおかげで筆舌に尽くし...

      • 土曜日の日本×アイルランドの大一番のレビューに非常に多くのブクマをいただけて嬉しい。 文章や情報には色々なスタイルがあり、たくさんの人に注目を浴びるスタイルはきっと色々...

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          • 「私たちは胸を張っていきたい。間違いなく大きな体験で、感極まってしまうほどだ。私たちのパフォーマンスが祖国のパワーになれば」 プールA、0勝4敗で大会を去る事になったロシア...

            • 1週間のご無沙汰、レビュー増田(ありがたく名乗ることにした)です。 ------ これがポストされる19日は、イングランド×オーストラリア、ニュージーランド×アイルランドという非常に...

              • 試合前に注目点を教えてくれてとても助かる。あと安村アナは元ラガーマンだけあって結構分かりやすいと思う。今日勝ってくれたら本当に世界が驚愕するだろうなぁ。楽しみ。

              • にわかファンです。ラグビー詳しくありません。誰か教えて下さい。 先だってのスコットランド戦後半で、相手のパス回しがサイドに出た場合、日本の選手がいない、という状況が幾度...

                • アドバンテージ中かな? アドバンテージは反則によって試合が中断すると盛り上がりに欠けるので、反則が出ても試合を中断せず続行し、プレーの結果が反則された方に有利ならば継続...

                • ディフェンスシステムは前に出て相手の勢いが出る前に止める「シャロウディフェンス」と、相手がボールを横に回しながら前進してきた時に、待って外に移動しながら追い出す「ステ...

              • なんという予言w 脱帽です。

              • 「先に我々のメンバーを見たことで、相手が作戦を変更してきても、それは私がどうこうできることではない。関係ありません」試合3日前に登録メンバーを発表した南アフリカのエラス...

            • これはひどい。何も内容がない。 元増田への冒涜だから、消してちょーだい。

            • ラグビー増田お疲れ様やで。 昨日の試合アチアチ過ぎたわ…。前半は本当にゲームを掌握してたよなぁ。

            • 伝統芸能「ゆっくりスクラム」www

            • 消耗を避けるっていうよりスコットランドは追い風だからキックつかってたように思えるけど

              • 選択する戦術の相性が先に頭にあったんで、そのフレーミングで見て、「あ、ここ蹴り方はサモア戦の日本と似てるな」って判断したのはありますね。 でもちょっとスコットランドのキ...

            • フォワードの体重差が40キロくらいスコットランド有利だったのに何度も日本が押し勝ったのは疲労蓄積の差なの? それとも40キロ程度ならアドバンテージにならないとか

              • もちろん疲労の影響はあると思うんですけど、押し合いでも、スクラムは技術のツメとメンバーで組んだ回数、反復練習がモノを言う世界らしく、日本のスクラムは足を置く位置や、8人...

            • 意外と試合部分のレビューがあっさり。Youtubeとかで簡単にハイライトを動画で見られる時代に、文字情報でこういうの書き出す正当性はあるのか?

            • 完全なにわかなんだけどラグビー面白いなって思っていろいろ記事も読むようになった。 でも戦術のゲームだっていうわりにはチーム戦術の基本を教えてくれたり分析をするような日本...

              • 元増田です。 ————— 自分も戦術を上手くレビューに組み込めればもっと面白さが伝わるかも、と思うし、ブコメで言ってくれた人いるんですけど、自分は細かい戦術にはそれほど詳...

                • YouTubeでレビューしてるような連中は試合見ながらちゃんとメモ取ってるゾ。

                • 無理せず、試合後に録画を使い、一時停止と巻き戻しを繰り返しながらメモりつつ書いてもいいのでは。

          • 今日の試合も面白かった。なんか強豪国の雰囲気を感じる試合運びだったなぁ。

          • この解説を読んだあとでもう一度試合を見たいと思いつつ、録画した番組をもう一度見る時間はないのが残念。 今日のオールブラックス戦も楽しみにしてます。いつもありがとう。

          • 今大会は日本のコンディションが非常に良くて、終盤に走り勝つことが多いけどなんで?自国開催(含む日程)が有利に働いてるためだと思うんだけど…

            • 気候が影響してんのは確かでしょうね。 湿気は効くみたいなんですよ。 あとラグビーって60分ぐらいでゲームが動くことが多く、日本はいままで逆に「60分まではいい戦いをする」...

        • ウェールズファンのガラの悪さには草。自分もパブリックビューイング行ってみようかなぁ。ミーハーなのでジャパンのユニフォーム欲しくなってきた。

      • ラグビー増田待ってた! 選手の小ネタからプレーの内容までとても分かりやすく、numberとかに載ってても違和感がない。 ラグビー増田のおかげでラグビーワールドカップを10倍くらい楽...

      • ラグビー素人の質問なんだけど、攻撃側がタッチラインギリギリに蹴って大外から味方突っ込ませてトライを取るプレイがあるじゃないですか。 あれっていつぐらいからトレンドになっ...

        • トレンドになったタイミングはわからないですけど、2003年のW杯でオーストラリアがライン側、しかもゴールラインに間際にハイパンでキックパスを送って、そこで落下地点に大き...

      • 自分が戻ってきたのは2ヶ月ぐらい前なんだけどけっこういるよ 最近だと例えばラグビーのやつなんかもそう自称してる https://anond.hatelabo.jp/20190928201155

    • せっかくいい紹介も「漢」と書いて「おとこ」と読ませる無神経無自覚な中華思想にげんなりする。

    • anond:20190924024605 トライ狙いに行ったの? 強いチームならドロップゴールで10点差にしてボーナスポイント与えなかったのでは? 正面だし決められるよね? 後半途中のヘンなところで蹴...

      • ドロップゴールは今大会、結構出てますけど、あれ難しいんですよ、ワールドクラスでもざらに外れる。 あのときの周囲の状況がどうだったかわからないですけど、まずその状況からド...

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