2022-03-31

寿司食いてえ(+包丁の話)

ネタシャリの間にわさびが入ってる程度の寿司をたらふく食べたい。

 

いわゆる100円寿司各社がわさびを別添にするようになってどれほど経っただろう。

あれもそんなに嫌ってもないのだが、しかしわさびネタシャリの間にいてほしいし、ネタシャリは横倒しにしても分離しない程度に握り固められていてほしいもである

このささやかな願いに同調してくれる人は決して少なくないと信じているが、しかしこれを叶えることは存外容易でないものである

 

百円寿司で一旦ネタ剥がしわさびをつける戦略は思いの外満足度が低かった。

回らない寿司は週2で通えるものではないので考慮しなかった。

上記が叶う程度の回転寿司は採算がアレなのかコスパが良くなく、何よりレーンの中に板前が居たりしてコロナ禍において通いづらかった。

宅配寿司は1人前をなんとなく頼みづらかった。

持ち帰り寿司は最も理想に近かったが、ヘビロテすると飽きが来た。

ついでに言うと俺は今ほぼリモートワークなのだが、1人前の寿司を買いに日参するには絶妙店舗立地が遠かった。

 

ここに至って俺は認めざるを得なかった。もはや自分寿司自分で握るしかない。

業務スーパー冷凍のサクを買う。今日寿司だと思い立ったら冷蔵庫解凍し、白米を炊いてすし酢と合わせてええ感じに握る。これだ。これしかない。

今どきは便利なもので、寿司の握り方はyoutubeいくらでも調べられた。

ちなみにこの過程で家庭向けの寿司を握る補助具的なものがないか調べたが、結果は芳しくなかった。

百円寿司シャリロボットの人力版みたいなものはあったが、肝心のネタシャリを一緒に握れる機能はなかったのだ。

アイスクリームスプーンのしゃもじ版みたいな奴は工夫次第でいけるんではと買ってみたが、逆に面倒だった。

結局は頼れるものは己の五体しかなかった。

 

とはいえはじめの数回は酷い出来だった。初めて作った寿司はずっしりと重く、太く、齧れるほどだった。

細くしてみたら底面が崩れて、自立しなくなった。

力を抜いて軽く握ったら形が整わず、あちこち米粒が飛び出した。

いい感じに出来たと思ったら握れておらず、箸で持つと折れた。寿司飯にして1.5合喰った。

 

もともと刺身はサクで買う主義だったので柳刃包丁は持っていた。しかしここでも問題が発生した。

狭いアパートスーパーのサクを切るくらいしか想定していなかったので、柳刃と言いながら刃渡りが20cmしかなかったのだ。

平造りしかしないのであれば正直十分だった。だが寿司ネタを切りつけるには指四本よりもやや長い幅を切らねばならぬ。

包丁刃渡りが明らかに足りていなかった。

我が家包丁三徳と出刃と柳の3本だったので、実はイワシや小アジを捌くのも多少不便だった。

なのでこの20cmの柳は片刃のペティというか小魚用の身卸というか、小刃でもつけて多目的に使うことにして、

9寸くらいの柳刃を追加しようと思った。しかしなかなか好みの包丁が見つからない。

 

元々俺は、和包丁伝統的なハンドルが好きではない。

あれは伝統的には朴の木で出来ていて、穴をくり抜いて口輪を付けて刃を挿すものだ。

口輪は経年で縮んで締まる水牛の角がいいとか、サビ防止に刃を挿す前によく熱して中を焼くとか、

あれこれあまり知られていないノウハウがあったりなかったりするものだが、これらは基本、その時代の工夫というものだ。

朴の木を使う理由にしたって、自然木材の中では水に強いという程度のことでしかない。

水性の高いハンドル材がいくらでも選べ、ステンレス包丁なら中子が錆びる心配もない現代において、

敢えて朴の木に鋲もネジもなしに摩擦力で留めるだけの柄を使い続ける理由はなにもないと思うのだが、

何故か頑なに和包丁には朴の木のハンドルを使うというのが常識となっているようである

しかもアレ大抵白木だから、魚の血や肝とか砥石の研ぎ汁とか付着した日には金たわしや最悪紙ヤスリなどで削るんである

なんぼなんでも、あまりにも前時代的だと思うのだがなんとかならんか。

 

閑話休題、そういうわけで柄が積層材、鋲止めで刃はステンレスで口金もついて9寸の柳刃を探し回るのであるが、

これがまあ見つからないこと。なんとか探し当てても鋼材がなに使っているのか非公表だったりしてそれも気に入らない。

世の中にモリブデンバナジウム鋼と分類できる鋼材が一体何種類あると思っているのか。

まあ包丁問屋日本鋼って鋼材がガチで在ると思い込んでいたりとかなくもないらしいのでその類なのやもしれぬ。ファック。

 

流石にそこまでいくとマニアックすぎないかと思われた向きもあるかもしれないが、これが結構実害があったりするんである

例えばAmazon検索アルゴリズムとか。「モリブデンバナジウム鋼」の包丁合金鋼と表記されてるせいで(※間違ってはない)、

検索ページの絞り込みで「材質:ステンレス」にチェックを入れると表示されなくなったりとか、いざ遭遇すると割とびびる。

Amazon内で検索するのがマジで役に立たないので、色々辿ってメーカーカタログから作ってることは確認した上で購入方法

調べてみたらAmazon普通に売ってた(でも検索からは出ない)とか、本当に勘弁してほしいもである

 

包丁噺ついでにさら脱線するが、和包丁の鋼への信仰心とでも言うべきものにも戸惑うものがある。

俺は趣味で切出しや肥後守とかも使うので炭素鋼の切れ味と扱いやすさは理解している。ついでにフライパンは鉄製に限る。

だが包丁についてはステンレス統一する主義だ。たしかに差はある。他はまだしも出刃だけ(柳だけ)は鋼、と言う意見もわかる。

けれどそれは刃持ちに妥協できない業務用途に限った話ではあるまいか

家庭用の包丁では、刃持ちを妥協して柔らかい鋼材を使う、と言う選択肢が取れるためだ。

正直な話、HRC56の謎ステンレスとHRC62の青紙だったら、ステンレスのほうが研ぎやすい。

粗悪な刃物だとカエリがペラペラしたりするのも知ってるが、今どきそこまで酷いのは中華偽ブランドナイフくらいのものである

わざわざ水気に弱いものを水に濡らして使うくらいなら、多少ヘタリが早くともステンレスを使ったほうが手間がないと俺は思う。

 

しかし、どうやらそういうのとは無関係に「鋼の包丁」という情報を食う連中がいるようで不気味なんである

よくいる初心者には白2鋼おすすめ!などと勧める奴も、真に受けて購入した包丁を錆びさせる奴も大概アレであるが、そうではなく、

ちゃんと扱えたとしてもいらん苦労でしかないような怪しげな包丁をやけに目にするのである

職人手作りで仕上げた白2の包丁必要な場面というのはもちろんあるであろう。

板長が本焼きを持っていることがステータスになる世界だってあって全然構わない。

だがこの異常に安い、4桁円で買えるが白1鋼という包丁は一体誰向けに作られているのだ…?

それはかけた手間に見合った性能を引き出せているか?ただ錆びたり柄が腐ったりするだけの包丁ではないか

包丁の手入れをすること自体目的になってはいないだろうか?

 

さて話を戻して、そうして多方面呪いながら包丁を都合すると、道具の面ではもうあまり不足がない。

飯にすし酢をあわせるのにボウルでは不便だと思っていたが、これは代用できるものが見つかった。

どこでも手に入る土鍋である市販の鍋セットをそのまま突っ込める大きめサイズを買っていたのが幸いした。

自体土鍋で炊くほど拘りはしない。炊飯器で炊いたのをお櫃代わりに鍋に移して酢と合わせる。おこげ寿司に出来ないのでこれでいい。

本職が使う寿司桶には、保温と調湿の機能がある。

土鍋は保温については文句がない。調湿は流石に木の桶とは比べ物にならないが、ステンレスのボウルに比べれば水気を吸う。

しろ木桶は水を吸いすぎるので事前に濡らしておくというくらいだから土鍋でも十分なのではないかと思う。

そもそもシャリが一人分なのでそれほど乾く心配はしなくていい。何かの理由台所を離れなければ行けない場合

濡らしたペーパーを被せておいて、それでも足りなければ濡らして絞ったペーパーを直接触れない位置に置いておくとか、工夫次第である

何より手入れに手間がいらないのが良い。ものにもよるが食洗機に突っ込むことだってできる。

ただ、冬場は冷えすぎるので事前に軽く温めたほうが良いみたいではあった。

 

自分寿司を握ってみると、寿司というのは米料理なのだなぁと言う思いを強くする。

わかりやすいのは水分量の管理で、米を1合炊いてすし飯にした場合最初最後の1貫は米の状態が顕著に異なる。

米の状態を見て手につける手酢とかも調整していく必要がある。でないと米が手についたり寿司がベシャベシャになったりする。

反面ネタの方は自分で喰らう分には割と融通が効く。多少大きさが不揃いだろうと人に出さないなら問題ないし、

なんなら小さく切って1貫に二切れ使ったって良い。シャリリカバリできない。

 

握りの技術については、未だにわからないことが多すぎて文章にできない。

ただ握り寿司にした米の総量でみて、大体1升を越えてくると、当初の目的であった

ネタシャリの間にわさびがあって、横倒しにしても分離しない程度の寿司」については達成できたと思う。

最初は量をこなさねばと思って一度に1合半とか2合とか炊いて喰っていたので、自宅寿司8回目とかでクリアした格好だ。

ただ本末転倒なことに、この達成水準の寿司は俺を満足させなかった。

何よりもわさびの風味が駄目だった。本わさび使用と大書された高級ラインでも、チューブわさび寿司に向かないと知った。

わさびの味自体問題があるというより、油脂などに由来する滑らかさが違和感の原因ではないかと思う。

脚を伸ばした遠いスーパーに本わさびのちょうどいい感じにすごく小さいやつが売ってはいたが、毎回それはしんどい

いろいろ試したが未だ納得がいっていない。粉わさびを都度練ると良いらしいので次はそれを試すつもりだ。

 

ネタは切りつける上では自由でいいが、買ってくるときは悩ましいことが多い。

一貫分のネタの大きさは解説する人によって千差万別で、総合すると10g~15g、シャリの量は10~20g

ばらつきが大きすぎて正直参考にする気が起きない。

おそらく職人の技としては狙った大きさで握れることが要諦で、何グラムにするかと言うのは店舗経営領域なのだろう。

時価寿司は客の様子で大きさを調節してるとかなんとか。

歴史的には、江戸屋台で売られてた頃はシャリだけで40gあってこれが右肩下がりで小さくなってるとか。

戦後の一時期に限れば米1合=10貫だったのでシャリは30~35gくらい(水分量による)だっただろうとか。

 

どっちかと言うと自宅寿司やる際に考えるのは、魚をサクで買うときに何グラム分買うかということである

何度か試した限りだと、俺が適当に握る場合「端っこを除いて」200gの刺し身に米1合使っているっぽい。

そしてこれは多分、この比率結構ネタが小さくて薄いパターンである

よく商品画像的なもので見る、ネタの先端が地に付きそうな寿司を握ろうと思うと、ネタをかなり増やして考えないといけないと思う。

 

アジイワシやその他の魚をまるまま買って捌く場合はまた考え方が変わる。

イナダを一匹買ってくれば小さいのでもデブ3人前くらいのネタが取れるので、下側の身は翌日塩焼きにでもしようか

みたいな悩み方をすることになる。

小さい魚の場合は魚体の身を2分割または4分割して考えることになる。

イワシなら手開きにして上身と下身それぞれ半分に切れば1尾から4貫取れるな、とか。

アジは血合い骨をいちいち処理したくないので、節を渡して半身から4貫取れればいいけど、そこまで大きくないならさてどうしよう、みたいな。

隠し包丁で骨を抜かずに切って済ませる、とかもあるみたいだがベストプラクティス発見できていない。

 

何れにせよ、分量的にも予算的にも、何種類ものネタを一回で準備するのは難しい。

どうしてもやりたければ刺身の盛り合わせなどを買うことになるが、用途からして寿司ネタ用ではないのでいまいちである

ただこれはバリエーションクオリティの向上で克服できる課題だと考えている。

要は今日寿司を食べよう、ではなく、今日はこれを握ろう、と考えるようにして、

その上で握った寿司満足度100円寿司10皿を超えていれば良いのである

あるいは冷凍庫に投資するのも一考の余地があるか。チルドで流通するサクを50gくらいに切り分けてからホームフリージングできれば理想ではある。

ただそこまで行くと引っ越すべきな気もしてくる。

俺はただ、わさび入りの寿司を腹いっぱい食べたいだけだったはずなのだが……。

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    • 木のまな板なら濡らして使うのが普通だけど、一般的に包丁の柄は濡らさないんじゃないかな。しらんけど。 理由としてはナカゴが腐食するから。なので買ってすぐロウを流し込んだり...

      • 中子の腐食は、濡らしっぱなしが悪いので、使うたびに乾くようにしとけば、たいてい問題ないような気もするけどね

  • こだわりがある増田に無用なアドバイスかもしれないが、色々難しくし過ぎているきらいがあるので指摘させてくれ https://anond.hatelabo.jp/20220331202909   まず包丁だが、文化包丁や洋包丁タ...

    • 油のとこはちょっと違うと思う。 亜麻仁油は乾性油で、塗ると酸化重合してポリマー層でコーティングされるやつ。 オリーブ油と、あとサラダ油は原料いろいろだけど菜種油の割合高そ...

    • 学生「いいかい山岡さん、トンカツをな。あと寿司ってぇのはな。」

    • 詳細な指摘ありがとう。いくつかは参考になった。ただ誤読されたところもあるようなので反応を返させてほしい。 まず包丁だが、文化包丁や洋包丁タイプの握り手のステンレスが欲...

    • V金10号って、最近はなんちゃってダマスカスの芯材って印象で、微妙に安っぽい。 包丁メーカーのラインナップ的にもミドルクラスの鋼材になってるので、初めてちょっと良い包丁買う...

    • ひとつくださいな🐈

    • V金10って研ぎづらくない?俺は銀三の方がよかったなあ。なんかコツとかあるのかな。砥石は刃の黒幕の1500と5000。

  • わさびが食べられない人間は今までそのネタを剥がしてわさびを取る作業を文句も言わずにやってたわけだけどね

  • 普通に寿司屋行った方がいい

  • うちの家族が無添くら寿司のレジで売ってるわさびが一番うまいっていってたから使ってみろ ちっちゃいチューブのまま冷凍保存されていて「1本じゃなく3本」というと凍ったまま持...

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