アトピーになった家族が1人以上いるというアトピー発症の可能性が高い新生児118人を、ランダムに介入群（保湿剤全身塗布）と対照群（乾燥しているところがあればワセリンを塗布）の２郡に振り分けた。
国立成育医療研究センターでは元々、赤ちゃんのお肌が乾燥していたらワセリンを塗るように指示している。倫理委員会にそれを行わないのは認められなかった。対照群がワセリンを塗っているのはそういった事情のため。ただし、ワセリンの使用量は平均してごく僅か。
保湿剤は何でもいい。大差ない。入手しやすいものでいい。今回は資生堂のドゥーエを使った。（ワセリンでもいいのか？と聞いて欲しかった）
アトピーを診断する者には患者がどちらの郡に属しているかはわからないようになっている。
各時点でどれだけ発症したかについて比較するため、ログランク検定を行った。その結果、有意差があった。（つまり、介入群と対照群の累計発症数のラインを比較すると明らかな違いがある、ということかな。単純に発症した19人と28人を比較しているわけではない。8ヶ月で打ち切っているのは十分な結果が見えたから）
載ったジャーナルはアレルギーの医学雑誌で権威あるJournal of Allergy and Clinical Immunology。査読も厳しい。
米英でも同じような研究がされて、同じジャーナルで発表されている。そちらでは保湿剤は3種類。対照群はワセリンも塗っていない。結果は同じく、保湿剤を塗った方が有意にアトピー発症が抑えられた。
（ワセリンも広義では保湿剤。ではあるが、保湿としてワセリンを塗るのは、要するに皮膚表面に膜を作り水分の蒸発を防ぐということ。尿素やヘパリン類似物質など含有の保湿剤は、それらが皮膚に“浸透”することによって皮膚の保水機能を強化するもの。会見でもそこの違いを説明していて、ワセリンと保湿剤とを明確に分けているようだ）
（ただし、ワセリンと保湿剤の影響の違いはあまりフォーカスしていないっぽい。フォーカスしているのは「乾燥する前に全身に保湿剤を塗る」ということ？）
肌が乾燥しているという状態というのは、すでに皮膚のバリア機能が低下している状態である。皮膚が正常な状態の時に保湿剤を塗ればバリア機能を強化ができ、バリア機能低下の予防に効果がある。
アトピーはバリア機能の低下で発症しやすくなる。バリア機能低下を予防することは、アトピー発症の予防にも効果がある。
アトピーを発症すると食物アレルゲンへの感作が増えてしまうと見られている。アトピーの発症を抑制することができれば、皮膚炎だけじゃなくて食物アレルギーも抑制できるだろう。
ただ、今回の研究の2次的な評価項目とした、食物（卵）アレルゲンへの感作に関しては介入群と対照群に有意差はなかった。規模を拡大すれば有意差が出るかもしれない。