A子ちゃんとB男くんは一度付き合って別れた関係だった。かつてはお互い人生一番の恋愛をした同士だった。しかし2年の交際期間を経て別れ、友達関係に戻った。仲はよかった。
ある時2人は他の友達と一緒に朝まで飲んだ。酔っ払ったB男は、A子にこれから泊まりに行こうよ、と誘った。「絶対何もしない、本当に寝るだけ。俺はこのあとこの辺で用事があるから、家に帰るよりもシャワー浴びてここで寝たいんだ。」と。
A子は恋愛に対して真面目で、元彼と体の関係になることは絶対に嫌だったため強く断った。しかしどんなに断ってもB男は引かず、1時間以上固く手を握ったまま誘い続けた。別れて以来初めて手を握っていた。A子は眠気と疲れで判断能力が鈍り、断る気力も無くなって、朝の7時半頃「絶対に何もしないからね」と言いながら、ついにB男に手を引かれるままにホテルに入っていってしまった。
はじめは約束通り寝ていた。しかし途中から様子がおかしくなる。B男からの手が伸びて来た。話が違う、そう思ったA子は抵抗した。B男の手を振り払った。やだ、やめて!と叫んだ。しかし必死の抵抗虚しく無理矢理キスされ、服は脱がされた。そうしているうちに、好きだった時の記憶が蘇ってくる。B男の匂い、キスの感触、触れ合う時のドキドキ、楽しかった思い出、色んな感情が複雑に混ざり合って込み上げて来て、遂に抵抗出来なくなってしまった。それと同時に、「ちゃんと話もせずにこんなに適当な流れで体の関係に持ち込むなんて、それを良しとするなんて、きちんとやり直す気はないの?ただセックスしたかっただけ?私は都合良い女として扱われているの?」という不安が溢れ、涙がただただ流れた。B男はそれに気付かずフィニッシュし、そのまま一人寝てしまった。
A子が眠れず一人泣いていると、B男が目を覚ました。泣いているA子を見て「どうしたの?」と尋ねる。A子は勇気を振り絞り、「どういうつもりでこういうことしたの?」と聞いた。するとB男は黙ったままA子の頭を撫で、また眠りに落ちた。A子は訳が分からずいっそう泣いた。
それ以降、A子はB男への恋愛感情を思い出してしまった。「うまくいかないからもうやめよう」と思って忘れたはずなのに、その気持ちは復活してしまった。二人の仲は親密になった。泊まった日を境に、ラインは毎日するようになり、長電話も、3,4日に1度デートもするようになった。手を繋がれても、キスされても、そしてたまに泊まりに誘われても、A子は受け入れた。本当に仲が良かった。「付き合いましょう」「良いですよ」という言葉での確認をしていないことを除いて、別れる前の状態に完全に戻っていた。関係性の表面だけを見たら自分がただの都合よくセフレにされた女である事は分かっていたが、B男を見ているとどうしてもそのようなゲスな心があるとは思えず、B男だけはそんなことしない、と信頼していた。B男は実質的な彼氏だと思っていた。告白のないアメリカ式なんだ、と思い込んだ。
もともとA子は恋愛に対してかなり真面目だった。多くの男性と食事デートこそすれど、付き合っていない人とキスしたことも、セックスしたこともなかった。好きじゃない人とそのような行為をすることに強い抵抗感があったため、付き合った人数も少なければ経験人数も少なかった。相手が自分のことを本当に愛してくれていて、自分も相手のことを本当に愛している、そんな関係であって初めて踏み出したいと思っていた。だからより一層この状況は不安だった。
B男はA子に性的アプローチをし続ける割に、はっきりとした告白、誠意のある意思表示はしてくれなかった。その上、「俺のこと好き?」なんて調子に乗ったことを聞いてみたり、他の女の子に好意を寄せられている話をしたり、泊まった際に「やっぱり性格キツイんだね」などと嫌味を言ってみたりして、「遊びだよアピールをしているのかな…やっぱり本気でやり直す気はないのかな…」とA子の心は揺さぶられ続けた。
関係を積極的に決定的に縮めてきているのはB男であるにも関わらずなぜそのようなことをするのか、A子は分からなかった。仮にA子のことが好きで、やり直したいがためにアプローチをしているのであれば、全て受け入れている時点でA子からの「脈あり」サインは感じ取れているはずだった。ここで誠意を持って押せばいける、そんな状況だった。にもかかわらずその感情は全く表に出してくれないB男のことが分からなかった。
追うなら追うで、最後まで追い切って欲しい。それが普通の恋愛の流れだ。それにもしB男が本気じゃないなら、ザ・都合のいい女A子から好意を見せるなんて迂闊なことをしたら傷付くだけだし、相手をより調子に乗らせるだけだ。A子は割とモテてきたため、自分から男性に好意を見せるなんて人生で一度もしたことがなかった。そのため、A子はB男からの決定的なアクションを、誠実さの表明を、待っていた。
そんな中、A子の誕生日が迫ってきた。もしB男がA子のことを本気で好きでやり直したいと思っているなら、または言葉がないだけで実質的に「彼女」だと思っているなら、A子の誕生日を祝わないはずはない。こんなに好意を伝える絶好のチャンスはない。このカップル同然の状態で祝わなかったらA子がショックを受けるのはB男の目にも明らかなはずだ。つまり、祝わないとしたら、それはA子のことが本気ではなかったときだ。A子はその日に祝われ、気持ちを告げられ、きちんとやり直すことを期待していた。
そうは言っても不安もあった。だから、さまざまな言葉で「当日に祝う」というゴールに繋がるレールを敷いた。A子のことが好きならば祝わない選択肢はない、そんな状況に持って行った。「当日は祝日で混んでいるから別日にしよう」と言われた時は、混んでいる位で後回しにされるほど優先度が低いのかと不安になり腹も立ったが、「当日じゃないと誕生日じゃないよ」と言っておいた。
誕生日の前日一緒に遊んだ夜、B男は「眠いからA子の家で昼寝させてほしい」と言ってきた。A子は何かあるのかな、と少し期待した。家に誰もおらず、一人で誕生日を迎えるのも寂しいので、泊まって行きなよと言った。これで誕生日一緒に過ごせる、なんて思惑もあった。B男は「お金がないんだよね〜」という話をしていたが、A子は別にお金を求めているわけではないので気に留めていなかった。A子は高いご飯が食べたい訳でも高いプレゼントを求めている訳でもなかった。ただ、B男が一緒に誕生日を過ごしてくれるだけで、一緒に家で夜ご飯を食べてくれるだけでよかった。帰り道に買ったケーキで祝ってもらうだけで良かった。その気持ちが、誠意が欲しかっただけだった。B男からちゃんと愛されていることを確認し、安心したかったのだ。
そしてB男はA子の家に泊まり、誕生日当日を迎える。その日の朝、B男はA子に出されたご飯を食べ、一緒に学校に行き、「最近お金がないんだよね〜」なんて話をし、授業のために別れ、そのまま連絡が取れなくなった。
夕方くらいまでは期待していた。授業が遅くまであるのかな、なんて僅かな希望を抱いていた。しかし、18時を過ぎても、20時を過ぎても、23時を過ぎても連絡は来なかった。
あ、ヤリ逃げされた。裏切られたと思った。目の前の出来事が信じられなかった。世界が白黒になった。くらくらして、重力が100倍になって立ってられなくなった。やっぱり本気じゃなかったんだ。私は遊ばれてたんだ。家に泊まっておきながら誕生日を祝うという恋人関係を決定的にする行動は避けるんだ。お金がないなんてどうにでもなる理由をつけて誕生日にヤリ逃げできる位の存在なんだ。今までの数ヶ月はなんだったの?というか今までの2年半はなんだったの?あんなに信頼していたのに?私は一体何をしていたの?なんで心を開いちゃったの?あの行動は、あの言葉は、全部嘘だったの?あーでもやっぱり客観的に見たらただの都合いい女だよな?でもだったらなんであんなに時間使ってくれたの?なんで優しかったの?なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんで?あーもう死にたい!
布団から出られずずっと泣いた。泣いていたらお腹が空いたから一人賞味期限切れの納豆ご飯を食べ、虚しくてまた泣いた。こんな誕生日は初めてだった。
A子がお昼に不安に襲われながら送った「ご飯食べよ!」というラインに既読がついたのは日を跨いでからだった。
翌日、「ごめん電源切れてた、おめでとう!」との連絡が入った。その調子の良さにA子の怒りと悲しみは爆発した。頭がおかしくなり、怒っては泣き、泣いては怒った。最低!と罵倒した。本当は、「ごめんね、そんなつもりじゃなかったんだ、好きだよ」って言って欲しかった。
しかしB男から返ってきた言葉は、「だって俺たち付き合ってないじゃん」「今までの期間はA子がまた付き合える人間かどうか試してただけだよ」「就活の時間を割いてあげてたのに無駄にされた」「俺は別にすぐ他の女の子に行ける」という、A子の頭を駆け巡っていた最悪の予想を裏付けるものだった。
やっぱりそうだった。私はただの都合のいい女だった。本当は分かってたのに。なんて馬鹿だったんだろう。
人生で一番好きになり、信頼していた相手にこれだけの仕打ちをされ、あまりの辛さと自己嫌悪でA子は1週間布団で泣く以外のことができなくなった。
落ち着いてきた頃A子は気持ちを懇切丁寧に説明した長文ラインを送った。すると、B男は理解したようで謝りたいと言ってきた。
会うと、B男はプレゼントを渡して謝ってきた。以前デート中に、A子が値段を見て諦めたものだった。
B男の言い分は、「付き合っていないから祝う必要があると思っていなかった」「誕生日当日の重要性を理解していなかった」「就活後でお金が本当になかった」とのことだ。
正直あまり意味はわからなかったが、B男は悪気なく本気でそう思っていたことが伝わった。A子はB男のことが好きで信じたかったため、なんとか納得した。
B男はそれと同時に、A子とまた付き合いたいと思っていることを伝えた。
A子は嬉しかったが、誕生日という一年で一番楽しみにしていた日に地面にあれだけ強く叩きつけられた直後のことだ。心の整理がまだ付いていなかった。B男のことを心から信頼することができなかった。誕生日ディナーをやり直すと言ってくれていたので、一度そうしてB男の誠意をきちんと見せてもらい、ひどく傷付いた心をリセットしたいと考えていた。誕生日の思い出を塗り替えたかった。A子のことが本気で好きであることを目に見える形で表明して欲しかった。
また、やり直すならばしっかり区切りをつけてからやり直したいと思っていた。別れる前、喧嘩が絶えず話が永遠に平行線となり、どうにも上手くいかないと思ったから別れたのだった。そんな二人がやり直すなら、建設的な話し合いが必要だと思った。
まずご飯に連れて行ってね、その時に話そう。そう伝えた。
それ以降仲直りした。A子はB男がすぐにご飯に連れて行ってくれると、そこで一からやり直せると、そう信じていたからだ。
しかし、待てど暮らせどB男はそれをしてくれなかった。たまに「今年まだ誕生日ケーキ食べれてないの寂しいな、ケーキ食べたい!」なんてアピールをしてみたが、B男は笑うだけで何も言ってくれなかった。
そんな中、B男が「俺たち付き合ってるってことで良いよね?」と聞いてきた。結局まだご飯にも連れて行ってくれていないのになんだそれ、と思ったが、誕生日から1か月ほど経ちA子は意地を張るのも疲れてしまっていた。やけくそで「良いんじゃない、もうそれで」と言ってしまった。
そうして晴れて「付き合う」という体裁を得た二人だったが、A子の不安は増すばかりだった。
どれだけ時が経ってもB男はご飯に連れて行ってくれなかった。A子はいつまでたっても心の傷が癒えないまま、B男への不信感が拭えないままだった。その頃には頻繁に「ご飯いつ連れて行ってくれるの?」と聞いていたが、B男は「お金がない」と言って頑として連れて行こうとしなかった。A子は何度も「自分にとってはご飯に連れて行ってもらうことがどれだけ重要か」を説いたが、やはり約束をしてくれることはなかった。
それほど大金が必要になることを要求しているわけではない。バイトを1日すればできることである。しかも、お金がなくなった元凶である就活の時期はとっくの昔に過ぎていた。「お金がない」という言い訳をするのは、A子のためにバイトを1日多く入る、または友達との飲み会を1回我慢する、それすらもしたくないという意思表示のように思えて、B男への不信感は募っていく一方だった。
A子はだんだん普通なら許せる小さなことすら怒ってしまうようになった。何かあるとすぐにそれが起爆剤となって「まだきちんと誠意を見せてもらっていない。あの時辛かった気持ちをリセットできていない。自分からした約束を守ってくれていない。これだけ私の辛い気持ちを伝えているのに、あんなに訴えたのに、それでもなお、ご飯に行くというただそれだけのことをしてくれないなんて、私は結局蔑ろにされている。」という怒り・悲しみがこみ上げた。A子が怒るとB男も必ず応戦するため、喧嘩が絶えなくなった。かなり傷つけあった。何度もひどい喧嘩をし、その度A子はご飯に連れて行ってくれないから誕生日の時のまま辛い気持ちであることを伝え、B男は最終的には決まってご飯に連れていくね、と約束してくれた。その度A子はB男を信頼し、仲直りした。しかしその約束は果たされないまま同じことを繰り返し、時は過ぎた。
誕生日から3か月ほど経ち、何度も喧嘩を通り過ぎ、なんとかようやくご飯の約束を取り付けた。A子は嬉しかった。この辛かった日々がようやく精算できる、そう思った。すごく楽しみにしていた。
しかし当日、A子がカフェで約束の時間まで暇を潰していた時、B男から「体調が悪くなった」との連絡が入り、延期となった。
事情はわかる。わかるが、なんでこの日なんだ、なんでこの日の夕方なんだ。ここまで信用して我慢して泣いて待って待って待ち続けて、結局ドタキャンなんて。一言言いたくなったA子は、数日後B男と電話した際に自分の気持ちを涙ながらに語った。すると、電話口から寝息が聞こえてきた。
信じられない。そう思ったA子は、怒りのラインを送った。自分の気持ちを荒々しくぶつけた。それ以降、B男からの連絡は来なかった。
連絡が取れないまま約束し直した日になった。その日の夜、A子から電話してもB男は出なかった。やけになって何度も何度も何度も電話した。途中から着信拒否された。そうしてその日が終わった。
そして翌日、B男から連絡が入った。
見てみると、「A子は自分に甘く人に厳しい。人間として尊敬できなくなったからもう終わりにさせて」との内容だった。
もう涙は出なかった。
ある日目が覚めたらホテルにいた。元カノのA子が横に寝ていた。酔っ払っていたため前の晩の記憶は無い。でもそれ以降A子がやけに親しげに接して来るようになったから、きっと流れで上手いこといったんだと思う。
B男はA子がまだ好きだった。未練があった。だから、電話もしたしデートもしたし、相談にも乗ったし泊まりにも誘った。なぜならそうしたかったし、楽しかったから。
しかし、A子は全く感情を表に出してくれないため、B男は不安だった。B男は一度振られている状況だ。ここで告白してもう一度振られるのが怖かった。泊まった夜、勇気を出して「俺のこと好き?」と聞いてみたが、「ううん」と言われた。それ以降、何も言えなくなってしまった。
A子の気持ちはよく分からないが、一緒にいるのは幸せなため、その関係を続けていた。
そんな中、A子の誕生日が近づいてきた。A子はよく誕生日の話題を出し、楽しみにしているようだった。B男はA子のことが好きだったため、祝おうと思っていた。しかし壊滅的にお金がなかった。付き合っている訳ではないし、A子が自分のことを好きであるかどうかも分からないため、当日に祝う必要性があるとは思わなかった。そのため、「当日は祝日で混んでいるから次の週あたりに」と苦しい言い訳をしてお金が入る頃に約束を取り付けようとしたが、「当日じゃないと誕生日じゃない」と断られてしまった。A子はB男に祝われることをそんなに期待していないらしい。
A子の誕生日の前日遊んだ際、眠かったし少しムラムラしたので「ちょっとA子の家で昼寝したい」と言ってみた。すると「家に誰もいないから泊まって行きなよ」と言われたため、その言葉に甘えて泊まりに行くことにした。一応「お金がない」という話はしておいた。
翌日、A子は誕生日であると盛り上がっていたが、B男はお金が本当になかった。期待されることを避けようと、一緒に登校してそのまま別れ、A子からの連絡には既読をつけなかった。
翌日「電源切れてたごめん、おめでとう!」との連絡を入れたところ、A子はなぜかブチ切れた。「人として最低!!」なんて、すごい剣幕でB男のことを責めた。
正直そこまで切れることか?と思った。なんで彼女じゃない人間の誕生日を祝わなかっただけで、ここまで人格否定されないといけないのか。しかも別日に祝うつもりはあったのに。A子が自分のことを好きじゃなかったとしたら祝うお金は無駄になるけれど、それでも祝うつもりはあったのに。付き合ってもいない人間に、誕生日を当日に祝わなかった、ただそれだけのことでここまで責められる義理はないはずだ。
A子が自分勝手なことであまりにも怒るから、B男もつい応戦してしまい、「また付き合えるかどうか試してただけだよ」とか「就活の時間を無駄にされた」とか「俺は別に他の女の子にすぐいけるけど」とか思ってもいないことを言ってしまった。
その後、ひどく泣きながらどれだけ誕生日を大事に思っているか説明され、想像以上に傷付けてしまったことがわかった。後日無いお金をはたいて買ったプレゼントを渡して謝った。当日お金が本当に一銭も無かったこと、誕生日当日の重要性を理解していなかったこと、付き合っていないから祝う必要性があるとわかっていなかったことを伝えたら納得してくれた。
そしてまた改めて食事に連れて行くね、と約束し、同時に付き合いたいと思っていることも伝えた。しかし、その答えは保留されてしまった。
それから仲直りは出来たが、告白の答えはなかなかくれなかった。
そのくせ、「ケーキ食べたいなぁ」なんてアピールはしてきた。付き合う気が無い男に対して、高いご飯を奢らせようとしているのか。B男は不安だった。そして、お金は本当になかった。
A子は告白の返事こそくれないものの、自分のことが好きなように見えた。1ヶ月半ほど経った時、いよいよその関係性に耐えかね、電話をしている時に「俺たち付き合ってるってことで良いよね?」と聞いてみた。すると、「じゃあもういいんじゃない、それで」なんて適当な言葉が返ってきた。B男はその適当さに不安を覚えたが、何も言わなかった。そうしてヌルッと寄りを戻した。
時が経つにつれ、A子は細々したことでキレるようになった。B男のほんの小さな間違いに対してひどく怒り、決まって最後には誕生日を祝わないことを責めた。
B男はA子の悪いところもたくさん許しているのに、なぜ毎度毎度こんな小さなことで強くキレられないといけないのか。この喧嘩の繰り返しに、B男は疲弊していった。A子のその自分への甘さと他人への厳しさに、A子への不信感が募り、恋愛感情がだんだんと冷めていった。どんなに言われても、いや言われれば言われるほど、お金をはたいてA子の誕生日をやり直してあげる気力が起きなくなった。
そもそも、誕生日プレゼントもあげているのに、未だにこんなことで強欲に怒り続けているのが理解ができなかった。A子は強く怒ってばかりで、B男は想われているようにも、大切にされているようにも感じない。なぜB男ばかりが与え続けなければいけないのか。
あまりにA子がご飯をおごれとうるさく言うので、約束をした。しかし運悪く約束の日に熱が出てしまった。悪いことをしたとわかっているが、B男も体調が悪く辛いのに、電話でA子はそれを気にかけることもせずにB男を責めた。やはり人にばかり厳しい人間だ。自分ばかり辛い辛い言うのを聞くのも疲れたな、なんて思っているうちに寝てしまった。
起きるとA子から沢山のラインが入っていた。B男を責める内容だ。B男はもう疲れてしまい、連絡する気が起きなかった。そのままリスケ日になったが、このような精神状態でご飯をおごる気にもなれず、自己中なA子に会いたくもなかったため無視していたら、沢山の着信が入った。その自分のことしか考えていないメンヘラ具合に怖くなり、着拒した。
作者はA子、まで読んだ
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