「女性エンジニア少ない問題」を解決するために、機械学習で男性エンジニアを女性に変換する
これの記事が炎上しているっぽいことがTwitterのTLを見てたらわかったのだが、実際に記事を読んでみても、なぜ炎上しているのかが理解できなかった。こんな事を言うと、「これを読んでなぜ炎上するのかわからないやつはネットやめたほうが良い」とか言われるわけだ。「女性軽視だ」、「性差別主義者」、「エンジニアやめろ」、「発表者を懲戒解雇しろ」的な声が異様に多く言い過ぎ案件だと思ったのだが、具体的に、論理的になぜ駄目だったのかを説明しているアカウントは驚くほど少ない( と思ったら、これを書いている間に書いてくれた人がいた 。最後のほうでこの記事について言及する)。マジで誰か解説してほしかったのだが、FF外から失礼してリプを送っても、フォロワー数の差で今度は自分が炎上する未来が見えたのでやめておいた。
そういう理由で、上記記事のよくある批判をひとつひとつ取り上げ、それに対する反論を書いていこうと思う。ちなみにこのカンファレンスには行ってないので、記事からしかY氏(以下、登壇者をこう呼ぶ)の言葉を読み取っていない。
最初に私の考えを書いておく。
・Y氏は差別発言をしていない
・「男性は女性がいるとやる気があがる」が、「女性は男性のやる気を上げるために存在する」に拡大解釈/誤解された
・Y氏のロジックは炎上の危うさを孕んでいることに本人が気づき、やめるべきだった
・Y氏のソリューション自体にはなんら倫理的/差別的問題はない
Y氏の提案はこうだ。
課題が生む問題: 女性エンジニアが少ないと、以下の問題が生じる
問題点①: 男性エンジニアは『いいところを見せたい』というやる気が出ない
解決方法: 「男性エンジニアが女性エンジニアになる」というのを提案する
最も多い批判がこれ。
「女性はコンパニオンじゃねーぞ」「女性エンジニアはエンジニアとして見られないのか……」といった批判である。
そして、これによって生じる問題は、男性エンジニアにとっては、「いいところを見せたい」というやる気が出ない。そして、女性エンジニアにとっては、女子トークができない。これは非常に重要な課題だと思います
さて、この批判は、
①Y氏は「職場に女性が少ないと、男性エンジニアは『いいところを見せたい』というやる気が出ない」と主張した
②よってY氏は、女性を「やる気を出すための存在」として見ている
ということだと思うのだが、どう考えても①と②の間に飛躍が見られる。
「男性は女性がいるとやる気があがる」と、「女性は男性のやる気を上げるために存在する」では全然違う。本来は前者だったのが、後者の解釈がされてしまったのが炎上の主原因だと思っている。
たとえば「家に猫がいないと、俺は『明日も頑張ろう』というやる気が出ない」という人に対して、「お前は猫を『やる気を出すための存在』として見ているのだな」と言うだろうか?
猫が人のやる気を出すのは事実かもしれないが、そこからあたかも「やる気を出すため だけ の存在」みたいな解釈は、あまりにもひねくれている。
「男性が女性を意識することで仕事に取り組む姿勢を変える(やる気を出す)」というのは十分ありそうな話で、これは男女を入れ替えても同様の話だ。まさかそのような姿勢の変化は許されないという批判ではないだろう。もしそうだとしても、それなら性差・性別を持って生まれた人類の特性が悪いことになり、すると性別は人類の原罪という話になるので、許されざるはY氏のみではなく人類全体ということになる。
女性を猫に置き換えたので別の方面で炎上しそうだが(そういう意図はありません)、つまり言いたいことは、「女性が多いとやる気が出るんです」と言った奴に対して、「女性をやる気が出るための存在だと思っているのかこいつは」と考えるのは早計ということだ。
もっというと、私は最初①は「職場に女性が少ないと、男性エンジニアは『(女性に対して)いいところを見せたい』というやる気が少ない(あるいは思う機会が(少ない|ない))」と読んだ。だからなんだよなのだが、この辺も読む人によって解釈が変わり、差別だ・差別じゃないの応酬の原因なのだと思っている。
ついでに言うと、Y氏のソリューションによって、女性エンジニアにとっては「女子トークができるようになる」という女性側のメリットも掲げているので、一概に男性本位のソリューションとは言い切れないことを言及しておく。
更についでに言うと、今回のソリューションは、男性が女性(女装・女声)になることで女性エンジニアの数を増やすというものなので、仮にコンパニオン的活動をしなければならない場合(そんな主張は記事では一切していないが)、それをするのは男性である。
該当部分を引用する。
ただ、女性エンジニアを1から育成するっていうのは、非常にコストが大きいんですね。これは正確なデータは取りづらいので、短大や私立の学費、卒業するまでにかかる費用にしたんですが、安くても300万、高いと800万といった、数百万単位でかかってしまいます。これはちょっと現実的じゃないですよね。
ここでいう「現実的じゃない」は、「職場の女性を増やすための手段として、女性エンジニアを社内で1から育成する」ということだと思う。まあ、これは炎上しそうな文ではあるが、以下の2つの反論を用意する。
(1) 気持ちはわかるが、そういう話ではない
(2) そもそも機械学習系のソリューションは大体安上がり系のこれ
(1)については、男性だろうが女性だろうが社内で1から育てるのは大変である。そしてこの文章で腹が立つのも共感できる。たとえば私が「男性エンジニアを1から育成するのは現実的じゃない」と書かれた文を見つけたら、「ん?なんで今『男性』をつけた?」とひっかかりを覚えるのは当然だからだ。ただ、今回の場合ではY氏には「女性エンジニアを職場に増やしたい」という文脈があるのはわかるので、「女性」という冠がついてもやむなしである。このへんは文脈を汲み取ってもらいたい。
(2)については、機械学習系のソリューションは大体「人を雇うとお金かかるので、機械(またはAI)にやらせましょう」なので、これを否定されると機械学習そのものの否定となり、ひいては産業革命の否定となる。別に否定してもよいが、Y氏が特別に非難されることではない。
男性エンジニアを女性エンジニアに変えるというソリューション自体が、女性軽視であり、男性軽視に当たるという主張だ。
これはよくわからないのだが、例えば、男性から女性に性転換した人は別に男性軽視したことにはならないだろう。
さらに言うなら、おじさんからバーチャル美少女になろうとしているVTuberは漏れなく差別主義者になってしまう。
「加害者は、加害者本人にその意図がなくても、被害者を傷つけるものだ」という文脈での批判(?)である。
これはどこまでも正しい。
ただ、このようにして傷つけた場合、それは女性差別になるのだろうか。
「技術自体は問題ないが、本題とは関係ない掴みの部分にセンシティブなテーマを持ってきたせいで炎上してしまっている」「もっと慎重になるべきだった」という声がある。
この見方は正しい。
と書いてある。
もうこの一文で炎上しそうな要素がてんこもりなわけである。「エンジニアを勝手に代表するな」「他にも重要なことはあるだろ」「まーた女性エンジニアを取り上げて」といった具合である。
たとえそういった意図が一切なくても、炎上というものはするのだ。
炎上アンテナがバリ三の人間なら、「女性エンジニア」という単語だけでも炎上の匂いを嗅ぎ取り、うかつにその話題を出さない。出したとしても、枕詞や随所に「私は女性蔑視を意図してこのテーマを取り扱っているのではないですよ~」的なニュアンスを挟むのであるが、今回の人は公の場にもかかわらずそれを怠ってしまっていた。
この辺は会社の人間がチェックしてそこでストップかければ良かったという声もあるが、それもまあ、結果論でしかない。私のような「これの何が悪いのかわからないけど、炎上しそうなネタではありそう」みたいなチェッカーが「何が悪いのかわからないけど、炎上しそうだから却下」とは言いづらく、最終的にGOを出したのかもしれない(結局炎上してるので責任があるのだが)。またあまり神経質になりすぎると登壇者からしてみれば「これでストップかけるのか」という反発も考えられる。
私が思うベストは、「本人自身が炎上しそうな話題を最初から避ける」。これだ。Y氏自身がこの話題に触れるべきではなかった。
まるで女性エンジニアを腫れ物扱いしているように聞こえるかもしれないが、そのような意図はない。もしそう捉えられたのなら謝罪する。しかし申し訳ないが、私からしてみれば自衛のためにはこのくらい慎重にならないといけないと思っている。
再度言うが、たとえそういった意図が一切なくても、炎上というものはするのだ。
ただネタ度高めで若手の発表なので、そこは汲んであげるべし。
「女性エンジニアのメリットが女子トークかよ」「女性エンジニアはカフェの話をしたがっていると思われているのか」などの声がある。
これはまあ、炎上してしまったが故、色んな所に目がついてしまったのではないかと思う。
実際、例は適当でないと思うし、私も「女子トークて」と思った。
これは完全に推測なのだが、おそらくY氏は課題から解決方法までを導いたのではなくて、解決方法(今回の場合「男性の声を女性の声に変える」というソリューション)ありきでロジックを組み立てたのだと思う。
そう思う理由は、普通に考えて女性エンジニアを増やそうと思って男性を女性にしようとは(真面目には)思わないし、機械学習歴10ヶ月と言っているので、自分が面白そうだと思って作ったものに後付で理由を足したと考えたほうがしっくりくるからだ。
この擁護は危うい(本人はただ呟いただけだと思うが)。
当然、擁護した本人にとっては、そもそも差別発言自体していないものが拡大解釈されて炎上してしまっていることを指して「こんなことで」と表現したという認識なのだが、誤解している人間にとっては、「この差別発言を『こんなことで』って言ってるやつがいる」という誤解を生むからだ。
ありがたいことに、よくまとめられた記事を書いてくれている人がいる。
こっちが匿名で反論するのはフェアではないのは承知で、この記事に関しても私の意見を述べていきたい。
この記事はどちらかというとY氏批判側の記事で、私のどちらかといえばY氏擁護派とは異なった立場の記事であるので、できれば元記事を読んでからこの先を読んでほしい。
Y氏はエンジニアをやめなくてよい。
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元増田です。 補足ありがとうございます。うまく読み取れてない部分があり申し訳ありません。 補足を読んでの感想です。 あなたの言う通り、「彼が言った事は、裏返すとこういう事...
返信ありがとうございます。これをきっかけに改めて思った事を別記事に起こしたのですが、はてな外の記事からのトラックバックの仕方が分からなかったので、リンクだけ貼っておき...
書かれていないことを読み取って怒ってる人に対してすごい優しいなと思った
この記事、女性エンジニアの件に反応した多くの人に見て欲しい。
何が燃えてるんだろうと思ってようやく元記事読んだけど こんなに「書いていないことで燃えている」案件だとは思わなかった
元増田は書いてない事を擁護してるように思える
そのような姿勢の変化は許されないという批判ではないだろう。 いや、許されないんじゃね? 相手によって態度を変えることが差別だって言われてるんだから、職場の同僚が男性だろ...
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男性の為に女性の成分を都合よく使いましょうって趣旨がアウトになる 非実在青少年の再来だあ
ネカマは女性性の搾取みたいな話ですかね
男性が女性の代わりもしてくれて女性に何の被害があるのか 被害妄想な人多すぎない?
その場合被害者は男性って事になるので男が怒ればいいんじゃない
「経営陣の方は複雑なアルゴリズムなんかはわからなくて、何ができて何ができないのかわからない。そのために利活用が遅れている」 その為の課題例が「女性エンジニアが少ない」で...
技術の評価もそうだけど、 ネタなりのオチを付けとくだけでも評価は変わっただろうなあ。
そもそもが技術プレゼンでよくある「技術紹介に飛躍的な背景や課題をくっつけたネタプレゼン」で、あくまでも機械学習でできることや性能の紹介がメイン どういう手法を使ったのか...
はじめに 「女性エンジニア」発言についての私的見解 を読んでの感想。詳しくは書かないが元記事に書かれている通り、この人はある程度火付け役を担ったというか、でも言いたいこ...
はじめに この記事は「女性エンジニア」発言についての私的見解、を読んで思ったことの続きです。 どうすれば問題を防ぐことができるのか? 公の場で、性別、人種、出自などにつ...