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2021-12-31

ガソリンが要らない時代”は来るのか?元売りトップ危機感

2021年12月27日 19時51分

エネルギーが不足する事態に陥るリスクがある」

炭素世界的に大きな注目を集めた2021年年の瀬に行った石油元売り3社のトップインタビュー共通していたのは、急速な脱炭素エネルギー不足を引き起こさないかという危機感でした。世界的なEVシフトなどによって“ガソリンが要らない時代”は来るのか。石油を売る会社の将来ビジョンに迫ります。(経済記者 西園興起 五十嵐圭祐)

かつてない危機感

「脱炭素の流れは不可逆だ。想定より、もっと早く石油需要が減少するリスクが高まっている」(ENEOSホールディングス 大田勝幸社長

インタビューの冒頭、元売り最大手ENEOS大田社長が打ち明けたのは、脱石油スピードに対する危機感でした。

ダイベストメントが広がる

この30年間、業界は再編に次ぐ再編の歴史を歩んできました。

1985年昭和石油シェル石油合併して以降、統合再編が相次ぎ、10社以上あった元売りは大手3社体制に。

しかし、いま世界で進む脱炭素の流れは、石油会社のもの存在を「否定しかねない大きなうねりとなっています

政府2035年までに新車販売をすべて電動化する方針を掲げています

金融機関の間では化石燃料の上流開発などから融資を引き上げる“ダイベストメント”が広がり始めています

かつてない状況に3社のトップ・・・

金融機関が『化石燃料には投資しない』と選別することで、エネルギーの転換・産業の転換を早めていく効果はある。しかし、時間軸を考えず極端に進めれば、社会経済活動になくてはならないエネルギーが不足するという事態に陥るリスクがある」(出光興産 木藤俊一社長)

「1次エネルギーの80%以上を化石燃料依存している中で、化石燃料を急に絞っていくと価格は暴騰してしまう。おそらく、誰も、そういう世界を望んでいないだろう」(コスモエネルギーホールディングス 桐山社長

「今後、状況によっては石油需要が落ちる以上に、供給サイドにブレーキが掛かり、価格が高騰するということも考えなければならない」(ENEOS 大田勝幸社長

炭素の動きは長期的には実現すべき目標だが、急な動きはエネルギーの安定供給にひずみをきたし、価格暴騰につながるリスクがある”と3社のトップは、危機感をあらわにします。

何で食っていくのか?

とはいえ、脱炭素、脱石油の動きは加速しています

長年、経営の柱だった石油事業からいかに異なるビジネスを展開していくのか。

各社に秘策を聞きました。

衝撃の次世代型燃料(ENEOS

ENEOS 大田社長

まず、ENEOS大田社長です。

インタビューで尋ねたところ、「合成燃料」なるものの開発に着手しているといいます

実験施設で作った合成燃料

ENEOS 大田勝幸社長

「合成燃料の原理は、工場などで排出された二酸化炭素を回収して、クリーン水素と反応させ、新たな燃料をつくるということだ。いわば、人工的に原油を作るようなもの。通常の石油製品とまったく同じ仕組みなので、船やガソリンスタンドなど石油会社サプライチェーンがそのまま使える。ラボ研究所)の段階ではもう技術としてできあがっている。大量に、安く作るためにはもう少しイノベーション必要だが、自分たちの強みも生かしながら積極的に取り組みたい」

ENEOS水素ステーション

ENEOSは新たなエネルギー分野として水素事業に力を入れています

燃料電池車向けに、首都圏など47か所に水素ステーションを設け、海外から水素日本効率的に運ぶ新たな技術開発も進めています

その水素二酸化炭素と反応させて新しい燃料をつくりだすという新たな技術開発です。

地域密着サービスで生き残り(出光興産

出光興産 木藤俊一社

一方、ガソリン販売業界シェアで3割を占める出光興産は、いまある経営リソースを将来に向かって生かしていくとしています

その1つが全国津々浦々にあるガソリンスタンドネットワークです。

移動式の脳ドッグ

地域密着を売りに、なんとガソリンスタンドで移動式の脳ドッグまで始めたといいます

出光興産 木藤俊一社

「私はガソリンスタンドを“スマートよろずや化”すると言っていて、お客様利便性向上に繋げるため、介護事業も始めている。この中で、脳ドッグなんかは、なぜガソリンスタンドでやるのと言われているが、地方都市では予約して大学病院に行くということは難しいので地元では喜ばれている。さらに、キッチンカー地元野菜販売など新たな取り組みを始めている。ガソリンスタンドネットワーク地域に喜ばれるサービス提供していこうと考えている」

その延長線上で開発を進めているのが小型EVです。

石油元売りがEV開発?最初聞いたときにはどんなビジネスモデルなのか、想像もつきませんでしたが、先を見据えた動きだといいます

出光興産 木藤俊一社

EVを我々が作って売るのではなくて、ガソリンスタンドを通して、カーシェアリングサブスクリプション(毎月、一定額で車を利用できるサービス)を展開する。メンテナンスも全部行って、充電する電気の料金も含めて、定額でいつでも使っていいというビジネスモデルを考えている」

さらに、EVさらなる普及を見据え、次世代電池=全固体リチウム蓄電池研究開発も進めています

全固体型は、電気をためたり放出したりするのに必要な「電解質」が液体ではなく固体。いま一般的に使われている電池と比べて、液漏れや発火など安全上のリスクが少なく、出力も高めることが可能だといわれています

スマートよろずやであるガソリンスタンド拠点に将来の伸びしろ部分を強化しようというわけです。

オイル&ニュー戦略コスモ

コスモ 桐山社長

そして、3番手コスモ

社内での激しい議論のすえに脱石油をうたいつつ、新たな分野への投資を拡大しています

コスモ 桐山社長

事業ポートフォリオを変化させようっていうのはずっと考えていて、いまの中期経営改革策定した2017年に社内で激しく議論した結果、“脱石油”を掲げた。石油会社が“脱石油”でいいのかという意見もあったが、市場シュリンク(縮小)していくのがわかっているのだから、潔く脱石油をうたって、Oil&Newっていうスローガンを立ててそっちに向かってやっていこうと考えた」

コスモ風力発電事業

コスモにとってニューとは、実は風力発電事業です。

1996年風力発電専業のコスモエコパワーを立ち上げ、いち早く風力発電事業に取り組んできました。

順調に風力発電設備を増やしていて、今では電力事業者を含めて、3番目の容量を誇っています

政府再生可能エネルギー普及の切り札として、洋上風力発電2040年までに最大で4500万キロワットまで拡大しようとしています

浮体式洋上風力発電実証事業に参加(コスモHP

コスモ 桐山社長

風力発電ってどんどん伸びていく。みんな電力にシフトしていくのに、その電力がクリーンになっていなかったら話にならない。EVで使う電力だって化石燃料で発電すれば、決してクリーンとは言えない。洋上風力は今は着床式だが、どんどんどん沖に出て行く形になる。現実的な解は風力だと思う。もちろん、風況調査から始めて、実際に動くまでものすごく長い時間がかかる。ただ、着々と事業を進めてきているので2030年代の中頃には、経常利益で300億円から400億円ぐらいになると思う」

未来石油産業

コスモ 桐山社長

コスモ 桐山社長

大手3社の市場占有率が高いので、独禁法上はこれ以上石油業界の再編はない。ただ、独禁法関係ない再エネや風力の世界では、自由に絵が描けると思っている」

出光興産 木藤俊一社

出光興産 木藤俊一社

エネルギー供給事業者として、必要需要に対して用意できるエネルギーをしっかり供給しようとすれば選択肢は広がる」

ENEOS 大田勝幸社長

ENEOS 大田勝幸社長

「若手の社員は脱炭素に前向きで、スタートアップ企業とのコラボも進めている。新しいことをやるのに先輩に引けを取っていない」

今回のインタビューを通じて、各社トップは新たなエネルギー、新たな付加価値提供できれば脱炭素時代ビジネスチャンスをつかめると捉えているのが印象的でした。

石油を制するもの世界を制する」と言われたこ100年。

炭素の流れで「石油の世紀」が完全に終わるわけではないと、トップたちは強調しますが、自らが認めるように需要の減少は不可逆です。

金融機関マーケットなどから視線は厳しさを増す中で、各社のエネルギーへの知見や、製油所やスタンドなどのインフラ、燃料の調達供給体制を含めたサプライチェーンを「資産」として生かしつつ、新たなビジネス開拓できるのか。

2022年も知恵と工夫、そして大胆な決断力が問われることになりそうです。

エネオスは期待大。コスモはまあ普通そうなるよねという判断。いでみつはヤバそう。

 
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