2019-11-04

宇崎議論を嘆く

Twitter不毛すぎんか〜〜〜〜! と思って何か書こうとしたが、調べてみるとこんな良記事(https://blogos.com/article/413806/)があった。これを読め! 解散

しかし他にいくつか思うことがあるので書く。

一に、この議論に関わらず、何と戦っているのか不明な人が多すぎるので議論の種類について整理してみたい。おおよそSNSブログ議論/主張を行うとき目的は僕には三つくらい考えられる。1.問題を周知/提起すること・2.相手意見を変えること・3.相手社会的制裁を加えること、だ(いま考えただけなので他にあってもおかしくないが)。「献血ポスター女性性的に消費しているぞ!」というのは主に1.である。今まで問題とされていなかったことを取り上げて、これはおかしいぞ、みんな見てくれ、というわけだ。それに対して個人的に「いやその論はこれこれの部分が間違っているようだからポスターは置いても構わないんじゃないですか」というのが2.である。考え直してください、ということ。最後に「これこれの部分が間違っているからこいつはバカだ。バーカ」というのが3.で、ポスターを置くことの是非はもはや二の次相手排除することを主眼に置く手合い。相手アカウントが凍結されるとか、相手が恥をかくとかそういうことを願っている。

1.と2.をはっきり区別しておきたいのだが、同じ主張であっても最終的に何らかの問題解決目標とする場合は1.、議論自体目的とするものを2.と(ここでは)定める。例えば、フォロワー数の少ない二人がお互いに意見を戦わせて二人なりの結論を得るのは後者有名人同士が引用ツイートで以ってお互いの主張を戦わせ、結論には至らないまでもそれぞれのフォロワーアピールするというのが前者だ。もちろんグラデーション存在する。

また、2.と3.も実は区別が難しい。2.の人も、相手との対話を諦めた時点で3.になりうる。あるいは、罵詈雑言を投げながら、当の本人としては「相手に改心して欲しかった」などと2.のつもりでいる人もあると思う。これもグラデーションで考えるのが良い。1.と3.も同じ。

二に、議論をする際には目的を明確に意識すべきと言いたい。概ね文字というのは対面に比べて趣旨気遣いも汲み取りにくい。緻密なコミュニケーションは望めないのだから目的外のところに関しては互いに譲歩すべきである。例えば、「献血ポスター女性性的に消費しているぞ!」という主張と「ポスター規制するのは表現の自由侵害だ」という主張をお互いに問題提起として戦わせるときには、前者にあっては「宇崎ちゃんポスターを公の場から取り除くべきである後者にあっては「宇崎ちゃんポスター規制するという事態を避けるべきである」という問題を周知するのが第一義だと考えられるので、それ以外の主張の些事に関しては無視するか、好意的解釈するか、あるいは互いを気遣いながら齟齬を埋めるのがよい。「論点をずらした」などと言って人格攻撃をするのは最悪手である論点をずらすのはもとよりよくない。しかしその論点はそれとして別に議論すべき大切なものかもしれないし、相手には同じ論点だと見えているのかもしれない。意見が違うからと言って、そのような点で攻撃するのは礼のないことだ。「論点がずれているかどうか」などと言う最もどうでもいい議論目的を失することのないようにするためにも相手論点をずらしたと思うようなときにこそ丁寧に接するべきであるさらに言えば、相手無礼であるときに激昂するのもやめるべきだ。誰が得をするだろうか。

三に、あまり論理的に複雑なことを言うのもよくない。主張のぶつかるのは感情的な原因によることが多く、それがゆえに是非を問いにくいことも多い。是非を問いにくいので、論理的な正しさで決着をつけようとする。しかし、多くの主張にはどうとでも理屈をつけることができるのだ。なるべく大元感情から離れぬ方が、また自分の主張が感情からまれていることに自覚的な方が良い。例えば道路で立ち小便をする人間不快である。彼を批判しようというときに、それが軽犯罪法抵触するなどと言うことができる。法律があるからにはそれが成立する法学理論的基礎があるはずである。また、社会の秩序を守る上で立ち小便の位置を論じた統計的資料があるかもしれない。しかし、それらはどうしてもその論点で戦わざるを得なくなる場合以外武器とするべきでない。立ち小便が不快であるという一事から離れずともこと済むからである。だいたい、ルールと言うものはより多数の人間が良い気持ちで生きることのできるようにと作られることが多いのに、個人的感情論理に劣ったつまらないことのように扱うのは解せないことだ。

もちろん、全く理屈を使わず議論することはできず、そんなことをすれば子供喧嘩である。ここで言いたいのは、Aという理屈、Bという理屈を戦わせているときに、Aの些細な欠点を発展させて別の論理的戦場を作るようなことをなるべく避けるべきだということだ。立ち小便は法に触れると言った時に法治国家の是非を問う類のもの

だいたい、論理が複雑になれば間違う箇所も増え、それが本来の主張の欠点のように見えてしまう。益のないことだ。

四に、我々はそろそろ相手のことを思いやるということを覚えるべきである。これは特に相手意見を変えようと思って議論する際に必要である。世に問題を提起しようとするときは、なるべくフォロワー感情に訴えるべく強い言葉を使うことが多い。これは喜ばしくはないがある程度仕方ないことである。一方、個人的議論において強い言葉を使う必要は皆無と言っていい。主張が対立するとき、その双方が「自分被害者であり、相手加害者である」と思っていることは多い。宇崎問題でも「女性権利侵害されている」と思う人と「表現規制がなされようとしている」という人が対立する図をよく見る。被害者Aは毅然加害者Bに立ち向かう。これを逆から見るとBは被害者であるにも関わらずAから無闇に攻撃されていると感じる。Bはさらに頑なになる。「あなた議論のできない人なんですね」「あなたこそ話のわからない人ですね、さようなら」などという風景は見飽きてしまった。

何かを伝えたいがためにわざわざ議論を始めたはずである努力無駄ではつまらない。なんとか議論を成立させようというという意志をもう少し堅固に持ちたいものだ。

議論をする上は、いくら自分被害者のように思われようと、相手心理的負担を与えている。相手被害者なのだという認識を持っても良いと思う。相手は怯えた獣なのだ、まずは相手理屈を受け入れ、主張を聞いてやってもよかろう。主張を聞いて、「聞いてやったがここがおかしいだろう」という態度も問題である。こういう理解しましたがあっていますか、私はこう考えるのですがあなたはどうですか、という謙虚さを常に持つべきだ。これは、相手がたとえ似非科学陰謀論人種差別といった是非もなく間違いであるように思われる主張をしている場合にもそうだ。そんな思想信条を持とうと相手人間であり、どんな思想信条であろうと批判されるのは不快に決まっている。

なお蛇足ながら、冒頭に挙げたブログはかなり中立的論点を示していて素晴らしいのだが、やや「フェミ」を攻撃者、「オタク」を被攻撃者と捉えているきらいがある。「フェミ」の攻撃性(のように感じられる部分、すなわち規制しろ! という主張)は根本において女性権利侵害されていて守らなければいけないという価値観から出たものであるさらに言えば、「フェミニスト」として一貫性のある活動をしている人々(つまり、具体的に何を規制しどんな社会改革があればいいのかに関して基準がある人)もいる一方で、単に「女性社会の中で立場が弱くて/損をすることが多いからそれを変えたいな」くらいの感覚フェミニストに同調している男女も少なくないように思う。前者に比べて後者さら攻撃に対して敏感であろうと思う。攻撃理由に関して無知からだ。また、立場曖昧であること自体批判するのは間違っている。誰でも自分の/自分に近しい人の権利は守りたいからだ。

それを考慮せずに、初めからあなた達の攻撃は...」というとなかなか議論がかみ合わないだろう。「あなた方はこれを守りたいんですね、我々はこれを守りたいんです、利害が対立している部分を明確にしていきましょう」という立場でなけれななかなか建設的にならないのではないだろうか。

特に、一部の「オタク」は「フェミ」を十把一絡げに罵詈雑言を浴びせるし、それが被害者意識を生む。同様に、一部の「フェミ」は「オタク」(時には「男性」)を十把一絡げにして罵詈雑言を浴びせる。真面目に議論をしようとしているあらゆる立場の人に迷惑なことだ。

五に、もちろん相手議論するに足るかどうかは別の問題である議論すべきでないと感じた場合直ちに議論をやめ、可能ならブロックするのが良い。ブロックするのが負けのように感じるのは愚かな感覚だ。また、ブロックした後に相手発言を覗きにいっていちいちスクリーンショットで揚げ足をとるような行為君子仕業ではない。そのような卑劣行為をするくらいならきちんと自分心理的安全性犠牲にしてでも相手と対等な議論を行うべきである相手社会的制裁を加えようとする行為は言うまでもない。

六に、この文書SNSなどでの議論特殊意見であった。ディベート日常での議論についても適用されるとは必ずしも考えない。むしろディベート日常での議論の延長線上でSNSでの議論があるような感覚の人が多いのでこのような惨状があるように思う。短い文面での主張は言い足りないことが多く、普段耳にする意見に比べて拙く見えることがある。しかしそれはコミュニケーションの不備であり、相手の不備ではない。自分意見相手理解できないように感じるのも同じ。普段十倍、百倍に相手への思いやりと好意的解釈必要とする。

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