2024-10-21

教員権利を勝ち取った話

はじめに

私は、公立中学校に勤務する20代教員だ。

最近ニュースで連日報道されているように、公立学校教員労働環境ブラック企業顔負けなことで有名だ。

特に問題視されているのがいわゆる「給与特例法」。

月給の4%(2024年時点)を上乗せする代わりに、勤務時間外は残業代どころか給与を一切出さないというものだ。

とはいえ給与支給されなければ法的には職務従事する義務はない。これは公立学校教員も同じだ。

言い換えると、法的には部活動など勤務時間外はボランティアと同等。

それにもかかわらず、教師の皆さんはマジメな人が多く、責務と思ってそのままやってしまう。

管理職側や同僚も同じ経験をしてきたからか、普通に命令してくる。

なお、この命令職務命令なのか拒否可能なお願いに過ぎないのかは、文部科学省教育委員会も明言を避けている。


給与特例法を何とかしようと多くの人が立ち上がったが、法律として成立している以上実現できていない。

となると現状は上記の通りなのだが、唯一の例外がある。それが「勤務時間の割り振り」だ。

校外学習の引率や職員会議など、校長がやむを得ず勤務時間外の職務命令を出したときは、その分他の日の労働時間を短くできるというものだ。

最もどの職務が割り振りの対象になるかは地域や勤務校によって差が出やすいことも問題だが、ここではおいておく。


となると、勤務時間外に職務への従事命令されたのであれば、勤務時間の割り振りを出すか、自由拒否できる状態でなければならない。

ここでは、私が勤務時間外に職務をさせられることになったため、勤務時間の割り振りを勝ち取った話をしたい。

ことの顛末

私の勤務校は、校長いわく「課題のある学校」(=小学校学級崩壊したため、生徒指導で無理やり押さえつけないと荒れる可能性のある学校)だそうだ。

また勤務校はある委託研究をしており、職員会議でもよくその話が出る。

からか、対生徒・対職員ともに校内の規律が厳しい。

また「非常にやる気のある先生」が多く、始業時間1時間上前から出勤し、終業時間から3時間以上残るだけでなく、休み仕事をやりたがる先生が多い。

こだわりの強い先生や気の強い先生も多く、色々めんどくさいことも多い。

(これも地域学校によって異なる。このようなところもあれば、残業時間を引け目に思っており毎日原則定時退勤せよと言っているところもある)


私はできる限り時間外在校時間を短く、休憩時間はしっかりと休み、長期休業期間は年次休暇などを連続して入れてバカンスを楽しめるようにしていた。

それでも急な雑用や昼休み放課後の生徒対応などで休憩時間を潰されることがしばしばあった。

なので、休憩時間職員室を離れてはならないと管理職より言われる状況だった。

割り振りはなかったが、管理職は全く問題にしていない。

しろ給料が出ないからといって周りを手伝わないのはどうかと思うよ」「ビジネスライクにやりたいならこの仕事は向いてない」とまで。


一応違和感を感じながらもできる限り気にしない方向でやってはきた。

が、教務主任より夜遅く家庭訪問を命じられた時、ついに堪忍袋の緒が切れた。

どんなやり取りだったかはっきりは覚えていないが、こんな感じだったと思う。

教務主任(以下、教)「私くん、(生徒)さんの家に電話して。保護者の方が帰宅する今夜にね」

私「今保護者携帯電話したり、明日対応じゃダメですか?」

教「今日じゃないとダメ。それに生徒と一緒になるべきだから今夜しかいね

教「あ、やっぱり電話より家庭訪問の方が誠意があるからそっちにして」

私「電話じゃなくて家庭訪問ですか?」

教「打合せするから別室に来て」

別室へ。

教「~というわけ。私くん、よろしくね」

私「なんで給与が出ないのにやる必要があるんですか?」

教「それが責任というもの。それにこれを通じて成長できるし」

私「成長なんていらないんですけど」

教「え?」

私「金ももらえないくせして何が成長だ!!」

教「いきなりどうしたの?話聞かせて」

私「大体休憩時間雑用押し付けて、勤務時間外も拘束して、休みの日に電話してきて、何様だお前は!!」

教「そこまで君は自分時間を取られたくないのかよ!?」

私「1分1秒でも取られたくねぇよ!!なんの法律があるんだよ!?」

教「法律じゃないよ!!社会人としての責任だよ!!」

私「社会人としての責任を果たさなければいけない法律はあるのか!?」

教「子供のためを思ってこの仕事に就いたんだろ!!」

私「大体ヘンな時間に来る子供なんて邪魔なだけだろ!!」

教「子供、嫌いなの...?」

私「さっき成長とか言ってたけど、押し付けがましいんだよ!!気持ち悪いんだよ!!二度としてくんな!!」

教「...」

騒ぎを聞いたのか、ここで校長教頭登場。

校長(以下、長)「何を騒いでるんだ?」

教「(事情を話す)」

私「教務主任時間外労働を強要してくるんですが」

長「教師責任としてそれはしなきゃダメでしょ」

私「それは法律ですか、職務命令ですか?」

長「面接とき頑張るって言ったでしょ?」

私「本当は教員になるつもりなんかありませんが、選択肢がないので仕方なくなりました。志望動機面接は嘘をつかないと採用されないんで」

私「あと私は金のためだけに働いてます。というか話をそらさないでください」

長「わかった、職務命令とする。割り振りはつけてくれていいか家庭訪問行ってきて」

私「ならわかりました。何時間つけるんですか?」

長「家庭訪問の30分で」

私「待機時間教務主任に拘束されたんですが、それは含まないんですか?」

長「...」

教頭(以下、頭)「私くん、今興奮してるんで落ち着かせます

校長教務主任退出。

教頭と2人きりに。教頭は「ん~ボク?今日はどうしたの?」的な顔でこちらを見つめている。

頭「結局校長先生は君の割り振りを認めてくれたけど、同じことをしても僕にはないんだ。なんでだろうね」

私「(は?こいつ罪悪感を感じさせて割り振り獲得をあきらめさせる気か)そういうもの校長先生に聞いてください」

頭「いやだから君はどう思う?」

私「だから私ではなく校長先生へ言ってください」

頭「...」

少し落ち着いたので、職務命令通り家庭訪問を行った。

家庭訪問は無事終了し、学校へ戻り報告。

私「家庭訪問終了しました」

長・頭「了解

隣の先生ちゃんと(生徒)の家の人と話せた?」

私「はい

長「さっきの割り振りだけど、どのくらいにするかは後日話し合おう」

私「あとでやっぱやめたとか忘れたふりをするつもりですか?」

長「(曇った顔で)そんなことしないって言ってるでしょ」

私「じゃあ帰ります、お疲れさまでした」

後日談

こうして、遅い時間家庭訪問をさせられたものの、職務命令と認めさせることで勤務時間の割り振りを獲得することに成功した。

はいものの、引っかかるのが割り振りを後日話し合おうと言ってきた点だ。

好意的解釈すれば、在校時間がこれ以上伸びないための配慮だが、本当にうやむやにしないだろうか?

教育委員会の人とかを連れてきて諦めさせようとしてくるのだろうか?

それとも、形式的に割り振りをくれるだけで、使わせずに消滅させる(割り振りは年次休暇より時効がとても短い)気だろうか?

校長、どうにかして割り振りは出したくないというか、無給労働させたい感じに見えるんだよね。

そんな疑念を抱えながら出勤したところ、

長「教育委員会から通達も来たし、定時からの待機時間含めて割り振りを出すことにした」

私「(今回の件、教育委員会に上げたのね)」

長「ただし、今回は特殊な割り振りだから帰りの会が終わった後に取ること。あと学年団にも報告してから取ること」

私「(先に退勤されたのを見て地域住民とか他の先生方がおかしなことを言うからか?2段階にしてあきらめさせる気か?)」

一応は割り振りをもらえたものの、少し気になる点があった。

・この割り振りは有給休暇と異なり、放課後しか使えないこと。

放課後行事練習があると、その使用制限されたり、割り振り時間に食い込んでの職務要求される可能性がある。

・裏台帳を使っての申請になった。つまり、割り振りそのものは勤怠記録には記載しない(勤怠記録をいじってフルタイムで勤務したように見せる)。

不公平に思う同僚がいるからか?だとしても権利を主張すればいいだけの話なのだが。


今回のことをいろんな人に話してみると、反応は様々。

懇意にしてくれる先生は「割り振りもらえてやったぁじゃなくて教務主任感謝しなよ」

出身大学助教は「こうなったらいたたまれなくなって退職する人が多いのにメンタル強いな」とほめてもらった。

おわりに

とりあえず、条件付きとはいえ待機時間含めて割り振りを獲得することに成功した。

休憩時間や勤務時間外の無給労働は他にもあるので、今度から同じようにしてみよう。

法律ですか?職務命令ですか?そうであるなら割り振りを出してください。違うなら拒否します」

と。どちらに転んでも旨味が大きい。

なお、これは勤務時間外であり、犯罪ではないので人事評価が下がることも懲戒を受けることもない。


結局、一番の原因は「直接の給与にはならないけどこれも仕事のうち」というグレーな考えなんだろうな。

恥だとか責任だとか悩んで何もしないと上司の思うつぼ。何も言わないからいい気になって無給労働させてくるだろう。

(それはそうと、権利を主張しないだけならともかく、足を引っ張ってくるのが同じ立場労働者というのが、ニッポン不思議ひとつでもあるが)

とにかく、権利を主張することが権利獲得の最短ルートに他ならない。これだけは断言できる。

「いつも奇跡は待ち望まないでつかみ取れる人でいたい」(シャイニーカラーズ - Daybreak Age)

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