2021-10-15

anond:20211014160920

自治体が人を雇う場合一般的雇用契約をすることができない。少し前までは曖昧にされてたが、総務省が古い解釈を今更示したせいで、一時的であれ短時間であれ、明確に公務員として任用せねばならなくなった。令和2年度4月から施行された会計年度任用職員てやつだ。地方公務員法根拠規定によりパートタイム(第22条の2第1項第1号)とフルタイム(〃第2号)の二種類があるが今回はパートタイムのほう。本来は。その場合地方自治法203条の2第1項により「報酬」の支給となり、勤務条件に関して県の条例適用も、労働者として労働基準法適用もある。任用条件の通知も当然行われる(「会計年度任用職員の任用(再度の任用を含む)時に交付する「勤務条件通知書のイメージ」の作成等について - 全国町村会」)。

 埼玉県条例

 会計年度任用職員の報酬等に関する条例

 会計年度任用職員の報酬等に関する規則

だが任用するとなると埼玉県条例で定めた諸々を適用せねばならず手間がかかるから、「報償費」の支払いでごまかしたんだと思う。講演の謝礼の支払いなんかで使われる方法。いわゆる謝金。横行する「有償ボランティア」(実態労働のやつ)もこれ。

報酬」として支給せず「報償費」も避けるとなると、自治体指揮命令下でやってもらう仕事個人への「請負(いわゆる業務委託)」にして委託料というわけにもいかいから、派遣会社業務委託して人を派遣してもらうしかない。こういう突発的で大人数の仕事は自前で労務管理するのも大変だろうし派遣なら派遣でいいと思うが。

この足立区資料を見ると似たような支出でも区別されているのがわかりやすい。

https://www.city.adachi.tokyo.jp/documents/42523/kouhyoukamoku.pdf

よく見ると「賃金」の項目があるけど、これは「雇用契約自治体には存在しないはず」という解釈の辻褄合わせのために改正されて今は無くなった。自治体は、今までは何だったの?と右往左往した。

地方自治法施行規則中、歳出予算に係る節の区分(第15条関係)について>

マニュアルⅡ2(1)⑥のとおり、地方公務員法は、地方公共団体に勤務する者について、一般職にも特別職にも属さない者の存在を予定しておらず、雇用契約による勤務関係の成立を想定していないため、自治法施規則歳出予算に係る節の区分(第15条関係)中、「7節 賃金」を削除したものである

(会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)Q&A)

会計年度任用職員臨時的任用職員については総務省のページにある「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル改訂について(平成30年10月18日総行公第135号・総行給第49号・総行女第17号・総行福第211号・総行安第48号)」の中の「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)」に、非常に詳しく説明されている。もはや自治余地がない。

 

また、埼玉以外でも、自治体議会に載ってる予算資料を見ると、たいがい集団接種の医療従事者に支払う「報償費」が計上されている。集団接種は国から事業費の補助がないとできない規模だと思うが、その補助金報償費としてしか出なかったのかもしれない。そうだとしたらその金を「報酬」として支払うことができない。

地方公務員法第58条第5項による労働基準法規定適用除外と上書きにより、基本的労働基準監督署の監督権限が及ばない(例外は同項で除外される労働基準法別表第1の第1号から10号まで及び第13号から第15号までに掲げる事業従事する職員保健所等)と地方公営企業法により同条が適用除外される水道等の公営企業職員、単純労務職員技能労務職員))ため、労働関係相談に乗るセンターは、基本的地方公務員制度には無知無力無関心だから、動かすのが容易ではないのかもしれない。労基署の代わりに人事委員会等が監督することになってるが、その有様は元記事のとおり。大方の弁護士公務員制度をわかってない。

そして地方公務員基本的公務員制度労働法もよく知らないし、支払う相手が困るかどうかの意識も乏しいし、加えてふだん報償費を出す相手講師なりボランティアなりの支給額に頓着しない相手なので、今回も同じように雑にやったのではないかと思う。

今回の運用のされ方からして非常勤地方公務員問題に近い話だと思うけど(官製ワーキングプア研究会)、同じかというとそうでもないかもしれない。

 

ただここから先どうするかとなると、支給された内容がおかしいと審査請求をして否応なく言い分を聞き出すくらいしか自分は思いつかない。解決のためではない。県のコンプラを掌理する部署が出てこざるを得なくなり、せめて事情を詳しく聞けるかもしれないと思うからだ。却下するにも裁決書は書かねばならないし、説明して審査請求を取り下げてもらえるなら、役所だってそれにこしたことはないだろうと。

誰かがもっといいアプローチを知ってるかもしれない。

 

10/16に元記事追記がされていた。

"看護師の皆様への依頼は、保政第569-1号通知に基づく業務応援(つまり雇用関係になく、スポット応援を依頼している)という業務形態です。

そのため、労働基準法適用されないこと、及び、休業補償は行われないことについて、何卒ご理解くださるようお願いいたします。"

なぜこれを最初にしっかり説明しなかったのだろうか。どういう関係かも明示されず働かせて、声を上げたらこれって。民間よりよっぽどブラックだ。

労働関係にないならこれ以上声を上げたって無意味じゃないか

最初説明しなかったのは、応じた看護師が被る不利益についての関係者の認識が無かったからと思うが(通常は本当に1日、2日の単発業務で使う手法なのだと思う。)、これが今さら雇用だということになると県は大変困る、事務的にも大変だし議会質問されるのが更に大変なので、否定してかかるのは予定通りではあるだろう。

保政第569-1号通知とは県庁内部の訓令通達の類だろうか。内容を読んでみたいが、基本的にそうしたものは県の内向けの文書であって、対外的法律効果を左右できるものではない。ゆえに、 後出のhamachanブログ様で紹介いただいた裁判例のように、役所の側の理屈否定して雇用契約だと認定されることもある。これは役所相手だと珍しいが民間企業ではザラにあると思う。

件の裁判例、県もまだ知らなかったのではないか。こういう道筋ができていた以上、実態からしてこれは雇用だったという主張が認められる可能性も出てきたとは思うものの、孤軍では負担が大きそうだ・・・

 

10/20追記

自治実務セミナー」という雑誌があるのだが、その2021年8月号に、「公立学校における有償ボランティア活用留意点について」という記事があった。この記事タイトルどおり、教育現場における「有償ボランティア」の労働者性が認定される可能性等を論じたものであるが(それはそれで教委関係者の心胆を寒からしめるかも知れないが)、その中で、

地方公共団体活用している有償ボランティア労働者とされた事例として、堺市保健医業務協力従事制度(区保健センター実施する乳幼児健診や予防接種業務の補助をする看護師等に1回3時間程度で 謝礼金を支払う制度)がある。予防接種等の補助をしていた看護師堺市に対して年次有給休暇を求めたところ労働者ではないことを理由にこの求めを拒否された事案について、堺労働基準監督署は当該看護師労働者である是正勧告している。

と紹介されていた。令和2年のことで、報道もされたようだ。

おそらく報償費運用されていた事例であり、「区保健センター実施する乳幼児健診や予防接種業務の補助をする看護師等に1回3時間程度で 謝礼金を支払う制度」で労働者性が認定されるのであれば、元記事のような新型コロナワクチン接種業務場合は、よりその可能性が高いだろう。

堺市ではその後、会計年度任用職員としての任用に切り替えたとの由。

 

 

追記たらこの先が表示しきれなくなってしまったので、記事を分けて残しておきます

https://anond.hatelabo.jp/20211020210114

記事への反応 -
  • 現在埼玉県のワクチン接種センターで看護師として働いている。 今までで一番クソなワクチンバイトだったので、長くてごめんだけど誰かに聞いてほしい。 (長くなりすぎたので追記は...

    • 自治体が人を雇う場合、一般的な雇用契約をすることができない。少し前までは曖昧にされてたが、総務省のアホな解釈のせいで、一時的であれ非常勤であれ、明確に公務員として任用...

      • なるほど、自民党が悪いな

      • なっがいな!ユニオンとか国家公務員組合とかにかけこむべき案件なのでは、でいいとおもう 基本的にこれ従軍慰安「婦」みたいなもんだよな、今回の看護「婦」さんも 国って戦争年金...

      • 追記したら、つらつらと書き足したことが表示しきれなくなってしまったので、記事を分けて残しておきます。   会計年度任用職員が始まる前は、アルバイトだの日々雇用だの嘱託だ...

    • ...でも、契約書も交わさず人を働かせていたとしたら突然のボイコットに文句は言えないと思うのね。 それこそセンターの看護師全員がそういう条件だったとしたら、ついていけないの...

    • 一人分打ったらいくらもらえるの? その金額によってお前の味方をするか決めるわ

    • 見事な田舎だなw これぞ埼玉クオリティww

      • 先進国埼玉だから問題が露呈するんやで キャバクラの女性従業員は「労働者」、さいたま地裁で和解成立 「早上がり」とは、シフト上、終了時間まで入る予定だったのに、客の入り具...

    • 地元選挙区の国会議員か野党の事務所に駆け込んで国会で取り上げてもらうようにお願いした方がいいくらいのレベルに感じた。

    • 労働者かどうかは契約書の存在ではなく実態で決まる。内容からして労働者であることは明確。報酬だから労働ではないみたいな意味のわからないことを言っているようだが、仕事に対...

    • https://anond.hatelabo.jp/20211014160920 議員につてがあるなら議員に言ったほうがいい。議員のひと声で行政は動くぞ

      • ツテがなくてもメールで会ってくれと送れば3割くらいは返事くれるよ とりあえず20人に送ってみ?

    • https://anond.hatelabo.jp/20211014160920 議員につてがあるなら議員に言ったほうがいい。議員のひと声で行政は動くぞ

    • 元増田は個人なの?法人なの?

    • 働いたら負け、とはこのことか…

    • これは週刊誌に売れそう。

    • どんな書面作って(どんな予算名義で)雇用すればいいものなのかそもそも誰もわかってなかった感が大変興味深い やはり行政コロナ担当者向けコールセンターは設置するべきだったな...

    • これはボランティアですね。 市民のために頑張ってくれて本当にありがとうございます!!!!!! これからも応援してます!!!

    • 中身読んでないけど タイトルからして被害者ムーブする気満々の話ってもうお腹いっぱいだよ。

    • いや、労基いけよ

    • 労基系に行くより文春にこの文章のまんまメール送るのが一番足早そうだけどな

    • 反日バイトうるせえな 国民に奉仕しようって気持ちがあればこんな長文書かないだろ 貧乏人は自分勝手なんだよな結局

    • まず、弁護士とか社会保険労務士などの法律家に相談いただきたいが、以下の通りと考える。 1. 契約書の有無 契約書がないから、契約の内容が無効になるわけではない。県から「こう...

    • 労働者でないってのは自営業扱いってことだろ? フリーランスは雇用されてねーから労働者じゃねーもん

    • 戦時体制下だったんだから没収、接収、動員、ネコババ、供出、なんでも有りに決まってんだろ。 名誉の戦死を遂げたら靖国神社で英霊として祀ってもらえたまであるわ。 お国の公費か...

    • 知事への提案制度とかで連絡してみたら? 一応、知事は目を通すと書いてあるし https://www.pref.saitama.lg.jp/a0301/teian/teian.html

    • 面白いネタであるにも関わらず、トラバがつくまでに異常に時間がかかりすぎ。

    • 埼玉県でこれなんだから公務員のレベル低下はひどいな

    • anond:20211014160920 ありがたいことに思っていた以上に多くの反応をいただいた。 あの後、埼玉県ワクチン接種センターの偉い人から来た。 「最低限の雇用は守る。これ以上は減らさない」...

    • 埼玉県某市の集団接種会場で誘導のバイトしてたけど、下手したら自分よりこの看護師さんのがひどい条件で働いてそうで笑えねぇ

    • この国(自治体も)の行政機関は末端の役人が全く責任感を持たずに むちゃくちゃ非合理的(本人も納得出来ないような)なことを押し通せるよう良く出来てる 酷い場合は、末端の方すら非...

    • 大学で働いてるけど「雑収入」の枠の収入(講演会,企業研修講師など)が新型コロナでなくなってしまったから,喉から手が出るほど欲しい・・・ ワクチン接種センターで働いていた...

      • 結婚してください

      • 「雑収入」ではなく「雑所得」でした.経費の計算・申告についてはご自分でご検討されればよろしいかと.しかしこのような短期契約のアルバイトの類で,給与ではなく雑所得という...

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