はてなキーワード: 三俣とは
オールアンラーッキーデイズ(All anrakki days)とは、3月11日に毎年のように「東日本大震災」の定期券を買わされた増田が、アンサイクロペディアの「3月11日は東日本大震災でもあるけど、それより前は何かの記念日だし、その後も誰かの記念日でもあるので普通の日とすべきだ」というのにぶち切れて366日(+α)を全て不謹慎の日として扱ってそれをリストアップした一覧のことをさす。
全て皮肉的に扱うため、Engrish表記+日本語Typoを用いる。
以下の順番でその日に起きた出来事をチェックしている。 基本は日本縛りだが、あまりにもデカすぎる事件や事象の場合は海外も対象に入る。
なお1月~3月と11月~12月は雪崩による災害、6月~9月にかけては台風などによる豪雨などの土砂災害で安全地帯がほとんど存在しないことが判明している。
その異変を初めて体感したのは、日常のほんの些細な出来事からだった。僕はその日、幼馴染で親友の桐王寺勝也と一緒にいつもの通り学校から帰宅していた。通っている高校から僕たちの住む団地までの道のりには、三つほど信号と横断歩道があった。僕たちはちょうど真ん中の横断歩道で、大きな荷物を抱えた一人のおばあさんを見つけた。まるでマンガやアニメに出てくるような紫の大きな風呂敷を胸の前で結びこみ、マンガやアニメのように身体をふらふらとさせながら信号を待っているマンガやアニメのようなおばあさん。僕たちは顔を見合わせると、背後からそのおばあさんに話しかけた。
「おばあさん、荷物、重かったら僕たちが運んであげようか?」
勝也がそう言うと、おばあさんはピタッと動きを止めて、静かに僕たちの方を振り向いた。その顔には信じられないと言ったような表情。そして、口をわなわなとふるわせながら、しゃべる。
「今、なんて言った?」
その言葉には、人間の心に鈍感な男子高校生でもわかるくらいに怒気を孕んでいた。まさかの言葉と表情に僕たちは面食らってしまった。僕たちは再び顔を見合わせた後、勝也がもう一度口を開いた。
「その前だよ!」
いきなりの大声に思わずビクンッと身体を張り詰めさせる僕たち。
「そ、その前って……?」
僕たちは後ずさりをしながらも、そのおばさんに尋ねる。
「アタシのこと、なんて言った!?」
さらに大きな声で言うおばあさん。その衝撃波が僕たちの身体に当たる。
「お……おばあさん……って言いました……」
「そうだろうがぁ!」
おばあさんはそう叫ぶと、背負っていた重そうな荷物を振り回し、僕たちの顔めがけて投げてきた。
「うわっ!」
僕はとっさにかわすことが出来たが、勝也はもろにそれを喰らっていしまう。
「ぐへぇ」
という声とともに、頭から倒れる勝也。そして、倒れた勝也の胸元に、すぐさま馬乗りになるおばさん。
「ちょ、おばあさん、何してんの!?」
僕は慌てて止めに入るが、おばあさんの鋭いパンチが勝也の頬にはいる方が早かった。
「アタシの、ことを、おばあさんとか、いうんじゃ、ないよ」
「何してんだって!」
僕はおばあさんを羽交い絞めにした。なおもバタバタと暴れるおばあさん。足を限界まで伸ばして勝也を蹴っている。
「ッ本当の、ことを、いうんじゃ、ないよ!」
おばあさんはそう言うと、するりと僕の腕から抜け出し、大きな荷物を抱えてものすごいスピードでどこかに行ってしまった。
「なんだったんだ……?」
僕はその後姿を呆然と眺めるしかできなかった。そして、呻き声が耳に入り、我に返る。
「だ、大丈夫か?勝也!」
僕は勝也を支えながら、家に帰った。
「勝也、大丈夫か?」
僕は開口一番勝也に具合を尋ねる。
「なんとか」
「……そっか」
僕たちはそのまま学校に向かった。学校に到着すると、昨日のおばあさんのことなんか忘れてしまうくらいの出来事が起こっていた。なんと、学校にあるありとあらゆる書籍や教科書、書類が校庭に集められていたのである。
「あら、おはよう。二人とも。もう教科書は校庭に捨ててきた?」
クラス委員長で生徒会の役員も務めている八島真理がメガネを拭きながら教室に入った僕たちに尋ねてくる。
「え?いや、まだだけど……っていうか、どういうこと?教科書を捨てる?」
「ええ、そうよ。あんなもの、早く捨てないと、先生に怒られちゃうわよ」
「やめろ~!僕は、死んでもこの教科書は捨てないぞ~!」
大声でそんな言葉が叫ばれているのを耳にして、思わずそちらの方に目をやると、そこにはがり勉の三俣啓介が先生たちに取り押さえられているところだった。
「やめろ、やめろ~!」
教科書を奪われた三俣はそれでも先生に抵抗しようとあがいている。しかし、
「いい加減にしろ!」
という、先生の声とともに、三俣の顔に先生の蹴りが入る。ミキャという嫌な音があたりに響く。
「ッッ!?」
「お、おい。早く俺たちも行こうぜ……」
昨日のことを思い出したのか、顔を蒼くしながら勝也が僕を引っ張る。
「あ、おい……」
僕は結局校庭まで引っ張られて、教科書や持っていた文庫本を捨てることになった。そして、授業が始まった。
世界史の七井がいきなりそんなことを言い始めた。僕と勝也は互いに顔を見合わせる。そうした瞬間、ちらっと空席が見えた。あそこは確か三俣の席だった気がする。あの後結局どうなったんだろうか。
「では、いきなりだが質問だ。われわれ人間は、みんな同じだね?」
七井がそんなことを聞いてくる。人間はみんな同じ、だって?確かに同じ部分もあるが、同時に違いもある。一概に同じだとは言えないはずだ。
僕がそう思っていると、八島が手を挙げる。
「八島君、どうぞ」
「古来より人間には差異などなく、みな同質でありました。それは今も変わりません。なので、人間はみんな同じであると言えます」
「その通りだよ、八島君」
七井は嬉しそうにいう。しかし、それに異を唱える者がいた。こちらもがり勉で、一番後ろに座っている一色だ。
「みんながみんな同じなんて、そんなバカげたことありません。現に僕は目が悪くてメガネをかけているのに、彼女はかけていないじゃないですか!」
一色はそう言って八島を指さす。七井は一色に近寄ると、一式が欠けていたメガネをはずした。
「あ、な、なにすんですか!?」
メガネを取り上げられて慌てふためく一色。七井はそんな一色のことを気にも留めず、手の中にあったメガネを握りつぶした。
「ああ~!」
一色の悲痛な叫び。
「これで、同じだね?一色君?」
七井は先ほどの八島の答えを聞いた時と同じように、笑顔で聞いている。
一色はなおも食い下がろうとしたが、次の瞬間身体が椅子ごと後ろに吹っ飛んでいた。七井が思いっきり一色のことを蹴ったのだ。そして、蹴られてうずくまる一色の近くにしゃがみ込み、再び七井は尋ねる。
「同じだね?」
その日を境に、世界は大きく変わってしまった。僕以外のすべての人が、人間はみな同じであるという考えを、まるで植え付けられたかのようにするようになった。やつらの言い分では、差異がないから、差別もなく、貧困もなく、幸福で幸せな世界を築けるのだという。
僕は相変わらず学校に通っている。それは、僕が人間はみな同じであるという考えを持っていないということを知られないようにするためである。今日も一日、学校が終わるまで何事もなく過ごすんだ……そうすれば、なにもされなくて済む。
「ホームルームを始めるぞ」
担任の声で、我に返る。
「今日は、皆に非常に残念なことを伝えなければならない」
「どうやら、ウチのクラスで、同じ人間じゃあないものが逢いるらしいんだ」
ドキッとした。心拍数が上がるのがわかる。口から心臓が飛び出してしまうのではないかというほど急に心臓が動く。先生のその言葉で、クラスのみんなが一斉に僕の方を向く。
「えっ……」
僕は思わず声を漏らしてしまった。担任が僕に近寄ってくる。そして、笑顔で言った。
「同じだね?」
Happy End