いや、それは単に新たな演奏家が一人(または一群)登場したというだけのことだろう。
将来、中国やら韓国やらが新しく発見された古文書持って「日本のこの島、俺んちの物だから、証拠はこの古文書ね」って言ってきて、それが解析できる専門家がこちらサイドにいなかったら終了。
小学校に通わせて貰ってないのか…
気持ちはわかる。
あの時代、オタクは「気がついたら作品が死んでた」という体験を、初めて抱えはじめていたのではないか。押井がもてはやされたのはそれを描いていたからだった。
私が高校生の頃、恐れていたものがある。美容院だ。鏡と数十分対面、オシャレな空間……。化粧も服も大好きだけど(出来栄えは置いといて)、美容院は苦手だった。そして一番いけなかったのは、当時の髪形だ。黒髪ひっつめ、前髪なし。前髪が長すぎてもう限界! とかそういう事にはならなかったので、極端な話、ずっと行かなくてもよかった。それでも、私は毛量が多かったし、何より、手入れされてない長髪ははっきり言って汚かった。なので、半年に一回くらい、死ぬ覚悟で美容院に電話し、樹海に行く気持ちで美容院へ行っていた。ちなみに、美容院とは言っているが、私が幼少時代から10年以上通っている1000円カットである。店主が一人でやっている、席が一つしかない店。店内はナチュラル系でまとめられており、テレビではアニメが流されていた。壁にはたくさんの漫画、棚には作りかけのウィッグ。そう、ここは人の髪を切ると同時にコスプレウィッグの制作もやっていた。オシャレ過ぎない個室、アニメの話もできる、そして安い。ここまで聞けばオタクにはさぞ居心地が良いと思うだろう。けどこの店には、致命的な欠点が二つあった。一つめ、電話予約しか受け付けていない。コミュ障は死んでしまう。二つめ、店主の話題が恋愛トークしかない。正直、これが嫌で美容院を変えたといっても過言ではない。当時私は女子校に通っていたので、彼氏だの好きな人だのの前に、男子がいなかった。それなのに、ふられる話題は恋愛ばかりだった。「好きな人いないの?」「女子校なんで」「通学路で素敵な人見かけないの?」「そんなに周り見ないんで」「好きなタイプは?」「えーよくわかんないです」などなど……共学に通っていたら恋愛トークできたのかというとそういう訳ではないが、「女子校だっつってんだろ!」と叫びたくなったことは一度や二度ではない。それに、当時はすっぴんひっつめで通っていたので、「このビジュアルの人間が恋愛トークできると思ってんのか?」などと思っていた。一応言っておくが、カット技術はめちゃくちゃ上手い。
けれど、恋愛トークに嫌気がさした私は、大学一年生のときに美容院を変えた。ここを、美容院Aとする。ホットペッパービューティーで予約した近所の美容院だ。カット2000円、今までの倍である。だがここではひどい目に遭った。店に入った瞬間、「失敗した」と思った。客のおばちゃんがパーマをかけながら、おばちゃん美容師と世間話をしている。明らかに年齢層が違った。それでも、「髪を切るだけだから」と腹をくくった。担当してくれたのは店主だというおじさんで、この人がまあタバコ臭いの何の……しかも下手。左右均等に切れないのか、しきりに左右の髪を手で合わせていたし、「うねりがあって長さが分からない」とストレートアイロンをかけられた。元からストレートだし、私の髪で「うねっている」と言ったらうねっていない人などごくわずかだ。それに、そんな事は他の美容院では一度もされた事はなかったし、今のところでもされていない。この時点で、「下手だな」と見限り、15cm切ってほしいと頼んでいたのを5cmにした。二度と来るかこんな店と誓って帰宅するとビックリ、左右の長さが2cmくらい違っていた。二度と行きたくないがお直しは無料のようだし、三日後くらいに行って直してもらった。
直してもらった私は、やはりきちんとした技術、接客のためには金を積まねばならんのかと新たな美容院を探し始める。この頃、ようやく前髪を作ろうとし始め、骨格に合う髪形を提案してくれるところを探していた。そして見つけたのが、美容院B。カット4500円。ここが、今もなお通い詰めているところである。ここがめちゃくちゃいい。恋愛トークしてこないし、技術も接客も申し分ない。それに、提案してもらった前髪が自分でも驚くほど似合っていた。この時はじめて自分を「かわいい」と思えたし、かわいくなったおかげで美容院が怖くなくなった。もっと言えば、自己肯定感が上がった。
ここは、はじめて行ったとき、席に着くなり「後ろめっちゃVの字ですけどどうしたんですか」と聞かれた。Vの字なんて全く身に覚えがなかったが、鏡で見せてもらうと、後ろ髪のシルエットがくっきりとVの字になっていた。「Aでやられたな」と気づきあの時の怒りを思い出したが、Bで無事に直してもらった。かわいい前髪ばかりかAでの損傷も直してもらい、私は「絶対また来よう」と誓った。その後、何だかんだでカラーリングやカットをしに通っている。
じゃあこの扇子を射抜いてみるがいいぞほほほ