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2018-10-25

[] デドラ・プリズ

デドラ(Dedra)とプリズマ(Prisma)は、イタリア自動車ブランドランチア(Lancia)が販売していた乗用車

リズマは同社の5ドアハッチバック、初代デルタの4ドアセダン版、デドラは2代目デルタの4ドアセダン版にあたる。

  

リズマは1982年発表。ベースとなったデルタと同じく、ジョルジェット・ジウジアーロ(Giorgetto Giugiaro)がデザインした。

デドラはプリズマの後継車種として1989年に発表。デザインは当時I.DE.Aに所属していたエルコーレ・スパーダ(Ercole Spada)。

https://en.wikipedia.org/wiki/Lancia_Dedra

https://en.wikipedia.org/wiki/Lancia_Prisma

2011-10-30

つらつらと、日本自動車産業の置かれた状況について考えてみた。

自動車産業が抱える問題って、現在の日本の置かれた状況を象徴するものだよなぁ、と思い、少し掘り下げて考えてみた。「推測」と書いたのは、バックデータ・統計資料にわざわざ時間をかけてあたる暇はないので、状況証拠だけで考えていくということだ。暇な人、もしくは自動車産業関係者のマーケターの方、もしくはマクロ経済の専門家様、データを元にこの推測、といいますか仮説を検証してみてくださいませ。

若者の嗜好が変われば万事解決、なのか

自動車の国内市場規模は縮小の一途。特に若者がクルマに興味を持ってくれない。」というのが、業界的に広く共有された悩みのよう。その典型的な事象の捉え方が痛いニュースのこの記事。

痛いニュース(ノ∀`) : “若者、車離れ” 日本国内で車売れない…トヨタ、本気でアイデア募集 - ライブドアブログ

この2ちゃんねるまとめブログで、板の題材として選ばれている記事がこれ。

国内で車売れない危機打開策 トヨタ本気でアイデア募集 (1/2) : J-CASTニュース

ま、痛いニュースJ-CASTなので、、、、、でも、こういうメディアって、一般的な状況の捉えられ方やルサンチマン的なストレスを推し量るには本当に都合がいい。でもJ-CASTの元記事にはファクトデータも載っている。ちょっと引用してみると、

国内での販売は2年連続の減少だ。ダイハツ工業日野自動車を含めたトヨタグループ販売は前期比同4%減の227万台と、米国販売との差が広がる一方だ。国内市場全体の落ち込みより減少幅が小さかったため、トヨタシェア軽自動車除く)は過去最高の45.8%まで上昇したが、トヨタ車単独で11万台の減では、シェア上昇も手離しで喜べない。

国内の自動車需要(全需)は、2006年度の軽を除いた日本国内の新車販売は前年度比8.3%減の358万台と、29年ぶりの低水準だ。登録車市場の低迷の原因としては、経済性や実用性を求めて軽自動車に人気が移っている影響とされてきた。しかし、軽を加えても同4.1%減の561万台であり、国内市場全体が収縮していることが鮮明になっている。

要は、

ってこと。ちなみにこの元記事は1997年という4年前のもの。

で、その対策として当時のトヨタは、

トヨタは06年末に社内横断的なチームを立ち上げ、国内低迷脱却のアイデアを懸命に探り始めた。

対策チームは、自動車という商品の枠内だけで解答は出さず、地域や社会全体の問題の中で消費を喚起する自動車を改めて模索している。携帯電話などの情報関連の支出が増えた若者の「車離れ」や、少子化による若年人口の減少による市場構造の変化を深刻に受け止め、車が売れなくなった構造要因に真剣に目を向けざるを得ない。地域ごとの特性や家庭の年代構成、消費者の行動なども踏まえて自動車市場全体を抜本的に洗い直そうというものだ。

少子化対策は政府でも有効策を打ち出せていない難題中の難問だ。それでも、トヨタ渡辺捷昭社長は「国内市場を活性化するためには、何よりも市場創造型のいい商品を投入することだ。地域の活性化を含めて、いろんな手を打っていきたい」と、社内チームの試みに大きな期待を寄せている。

というわけで、「国内市場をどうにか活性化させるための手を打ちたいと考え、具体的なアクションを起こしている」というメッセージを打ち出したわけですね。

それに対して2ちゃんねる側の反応はだいたい2分されていて、

  • 魅力のあるクルマを作らないメーカーが悪い (元記事がトヨタを取り上げているので、トヨタが槍玉にあがっているけれど、だからといって、他社のを褒めているわけじゃないから、国内メーカー全体に対して同じように思っているのだろう。海外メーカーはout of 眼中なのかな?)
  • トヨタを含む大企業が賃金を抑制するから、われわれは車を買う金を持っていない。そりゃ売れるわけ無いだろう!

となっている。

で、このあと2010年になってどうなったかというと、、、、市場動向、トヨタの対応、そしてネット民wの反応がツンダオワタ情報にまとめられている。(本当は産経新聞の元記事URLを引きたかったのだが、既に削除済み。というわけで、元記事の存在証明はないところはご容赦を。(だから、論文とかでは、データとしては使えないなぁ、、、増田で使うのが精一杯。)

豊田社長「マスコミは若者の車離れと言うが、離れているのは私達メーカーではないのか」 - ツンダオワタ情報

まずはトヨタがどのような手を売ったのかというと、、

トヨタは今年1月に「スポーツ車両統括部」を立ち上げ、スポーツカーの企画や開発に関する最終権限を経営陣から現場に移譲。スポーツカーの復活とともに、走る楽しみを演出する複数の

 プロジェクトが始動している。足回りの良さにこだわった特別仕様車を相次ぎ発売。4人乗りで世界最小の「iQ」6速MT搭載限定車は予約開始から1週間で完売。

9月3日。強い日差しの下、静岡県小山町富士スピードウェイで、1台のスポーツカーが強烈なエンジン音を響かせていた。12月から世界限定500台で販売が予定されている高級

 スポーツカーレクサスLFA」(価格3750万円)。報道関係者らを対象にした試乗会が行われていた。LFAの最高時速は325キロだが、この日は1周4.5キロのコースを約2分で駆け抜けた。「ハンドルを握ったときにドキドキ、ワクワクするクルマをつくりたい」自らレースにも参戦する豊田社長は常にこう言い続けてきた。

つまり、

のようにスポーツカーに活路を見出そうとしているよう。

でも、その結果は、、、、「文中の」ファクトデータを洗ってみると、、

クルマが売れない。昨年の国内新車販売台数は約460万台と、ピーク時(平成2年)の6割程度にまで縮小している。景気低迷が一因だが、一般的には若者のクルマ離れが最大の理由とされている。調査によると、大学生の「興味ある製品」でクルマは17位(20年度)と、40~50歳代が大学生だった当時の7位から大きく後退している。

要は、

  • 市場の縮小は継続している
  • 大学生の間で車に対する興味は薄れている

ということ。ただし、MTのiQは限定台数を売り尽くしたし、Wikipediaの記述を見るかぎり、LFXもきちんと台数は捌けているよう。要は、「作ったクルマはちゃんと売れたけど、市場全体の構造を変えるまでに至っていない」ってことですね。それに対するネット民wの反応は、1997年痛いニュースから、全く変わっていないというのも面白いところだ。

結局のところ、市場の縮小は人口減少トレンド下では不可避。でも、せめて若年層にクルマを運転する楽しみを知ってもらい、高付加価値のクルマを継続して買ってもらえるようにすることで、市場構造の問題を少しでも緩和したい、っていうところだと思われます。少なくとも、ここまでに取り上げた情報ソースからすると、、、、ですが。

クルマがすきな若者は本当にいなくなったのか?

まず、「若者」という括りに対してツッコミがあるというのは、甘んじて受け入れよう。というか、全面的に納得せざるを得ない。で、話を単純化するために、母集団を「大学生」という括りに絞ってみることにする。大学進学率が上昇し、それによって「大学生」という母集団の性質が変化したという点については、「なぜ大学進学率が50%を超えたのか? -大学進学人口と大学数との関連-」という小樽商科大学の学報掲載記事をご覧いただければ一目瞭然。(ああ、やっと真っ当なデータリソースを挙げることができた、、、ホッ。)

であれば、「大学生」よりも、より限定した形で母集団を設定しなければ、まともな時系列比較ができない、ということになる。でも、そんな統計はまともに存在しないだろうなぁ、、、、ということで、ここからは、私の実感という超主観的な状況証拠を絡めてで話を進めたい。私は30代半ばで、某都心から50kmくらいにある某大学を職場とする人間だ。で、自分の周りがみんな全くクルマに興味がないかというと、そんなことはない。R32スカイラインをシートを始めとしてひたすら改造しながら乗っている先輩、フランスオープンカーに乗る後輩、馬鹿でかいアメリカ製SUVで駅まで送ってくれた後輩、、、、普通にいる。しかし、キャンパスの周りが整備され、駐車場の確保が難しくなったなどの事情もあるのだろうが、昔はその存在を確認できた30万円で買った中古車で大学に通い、金はなくともバス/電車という公共交通機関の利用を忌避するタイプの層は、ほとんど見ることができない。つまり、エンスー、とまではいわないかもいれないが、クルマに対しそれなりのお金を費やししている層は昔も今も、少数ながら存在していて、がんばってクルマに乗ろうという層がいなくなったということになるだろう。

無理してクルマに乗る、というインセンティブは下がっている?

30万円の中古車というと、当時の車種で具体的に言えば、10年オチのファミリアハッチバックとか、カローラⅡとかですな。当然乗り心地は良くないし、内装はパットしないし、、、でも、なぜわざわざそんなクルマを乗り回していたかというと、一番大きな理由は「クルマが無ければ不便だった」ということではないかと思うのですよ。この15年ほどで、私鉄や地下鉄の延長、新規路線開業は相次いだし、JRも湘南新宿ラインなどの直通電車をバンバン投入した。職場近辺は、15年ほど前までは、各駅停車しか止まらない私鉄の駅までバスで15分。都心に行くには2時間じゃ利かないという状況だった。かつ周囲には自動車工場と関連施設、更には清掃工場とかしかない、街だったわけで、、、、そりゃ、がんばってバイトして、クルマ買うよなぁ。逆に言えば、今となっては、無理してバイトしなきゃ手に入らないならクルマなんて買わずに、大学が斡旋してくれるUQ Wimaxルータでも買って、電車の中で課題をこなしている方がよっぽど効率的だ。

これと同じ状況が広く各大学で生じている。また、首都圏関西圏のいたる大学で、文系を中心に、バブル期に都心から30〜50km圏に新たに取得した土地に移転させた学部を、都心部の本部キャンパスに戻すというプロジェクトが進められている。というわけで、大学生の多くがクルマに乗らなくなるのは必然、というべき状況なのだ。

Fun to Driveを実感できる層とは

"Fun to Drive"というのは80年代〜90年代(だったかな?)にトヨタが掲げていたコーポレートスローガン、というかキャッチコピー。今あらためて読んでみると、いいキャッチコピーだなぁと。クルマを運転するのはやっぱり楽しいと思う。車高の低い、重心の位置が決まっているクルマって、運転技術が下手な人間でも、走らせるとむちゃくちゃ楽しい。(助手席に乗る人はたまったものじゃないわけだけれど、、、)研究者の職場というのは、普通のホワイトカラーと比べて圧倒的に交通の不便な場所に設置されていることが多い。大学しかり、企業や行政立の研究所しかり。将来的にそういった職場で、ある程度の期間働くことになったとしても、個人的にはクルマで通勤するのはできるだけ避けたいと思う。だって、遅刻の心配しながら朝必死に高速を飛ばしたり、長時間デスクワークした疲れた体で夜道を長時間かけて走って帰宅なんてしたくないじゃあないですか。しかも、クルマに乗っている限り、酒が飲めないというオチまでついてくる。正直、Fun to Driveを実感するきっかけが、自分に巡ってくる機会なんてめったにない。

タイトな仕事に従事する層が通勤でFun to Driveを感じるというのはかなり厳しい。逆に言えば、サボってもいい授業を沢山履修していたり、帰り道にドライブデートする機会が多い学生というのは、Fun to Driveを感じるのにものすごく最適化された生活をしているのだろう。もちろん、クルマで通うことが正当化されるような大学に通っている場合に限るわけだけれど、、、、

それ以外では、「もともと自宅に乗っていて楽しいタイプのクルマがあって」「工場勤務で工場隣接の寮に住んでいるから平日は閉じ込められている。近所にろくに店もないから、週末はクルマで遠出するのが趣味。店がないということは、そもそも他にお金の使い道もないし、、、」という人くらいなのではないかと思いますよ。

クルマ文化先進国?ヨーロッパの状況

まあそれでも、ものづくりニッポンの文化として、モータリゼーションは浸透し続けるべきだし、それは可能だとおっしゃる向きもあるだろう。であれば、自動車文化先進国といわれるヨーロッパの状況を見てみたい。

ヨーロッパに行くと、日本ではあまりお目にかかれないブランドのクルマをよく見かける。SKODA、SEAT、そして90年代には多少日本にも乗っている人がいたけれど、、、的なOPEL、LANCIAなどもまだまだ現役だ。注目したいのはSKODAとSEAT。この2つのブランドはAudi同様VOLKS WAGENの一ブランドなのである。SKODAはもともとチェコ、SEATはスペインメーカー。それぞれVWによって買収され、現在は中〜低価格帯のラインナップを担っている。逆にVWの高級ラインがAudi。VWは、ヨーロッパで最も販売台数が多い自動車メーカーだ。ACEA - European Automobile Manufacturers' Associationの、Year 2011 by manufacturer and by vehicle category (Enlarged Europe) <※注1:エクセルファイルへのリンクです, 注2:1月〜8月までの数値>によると、メーカーとしてのシェアは23.2%。で、問題は23.2%の内訳だ。VWブランドは全体の12.3%。高級ラインのAudiは全体の5.0%、SEATが2.3%、SKODAが3.6%である。VWはフェートンやトゥアレグなどの高級車(というか、実質中身はAudi A8・Q7ね、、、)はあれど、代数的にはごく一部だろうから、23.2%のうち、15%くらいはBセグメント以下の中小型車と推測できる。そしてVWグループ低価格帯のクルマにスポーツカーは極少数だし、Golfにしても他の車種にしても、ホットバージョンのグレードは売上のほんの少しだろう。

一方、スポーツブランドエンスーな人御用達ブランドはというと、、、ALFA ROMEOで1.0%、PORSCHEで0.3%。ボンドカーASTON MARTINもヨーロッパでは8ヶ月間で1,664台(0.0180630955651735%)しか売れていない。(これだけ売れれば十分か、、、?)ちなみにみんな大好きフェラーリは、FIATグループの中でもその他扱いされていて、数値が出されていない。っていうか、その程度のもの。ヨーロッパ階級社会が未だに色濃く残る社会なので、先祖代々馬車に乗っているような人たちが、相変わらず週末の嗜みとしてポルシェフェラーリ、はたまたブガッティランボルギーニなどのカロッツェリアリリースする少数生産の高級車に乗っているのだろう。ということは、ですよ。日本においてエンスー車のみをひたすら取り上げていたCar GraphicやNaviのような雑誌がそこそこ売れ、地方自治体立の図書館に配架され、なおかつテレビ朝日系で番組まであったというのは、どう考えてもおかしい事態、なわけですね。

じゃあ、アメリカはどうなんだ

というと、やっぱり車の運転が「好き」っていう人はそんなにいるように思えない。バック・トゥ・ザ・フューチャーの時代から、若者の憧れはSUVだったし、トヨタアメリカの若年層を攻略するために導入したサイオンだって、ラインナップはxB(日本名Bb)、xD(日本名ist)だし。アメリカ市場といえば、、、のホンダの戦略車種だって、ELEMENTやCR-VにMDX。ようは、SUVをカリフォルニアサーフカルチャーに振るか、ニューヨークヒップホップカルチャーに振るか、はたまた高級志向に走るかしか、手はなかったわけで、、、、

経済成長期にみられる特殊現象

経済成長期というのは、来年は今年よりも所得が増える人が沢山いるという状態のことだ。経済的に余裕が出来てくると、多くの人間が考えるのは生活の質的向上を図ろうというものだ。その結果、未知の様々な趣味にお金と時間を突っ込んで見ることとなる(これ、現在の中国沿海部がちょうどそういう状態)。そういった状況下で、日本のメーカーレビントレノ、MR-2、CR-X、ユーノスロードスター、FTOなど低価格でかなり走りが楽しめるスポーツカーを量産してしまうことに成功してしまう。ミドシップのツーシーターが200万円台前半とか、V−Tecエンジンを積んだ2ドアホットハッチが100万円台、車の歴史から見たら、おかしいだろう!ということですよ。更にホンダビートダイハツカプチーノ、極めつけはマツダAutozam AZ-1軽自動車なのに、ミドシップガルウィング。とんでもなさすぎる、、、、

で、いろいろ手を出してみるものの、そこそこ収入が安定する頃には、自分の趣味や可処分所得に見合った趣味だけに落ち着いていく。ま、もともとクルマで女の子にもてようと思えば、そこそこの外車や国産車でもレクサスになるだろう。中途半端に月3万円のローンとほぼ同額の維持費をクルマに突っ込むくらいなら、3万円を衣服費に使い、残り3万円でデートに誘う店のグレードを上げた方がよっぽどモテるだろう。結局日本という市場は、相も変わらず500万円オーバーのクルマを買い続けてくれる一部の層と、下駄として使うための安くて丈夫なクルマを選ぶ層(しかも、子育て期限定でワンボックスを買う層も多いと見た、っていうか00年代前半は、2シーター乗っていた人が、パパになってSTEPWGNやセレナに乗り換えを余儀なくされるというパターンが本当に多かったのですよ)と、クルマなんてそもそもいらないっていう多くの層によって形成されることとなる。下駄クルマは利益率は低いし、韓国・中国勢がブランド力を向上させていけば、取って代わられる事態も当然ありうる(それを日本にやられた先例がアメリカだ)。国内市場で利益をあげ続けようと思うならば、高級車のシェアを取りに行くしかない。そういう意味でトヨタはLexusを止める訳にはいかないし、他社は実質国内市場はあきらめかけているんじゃない、、、としか思えない。高級車ラインを展開できなければ、日本は欧州・アジア向けモデルを導入するone of themの市場という前提で戦略を立てざるを得ない(実際、日産、ホンダマツダなんかはまさしくこの戦略をとってる。マーチが全量アジアからの輸入になるなんてね、、、、)。

なぜダイハツは第三のエコカーのCMに瑛太を起用するのか?

で、以下のURLから1本のテレビCMをご覧頂きたい。トヨタグループの一員であるダイハツの企業CMだ。

テレビCM 企業CM「日本のどこかで 新しい町」篇【ダイハツ】

このCMの読み解きは、あくまでも僕の憶測にしか過ぎないのであしからず

都会でクリエイティブ(たぶん美容師とか、ショップ店員とかかな?)な仕事をしていた瑛太が、突如田舎にIターンUターン、じゃないだろうなぁ、、、)して、ガテン系(工務店)の仕事を始める。そこで、これまで乗っていたアメ車のシボレー・カマロを第三のエコカーであるダイハツの軽(ミラ・イース)に変える。生活の変化と平行して、地元の郵便局員である吹石一恵との関係が始まり、、、、というストーリーなわけだけど、設定の1つ1つに企業戦略として重要な意味合いが込められていると思うのだ。(あくまでも推測だけど、、、)

都心にはダイハツが売り込む市場など、商用車以外に大して存在しない(それでも、乳幼児を抱えるお母さんが、電車に乗れなくなったから必要に迫られて車を買うというケースは結構ある(タントのCMを参照。それにしてもダイハツのCMは、意図がすっきりはっきりして清々しいほど。マーケ的お手本ですね。)。だから、当然第一次・第二次産業(の生産部門)が経済の中心であるエリア、もっとわかりやすく言い換えると、でっかいイオンモールが唯一のデートコースという地域が、ダイハツ(とかスズキとか)の主戦場となる。

そういったエリアは、都心とは異なる理由で市場の縮小が進んでいる。まずもって、人口減少トレンドがものすごく強いということ。都心の場合出生率は下がっても、人口流入が大きいので若年層人口の減少トレンドはかなり緩和されている(というか、江東区とか、横浜市なんかは、保育園入園の待機児童問題がぜんぜん解決されないままで、、、、)。でも、地方は加速度がついて若年人口が減っているというのがまず前提となる。

その上に自動車市場を冷やす意外な要因というのが、実はイオンモールの進出ではないのかな、と個人的には睨んでいる。こう書くと、「イオンモールこそが、駅前商店街衰退の最大の要因で、だからみんなクルマを保有せざるをえないのじゃないか」というツッコミがきそうだが、たぶん逆じゃないかな、と。地方の駅前商店街なんて、もともと若年層が楽しめる娯楽や、ファッションを提供する機能を持っていなかった。だから、暇な若者に出来る時間つぶしって、女の子を誘ってドライブくらいしかなかったわけだ。例えば、90年代にものすごく売れたホンダ・S-MX は、フルフラットシートにできるだけでなく、ご丁寧にティッシュボックスまで備え付けてある。わかりやすくニーズのど真ん中をついていたわけだ。

それが、イオンモールができることで状況は一変する。シネコンタイトーとかセガとかの大規模ゲーセンやROUND1で時間は潰せるし、服を買うのも、ワールドイトキンオンワードといったアパレル大手のちょっと低価格ラインのショップレディースならば宮崎あおいがCMしてるEarth music & ecologyとか、OZOC、Melroseとか。メンズならTK Takeo Kikuchiとか。ユニセックスチャイルドで、UNIQLOに満足しない層のために、GAPとか、無印とか、COMME CA ISMとかも入っている。ABCマートがあれば、靴も含めてそんなにダサくない、というか都心で売っているものと遜色のないものが揃ってしまう。そりゃ、裏原宿テイストは無理だけど、池袋マルイサンシャインシティくらいのレベルは買えてしまう。片道30分でイオンモールにつけるのであれば、その短い時間にお金をかけるよりも、一日中過ごすイオンモールの中でお金を使ったほうが楽しいわけだ。つまり、人口が少ないだけでなく、残っている若者にもクルマに必要以上にお金をつぎ込むインセンティブがもはや存在しないということだ。

じゃあ、粛々とシュリンクする市場規模に対応するだけの資源投下をすべきか、、、というとそうは問屋がおろさない。それができない要因、それは地方に数多く存在する独立資本の販売店フランチャイジーだ。バブル崩壊後、自動車メーカーはそれぞれ、ドラスティックに販売網ネットワークを整理した。今となっては複数の販売チャネルを運営しているのは、実質的にはトヨタだけになってしまった。ただし、トヨタ・日産・三菱といったメーカーの場合、販社は一部自らが出資している法人が大半であり、スムーズに(とはいかないまでも、どうにか)店舗網の縮小、合併を進めることができた。ところが、ダイハツスズキスバルホンダ(の旧プリモ店)は、三丁目の夕日に出てくるような個人経営の自動車整備業にフランチャイジーとして販売を委託するという形態の店舗を数多く抱える。販売店網が密だということは、アフターサービスメンテナンスの質を向上させることにつながる。アフターサービスメンテナンスはアフターマーケットという業界用語があるくらい、利益率の高い市場なので、各社力を入れているわけだが、サービス水準を高めるためには、各店舗の士気が高められていることが重要だ。

販社としては、生涯価値の高い顧客、つまり長くお金を落とし続けてくれる顧客を捕まえたいというニーズを持っている。となると、地方にやってきた若年層というのが、一番欲しい顧客のプロファイルとなる。地方にやってきて、工務店という地域密着な仕事をし、地元の(たぶん)特定郵便局の職員とつきあって結婚して、、、というのは、まさしく地方の販売店にとって喉から手が出るほど欲しい顧客像だといえるだろう。こういう層に向けて、ストレートに刺さるCM、というのは、ミラ・イースの本当の想定顧客かどうかは関係ない。(実際、イースの車種CMは、ブルース・ウィリスを起用してダジャレを言わせているわけだから、瑛太のようなプロフィール、ではないことは明白。)「企業CM」して瑛太と吹石一恵が出演するCMを放映するということは、メッセージターゲットは販売店フランチャイジーなのではないかな、と。

長かったけど、結論。車好きの数は基本的には一定比率。高度成長期バブルが異常だっただけ。

小見出しで結論は言い切っちゃいましたが、基本はこれ。自動車メーカーボードメンバーや車種開発部門は既にわかっていてやっているはず。じゃなきゃ、瑛太が乗るクルマはミラ・イースにならないし、マツダスカイアクティブテクノロジ搭載車やホンダハイブリッド車に国内独自モデルが1つもない、なんて事にもならないはず。

ところが、販売部門、とくに販社といっしょにプロモーション計画を取りまとめる部門は、国内は縮小均衡で粛々とやっていく、なんてことは口が裂けても言えないはず。なので、国内販社向けマーケティング担当者が考えるべきは、シュリンクする市場環境下で、世界共通モデルをいかに低コストローカライズして、他者のシェアを奪うのか、しかないのが現状なのだと思いますよ。正直、ね。

 
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