2021-08-26

しょうもないのに忘れられない言葉

たぶん自分以外は全く気にしていないだろうふとした言葉が、どうしても頭から離れず残っていることはないだろうか。心に残る名言とかそういったものではなく、もう少し生産性のないもので、忘れてもまったく困らないようなことなのに、なぜか忘れられずに頭にこびりついていること。

暇になったので、私の人生の各地点におけるそういった言葉をいくつかピックアップして振り返ってみる。


高校時代:「利休かよ」

私の出身高校はお寺に附属している私立高校で、地域のお寺の跡取り息子という生徒が各学年に何名かいるような、ちょっと変わった学校だった。そのため、選択科目の時間は「書道」「茶道」「修行」を入学時に選択することになる。

(この「修行」については実際のところ別の名称があるが、それを検索すると容易に学校名が特定できてしまうため伏せている)

そのシステムを全く知らずに入学した私はこの3択の中で最も普通そう…と思い「書道」を選んだのだが、入学して話を聞いてみると、圧倒的に人気なのが「茶道」ということが判明したのであった。というのも、茶道先生がとても優しく、また授業中に毎回振る舞われる季節のお茶菓子が非常に美味しいとのこと。そういうことは入試要項に書いておいてほしかったが、1年間は選択科目を変えられない。

初めての選択授業の日、同じように事前の情報入手に失敗したと思しき私たちクラス情報弱者達の顔ぶれは見事というほかなかった。何故か毎日きっかり30分遅刻して来る奴、入学2週間目にして校内でキティちゃんサンダルを履いている明らかな不良、冴えんメガネ(私)、金髪、などなど、明らかにクラスの上澄みが茶室に出ていった後の底に溜まっている淀みそのもので、狙ってもなかなか出来ないような吹き溜まり感のある人選が逆に面白かった。余談だが、書道先生名前はジュンコ先生といい、ものすごく筆順に厳しかったため、書き順子と呼んでいた。

とにかく異常につまらない書道だったが、それでも半年ほど一緒に同じ空間にいるとなんとなく仲間意識のようなものが出来始めていた。この環境に置かれなければ絶対交流を持つことはなかったであろうタイプの人と話す機会はそれなりに新鮮でもあった。金髪の子は毎回私の墨汁を借りていった。

ある日、いつものように選択授業の時間(3時間目だったと思う)になり、茶道クラスメイトたちが「今日お菓子何かな〜!」とか楽しそうにキャッキャしながら教室を出ていくと、同じくいつものように逆アベンジャーズけが教室に残された。すると、キティちゃんサンダルの不良女子教室本体よりもでかいキーホルダーがジャラッジャラについた携帯をいじりながら、私に話しかけてきた。

お茶メンうるせー。あいつら茶道楽しみすぎじゃね?利休かよ」

(注:「お茶メン」…茶道選択している人のこと。なお書道にそういうのは無い。)

ちょっとした衝撃を受けた。普段ほとんど寝ているか怖い先輩と中庭で話しているだけにしか見えなかった子が、こんな知的ツッコミを!と雷に打たれたような気分だった。私はその頃、初期のダウンタウンVHSヤフオクで買い漁るのが趣味というしゃらくせえ高校生だったので、このセンスはあまりに眩しく私を貫き、大爆笑した。その記憶と、ギラギラネイルの指先に収まるラインストーンがジャリジャリついた携帯電話の様子を鮮明に覚えている。

以来、いつも一緒にいる親友というわけではないがこの子との交流は付かず離れず続き、その後色々あった結果わりと有名なトップスタイリストになった彼女に、私は今でも髪を切ってもらっている。頻繁にこの「利休かよ」の話をするのだが、本人は全然覚えていないらしい。

 


大学時代:「じゃ あなた誰なんですか」

上京し、とある弁当店レジ打ちのバイトをしていた頃のこと。締めシフト(21時〜24時)の担当は2名、私とSさんだけで回すことがほとんどだった。Sさん自称大学生の25歳で、毎日ギターケースを背負って出勤していたがそれ以外の荷物を手に持っているのは見たことがなく、客が誰もいないとバックヤードで店内有線の安っぽいメロディに合わせてGLAYの「BELOVED」を熱唱している姿が印象的だった。有線じゃなくてギター弾けばいいのにと思っていた。

ある日、(本来ルール違反とされていたが)23時半くらいになると全然客が来ないため、私は閉店前にレジ締め作業を始めていた。すると、1人のおじさんがふらつきながら入店してきた。

おじさんは、警察官の格好をしていた。だが、何か違うような、微妙違和感があった。妙にテカテカしているのだ。おそらく、コスプレ衣装であることが分かった。そして、おじさんは猛烈に酔っ払っていた。顔は真っ赤を超えて紅蓮に近い色になっていたし、前述のようになぜ転ばないのか不思議なほどフラフラしていた。酒臭いというかは、「酒」の概念入店したのかと思うほど一瞬で店内が酒の匂いに包まれた。

おじさんは這々の体でレジカウンターにもたれかかると、蚊の鳴くような声で「た、逮捕しゅる…」とつぶやいた。いま思い返してみるとこの時点でかなり面白いが、当時はけっこう普通に恐怖を感じ、完全にヤバい事になったと思った私は、バックヤードからSさんを呼び出した。Sさん仕事こそ猛烈に不真面目だったが、やたら体格がよく強面なのでクレーム対応などでよく矢面に立たされており、こういった事態には非常に手慣れていた。状況を話すと、おじさんの対応に行く前にさっそく交番電話してくれていた。

その後もカウンターにもたれかかり「逮捕しゅる…」しかさない、警官風おじさん。ほどなくして本物の警官が2名お店に来る(ものまねグランプリで後ろから本人が登場する時のようだった)と、店内の様相を見て完全に笑いをこらえているのがはっきりと分かった。とりあえず交番に連れ帰って話を聞くとのこと。

警察です。わかりますか〜?大丈夫ですか〜?警察です〜」

警官風おじさんの右肩を持った警官が彼に聞くと、警官風おじさんは

「…あ!?

これまでのグデングデン状態から一転、いきなりビシッと立ちあがり警官2名を振りほどこうとした。

「おい!!離せ!!オレは警察じゃねえ!!」

警官を前に、誰が見てもわかることを絶叫しながら暴れる警官風おじさん。

すると、警官は極めて冷静に、

「じゃ あなた誰なんですか」

と返した。

その驚くほどの冷静さと、警官風おじさんと本物の警察官距離感の対比が面白すぎて、このバイトをやめて数年経つ今でも思い出して笑ってしまう。警官風おじさんはこの後わりと素直に連行されていった。Sさんはこの後、狂ったように笑いコケていたが、半年後に大麻で捕まりクビになった。

社会人:「あれ、歯 無ぇぞ!?

とある建設会社仕事をしていた(現在もしている)ときとあるリニューアル工事コンクリート躯体の大規模な斫り(コンクリートをいったん壊す作業)があり、おじいちゃんに近い職人さんが数人出入りしていた。夏場ということもあり、塩分補給用のラムネのようなタブレットを休憩時間に配布することが現場ルールとなっており、私も担当者として彼らにそれを配っていたのだが、ある日一人の職人さんがタブレットを受け取って口に入れると、

「あれ、 歯 無ぇぞ!?

と大声を出した。え?と思って近づくと、口の中にマジで歯がなかった。コンクリートを壊す作業振動工具を使って行うため、その振動で総入れ歯が取れ、歯がなくなったのではないか?ということらしい。周囲の全員が大爆笑していたが、本人には死活問題である。ひとしきり笑った後、解体ガラを探ってみたが歯は出てこず、歯無しのまま1日作業をしてもらうことになった。

粉塵の出る作業のため全員マスク着用で行っており、仮に歯が取れていたとすれば保護具の着用を怠っていたということにもなるため、それはそれで困る)

なお、結果的に歯は自宅で見つかったので事なきを得たのだが、振動工具を使っていて歯がポローンと出ていくイメージ想像するだけで未だに笑ってしまう。


とりとめもないことの割に随分文章量が多くなってしまった。人に伝えるには前提となる様々な条件の説明から始める必要があり、それなりに手間のかかることなんだなと思った。こういう、自分けが価値見出して大切にしている思い出の積み重ねで人間個別性を獲得していくんだなあと思った。

しょうもないのに忘れられない一言と、その思い出の話があったら教えてください。

  • 文才とはこのことか

  • 藤村くぅん 君の肉親を、俺はどぉんどん、おみまいしていくぞぉ 選べよ 名古屋か? それとも君の家か? いくぞぅ俺は パイが腐らねぇうちに どーも奥さーん 知ってるで...

    • らーめちゃんたらぎっちょんちょんでぱいのぱいのぱーい https://www.youtube.com/watch?v=rYkaNKAc5Nc

      • 久々にそのフレーズを目にして驚いた…他界した母がよく歌っていたな。懐かしい

  • 面白かったので自分でも何かないかなーって考えてみたら、あるある。 ・「それって責任転嫁だよね」 小学校のとき、友人のランドセルに白い粉(普通の薬?)が入っていたので、みんな...

  • (ドイツ語の話題の時に)「ビール ノムト デルト シッコ」

  • 好き 読んでて楽しかった

  • きっとこんな面白い書き手さんのひとがコミケ?の文書き出店者の中にたくさん居るんだろうなぁ

  • 高校時代 「アークセルがっつりと踏んでけよヘイヨゥ」 クラスでウマの合う友人だったUとの思い出で断片的に覚えている瞬間。 上記は当時流行っていたSOUL’dOUTの「Dream Drive」の一節で...

  • そんなに長文のエピソードがあるわけではないが、しょーもないのに今だに覚えてる言葉。 中学生の頃聴いてたラジオの投稿者のペンネーム「またひら なぎさ」 同じく、誰かがリ...

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