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2017-10-29

まともなディベートの姿

https://anond.hatelabo.jp/20171029085625

ひどいディベートの授業の体験増田があったので、ディベート経験のある自分解説してみる。

ディベート経験は5年くらい。大学から始めて、高校生指導ディベート甲子園運営全国大会出場などをしてきた。

論題を決める

何について討論するのかを決めなくてはいけない。

元増田にあった、「ルーズソックスに賛成か?反対か?」ではディベートしづらい。中高生では基本的政策ディベートというものを論題にする。

例えば、「日本は生徒のルーズソックスの着用を禁止すべきである

という、行うことがはっきりしており、肯定否定に分かれる事ができるテーマが望ましい。

また、現状で肯定側と否定側の意見が戦えるほど現状の価値観が偏っていない論題が望ましい。

もしルーズソックス校則禁止されてる場合は、この論題をすべきではない。

今までディベート甲子園で行われた論題はここにある

http://nade.jp/koshien/proposition

ゆるい論題だと、「ドラえもん未来に帰るべきである」「日本学校制服廃止すべきである」などがある。

肯定側と否定側に分かれる

これは大前提。1チームは2~4人。というのも、スピーチをする機会というのは試合を通して4回しかいからだ。

自分の考えとは関係なく、機械的に決めたほうがよい。また複数回行い、肯定側・否定側を両方経験することが望ましい。

ディベート甲子園では、試合当日に肯定側か否定側のどちらになるのかが決まり複数回試合をする。

準備する

ディベートをするには、立論というものを最低限準備する必要がある。これは討論の土台となるものである

肯定側は、論題を肯定する政策の中身と、それを行ったときに発生するメリット説明する。

否定側は、その政策から生じるデメリット説明する。

この立論がディベート試合の中で土台となり、試合の一番最初スピーチする。そこから討論を行っていく。

逆に立論中に述べられなかった論点は後から出してはいけない。出してしまっても審判は、その発言無効と判定する。

なので言いたいことはできるだけ立論にいれる。中学生なら4分、高校生なら6分にまとまるよう原稿を用意する。

メリット構成

メリットは、「現状分析」「発生過程」「重要性」の3つから構成される。

ルーズソックス論題で例を挙げて説明する。

現状分析では、主にルーズソックス規制されていない状況で起きている問題について説明する。

できるだけ問題が大きいことを主張する。例えば、ルーズソックスを履いていることで犯罪に巻き込まれやすい、と設定する。

この問題を具体的に説明できるよう、資料を集める。例えば、高校生犯罪巻き込まれる率、ルーズソックスを履いている高校生への印象調査、声をかけやすいと言った定性的資料など。

発生過程では、ルーズソックス規制したときに、この問題解決されることを立証する。

現状では、ルーズソックス履く→下校時にそのまま遊びに行く→声を声をかけられる→トラブルになる であるが、

プランを実行すると、規制されるとルーズを履いてくると怒られるので履かない→下校時に遊びに行くが、声をかけられる率が減る→トラブル減少

というルートを立証する。

重要性では、このメリットが発生したときに、それがどれだけインパクトがあるのかを示す。

青少年トラブル精神に悪い影響を与え、学業を疎かにさせる。それは国全体の産業競争力に大きく影響してくる。

できるだけ大きいほうが良いが、大きくするとそれだけ立証が甘くなるので注意。

デメリット構成

デメリットは、「現状分析」「発生過程」「深刻性」で構成される。

メリットほとんど同じだが、簡単説明する。

現状分析では、現状で特に問題が起きていないことを述べる。現状サイコーという訳である

週5日も校則され時間の大部分を占める学校生活でみんなルーズソックスを履いていきて、おしゃれとして、自己表現として楽しんでいる。

発生過程では、立てるデメリットが起こる過程を立証する。デメリットを「多様性の低下」としてみる。

ルーズソックス規制される→学校に履いてこれなくなる→時間の大部分を占める学校生活自己表現ができなくなる→画一的人格形成される

とか。演繹的に論理の矢印を作ったら、主張を補強する資料を集める。

ルーズソックスは私を表現するもの」と言っている資料だったり、服装の厳しい学校卒業生クリエイティブ職業に就く割合が低いみたいな資料を探す。

深刻性では、デメリットが発生した場合にどれほど深刻なのかを述べる。

画一的人格形成によって、クリエイティブ思考が苦手で国際競争力が低下するとかかな。あまりよい深刻性が思い付かないが。

試合の流れ

ここまで準備して始めて試合ができる。

各側の発言機会は4回。スピーチ担当者以外は話してはいけない。(準備時間を除く)

中学生なら以下のフォーマット試合が進行する。

肯定側立論 4分

否定側質疑 2分 (肯定側立論にわからないことを質問する。反論NG)

否定側立論 4分

肯定側質疑 2分

否定第一反駁 3分 (肯定側立論に反論する)

肯定第一反駁 3分 (否定側立論に反論する + 否定第一反駁の反論に再反論する)

否定側第二反駁 3分 (肯定第一反駁に再反論する +議論をまとめる)

肯定側第二反駁 3分 (否定側第二反駁に再反論する + 議論をまとめる)

反論について

基本的に立論で主張されたメリットデメリットを削り合う。

メリットの大きさは  発生確率×重要

デメリットの大きさは 発生確率×深刻性

判断される。なので、反論するポイントは、

①発生過程を削る

重要性(深刻性)を削る

のいづれかになる。

発生過程というのは、A→B→C→Dのようにつながっているものうち、一箇所でも切れば、例えばB→Cを完全に切ると、全く発生しなくなる。

完全に切るのは難しいので、B→Cの半分を削る、という反論の仕方になってくる。

例えば、メリット現状分析の、ルーズソックス履く→下校時にそのまま遊びに行く→声を声をかけられる→トラブルになる、だと

1. 規制なくても全員履いてるわけじゃないよね

2. 全員が下校途中に遊びに行かないよね

3. ルーズソックス履いてるからといって声かける人の割合がわからないよね

みたいな反論になってくる

重要性への反駁だと、

1. もう既に日本競争力落ち始めてるし、影響ないのでは?

みたいな反論になる

判定について

ここまでやれたとして、ジャッジができる人間がいないと教育としてのディベート価値はない。

議論をまとめて、メリットデメリット、どちらが大きいか判定して、勝敗をつける。

ジャッジは、すべてのミクロ議論について、どういう反論があったか説明し、最終的にどちらが優勢で、なぜその判定をしたのかを話す。

その結果、立論におけるメリットデメリットが何%削れたのかを定量的に示す。

先程出てきた

メリットの大きさは  発生確率×重要

デメリットの大きさは 発生確率×深刻性

を元に、紙に丸を書いて、メリットデメリットの大きさを書いて判定するやり方が取られている。

決して主観でなんとなく判断していいものではない。

ディベートジャッジは通常ディベート熟練者が行う。つまり有効ディベート経験者がいないとまともに成立しない。

ディベートを身につけるには

ディベートをやるときは、1つの論題に対して数ヶ月かけてリサーチ、立論作成試合を繰り返し、議論熟成させていく。

この過程で、反論ポイントの探し方、強固な論理的思考力、頭の回転速度、スピーチ聞き取り及びメモ方法を学んでいく。

ディベートで一人前になるには2年くらいかかると思っている。授業で1回やったとか、企業研修で1日とかでは決して身につかない。

ディベートを始めたい場合は?

中学校高校場合は、地域ディベート甲子園事務局に連絡を取ろう。

http://nade.jp/about/contact

それか近くにディベートサークルがある大学を探そう。指導に来てもらえるかも。

大学生社会人場合は、サークルに入ろう。探せば色々出てくるよ。

とにかく指導者が付いて、じっくりやらないと身につかない。

試合を見てみよう

とりあえずディベートがどのようなものか、一度見てみよう

中高生ディベート甲子園は夏の時期に毎年行われている

http://nade.jp/koshien/index

全国大会

11/11-12に全国ディベート連盟秋季全国大会がある。

http://japan-debate-association.org/contest

論題は「日本難民認定基準を大幅に緩和すべきである

想像を絶するスピード論理資料の殴り合いが見られて、初見ではほとんど理解できないだろう。

本当に理解して議論が成立しているのか、と思うだろう。

だがこういう世界があるということを知っておくのも良いだろう。

全国大会決勝のトランスクリプト(書き起こし)はこちらのページに置いてある。

http://japan-debate-association.org/contest/history

2016-03-06

2016春季JDA決勝のとある定理由(一部追記)

one of the judging board membersの判定理由。

(ちなみにこの判断プロセスマイナーではなかったことを付け加えておく)

議論の大枠おさら

→余裕があればこの記事トラックバックする形で追記しま

誰の利益に基づくべきか、論題主体は誰か、の枠組みの議論

よって、この試合においては(A)地球規模の利害と(B)日本国の利害の双方を考える必要があると考えられた。また、その上でAD/DA比較衡量した「一般的な」判定基準プロセスを進めることは妥当と考えられた。

マトリクス

上記のことを受けて、

の6つを材料として本試合ではAD/DA比較衡量は行う必要が考えられた

    AD DA1 DA2

地球

日本

 

AD

地球規模、というと若干ラベル大風呂敷だが、日本の枠組みを超えた視点で考えた場合、下記の評価となる

虚偽の申告による招致

※それが強い論題肯定材料かどうかは別問題

イスタンブールのほうがコンセプト的にも都市開発としてもよい
  • 東西架け橋」「イスラム圏で行うことの意義」というのはもう少し詳しく論じて欲しいところではあったが、このあたりは全く反駁がないため、そのまま採用
経済効果イスタンブールの方が大きい
  • これはDA2でも触れるが、特にNegに有利な材料は提出されていない

→というわけでADに関してはグローバル(…?)で見た場合には肯定側の支持要因、日本の利害に関しては特に論じられていないためニュートラル

DA1 テロ

イスタンブールリスク(地球規模)

→この段階でDA1のimpact1(人命が大事)は大きく取れない

→impact2はある程度残る。(だが、これこそ誰のメリット不明。観客? IOC運営陣?)

→というわけで地球規模で見た場合、人命リスクに関してはnot unique、ただ、観客の安全を考えたらイスタンブールは観客やIOC経営陣にとっては忌避材料かもね。という、否定側の支持要因になる

東京リスク(日本)

DA2 観光立国がうまくいかなくなる

日本の利害

→このことから、「社会不安定化や少子化をもたらす経済問題を解決することは国家の責務」と否定側は語っていたが、そもそも現状でそれが達成できるかどうかも不明であれば、五輪の開催有無が与える影響も高くは見積もれない

→よって、もちろん五輪効果はないわけではないが(肯定側もないとは言っていない)、伸びしろ問題で、否定側が言うほどには効果は出せないであろうという判断

イスタンブールの利害(地球規模)

DA2は地球規模で見た場合には肯定側に対して強い支持材料

マトリクス評価

地球規模 AD:◎ DA1:×~△…人命的にはnot unique~観客やIOC的には少しある  DA2:○…途上国なので効果大きい

日本目線 AD:-  DA1:×~△…返上したほうが東京リスクが下がる。ただ、もともと日本結構安全  DA2:×~△…伸びしろが少ないので効果乏しい

という判断になる

結論

否定側は冒頭から地球市民どうこうの前に地球視点でもイスタンブールよりも東京でやった方がメリットが大きければ否定が勝つ」と語っていたが、DA1は人命リスクという点ではどちらにもvoteできない。観客や運営側(IOC)という視点にたてば少し否定に有利という程度だが、この立場をどの程度尊重すべきなのかは議論が全く無いまま試合が終わっていてvoting issueにしづらい。

DA2に関してはこの試合の中ではイスタンブールの方が強く有利。日本に若干の不利益はあるかもしれないが、それがイスタンブールに起きる利益よりも大きいという反証は一切ない。

結局、日本という視点世界的という視点で見た場合にはDA1/DA2だけで見てもNegに投票することはできない。(日本だけで見ればDA2の若干の不利益投票理由にはなり得るが)

また、ADもそのまま残っている。よってAffにvote。

所感

試合への純粋感想
ジャッジング・フィロソフィー
 
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