10年目内科医。ここを見ていると「医者を増やせば解決する、日本医師会が巨悪」「女性医師は医療崩壊の原因」云々…との意見が多いように思う。
恐らく東京医大の事件に関しても、「男女平等の時代に逆行するなんて前時代的大学なのだ」といった感想を持つのが一般的なのだろう。
しかし、この出来事は実は医療崩壊の最終段階の端緒となる出来事のようにも思われる。
他でも議論されているが、まず医師を増やすことに原則的に反対の医師は多くないように思われる。増やせるものならどんどん増やしてほしいと思っている。
しかし我が国の医師の数が増えないのは、医師会が反対しているから、医師らが声をあげないから、等々ではないように思う。
欧米と決定的に違うのは、我が国では国民皆保険制度があり、誰でもどこでも医療を受ける権利がある。ということである。
極端な話、日本最高峰の大学病院に突然風邪でかかっても、数千円のはした金を余計にはらえば見てもらうことができるのである。
保険証の力は絶大で、診療の求めを受けた医療機関は「応召義務」のため診察を原則拒否できない。
しかし国民皆保険のこの素晴らしいシステムには致命的な制約がある。
それは、国が決めた一律の料金で患者を診察する、ということである。ここに「よりよいものを提供し、より大きな対価を得る」という資本主義的価値観はない。
訓練された一流の外科医が胃がんの手術をしようが、3年目のペーペーが手術しようが、病院が手にするのは「所定の胃がんの手術料金」である。
外来で例えよう。A医師は患者の話を遮り、高圧的で、診察は3分。B医師は患者の話に共感的で、優しく、10分間丁寧に診察を行う。
しかし病院からしたら、A医師は一時間に20人分の売り上げを獲得するのに対してB医師は6人分の売り上げしか獲得できない。病院から見てより稼いでくるA医師の評価の方が高くなる。
要するに薄利多売のビジネスモデルを「お上」に強制されていて、回転率が命なのだ。即ち某ラーメン屋風に言えば、ロット乱しはギルティであり、長話する客と、それを許容する店員は退店やむなしなのだ。
以上のように、国民皆保険のシステムと病院の関係を考えると、「高圧的で話を聞かず、3分診療の医師」の需要はとても高いのだ。
B医師は人間的には素晴らしいかもしれないが、殆どの病院が赤字すれすれでやっている現状をかんがえると、「いらない子」なのである。
でもそんなA医師みたいなやつばかりな病院はどうせ患者がこなくなるかというとそうではない。
一つは、医師不足で患者余りであること、もう一つはA医師のような人物は大体特殊な技術や多分野における専門医資格保持者であったりするからだ。そのような、希少価値のある医者は一時間に20人ほどの予約がはいる。そりゃみんな、「優しいけど非専門」より「ぶっきらぼうだけどド専門」の先生に見てほしいからね。こうしてA医師はさらに人の話を聞かず、高圧的になっていくのでした。
以上のように、医療の価格は「お上」に決められているのだ。うちはすごい手術するから+10万円ね!なんてできない。当然、すごい手術をする医師に特別手当てが出る病院なんてのもない。そもそも病院は儲かってないのだから。
そうすると、医師からしたら、腕を磨く必要って何?ということになる。
普通の会社であれば、大きなプロジェクトを遂行し、地位が上がって、給与もあがり、達成感を得るのだろうが。
それがない医師はどうしたらいい?残されたのは「やりがい」のみである。患者さんに「ありがとう」と言ってもらった。助からない人を助けた。そういうことに価値を見いだすしかないのだ。
医師は医科大学に入学し、その段階から世間とは切り離された環境で培養される。総合大学においても医学部とその付属病院は、他学部とは明らかに一線を画している。「頑張って素晴らしいパフォーマンスをあげれば収入が増える」といった極めて基本的な資本主義的価値観を体験することなく研修医となり、医師となっていく。
そういった育成環境によりいわば世間知らずのまま育った医師は次第に先鋭化していく。「医師は人命に関わる特別な職業であり、滅私奉公を基本とし、過労死も厭わない。金を求めるものは、医は仁術の精神を忘れた愚か者だ」と言う奴すらいる(自分は引いてしまうが、どこの医大にでも少なからずいるものと思う。)
いわばエリート意識の塊となり、医療現場に放り込まれるのである。
一人前の医者になってもその「呪いとも言うべきエリート意識」から解放されることはない。技術を高めても、接遇を改善しても、給与に反映されることはないからだ。
しかしこの「エリート意識の塊」こそ、現代医療の根幹を支えている人たちなのだ。
医者には三種類いる。勤務医、開業医、フリーターだ。一番儲かる(時給換算で)のは開業医、次にフリーター、最後に勤務医である。しかし、勤務医は段違いに忙しく、高度な技術を要求され、責任も非常に大きい。しかもこの三種類の形態はお互い自由に行きできるのだ。
それでも勤務医が存在し続けるのは、「エリート意識の塊という呪い」のおかげであり、先鋭化した医師がいるからである。36時間連続フルパワーで働き、土日も働き、下の教育と、病院経営陣との間に挟まれ、寿命を削る(実際に勤務医の寿命は一般人口より短い)。こんなことができるのは言わば「エリート意識の塊=狂信者」だけである。
この「狂信者=勤務医」の呪いがとけて、居なくなるときが日本の医療崩壊が真に実現するときではないだろうか。
医者を増やす事のリスクとしては、①医師数の増加による、医師の社会的ステータスの低下②収入の低下があげられると思う。
①に関して、先に述べたように「狂信者」のエネルギー源は強烈なエリート意識である。数を増やすと言うことは、医師の質は下がるのは必死である(弁護士の例をかんがみても)。今まで医師になれなかった人を、医師にするのであるから。こうした変化は、家族も省みず、収入にも執着せず、すべてをなげうって医療に身を捧げる者の士気を「医師の希少価値の低下」を通じて下げてしまうかもしれない。
②に関しては、医療費はその半分が人件費であり、医師の数を増やすと言うことは、医師一人辺りの給与は下げなくてはならない。これも「医師間で相対的に少ないとはいえ、一般社会人より多い給与を減らすこと」で「狂信者」の、モチベーションを下げ、呪いを解き、開業やフリーター医師への逃散を誘発するには十分な理由になるだろう。
つまり、今の医療崩壊は医師を単純に増やすだけでは解決しない。また増やすことは万事を解決するわけでもなく新たな問題を起こす可能性もある。
これが我が国で医師を増加させることが、医療崩壊の解決にならないであろう理由である。
歪な国民皆保険制度のもと、なんとか医療業界が試行錯誤でたどり着いた妥協案が現在の医療体制なのだ。東京医大の問題もその歪みの一部でしかなく、この問題を小手先のテクニックで解決したように見せたところで、根本の病理はなにも変わらないのだろう。
全体的に同意なんですが、 医療費はその半分が人件費であり、医師の数を増やすと言うことは、医師一人辺りの給与は下げなくてはならない 予算を増やす=より多くの金を払うと...
だって医療費上げるなんて言ったら国民は猛反発して それを通した政党の支持率下がるじゃん。
デフレ脳だよなぁ リスカみたい
医者のプライドってなんだかんだ言って選ばれた学力の高さではなく、 給与の高さや食いっぱぐれのない安心感に裏打ちされてると思う。 一般的な大学教員や看護師並の給与で矜恃持っ...
高圧的な医師=大抵技能が高いの所で読むのをやめた
かかりつけ医とかいうイギリスで大失敗してるクソ制度導入するから改善されるでしょ
資本主義を都合よく病院の中にだけ適用しろと言っているけど国立大学は税金で運営されているよね よくわからない研究も国費だから可能なんだよね そもそも日本の医療費が高いのは高...
医療政策学も医療経済学も専門的に学んだことのなさそうな素人による「思いつきの駄文」であり、読むだけ時間の無駄でした。優秀な医師と劣った医師がいるとしたら元増田は後者で...
高慢な医者なんて、その時点で問診能力が低いことが確定だものなあ
いやいやいや… 実際に医師会が増員反対しているのになぜスルーするのか 結局そこが医者に都合が悪い点なわけだな
医者はバイト3年で3800万稼げるってことを隠してなにいってんだ? https://www.asahi.com/articles/ASL824GR9L82PUTB003.html
じゃあ医者になって3800万持って死ねばいいじゃん。お前は多浪だからエリートの一員に入れたくないって面接で落とされると思うけど。
冒頭で設定を語るいつもの人
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医学部定員は平成18年から増加し、それまでより現在は年間約1800人増加している(約7600人→約9400人)。 当然、医学生の学力が低下しているのでは、という指摘もあるが、それは話がそれ...
A:イメージ通り ▼ 子供に不寛容だった俺が寛容になった話 787 users anond:20180814021922▼ ファミレスでの「子どもの泣き声は騒音」の件、怒り、憤り。 784 users anond:20180813120212▼ 外で騒ぎ続...
全体的に意味がわからん
anond:20180819234919 の 解説必してみる?(´・ω・`) イメージ通り ・ 年収的にファミレスに行きそう ・ 家族構成的(単身/子なし世帯)にファミレス行かないのにそれっぽい事を言いそう あ...
背景を推測じゃなくて妄想してるだけの上にこう思われたくて行動してるに違いないんだぁ!と喚いててワロタマズローとか信じてそう