2019-07-18

こういう時だからこそ言っておく

最初に、京都アニメーション関係者の皆様にお見舞いを申し上げる。皆様のどなたにも、こんな目に遭ってよい理由はなかった。亡くなられた方々には哀悼の意を表する。癒しがたい傷を負われた方々や深く傷つかれた方々に、心からお見舞いを言いたい。今現在、痛く、辛い思いをしていらっしゃることだろう。あなたは一人ではない。多くの人があなたを気遣っていることが、少しでもあなたの支えになることを願う。そして今生死の境をさまよっていらっしゃる方々に、匿名ながら応援気持ちをお伝えしたい。どうか生き延びてほしい。

だが、こういう時だからこそ、以下の点は言っておかねばならないだろう。

今回の犯人――状況からみて病院搬送され警察事情聴取を受けている男が放火犯本人であるという前提の下で話を進めるが、他の多くの事件においてこのような前提を置くことは危険であることをご承知おき願いたい――が憎むべき罪を犯したこと、その罪は厳正に裁かれるべきこと、この点にはなんら疑いはない。個人的には、どこかで火災に遭って焼け死ねばいいのにとは思う。しかし、それはそれとして、彼を死刑にすべきではない

死刑撤廃するべきだ。たとえそれがどのような憎むべき極悪非道人物であっても、死刑に処されるべきではない。理由第一は、冤罪危険性だ。今回はたまたまかなり高い確率真犯人であろう人物が捕まったが、一家四人が惨殺され放火された別の事件では、おそらく真犯人ではないであろう人物死刑判決を受け、現在再審請求である。人が人を裁く以上間違いはどこにでも存在する。間違った人が首を吊られるなどということはあってよいはずがなく、誤判ゼロにすることが不可能である以上、冤罪処刑することを防ぐためには死刑撤廃しなければならない。

理由の第二は、それが真相の究明に繋がらない場合も往々にしてあるからだ。中には改悛して洗いざらい吐いて刑場に向かう死刑囚もいようが、どうせ死刑なのだからとすべてを投げ出して語るべきことを語らず処刑される者もいる。仮釈放のない終身刑にでもしておけば、数十年後に重い口を開くことがあるかもしれない。被害者がどうして殺されたのか、本当の理由を知ろうと思うのなら死刑にせず生かしておいた方がよい。

理由の第三。死刑過激犯罪者を焚きつける可能性がある。オウム真理教幹部集団処刑したのには開いた口が塞がらなかった。そんなに「国家権力処刑された尊師幹部たち」という物語演出して、オウムの残党に彼らを神格化してほしかったのだろうか。死刑になりたかたか子供大勢殺したのだと言い放った死刑囚がいた。彼らのような人物は、刑務所死ぬまで惨めに生かしておくべきだっただろう。世の中を恨み、せめて大きな衝撃を与えてから死んでやろうと目論む者――ひょっとしたら、今回の放火犯もそういう動機を持っていたのかもしれない――に、死刑制度は大きな誘因を与えてしまう。彼らを英雄殉教者にすべきではない。

理由の第四。欧州連合スイスノルウェーといった主要な先進国死刑撤廃し、日本に強く死刑廃止を求めている。彼らは死刑をその国の人権感覚の証と信じており、そして彼らの主張に同調する国は増えている。これが鯨食のようなそれぞれの国の伝統文化の話ならば妥協する理由はどこにもないが、別に絞首刑日本の伝統というわけでもなし、欧州諸国、ひいては国際社会から人権侵害と糾弾されるリスクを抱えてまで維持すべきものでもなかろう。我々は中国北朝鮮サウジアラビアではなく、ドイツフランススウェーデンと同じ側に立つべきだ。

そして、彼の行為社会を統制するための口実にしてはならない。彼のやったようなことは事実上防ぎようがなかった。多少の安全対策死ぬ人数は減らせたかもしれない。だが、セキュリティをどれだけ強化したところで、悪意をもった攻撃100%防ぐことは不可能である

犯罪防止の名の下で行われる様々な施策は、往々にして我々の自由プライバシー対立する。もちろんそのような行為をすべて否定するわけではない。軍用銃器を保持する自由制限されても仕方があるまい。だが、衆目を引く犯罪が起きる度にそれに応じた対策を採っていたら、我々の社会は生きるには窮屈になるはずだ。

新幹線の車内で凶悪事件が置きたことがあった。だからといって新幹線に乗る度にいちいち持ち物検査を受ける必要があるとなったら、ずいぶん窮屈で面倒だろう。包丁を使った通り魔事件が置きたとして、包丁の購入にいちいち面倒な手続き必要になったとしたら、料理をする人は困るだろう。我々は秋葉原執拗に職質をかけられ荷物を開示させられる屈辱ならよく知っているはずである。そのような社会に我々は生きたくない。

犯罪を犯す「法的な」「道徳的な」自由はどこにもない。そのようなものは認められるべきではない。だが「物理的な」自由、つまりやろうと思えば犯罪を犯せる環境制限しようとすることには、慎重になるべきだ。

犯罪者は「事後に」厳しく罰せられるべきだ。強く非難され、その行為の報いを受けるべきだ。だが、「事前に」規制しようとするなら、それは無関係の者の自由をどこかで奪ってしまう。

包丁を屋外で振り回し無辜市民を傷つける行為を「システム的に」抑止しようと思ったら、新居で料理道具を揃えようとするのに、あるいはふと思い立って台所に立つのにさぞや苦労するだろう。ガソリン簡単に購入し持ち運べるのはおかしい、という主張もあったが、なぜ一人の悪人のために農機具を使用する人たちの利便性が損なわれなければならないのだろうか? そのような統制が行き着く先は中国のような監視社会だ。なんの統制もなくてよいとは言わないが――なんといっても私は日本の厳しい銃規制や航空業界の厳密な安全規則から恩恵を受けているので――我々平凡な庶民自由プライバシーが徐々に奪われていくことには警戒したほうがよい。

今回の事件犯人は、相応の報いを受けるべきだ。だが彼は死刑に処されるべきではないし、彼の行為を元にして自由社会に統制が加えられるべきでもない。

私たちオタク自由に、幸福に生きていけるのは、自由プライバシー尊重された社会においてだけだ。中国オタクが種々の不自由に耐えている姿を羨ましいとは思えない。我々の社会監視社会にしてはならない。究極的には、自由安全優越するのだから

追記

ということで、これが死刑廃止からの回答です> anond:20190719044907

追記

1番は今回当てはまらないし2番は真相究明が済めばやっていいってことになるし3番はこの犯人信者なんていないので実質的に4番の海外から同調圧力だけってことか。まあええんちゃう

1番は「どう考えても無実だったり10%しか疑わしくなかったり50%しか真犯人じゃなさそうな人が吊るされないためには99.99999%真犯人なやつも吊るすべきじゃない」って話やで。

感謝。きっと普段から「きちんと考えている人」なんだろう。やはり、たとえ誰であっても人の手で人の命を奪うのはよくない。

個人的にはそこまで原理的な死刑反対論者ではなく、100%真犯人である人だけが処刑されるなら死刑制度存置を支持する。でも全知全能の神じゃなくて人間裁判する以上どこまで行っても100%はありえず99.99999%にしかならないので(今回の被疑者だってそうだよ!)、その0.00001%が残っているうちは殺すべきではない。そして全知全能の神の存在実証されない以上死刑廃止すべき。

記事への反応 -
  • anond:20190718202216

    うるさいぞ左翼

  • anond:20190718202216

    真相の究明は大事だと思うなあ よく死刑賛成過激派はさっさと殺そうぜ!みたいなこと言うけど、死刑にしたって何にもならないんだから、全部吐くまで禁錮でいいんじゃなかろうか 個...

  • anond:20190718202216

    こういう死刑反対派の家族・友人を拷問強姦殺人して回った狂人とか出てきても反対を貫かれるのかなやっぱ

  • anond:20190718202216

    納税者としては終身刑にかかる費用をどうするか、という問題がある。 塀の中で自給自足でもする、何らかの手段で金銭を得て、それで自活するなら良いが。 あと被告人が死刑を回避...

  • anond:20190718202216

    あなたに全面的に賛成します。 もっと言えば死刑のみならず無期懲役、終身刑、いや10年以上の懲役でも残酷すぎるので、10年以内での懲役が然るべきと考えます。

  • anond:20190718202216

    くだらん

  • そんなに死刑廃止したいなら、まず被害者家族の救済を訴えろよ

    本気で死刑廃止を訴えるなら、まずやるべきことは被害者家族の救済のための法律と制度の重要性を訴えること。これが最優先。 被害者家族へのメディアスクラムの禁止 被害者家族へ...

  • anond:20190718202216

    1番は「どう考えても無実だったり10%しか疑わしくなかったり50%しか真犯人じゃなさそうな人が吊るされないためには99.99999%真犯人なやつも吊るすべきじゃない」って話やで。 そう考え...

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