いまや日本の若者の大半がネットに接続してSNSのアカウントを持っている時代。つまり、SNSをしている若者が必ずあなたの近くにはあるわけだ。だから犯罪のツールにネットがあるというのは、その意味では当然だ。
もちろんそれが非行と直接関係しているわけではない。全国に張り巡らされたインターネット網とIT、それに伴う社会の膨大化によって、今までの日本の地域社会の流動化と不安定化が進み、非行を誘発しているのだ。かつ若者の高知能・所得のばらつき・欧米化により、市民が日常的に目の届かない地域で非行が拡大し、それにより初動が遅れる。
おそらく、暴走族の活動範囲も、昔であれば地方の幹線道路沿いに限られていたのが、都会のインナーシティや住宅街などにまで分散しているはずである。田舎だけを見回ればすむ時代ではなくなった。しかも暴走族そのもののゲリラ化が進んでいるために警察の対処がますます困難になる。こうした理由から、近年都市部を中心に暴走族が異常発生しているのであろう。
さらに、IT技術の高度化により、物的証拠などによる捜査が困難になっているという。特殊詐欺なんて昔から多いじゃないかと思うかも知れないが、インターネットを用いた詐欺事件の続発という状況は、この5年ほどに起きた現象だ。2017年に社会問題になったランサムウィルスも、手口が巧妙で何の手がかりにもならない。日本中の人間が、アメリカやヨーロッパなどと同じ環境に生きるようになったので、事件の手口がつかみにくくなったのである。
かつ、日本社会のテクノロジー化は、日本国内のコミュニケーションとコミュニティを消滅させた、あるいは衰弱させた。振込みでも銀行のATMを使わなくなるようになり、スマホやワンタイムパスワードの機械が重要になった。書店の仕事量は減り、定額で本読み放題という価値観が広がった。そうなると、メディアのビジネスも益々やりにくくなる。まして読書やメディアチェックすらパソコンやスマホで済ませる人がほとんどすべてになれば、新聞やテレビの収益も減る。休日の移動で満員電車を使わなくなれば、鉄道会社の収益が減る。都会の税収が減って益々不景気になるのだ。
YouTubeで立て続けに犯罪が多発したというのは、どういうことなのか?犯人の顔を知っている人が隣近所にもいなかったのか?まったく不思議だ。コミュニティが衰弱しているのは地方だけの問題ではなく日本全体の問題であると考えなければ理解できないであろう。
こうした日本全土の極端なファスト社会化の大きなメルクマールがアマゾンだ。ネット化が進めばアマゾンが台頭するし、アマゾンが便利になればますます個人化が進む。テクノロジー化による個人化が進んで、コミュニティが崩壊し、流動化した地域社会は犯罪を抑制する機能が低下している。あらぬところから道路や鉄道に乗って、どんな犯罪者が来るかも知れない。犯罪者も腹が減るから、たまには仮想通貨支払いで食事をするであろう。しかし周りに知る人はいない。そして駐車場で、たくさんあるアカウント情報のなかから気に入ったアカウントを盗めばよい。
最近のネットやテレビのニュースを見るとゲリラ化したヤンキーによる事件が毎日のように発生している。後から出てきたニュースもどれの関連ニュースなのかわからない。業務妨害事件といってもどの事件なのか、毎日のように起きているから分からない。しかもほとんどの事件が貧困層やマイルドヤンキーがうようよいるような地方ではなく、景気のいい大都市部で起きている。
ゲリラ暴走族が発生した道路を見ても、都心かと思えるような立派な地区も多い。だから地域的には申し分ない所なのに何故醜悪な事件が多発するのだろう。特に暴走族事案が目立つのは何故だろう。子供が荒廃しているとか家庭が荒廃しているとかは前から言われていたことだが、それ以外にも国民のコミュニティーが崩壊していることも原因の一つだろう。
もちろんネット社会が悪いわけではない。経済の合理化や近代化は時代の流れで避けて通る事が出来ない。ネットが便利なところは活性化するしネットそのものが雇用も創出する。外出せずに食品から生活用品まで全て買い揃える事が出来る。自宅から車で買いものに出かけて大量に物を買って車に積んで帰ってくるような生活が車無しでできる。まったくアメリカの田舎のような生活が日本社会に定着した。
私の若いころには便利なネット環境や高度なネット文化はない。用事のときは必ず外出していた。ところが現在ではネットが一人一台の時代が来て、買いものはネットショップで買いものするのが普通になっている。貧乏人がクレジットカードを持っていないのは過去の話だ。クレジットカードの審査はより甘くなり、手数料の無料かも進んでいる。
その結果、東京の都心で小銭やお札をお店で目にする機会は少なくなった。持っているのは地方からの観光客か未成年者ぐらいだ。だから日本でも現金を持ち歩く事がなく生活できる。もちろん地方都市は今でも現金が手放せないが、大都市部のチェーン店や富裕層が訪れる地域ではカードの普及が進んでいる。
このようにテクノロジー化した社会ではたとえば事件が起きても犯人の捜査もままならず、犯人もあらゆる手口を使って広範囲に移動するから警察も適応できない。今までは免許を持たずに生活していた階層が免許を取るようになった。オートバイを乗り回す高校生は現実になり、それに対する不満も生まれない。近所づきあいも薄くなったから事件の芽があっても近所も気がつかない。
このような環境が学生たちにも悪い影響を与えて、学生の非行の増加にもつながっているのだろう。戦後のアメリカで起きた青少年犯罪の多発が日本でも起きているのだ。一見歴史ある町並みの地域で青少年犯罪が発生するのはなぜか。そのような環境では家庭も個人も孤立してしまうからだろう。
小説や漫画やテレビドラマのような社会が現実に出現している。SNSを用いたゲリラ暴走族もアメリカ型少年犯罪の象徴だ。日本もテクノロジー社会がやってきたからそのようなライフスタイルが実現した。つまり日本も欧米のような犯罪多発社会になってもしかたがないのだろうか。チーマーやマフィアや極○も衰退し大人が子供を狙う犯罪も激減した。多くの人が未知の人間と寄せ合って生活している。日本にあったコミュニティーは崩壊した。
日本では欧米のような社会が理想であると教え込まれてきた。だからこそ誰もがネットに接続しそれで買いものや昔ではATMでしていたことをする。しかしその理想が実現したとたん青少年の非行化と犯罪が昔のように多発するようになった。凶悪な詐欺事件も増えた。日本はこれでいいのだろうか。コミュニティーを再建するにも社会そのものの流動化で無理だろう。