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2017-05-30

「プリライ」の訴訟、やるだけ無駄だよって前例 【追記、補足あり】

うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE LIVE 6th STAGEという

西武プリンスドームで行われたライブ

運営不手際があり、開演が遅れた上一部の「プリンセス」達が

座席にたどり着けないままライブが開演してしまい…

それに対する訴訟を起こそうという話を耳にした。

よく似た大規模イベント運営に対する参加者から

訴訟で、07年F1日本グランプリ訴訟F1訴訟)ってのがあって。

その訴訟の結果からわかることを一言で表すなら「やるだけ無駄

F1訴訟について詳しく解説しよう。

2007年9月富士スピードウェイというレース場で

3日間に渡ってF1レースが開催された。

この会場、西武ドームなど目じゃないほどド田舎(というかほぼ山中)にあり、

自家用車以外のアクセスは皆無。

そこに14万人の観客を運ぶため、運営パーク&ライド(P&R)システムという方式

導入した。観光地等で導入されている方式で、会場から離れた場所

駐車場を設け、そこから会場まではバスでまとめて運ぶ…というヤツ。

ところが、運営の見通しが完全に甘く、多くの観客が訪れる2日目に

P&Rシステム破綻して数万人が肌寒い雨中で2~4時間バスを待つ羽目になり

その他レースに間に合わなかったり、混乱を避けるため

3日目の観戦を諦めたりした…という大失態があり

それに対して参加者130名ほどが慰謝料等を請求した訴訟だった。

結局、この訴訟は、約半数の訴訟参加者和解金を受取って途中で訴訟離脱

53名の訴訟参加者には数万円の慰謝料

訴訟費用運営側が支払うことを認める判決が出ている


以下、ソースを載せるが

判決全文は一般向けデータベースでは見られないので

詳しい方は調べてみてほしい

(東京地裁 平成25年 1月24日判決

事件番号 平成20年(ワ)第16322号

控訴審

東京高裁 平成25年11月28日 判決

事件番号 平成25年(ネ)第1162号)

参考記事http://archive.as-web.jp/news/info.php?c_id=1&no=46084

http://news.livedoor.com/article/detail/7383079/

後者は若干中立性に欠けるが、他にあまりソースが無いので。


「プリライ」と「F1」の共通点を挙げると

①「P&Rシステム」「リストバンド方式」という、前例の少ない方式

 観客、運営双方が初めて行った

運営不手際により多くの観客が長時間の待機を余儀なくされ、

 開演に間に合わなかった観客もいた

③②によって観客はイベントを楽しむ権利を害された

よく似ている。楽しみにしていたイベント

運営不手際によって酷いものにされてしまった心境は、F1訴訟原告団

同じものだろうし

今まで多くイベントへ参加し、物販列に5時間ほど並んだ経験なども

ある自分もよくわかる。

しかし、「訴訟」という判断は正しくない。

まず、時間と手間がかかりすぎること。

F1訴訟は07年9月の開催で、

訴訟提起が08年1月

最終的な判決は13年の11月。6年掛かってる。

参加者から聞き取り資料作成し、弁護士相談し、法廷に出向いて

さら資料を集め、作成し…の繰り返し。普段生活と両立できるか?

次に、得られるモノの少なさ

F1訴訟で得られたのは、一人あたり多くて慰謝料3万円以下。

時間の待機に倒れる参加者や、女性トイレにも行けずに野外で…

といった、あまりに酷い事例ですらたったこれっぽっち。

「大規模イベでは、一定の混乱は想定されるものだ」として、

一円慰謝料も得られなかった訴訟参加者さえいる。

しかも、

企業相手に勝てたということ自体

稀有な例なのだ。その例ですら…ということ。

現状、何を訴訟の基礎として

請求するかすら決まっておらず、

だがチケットの全額補償を求めるつもりはないという…

ただ「悲しかった、悔しい」では具体的な損害を主張し、

立証できないか

訴訟のもの継続できない。

仮に訴訟が始まったとして

宿泊交通費など、イベント外の出費についてはまず認められず

認められるのは、チケ代の一部か慰謝料くらいで前例と同じなら数千円。

とても労力に見合う金額ではない

と、いうのは発起人の方も承知の上のようだし

訴訟手続きについてもある程度知識はおありのようで。

金銭が欲しいんじゃない!責任所在謝罪が欲しい」とのこと

それを求めるならカネと時間の掛かる訴訟なんて起こすだけ無駄である


5月30日16時追記】

ムービックプロモートサービス訴訟垢 @prilive20170527 によれば

『事前準備不足を含めた不手際により

①開演が押した事

②1万人近くの観客が 入場出来ないまま公演が開始した事

MCカット等完全な公演を提供されなかった事 以上に対しての訴訟を行います。』

このような点に対して訴訟を起こすとされている

①に関しては、一般的ドームライブで、一定の遅延が常態化されている、

という反論をされてまず通らない。

②に関しては、入場そのものは遅れても可能だったのだから

間に合わなかったことに対して慰謝料についての追求になるだろうが、

入場が可能だった観客もいることもあって、それが認められるとはとても思えない。

③に関しては、事前に内容が知らされていない、変更される可能性がある

ライブで、MCカットが損害かと言われれば疑問が残る。


また、人員配置不作為についての追求も検討されているようだが

F1訴訟や、野外フェス近隣で雷に打たれ、参加者が死亡した事例や

野球場ボールが観客の目に直撃し、失明した事例など

判決を見る限り、参加者に非がないことと

運営側の相当の落ち度を立証できない

限り認められない傾向にある。

【以上追記】

今まで例にしてきた07年のF1GP、実は自分参加者の一人で。

運良く2日目の混乱には巻き込まれなかったが

混乱のニュースをみて3日目(メインイベントはこの日)の参加を諦め、帰宅した苦い思い出が。

正直怒った。3日目も参加したかったし。

でもF1が好きだから、翌年も同じ場所で行われたF1日本GPに参加してみて驚いた。

昨年の混乱がウソのように、待ち時間殆どバスが数分となり

スムーズに、何の問題もなくレースを楽しめ、良い思い出になった。



なぜか?運営が血のにじむような努力で「カイゼン」をしたからに違いない。

なぜ「カイゼン」したか? 訴訟されたから、ではない。

(08年1月訴訟を起こされ、実際の裁判もっとからから訴訟関係なく、07年開催が終わってすぐ動いたのは間違いないだろう。

11万人をバスだけで運ぶ計画

1から作り直すのはどれだけ大変か、考えて欲しい。)

運営としてのメンツもあるかもしれないが、

なにより参加するファンに楽しんでもらい、次も訪れてほしいから。

(結局、ライバル会場の改装完了が主な理由として、富士スピードウェイでのF1開催は無くなったわけだが…)


そして「カイゼン」するためには、何が良くなかったか、辛かったか

運営側へ知ってもらう必要がある。

それには訴訟でなく、メールアンケート

自分の思いの丈を伝えるだけで事足りるのだ

抗議の声をより大きくしたいなら、署名を募るという手段もある。

大きなイベントを行う運営なのだから、間違いなく

次回カイゼンを行ってくれるだろう。

これだけの事件を起こして(しかも他にも前科があるようだ)カイゼンできない運営なら、

いつか命にかかわるような失敗をするだろうから、参加しないというのも

抗議の方法としてはアリなのかもしれない

責任所在謝罪が欲しい」そんな要求より

「こんな点が悪かったから、次楽しめるよう改善しろ」と求めればいい。

そのやり方のほうが、ずっと楽しくファンを続けられると考えないのだろうか?

過ぎた時間は戻らないし、その過去のためにこの先貴重な時間無駄

嫌な思い出を増やす行動をわざわざ起こすとはいかがなモノだろうか。

民事訴訟は、不利益に耐えられない人々が取る

最終手段。その手段幸せに繋がるとは限らない。

しろ日本ではより不幸になる確率の方がずっと高い。

それでもなお、訴訟を行うとすれば結構だが

訴訟という行為が、演者や楽しむファンを傷付ける行為にならないかだけでなく

他の運営をも萎縮させ、「ライブイベント」そのもの

危うくする行動にならないか?よく考えてほしい。

5月30日16時追記】

ツイッターで多くの反響を目にし、驚いている。

プリンセス」の皆さんの意見は、できるだけ読むようにしている。

それを踏まえて、自分が一番伝えたいことを追記する。

訴訟に反対を前提として記事を書いた理由としては

法を大学で学んでいる者として、「訴訟当事者を不幸にするものである

と知ってほしいかである

残念ながら、現状、日本で対企業訴訟は生半可な気持ちで起こせるものでないし

逆に名誉毀損等で逆訴訟を起こされる可能性もある。

勝てたとしてもF1訴訟のように長い年月と費用を有する。

うたプリ」をよくしたいから、自己犠牲を顧みないという考えも結構だと思う。

だが、作品は違えど、二次元アイドルドームライブに参加し、

ライブを楽しんで、次のライブを楽しみにしている自分としては、

同じくアイドル応援する人々が悲しむ顔を観たくはない。

また、訴訟を提起すれば、それだけで一定反響を生み、

西武プリンスドームだけでなく、大規模な会場はリスクを考えて

ライブイベントの開催に尻込みになったり、

対策のためにコストがかかり、チケット代に転嫁されて値段が高くなる

可能性もある。

その結果が、アイドルファン以外のライブを楽しんでいる人々にとっても

どのような結末をもたらすのか。

脅迫のようになってしまって申し訳ないが、考えてほしい。

何度も書くが、日本において民事訴訟は最終手段である

必ずしも幸福な結末になるとは限らない。大変な苦労を要し、

双方にとって不幸になることもある。

それでもなお、発起人や訴訟参加者の皆さんが

この一件に関して、「人生を掛ける」価値があると考えるなら

二次元アイドルファンとして、また法を学んだ者として、

訴訟提起については全力で応援し、推移を見守りたいと思うし

当事者にとって、よりよい結果が得られることを期待する。

 
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