2021-09-27

まず、自分は「児相弁護士会ルートでの一時保護専用施設児童養護施設の受入対象ではなく(あるいは馴染めず)、DVシェルターに親と一緒に入所できる対象でもないが、家庭内虐待を受け、孤立している子」については、性別を問わず広く受け皿が整備され、より多くの対象者が保護・救済されたらいいなと思っています

その受け皿のひとつである子どもシェルターは、まいと@虐待どっとネットさんのおっしゃる通り、女性子どもシェルターが主で(といっても絶対数自体が非常に少ないですが)、男性が入れる子どもシェルター(両性用・男性用)は非常に少ない状況だと思います

一方で、そうした男性対象者の受け皿としては、歴史的には自立援助ホームが中心的な役割果たしてきたと思います。主な対象者は20歳未満と子どもシェルターの中心的保護対象とほぼ同じで、都市部にも地方にも多数存在し(子どもシェルターの約10倍)、男性女性の定員は全国で450人程度でほぼ同数です。http://zenjienkyou.jp/%E8%87%AA%E7%AB%8B%E6%8F%B4%E5%8A%A9%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E4%B8%80%E8%A6%A7/ (法的には、子どもシェルターも自立援助ホーム一種として公費支給されているそうです)

ご指摘の「カリヨン子どもセンター」では、「カリヨン子ども家ボーイズ」と男性用自立援助ホームの「とびらの家」が併設されていますが、他の子どもシェルター運営団体では、シェルター女性のみ受け入れつつ、自立援助ホームでは男性または両性をケアしているところもあります。例えば「ピピオ子どもセンター」は、子どもシェルター女性用で、自立援助ホーム男性用です。「子どもシェルターモモ」は、子どもシェルター女性用で、自立援助ホーム男性女性それぞれの施設があります

こうした性別によるケア体制の差は、ひとつには「女性より男性のほうが、20歳以下でもそこそこの収入を得て自立できる仕事があった」という歴史的事情もあるのかもしれません。男性未成年でも「自分で働いて稼いで暮らしていく」というルートに早期から乗せやすいから、(入所中に一定費用負担がある)自立援助ホームを中心に「孤立虐待で家庭にいられなくなった子」を救済してきたように思います。一方で女性場合は、この年齢で自立生活できるだけの収入のある仕事相対的に少なく(あってもいわゆる夜職が中心)、最初から自費負担しながら自立援助ホームに入るというコースが取りにくいことから、先行する配偶者DVシェルターの枠組を一部援用する形で、自費負担のない「女性子どもシェルター」という救済枠組が整備されていったように思いますカリヨン運営の方もこのような認識は持たれているようです。

社会福祉法人カリヨン子どもセンター事務局長石井花梨氏は,「男の子場合は,いわゆる『ガテン系』(肉体労働)の仕事があるので,特に若いうちは日給で働いても,割と安定的収入を得られますしか女の子は,どうしても飲食系の仕事が多く,特に今はほんとうにアルバイトしかないので,よほど頑張らないと,アパートで独り暮らしするところまで,なかなかいけません。そこで頑張れなくなったときには,性産業に走ってしまう。そのことも含めて私たちは性被害だと思っています

石井花梨「行き場のない子どもたちをささえる場所と仕組みをつくる」女たちの21世紀68号(2011年11頁)。



もうひとつ、これは個人的印象によるところが大ですけど、DV加害者である親側の「子に対する執着」の傾向には子の性別による違いがあり、親の家を出た18〜20歳の子は、男性場合は親側には子を奪還しようとする意思がより弱く、女性場合は親側の奪還意思がより強いため、現場では配偶者DVシェルターと同じように保護対象セキュリティを重視し、運営場所を秘匿して運営される「女性子どもシェルター」のニーズが強く認識され、提供されるようになったのではないかと思います

最後に、物理事情もあると思います子どもシェルターも自立援助ホームも一軒家を借り上げて定員6人前後運営するパターンが多いため、団体キャパティが小さければ男性は自立援助ホームケアし、大きければ男性向けもシェルターと自立援助ホームを分けて、入所者のステージ課題の変化に対応したケア提供しているように感じます東京拠点キャパティも大きいカリヨンは、男性対象者の支援2ステップに分け、緊急・短期支援段階は「ボーイズ」で、生活構築段階では「とびらの家」でと切り分けているように思いました。

(なお、まいとさん場合児相ルート児童養護施設と自立援助ホームどちらにも入所を検討されたものの、精神的不調がある、精神科への受診歴があるという理由で入所できず、不幸にもこれらの受け皿の両方にアクセスできなかったとのことでした。https://readyfor.jp/projects/gyakutaiN_first これは確かに制度の欠陥であり、改善されるべきだと思います

こういう事情もあって、「虐待に遭う男児女児は同数なのだから子どもシェルターも同数あるべきだ」という一部の論旨には、自分は首肯しかます。一方で自分が「それと別に男性専用シェルター必要かと言われると、自分はその当事者ニーズをあまり認知してない」と書いたのは、多くが女性スタッフ運営されている女性子どもシェルター対照物として「男性スタッフによって運営され、男性のみが入所することで『セキュアな空間』を提供できるシェルター」が当事者に求められている、という感覚があまりなかったからなのですが、ここについては、振り返ってみると、自分勝手に「対照存在としての」という(元の文脈にはない)読み込みをしており、反省しています。「児童福祉法保護対象から外れた未成年DV被害」という要素に対して、多くの自立援助ホームの枠組では最重視されていない種類のケア男性向けにも提供できるなら、それが当事者にとって「よりよい」ことなのは間違いないです。そういう観点にもとづいて既存男性用自立援助ホーム機能強化・支援強化を図ること、あるいは自立援助ホームとは別に男性が入所可能子どもシェルターを作ることは、どちらも賛成します。

一方で、男性子どもシェルターが希少なことで、あたかも家庭で虐待を受けている男性当事者保護する仕組みが全く存在しないかのような印象を持たれている方々が批判者・擁護者の両方に見受けられるのは、それはそれで実態乖離しているとも思いますnero氏のまとめだけを読んだら、そう思う方は多い気がしますが)。児相の一時保護所・子どもシェルター・自立援助ホームDVシェルター随伴入所など、相互に補完しあう分散的な児童福祉セーフティネットが現にあることを前提に、どうやってこのセーフティネットを「より漏れや隙間がなく、きめ細やかな仕組み」に整えていけばいいか、という観点で話をしていくのが良いように思いました。

個人的に、その参考になるのが更正保護関連の仕組みだと思っています保護制度更生保護施設、自立準備ホーム(自立援助ホームとは別)など法的根拠を持った救済基盤が整備されていて、就労支援事業者機構という組織を中心に官民連携も密になされており、企業会員の寄付や協力雇用主会員をベースにした生態系を作っています地方大手企業役員などが機構メンバーになって、中小企業相手にこまめに案内・勧誘したりしています)。制度化によって硬直化してる面も感じなくはないですが、こういう、金の出処も確保した官民連携が更正保護以外の分野にも拡大されていったらいいなと思います

ここまで書いて思ったんですが、もしかしたら、2022年4月からの成年年齢の引き下げによって、「制度狭間」(民法上の親権下にあるが、児童福祉法保護対象ではない)となる18〜20歳の救済を中心に構築されてきた子どもシェルター性格は、今後は大きく変わって行くのかもしれないなと思いました。児童福祉法の定める保護年齢と成年年齢が一致したことで、結果的制度の隙間が解消され、「個別入所者にコタン弁護士がついて、親権者との調整を図る」という子どもシェルター独特の法的支援要素が不要になるわけです。今後は子どもシェルターは自立援助ホームと再融合していくのかもしれませんし、よりDV被害ケアを焦点化した支援組織になっていくのかもしれません。そのあたりは両方を運営している団体の方々がどう考えているのか知りたいなと思いました。

  • 意味ないんよね 職員だって自分が可愛いから怖そうな人は取り締まりされない一方で恐らく無実だろう安全そうな親が実績作りのためにいけにえにされる

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