2015-01-31

スカウトされて芸能事務所の説明を聞きに行った話(2/1 0:41 追記)

ある平日の昼、渋谷ロフトの前を歩いていたときのこと。

いかにもスカウトですみたいなカメラを持ったお兄さんに声をかけられた。

人材発掘会社カメラマンを名乗るお兄さん(名刺くれた)曰く「有職者限定雑誌街角スナップコーナーに出る人を探していて、スタイルがいいと思って声をかけた。この場で写真を撮って一次選考をして、翌営業日に結果を連絡する」とのこと。学生で単発のバイトしかしていないことを告げつつ、簡単なエントリーシート名前身長電話番号くらい)を書いて写真を撮られて別れた。

ちなみに私は、顔は十人並み、脚は長いと言われることもある、身長は160cm台、BMI20を切るくらいの20代前半の女性である。これといって目を引くところはないだろうが、ときどき今回みたいなスカウトを受けることがある(怪しいのでだいたい受け流す)。

今回のスカウトも正直怪しい。しかしたまには口車に乗ってみてもいいかもしれない、とも思った。

営業日、その人材発掘会社とやらから電話がかかってきた。一次選考は通過したらしい。二次選考雑誌サイドの選考になるらしく、その説明をしたいので営業所に来られる日を教えて欲しい、と。直近で空いている日に行くことにした。

営業所に行くと、アンケート的なものを書かされた。撮影経験の有無とかいろいろな項目があった気がする。説明を待つ間、たぶん私より若いだろう女の子が説明を受けているのをなんとなく聞いていた。

しばらくするとこの間とは違うお兄さんが出てきて、選考の説明を始めた、のだが。「有職者」と言うにはバイトの回数が足りないことが判明した(月8回くらい働いていないといけないらしい。知らねぇよ)。となると今回の雑誌スナップモデルには応募できない。

すると、「うちの人材発掘会社から人材を紹介している芸能事務所に興味はあるか」と聞かれた。こうなったら徹底的に口車に乗ってやらぁ。

「なくはないです」

「じゃあ、担当者を呼んでの説明会に来てもらいたいので、空いている日を教えてください」

「来週平日の夕方以降ならいつでも大丈夫です」

「それじゃあ、○曜日のXX時にここに来てもらえますか」

「○曜日のXX時ですね、わかりました」

曜日のXX-1時55分、再び営業所へ向かった。

今度は事務所アンケートを書かされた。撮影とかしてないのに、「撮影をしてみてどうだったか」などの項目があったのでスルーした。

今回出てきたのはまた新たなお兄さんだった。イケメン事務所仕事をしながら、所属して俳優をやっているのだという。

街頭で書いた用紙と前回書いた用紙と今回書いた用紙を見ながら、イケメンが話を始めた。

今日はうちの事務所に登録するかしないかの話をします。話が終わったら即決してもらいます。すぐに決断できない人は芸能世界はいらない(以下、説得力を増す話)」

怪しいッ! これは怪しいッ! 検討する時間を与えない手法

この時点で、登録料とかレッスン料とかを払わせる手口だと思った。だがどんな話が展開されるのかは聞いてみたい。

大学生ってことだけど、一人暮らし?」

実家です」

「だったら、芸能やるって言ったら親御さん心配しない? 成人だから自分で決めることだけど、親に反対されたからやめる、ってくらいなんだったら、今ここで断ってください。例えば大好きな彼氏がいて、結婚したいと思ったけど親に反対されたら諦める? 諦めないでしょ?」

なんだその喩えは。

そしてまた怪しいッ! 「親に反対されたので」って理由で後から辞めるという選択肢を封じに来ているッ!

説明が始まった。

「今回、この説明会にはみんなを呼んでいるわけじゃないんですよ。興味があっても呼ばれない人もいるし、興味がなくても呼ばれてる人もいる。なんでかわかりますか?」

「わかりません」

「うちの事務所で確保している枠(事務所への最大在籍人数?)は多くないので、良い人材だけをこの説明会に呼んでくださいって、人材発掘会社にお願いしてるんですよ。もちろん芸能をやることを強制することはできないけれど、こないだ話した担当者が、○○さん(筆者)を見込んで、この説明会に呼んだってことなんで、それはわかっていてください」

「はあ」

これも怪しいッ! 「あなた特別ですよ」ってのを匂わせて虚栄心をくすぐる手法

仕事の内容についての説明内容は長いので端折る。

などなどの話を聞いた。実際の仕事の依頼例なども交えつつ。それなりに面白かった。

私には言いたいことがあったのだが、タイミングを逸していた。一段落したら聞いてみようと思っていたら、ちょうどよくイケメンが話を振ってくれた。

「そういえば聞き忘れてたんだけど、どこの大学ですか」

「某大です」

「そうなんだ! 学部は?」

医学部です」

「えっ」

卒業したら2年間は初期研修をしなくちゃいけなくて(医師法第16条の2)、その間は研修に専念することが求められている(医師法第16条の3)ので、どこの病院でもアルバイト禁止なんですよ(法律で禁じられているアルバイト診療だけでなく、アルバイト全般)。なので、芸能をやるにしても学生の間だけだと思っているんですけど、それって可能ですか」

「みんな芸名を使うから職場とか周りにはバレないよ。人間って不思議もので、例えば○○さんの写真雑誌に載っていても、名前が違ったら『○○さんにすごく似てる』で終わるんだよね」

「はあ……」

そういう問題かよ。

そして話は佳境に入る。

「それで、事務所に登録するときお金がかかる事務所とかからない事務所があるんだよね。うちはどっちだと思う?」

「その聞き方ならかからないんじゃないですか?」

「いや、うちはかかるんだ」

「ほう」

お金がかかる事務所とかからない事務所の違いは、マネージャーが付くか付かないか。マネージャーが付かないところだと、仕事自分で取ってこなきゃいけないし、その仕事のギャラは事務所折半

「それは馬鹿みたいですね」

マネージャーが付く事務所だと、これこれこういう(※忘れた)お金がかかって、大手だと数十万とか百何十万とかするところもある」

「ほう」

「でもうちではこのお金はもらってない」

はい?」

話が見えなくなってきたぞ。

「うちでは、このシステムを維持するところにかかるお金事務所持ちにしてる。でも、宣材にかかるお金39000円と、レッスンを受けるための入会金60000円の計99000円は、個人に属するものから負担してもらってる。クレジットで払ってもらって、クレジット会社への支払いは月5000円って子が多いかな」

「はあ」

10万か。これくらいなら払う人いるんだろうな。

「うちでは、ワークショップ講師仕事を持っていて、仕事をくれるかもしれないレッスンのことらしい)を1回3500円(安いらしい)で受けられる。その環境づくりのためのお金がこの60000円」

「はぁ」

結構長い時間聞いていたのでやる気が低減しつつある。

「で、1年間使える宣材を撮って、これでクライアントに売り込んだりする」

「じゃあ、1年経って撮り直すときにまたお金かかるんですか」

「いや、それは無料

「ほう」

なんでやねん

なんだか疲れてきたしやっぱり胡散臭いので、ちょっとやめておこうかな的意思の表示を始める。ここも長いので端折る。

「いやー、そこまでのお金を払ってやるもんかなってのがちょっとあって」

「まあ高いよね。でもその分以上の経験を買うお金だよ。」

「はあ」

「喩えるなら今はこういう状況。浜辺を歩いていて、沖の方に島が見える。そこには見たこともない世界があるけれど、自分で泳いでいくことができないのはわかってる。そこにちょうどよく船が通りかかっていて、それに乗るか乗らないか。乗らないならふーんそっか、もったいないねって」

「はあ」

「言っちゃ悪いけど、女の人が何もしないで綺麗でいられるタイムリミット2X歳(※筆者の年齢)だよ」

「はあ」

「何に悩んでるの? 例えばかかるお金が0だったらやる?」

趣味程度ならやるかもしれませんけどね」

こうやって話している間に、この兄ちゃんは手に持っている紙を筒状にしていじっている。いやそれ私が書いたやつですよね。話している相手が書いたアンケート丸めていじってる社会人初めて見たよ私。

自分には本分があって、新しくその『趣味』を加えるだけのキャパがあるかも不安です。それに、それだけのお金を払ってやるくらいなら、自分の本分に時間を使ったほうがいいなって思います

「そりゃそうだよ、でも」

「本分を趣味にする感じで」

「それは趣味って言わないよ」

「そういうタイプ人間なんで、別にそれでいいです」

時間とってすみませんでした、でもそんなんじゃ何も始められないよ」

と言いながら兄ちゃんは事務所の奥へ去って行った。帰っていいと言いに戻ってくるかと思ったけれど戻ってこなかった。

常識人である私は、せめて声をかけて帰ろうかと思って事務所の奥を覗いた。しかしどこにいるかからなかったし、待ってろと言われてなかったことを思い出して帰ることにした。

営業所から出て歩きながら、2時間かけて何やってるんだ自分、と思った。しかし、話を聞くだけ聞いたのは面白い経験だったかもしれない。

しかしたら、この事務所は悪質な事務所ではないのかもしれない。けれど、相手に「怪しい」と思われたら、こういう商売は負けだ。

この事務所が怪しかったポイントを列挙してみよう。

  1. 話を聞いた日に入るか入らないか即決させようとする
  2. 親の反対を理由にやめないことを約束させる
  3. あなた特別なんですよ、ということを匂わせる
  4. やめておこうと言われて、どうにか入らせようと必死になる(そして、その必死になりかたが、そこまでの話のテンションと合っていない)
  5. 説明者の態度がおかしい(少なくとも、目の前にいる相手へのリスペクトに欠ける行動はしてはいけないと思う。客商売なんだろうし)

やっぱり、そうそうまい話は転がっていないんだな。人の夢で飯を食う商売もあるんだな。みんな気をつけようぜ!






以下追記。

予想外に多くの反応をいただいて驚いています。読んでくださった皆さんに何らかの形でお役に立てば光栄です。

ブコメをいただいたので全てにではないですがお返事を。

id:hisawooo “怪しいッ! これは怪しいッ!”ジョジョっぽくてかわいいジョジョ子力高い。

お察しの通りジョジョ好きです。花京院が一番好きです。

id:gdno 目利きだなあ。素敵な医者になってください。患者に不信感を抱かせないくらいの。

ありがとうございます。頑張ります

id:tbsmcd 有職者が有識者に見えて何を言ってるのか分からなかった……

有識者限定街角スナップコーナー、見てみたいようなやめておきたいような。

id:eurisko1 うーみゅ。これかなり前からあった手口。増田医学生よ、今後へんな奴らからの連絡に気をつけろ。本業に邁進されよ。

知らない番号から電話留守電がなければ無視する主義です。一番大事なのはやっぱり本業ですね。精進します。

id:catbears 利用されることを望んでいる人は他人に利用されることが本望だという事の他力本願推して知るべしとか、チャンスは巡ってくるのを待つのではなく与えるもの、みたいな話にはならないのか。

何をおっしゃりたいのかよくわかりませんでした。すみません

id:ophites 自分の頭の良さを過信してる感がちょっと危うい。断って帰ろうとしたら怖いお兄さん数人に囲まれて、おいおいお姉ちゃん社会ナメてもらっちゃ困るよ、とかなっても切り抜ける自信はあった?怪しいとこは行かぬが最善

まさにおっしゃる通りで、自分の頭のキレを過信気味でした。他に説明を受けている人がいたので、彼女らが見ている前では危ない目にあわないだろうと判断しましたが、行ってから判断では遅いですね。そもそも行かないのが一番ですし、行くにしても筋肉を付けてからの方がよさそうです。

>勧誘・スカウト経験者の皆さま

世の中怖いですね。こういう商売って儲かるんでしょうかね。

文章や頭をお褒めくださった皆さま

恐縮です!

モバマス/デレマス/しぶりん/「笑顔です」系の皆さま

筆者は一瞬だけモバマスに手を出して、課金しそうな自分が恐ろしくて手を引いたことがあります渋谷凛ちゃんかわいいですよね。

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    • ありがとうございます、お父さん。 万が一、次に同じようなことがあったら(ないことを私自信祈っていますが)、自分の身を守る方策を考えてからにしますね。

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