日本って国では法律が国民の味方をすることはなくなった。裁判所が独立することもなく、三権は全て一箇所に握られている。この状況では将来「国家の財政が傾いてきたからちょっとお前らの貯金借りるわwwww倍にして返すんでwwww」とか言われてもおかしくない。結局iDecoなんてのは「日本人が日本という国の中で投資を行う」だけなので、分散性が低くリスク回避能力が無さすぎる。
iDecoは結局の所「お金が増えるお母さん銀行」のようなものでしかない。でもそれって自分の自由にできるお金が減ってるのよね。積極的に投資をするにしても、個人資産を管理するにしても、これではタンス預金の延長に近く、更にはそのタンスの鍵を預かられているのはどうしようもない。ぶっちゃけお母さん銀行は出し入れができない時点でタンス預金以下とすら言える
あと一つは?
13人の客、その7人目もスーツ姿だった。
ただ6人目の時とは趣が全く異なっている。
スーツは全体的にラメ加工が施されており、ビジネスシーンは全く想定されていないデザインだ。
「三大・エグい特殊造形の映画、『魅了のひじき』、『半生からの合体SEX』、あと一つは?」
「と、とくしゅぞうけい?」
まるでクイズを出しているようだ。
そう考えると、確かに往年のクイズ司会者を髣髴とさせる格好だ。
「あと一つは!」
聞き方は妙ちきりんだが、要は嗜好に合った作品を探しているってことなのだろう。
特殊造型という言葉には聞きなじみがないが、この客が挙げた作品から推測はできる。
観たことはなくてもタイトルは知られてるくらい、往年の名作ホラーだからな。
そして“エグい”って言ってるくらいだから、グロテスク要素のあるものと思われる。
その上で、近い時期の作品といえば……
俺はそう答えたが、その客は何も言わなかった。
その後も、司会者は似たような質問を繰り返し、俺は律儀に作品名を答えていった。
そうして何度か同じ応酬を繰り返した後、司会者は何も買わずに帰ってしまった。
期待は応えらず、俺は落胆する。
だが落ち着いて考えてみればなんてことはなく、その答えは簡単だった。
これは単なる冷やかしである。
今になって考えてみれば、他の客がやってたこともほとんど冷やかしだ。
半分くらいは映画と関係のない話ばかりしてきて、そのくせビデオは買わない。
下手したらレンタルすらしないこともあった。
接客も仕事の内だと割り切ってやってきたものの、こうも立て続けに冷やかされるとウンザリしてくる。
雇われの身だが、対費用効果のない仕事に労働力を奪われたくない。
たまらず店長に苦言を呈したが、返ってきたのは謎の精神論だった。
「マスダ、何で皆がウチの店にくるか分かるか?」
「ビデオを買ったり、借りたいからでしょ。家で映画を見るために」
「ここに来る人たちは何らかの問題を抱えている。何が問題か自分でも分かっていない人だっている。理由は様々だが、つまり順風満帆ではない、思い通りにいかない人生を送っている」
「そんな人たちでも、場末のビデオ屋で働くバイトと話している間は順風満帆なんだよ。そんな人たちを助けるのがマスダたちの仕事だ。目に見える利益だけ追求するんじゃない」
なんだか諭されているようだが大した理屈じゃない。
とどのつまり店長は「つべこべ言わずに働け」と言ってるだけである。