「いつも日記や画像拝見してます。もしかして〇〇に住んでるんですか?」
ことの発端は、僕の住みを言い当てた、某SNSに届いたDMだった。彼女はA菜という年の近い女装男子だ。
「やっぱり! 私も〇〇なんですよー。今度女装同士で会ってみません? 私タチ女装ですけど」
すぐに返信すると、相手からも即返信。近場に同行の士が見つかってうれしい。
「いいですね。でも宅女装なんで外出できないんで、会うとしたら個室ですかね。ラブホでいいですか?」
「ぜひ! いつがいいですか?」
「私も土日休みなんで都合よかった。じゃあお願いします。受付ないラブホ知ってるんでそこでいいですか? 車出しますんで」
びっくりするほどとんとん拍子に決まる。夜勤から帰ってシャワー浴びて即寝。
夕方ごろ目覚めて再び風呂で髭や脇や腿の毛を処理して、衣装にアイロンがけ。それでもまだ約束の時間までかなりある。楽しみを待っている時間は長いなあ。と思いながら腹ごしらえ。
日も暮れかけたころ、集合場所の駅へ。ロータリーに伝えられていた番号の車を見つけ、ノックすると、パワーウィンドウを開け男が顔を出す。
髪を短めに整え、もみあげや口周りに剃り残しのない、一見すると「清潔感のある草食男子」といった風貌。それは、女装男子特有のムダ毛を残さない意思を感じられる顔だった。
「すみません、A菜さんでよろしいですか」
男性にA菜という女性名を尋ねるのは我ながら奇妙であったが、女装男子同士の初対面ではよくあることであった。車に乗り込むと、これまた女装男子特有の大きめキャリーバックが置かれていた。
「夕飯どうします?」
「食べてきました」
「じゃあ目的地に直で向かいますか。途中コンビニだけよりますね」
なんのことはない、よくある会話。事情を知らない人からすれば目的地でこれからオフパコするなんて思いもよらないだろう。
「ゴムとかは備え付けでありますし、予備も持ってきてます。ローションは現地にもありますけど、別料金だから用意してきました」
「詳しいですね。よく行くんですか?」
「デリヘルで。受け付けないから『ここ男同士でもいけるな』ってとこ選びました」
コンビニでの買い物を済ませ、現地に着く。駐車場から直接個室に入るような作りで、ホテルスタッフと顔を合わせる必要がない。なるほど、ラブホってこうなってるんだな。
ナチュラルに先に女装させるA菜さん。男女のカップルと違って一緒に入浴するのにやや抵抗がある人が多いところだが、夕飯という口実で先にシャワーを浴びさせるのはうまい手管だ。
「じゃあ、お先に失礼します」
とはいっても夜勤明け、昼寝明けですでに今日二回も入浴していた自分は、ほぼ行水に近い短時間で済ませ、水気だけふき取ってバスタオルだけ巻いて大荷物をもって鏡台の前へ。
ウィッグ、ファンデ、アイシャドウ、チーク、口紅。メイクで見慣れた顔が女性になっていくのはいつ見ても楽しい。オフパコ前はなおさらだ。「この鏡の中にいる子が今からエッチするんだ」と客観的に興奮できる。
今日の下着は白とピンクの横縞。胸はないが、細くてくびれのあるお腹。つかみ心地がよさそうだ。そして股間はすでに七分ほどのふくらみ。
「お待たせしました」
その姿でA菜さんの前に姿を見せる。
「おお。いいですね。僕も夕飯終わったんでお風呂行ってきます」
そういって荷物片手に風呂場へ消えたA菜さん。残された自分は自撮り。うむ、ラブホの雰囲気でエロくていい感じ。特にお腹がエロい。
でも下着からプレイを始めるのは早急な気もするからなんか着よう。……せっかくアイロンかけたしこの初音ミクがいいかな。緑のツインテウィッグはないけど、黒髪ミクもありやね。
しばらく自撮りしてたけど、なかなか出てこないA菜さん。手持無沙汰にテレビをつけると、アダルトビデオが複数チャンネル。これでもみて気分を高めるか。
気分が高まっていく。自分のものが大きくなっていく。パンツ越しに触れていると、お待たせ、と声が届いた。
風呂場から出てきたのは、バスローブを着た女性。茶色がかった肩につく程度の長さのウィッグと、ややブラウンが濃いファンデに明るめの目元と頬、ややギャルっぽい風貌で、先刻の草食男子とのギャップも相まって映える。
「AV見てたの? あたしも一緒に見よ」」
一人称があたしに変わり、口調もやや間延びした感じになっている。女はメイクで顔を変えられるから怖い、とはいうが、メイクで受ける変身の幅は断然、男のほうが広い。
さっきまで液晶の向こうのAV女優に食い入るように眺めていた自分が、今は隣にいるA菜さんに釘付けになっている。僕の視線に気づいたA菜さんも、身体だけテレビへ向けて目はこちらを向いている。
すると、A菜さんはベッドの下に手を伸ばしたと思うと、何かを取り出して
「えいっ」
と、僕の股間に何かを当ててきた。球体に持ち手を付けたような形状で振動している。デンマだった。
「んっ……」
「あは、いい声出すじゃん」
つい声をあげてしまった僕を茶化すA菜さん。負けじと僕も彼女の股間に手を伸ばすと、触りなれたモノの感触があった。
しばらくお互いの股間をいじりながらAVを横目に見ていると
「フェラって気持ちいいよね。コスローちゃんにしてもらいたいな」
と彼女からの申し出。そこで自分がビデオカメラを持ってきていたことを思い出す。
「ねえ、撮ってもらっていいですか?」
「え、なにを?」
「僕がA菜さんのをしゃぶってるとこ」
「撮影して、ってこと?」
「いいよー」
快諾してくれたA菜さんにビデオカメラを渡す。体勢は、今見ているAVと同じようにしゃぶられる側が仰向けになって足を広げ、しゃぶる側が股の間に顔を埋める形だ。
「じゃあ撮るよー」
その合図に合わせ、A菜さんのバスローブをはだけさせ、下着を露にさせる。上下とも黒で、バスローブの白とのコントラストになっていて奇麗だ。何度かパンツ越しに上下させた後、ずらす。
男性のモノが目の前で露になる瞬間は、磯溜まりで生物を見つけた時のような悪戯な楽しさがある。イソギンチャクとかヒトデとか形も似てるし。
まずは唇でキス。鈴口と口を合わせる。そのあと舌先でちょんちょんと何回か触れたあと、かぷっ、と咥える。口の中で、舌の前面で撫でる。
「楽しそうだねーこっち向いて」
そう言われて、いったん口を離してA菜さんに向かって笑顔を向ける。
(後でビデオで見て確認したら、この時の自分の笑顔が人生の中で最高の笑顔だと思う)
その後も飴を舐めるような愛撫から麺をすするような勢いをつけていく。これは初めてフェラした相手が教えてくれた技で、今でも心掛けている。
「おいしい?」
そう尋ねるA菜さん。実際おいしいわけではないが、硬さが変わっていったり、ビクンと跳ねたり、生命を感じる動きが楽しい。ただうなづいて愛撫を続けるが、急に撮られていることが恥ずかしくなっていったん止めてもらう。
「え、やめちゃうの?」
一旦体を離して、テレビに目線を移すと、フェラシーンから本番シーンになっていた。
「じゃああたしたちも本番しようか。こっちがいれるほうでいいよね」
「……はい」
「好きな恰好ってある?」
「……後ろからが好きです」
そうつげて、僕はうつ伏せで肘を立てて上半身をやや受かせた姿勢になって彼女に背を向ける。枕もとの鏡には、緊張と興奮が入り混じった自分の顔が映る。メスの顔だ。
「じゃあ失礼して」
オスの顔をしたA菜さんが僕のスカートをめくり、尻肉をいじったり、穴に指を入れて広げたりしてくる。声をあげたり、歯を食いしばったりする鏡の中の自分に列状を催す。
「そろそろいいかな」
僕の腰を両手でがっしりと固定し、股間のモノを差し込んできた。思いのほかすんなり入り、不意に声をあげてしまう。ゲームのダメージボイスみたいだった。
「ごめんね、痛かった?」
「大丈夫、です。動いてください」
お願いすると、腰をゆっくりと前後に動かしてきた。そしてA菜さんも上半身をやや倒し、上着をはだけさせて両手で僕の乳首をつまんだり、二の腕から肩甲骨のあたりを撫でたりする。
背面を撫でられて、はめられているのになぜか安らぐ。背中を預けられるような相手を見つけられたからだろうか。背中どころか後ろの穴まで預けてるが。
「あ、そろそろいきそう。ゴムしてるから中でそのまま出していい?」
言葉は尋ねているが、身体では有無を言わせないように体重を勢いをかけてくる。そして、ゴム越しでも後ろの穴から全身に伝わる脈動と射精。
「……うん、早かった」
不満ではなく、自分の中でいってくれたことに対する感謝を込めて告げた。彼女が出したゴムを処理している間、僕は恍惚と横たわっていたが、すぐに今度は自分もイキタイという欲望が噴出してきた。
ベットの端に腰掛けるA菜さんの手をつかんで、自分のモノに導くと、意を得たように握ってくれた。
「ごめん、あたしタチでフェラとか本番とかできないけど、手でいい?」
「うん、できることだけでいいよ」
彼女は勢いをつけて僕のモノを上下してくる。他人に手でしてもらうのは自分でするときと力加減が違ってもどかしいが心地いい。
「出そうになったら言ってくださいね」
「ごめん、もう出そう」
「え、ちょっと待って」
A菜さんは右手で握ったまま左手でティッシュを抜き取り、僕のモノにかぶせてきた。発射するのはほぼ同時だった。
「すごい量、でてますね」
「やっぱり前立腺突かれた後だとたくさん出るみたいですね」
などと会話を交わして出てしまったものを処理する。二人とも射精したばかりでしばらく呆然と流したままのAVを眺めていた。そして、メイクを落とす時間を考慮して早めに身支度を始める。
「さて、そろそろ行きますか」
「いえこちらこそ」
「そうですね。まあ百円均一のだからなくしても買いなおすだけですけどね」
駅まで送ってくれたA菜さんに礼と「おやすみなさい」と告げてわかれる。