2018-12-09

青少年の性行動全国調査(5/5)(Session-22 書き起こし)

ラジオ「Session-22」書き起こし。https://www.tbsradio.jp/319359

"大学生デート経験率は過去最低" 草食化とも報道された「青少年の性行動全国調査」その結果から読み取れる本当に大事な事とは?

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荻上

後半、性教育の方にちょっと話を広げていきたいと思うんですが、今回性教育についてはそもそもどんな調査が行われていて、どんな分析結果が出たんでしょうか?

永田

性教育に関しては継続調査になってますね。

まず、どういうことを学習したのか、ということについて質問をしていくというのが継続になってます

HIVエイズですねーー先週末イベントでもあったようなーーあるいは妊娠の仕組みとか避妊方法性感染症かいろんな項目に関して、継続的に学校学習たかどうかというのを聞いて、それがどれぐらい学習した経験を持っているっていう風に回答するのかなというのを見るというのが、まぁ大きいところです。

あとこの調査ちょっと面白いのはクイズをですね、出すんですよ。

教育ってわけじゃないんですけど、性行動に関わるような……例えば「精液が溜まりすぎると体に悪い影響がある」正しい?間違ってる?とかそういうのを7問ぐらい出して、どれぐらい正しい知識を持ってるのかクイズ形式で訊いているって言うのも、ちょっと特徴的なところかなとは思います

荻上

アメリカとかでは、偏見浸透率調査みたいなもので、例えば進化論はないと思ってるとか、ワクチンは効かないとか、あえて間違った知識がどの程度広がってるのかみたいなもの調査するってのいうようなことをやったりしてますけれども、今みたいなクイズもとても重要ですよね。

永田

そうなんですよね。

偏見の度合いというか、どういう風なところに今みんなが引っかかってるのかっていうのが割と分かるというのが面白いとこだなとは思いますね。

荻上

分かった上で言ってるんだけど、それが結局騙されてしまうということになることもあったりしますし、今言った例えば「体に悪いかマスターベーションしてます」って言ったりすると、ダイレクトに体に悪いわけじゃないよって言われてしまうと言い訳が一個無くなっちゃうんじゃないか、と。

でもまぁ、メンタルには良かったりしまからどうぞどうぞしてください、ということだと思うんですが、今言ったようなクイズを出しながら色々調査をすると、どうでしょう、推移、変化を感じ取れるような所ってどんなところにありますか?

永田

そうですね、「既習率」という風に言いますが、どういうことを勉強した経験がありますかっていうことですね。

荻上

既に学んだ経験率っていうことですね。

永田

そうです。

学校で以下のようなことについて勉強した経験がありますか、というのを聞いたと。

それを2005年から2017年、今回調査にかけて3回推移を見てるんですけれども、基本的HIVエイズそれから体の仕組み、それから性感染症のあたりは8割バッターぐらいで、まあまあ既習率高いですね。

荻上

バッターとしては凄すぎますけど(笑)8割くらいということですね。

永田

それはやっぱり、保健体育の内容なんですよ。

保健体育って試験もありますし、割と1年生くらいの段階で結構しっかり勉強させるところではあるので「学習した経験があります」という風に答えるのが多いというのはありますが、それに加えて学校勉強したことを折に触れて、例えばニュースかいろんなとこで触れる機会があると定着しますよね。

ですから学校での教育ってもちろん大事なんですけども、それに加えての啓発活動とか色々な情報提供ってとっても大事で、だって一回学校勉強しても忘れるじゃないですか、歴史とか日本史とか忘れますよね(笑)

荻上

2つとも歴史ですよ(笑)

永田

2つとも歴史だったね(笑)、私苦手なんですけど。

荻上

分かります、分かります

永田

でも、大河ドラマとかで見るとなんか覚えますよね?

南部

つながっていきますよね。

荻上

その指摘は歴史学の人たちからドラマです!」というのもあるかと思います(笑)

永田

ごめんなさいごめんなさい(笑)

荻上

ただ教科書ちゃんと学んだ上で、あるいは学校で学んだ上で、テレビであえて、じゃないけれども、間違った情報に触れたときに、違う仕方で表現しているな、という風に学べるのか、それともそうしたものから触れてしまって、そう学習してしまうのかは、差が出てくるじゃないですか。

永田

おっしゃるとおり。

荻上

これは既習率、つまり性教育などで学んだ人とそうでない人とで、その後の行動や知識の正答率というものは変わるんですか?

永田

変わりますね。

正答率が高い人というか、もうちょっとちゃん分析的に言うと、学習経験が多い人と少ない人ですね。

よりたくさんの項目を勉強しているという人と、必要最低限というかみんなが学習している程度の内容で止まっている人っていうので比べてみると、よりいろんな項目を勉強している人の方がクイズの点数は高いです。

もうちょっと言うと、これ今回の調査分析では出てないんですけど、前回調査分析の結果としては、情報源が学校である子っていうのはーー情報源って色々ありますよね?雑誌とかね、ビデオとかねーーそういう子と比べるとやっぱり正答率が高いというのはあります

荻上

たとえばリスク行動であるとか、自尊自己認識であるとか、他のものに対する影響っていうところまでの分析というのはどうなのでしょうか?

永田

えっとね、自尊感と性教育っていうところはちょっと難しいんですが、もうちょっとなんですけれども、ただ性に対するイメージはやっぱり違いますよね。

まり性に対して、明るい、とか、楽しい、とか、そういうポジティブなーーまぁ項目いろいろあるんですけどーー今いったような事に関しては、たくさん学習している、いろんな角度から性について学習している経験を持っている人の方が、イメージポジティブっていうことがあります

荻上

しっかりと学習していくということが重要であると。

それからあの、冒頭でも少し紹介させてもらったんですけれども、あの最初セックスコンドームをつけてする人としない人とでは、その後もつけてするかしないかが変わるという話……

永田

あれ面白いですよね。

それも前回調査分析なんですが、それは多分今回もそんなに変わってないんじゃないかなというふうに思います

その具体的な避妊、今とりあえずコンドーム使用なんですけれども、コンドーム使用に関して、まず初交でコンドーム使用していた人っていうのはその後の性交においてもコンドーム使用する傾向があると。

その初交の時にコンドーム使用するかどうかっていうのは「相手のことが好きだったから」ていう風な動機性交、初交に至った人っていうのは割と避妊もしっかりするっていうことは、そういう道筋あるかなっていうのは分かっているところで見えてきているところですよね。

荻上

この間の変化としては「セクシュアル・マイノリティについて学びました」という人が6年間で倍増近くしてるということは結構これは重要な変化であると同時に、ただ男女差で見るとマスターベーションについては、男性が5割近く毎回調査で学んだことがあるよって人が多い(注:5割程度「いる」か?)んですけれども、女性の方が2割ぐらいだという事で、こうしたそのジェンダーギャップがでるような項目っていうのも色々ありますよね。

永田

ありますね。

あともう一つがやっぱりあのクイズの結果もそうなんですが、自分が直接関わるようなこと、つまり女性場合だったら月経に関する項目なんかは既習率も、学習してその後覚えてるって言うことで既習率も高くなるしクイズの正答率も高くなる。

男性場合だったら、マスターベーションであるだとか、あるいは精液、精通に関するようなクイズはやっぱり正答率が高くなるというとこでちょっとジェンダーギャップっていうのはあって、私これはちょっと乗り越えたいとこだなと思いますよね。

だってほら、自分のことはわかるけど相手ーー異性愛で想定するとーー相手のことってやっぱりわからないっていうのがあるので、男性女性のこと、女性男性のことをもう少ししっかり学習できるようになるといいなぁとは思いますが、まあそういう課題は見えてきますよね、数字の上での。

荻上

昔は男女別学で、保健体育の時は教室を分けてみたいな仕方で、生理女性けが学ぶと。

でも例えば、上司部下の関係で、部下が女性上司男性で、生理休暇について無理解だったり、あるいは上司女性、部下が男性で、上司が体調悪そうにしてることを「なんだよ女は」みたいな形でざっくりと大雑把に暴力的に回収してしまうみたいな、そうしたことがないように、生理とは何なのか、周期とは何なのか、PMS みたいな苦しみは何なのか、とか、当事者のことを知る、っていうことは理解をするためにはまず一歩にはなりますよね。

永田

そうなんですよね。

あの、今となっては保健体育もテスト共通なので、男女によって既習の内容がもう大きく違うっていうことはだいぶ解消されてるとは思うんですけども、結局学習してもその後定着しなければあまり既習率の数字としてはね返ってこないので、日頃からどういう情報に触れていくかとか、相手のことを知るような努力するとか、そういうところに関わってくるかなとは思いますよね。

荻上

他にも色々性に関した課題が沢山あるわけですけれども、今日永田さんが「ここが面白い」って言ってくださったポイントっていうのは、要はそこに政策社会的課題がより濃縮されてるポイントだということになるわけじゃないですか。

そうしたことを踏まえて、これからこの調査を活かした上で、どんな性に関する教育であるとか、発信が必要だという風にお感じになりますか?

永田

私が思うのは、やっぱり日頃から情報に接するチャンネルを増やすっていうことかなとは思います

例えばあの圧倒的に多いのは、性に興味がある子はインターネットで調べるんですよ。

学校勉強してそれに加えてネットで調べていくと。

その時にどういう風な情報アクセスできるのかっていうのって結構微妙問題だなあというふうに思いますよね。

荻上

思います

例えばあの YouTube とか子供重要情報源になってますけれども、そこで「セクハラ」とかで検索すると、例えばその”芸人の何々が何々にハラスメントしたあの瞬間”みたいなもの違法アップロードされる、お笑い番組とかで。

あるいはユーチューバーがドッキリと称して誰々にセクハラしてみた結果とか、妹にセクハラした結果、みたいな仕方で出てきて、セクハラを受けた場合、何がセクハラであるのかとかその時の相談先はとか、そうしたものYouTube だけじゃなくて Google 検索とか諸々出てこないんですよ。

それを変えるための活動とかも今、してはいるんですけれども、そうした点もやっぱり重要ではありますね。

永田

だと思いますね。

やっぱり教育が果たせる機能ってかなりあるとは思うんですけれども、どうしてもあの教育である以上は一定基準とか評価基準みたいなものを持たないといけないので、ともするとパターナリズムに陥りがちなんですよ。

荻上

こうしろ、とか、こうあるべき、とか。

永田

それはまぁちょっとそういう風な方向ばかりになってしまうのは、やはり望ましくないと。もちろん教育教育で一つの大事チャンネルなんですけども、情報をいろんなところから提供していくことで、より自分にしっくり来る情報自分たちが主体的に接することができて選ぶことができていく、っていうのが望ましいっていう風なことではあの一番大事かなぁ、ていう風に思いますよね。

荻上

こうしたその結果が出た時に、メディアで報じる際「こうなってます」だけじゃなくて、これをきっかけに、たとえばもうお昼の番組でもいいんでーー多分結構間違ってると思うんです、皆さんの知識って。土曜日にあったイベントでもコンドームの開け方付け方……。

永田

ああ、あれねー。

荻上

あれだけでも正しく使える人の方がむしろ少ないという現状があるということがわかった。包茎の人とそうじゃない人で付け方のポイントが変わるとか、そういったこと知らない人多かったりするじゃないですか。

そういったような事を細かく、そのちゃんチャンネルを含めて発信していくために、データ活用しながらいろんな現場と繋がっていきたいですよね。

永田

そうなんですよね。

そのためのエビデンスだと思います

単に興味本位でいくんじゃなくて、こういう状況だからプラスでこういう情報必要なんだ、って考えていくってことですよね。

南部

今夜は社会学者永田夏来さんをお迎えしてお送りしました。ありがとうございました。

永田荻上

ありがとうございました。

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ラジオ「Session-22」書き起こし。https://www.tbsradio.jp/319359

"大学生デート経験率は過去最低" 草食化とも報道された「青少年の性行動全国調査」その結果から読み取れる本当に大事な事とは?

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