2019-11-06

ありがとうペルソナ5ザ・ロイヤル

また、心を盗まれた。

言うまでもなく、ペルソナ5THE ROYALのことだ。

発売日が決定してすぐに有給を取得し、万全の体制で臨み、5連休が終わる直前にクリアした。(クリアできたのは八十稲羽の大神の力による所が大きかった)

まりにも、あまりにも素晴らしかったので、2周目に突入する前に、作中の「怪盗信者である三島のように、テキストエディタを立ち上げ、「僕らの光」を何度も流しながら、支離滅裂キモいテキストを書き散らしている

ペルソナシリーズ存在名前だけは知っていたが、普段ゲームなぞ殆どしない自分は、2016年の秋、8年ぶりに同シリーズの最新ナンバリングタイトルが出るという素晴らしいニュースがあったことすら露知らず、どうしてもやりたかったうたわれるもの二人の白皇の為に、PS4を購入して(こちらも言うまでもないほどのADVの大傑作だ)プレイし、Suaraが歌う、ボーカル付のシーンで涙を流していた。

それ以外やりたいソフトも無く、当時大学生で暇を持て余していた自分は、近場の家電量販店に行き、たまたま見つけた赤と黒ソフトを手に取っていた。

それがペルソナ5との、ひいてはペルソナシリーズ出会いだった。その世界にあまりにハマってしまったせいで、ペルソナ5通算500時間ほどプレイした。そしてペルソナ3で命の答えにたどり着き、ペルソナ4ザ・ゴールデンで霧を晴らし真実を見つけ出した。それでも飽き足らず(無印と2はまだやっていないにわかにではあるが)アニメを見て映画を見て、アリーナで闘い、ダンスを踊った。

ペルソナ5現実世界認知世界(というもう一つの現実との)と東京という「現実」にある世界の3要素が絶妙リンクしていて、ある意味残酷とすら思えるほどの没入感を与えることに成功している。

教室自分の目の前に座っている杏、竜司とともに食べた荻窪ラーメン、真と共に闘ったパレス双葉と共に食べたカレー、春と飲んだコーヒー…一緒に眠ったモルガナ…「痛み」を共有した仲間たちとの楽しくどこかくすぐったいような日々だけではない。無気力大衆、どこにでもいそうなパレスの主たちまで、確かに存在する。

そして、プレイを終えたあと、自分は確かに怪盗団であったこと、しかしこの世界には怪盗団がいないということを実感せずにはいられない。

ペルソナ5物語は、当事者になってしまった鴨志田事件から、真加入の前半は勧善懲悪的な物語であり、中盤は、大衆の期待に煽られていき、「人一倍許せないこと」があり、それを貫いていく、という怪盗団のポリシーがブレはじめ、絶頂凋落を味わう。

終盤はその大衆集合的無意識を切り口として、人々の世界のどこにでもありふれている閉塞と怠惰の中で、それでも人間には前進していく・立ち向かっていく意志希望があり、(矛盾しているが)それらを自ら選択していくエンドである

人間希望を集めて作られた」モルガナが「人間には、世界を変える力がある。今はそれをほんの少し忘れてしまっているだけ」という台詞であらわされるように、作中には「意志選択」がありふれている。

その最たるものとして、主人公獅童事件証言者として、警察に出頭し、少年院に入ってしまうことになるわけだが、「痛み」を共有した仲間たちが主人公冤罪証明する。

作品の答えが、そして作品テーマであった「真なる更生」が果たされる。彼らの「意志」はわれわれの現実にも還元され、ありふれた怠惰と閉塞の世界で、「ほんの少し」忘れていた希望意思を思い出す。

さて、ペルソナ5 THE ROYALでは、そんな「意志選択」の物語であったペルソナ5から、今回の「ROYAL」な3学期では、異なるシチュエーションで「意志選択」の物語が繰り広げられることになる

パーフェクトであった物語に、一学期から当然のように追加される新しい登場人物たち。

言うまでもなく、芳澤すみれと丸喜拓人のことだ。ネタバレになってしまうが、二人には共通点がある、「大切な人」を失ったという「痛み」を持っている点だ。丸喜拓人恋人を、芳澤すみれは、姉であった「芳澤かすみ」と自分自身「芳澤すみれである。丸喜は恋人であった留美家族が殺されたショックで、留美廃人になる。

芳澤すみれは、世界を獲ると共に誓った姉を、自らの不注意で事故に遭わせてしまい、失う。

丸喜は「彼女を救いたい」という「願い」をもって、ペルソナ覚醒させ、留美を救った代償に、留美は丸喜のことを忘れる。

すみれは「かすみになりたい」という「願い」を持ち、それを丸喜が認知を「曲解」させることで、すみれ自身を「かすみ」と認識して生きていく。その代償にすみれすみれ自身を失う。

3学期に解禁されるすみれコープにおいて、芳澤すみれは「かすみ」のように凛々とした少女ではなく、いつも姉の背中を追いかけている内気な少女として描かれる。

かすみの影から自ら脱却し自分意志で歩み始める。彼女コープで、下していた髪を再度括るシーンは、かすみの持っていた強い目が、すみれの中に宿っていた。

すみれの強さと脆さ、そして主人公や丸喜にすがってしまう点は「怪盗団」の女性にはない、どこかギャルゲーチックなトラウマの向き合い方で大変好みだっただけに、もう少し長く仲間として使いたかったという本音もある。

話しを怪盗団に戻そう。怪盗団が無意識にも願っていた願いが叶えられた世界。「幸福幻想」の中にいる怪盗団は、自分たちが「現実にいない」ということにすら気が付かない。彼らが無意識にも願っていた願いが変えられた世界モルガナは人間になり、竜司は陸上を続け、杏は志穂と共に過ごす。真や春には父がいて、双葉には母もいる。かすみかすみとして、凛々とそこにいる。ただ、主人公だけであるジョーカーは違うかのように描かれる。現実が、現実ではない感覚。彼は同じようにここが現実ではないと気がついていた明智、そしてパレスを見つけていた芳澤と協力して、元の世界へ戻ろうと調査を始める。

パレス発見したのち、戦力を増やすめにもまず、ジョーカーは一人一人一味を説得していくわけだが、改めてジョーカー精神的な意志の強さには驚嘆する。彼は問いかける「これで本当に幸せか?」自ら痛みを乗り越え、選ばなければ意味がなかったんじゃないのか?

仲間たちは気がつく。竜司の言葉でいうなら「あいつの言葉が正しいと思ったからなのかも」

その瞬間、幻想は打ち砕かれる。

丸喜は「みんなが幸せに暮らす」世界を作りだすことによって全てを救おうとする。そのことに気がついた時、怪盗団は今まで考えていなかった、改心することの是非を問われる。という問いにぶつかる。しかし!目を覚ました怪盗団の答えは自明である。「幸福」よりも「意志選択」を尊ぶのだ。例え、その現実幸福ものでなかったとしても。

丸喜は叫ぶ「僕は君たちも救いたいんだ」そして、共闘している明智という存在が「ジョーカーがもう一度闘いたい」という願いに丸喜が応えたことによって生まれ存在だということを明す。そして、明智は自らの存在のことを知りながらも、主人公に、自らの「意志」を貫くよう勧める。明智らしい、突き放すような言い方で。

その時、私はそうか、と少し嬉しくと思う。ジョーカーにも、きちんと願いがあり、後悔があったのかと。あまりにも強靭精神を持っているので忘れていた。私ははじめてジョーカーが真なる意味で「我々の仮面」になったような実感を得た。

そこから先はもう言うまでもなく、「歪んだ善意」と「まっすぐな意志」との対決である本来怪盗団に改心することの是非や葛藤など必要ではない。大義名分を気にしてるようでは怪盗団なんかやってないからだ。確かに今回の丸喜は根っから悪人ではないし、どこか衛宮士郎彷彿とさせるような一種正義の味方だと思う。それでも、怪盗団にとっては悪人なのだ自分の力でまだ見ぬ未来を切り開いていく障害になるものは。

ラストバトルで、ジョーカー仮面を外し、丸喜といかにも陰キャな殴り合いを行う。少し狙いすぎるきらいはあるが、その青臭さと眩しさを再度確認できただけでも、ペルソナ5THE ROYALは最高の物語であったと私は言える。

エンディングムービにおいて、丸喜はタクシー運転手として主人公を駅まで載せていくシーンがあり「大人になってから失敗しても、もう一度やり直せる。それが僕の復讐かな」(大意)丸喜も見事に未来をつかむことが出来たのだと思い、うれしくなる。

見送りの際にかすみが現れないのも、怪盗団の見送りがやけにあっさりしている所も、自らの「意志」によって、自分だけの道を歩みはじめたことの証左だろう。新幹線ホームで、「前を向いて歩けよ」という声がする。前を向くと、強い目をした「すみれ」がいる。「それでは」という挨拶だけを交わして、二人はすれ違っていく。前を向いて進む、だが、二人は同じ方向を向いていない。なんと素晴らしい別れ方だろうか。

かすみと、怪盗団と、もう一度会いたいと思わずにいられない。もう一度、ありふれた閉塞と怠惰から未来を切り開くために。そして別れをする為に。その為に何度もペルソナ5THE ROYALを周回し、そのたびに、自分自身の心の中に怪盗団があることを確認するだろう。

最後アトラスには、最高の女である芳澤かすみファントムストライカーズの参戦を、大変期待している。

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