はてなキーワード: 3代目J Soul Brothersとは
数ヶ月前の事は、やたらと鮮明に思い出せる。
友人がお手洗いに立ったのを見て、スマートフォンでツイッターとはてブを緩く見回っていた時に、見つけたのだ。正直眼を疑うような記事見出しだった。本文を見てからは思わず驚愕して叫んでしまったほど。(というよりも、「あ…ああ…」と狼狽した声が行き場を失いながらも出てきてしまったような形なので、端から見たら知人の訃報が入ったか身代金でも揺すられてるかのように見えたと思う)
お手洗いから帰ってくる友人に助けを求めるかのごとく話を振ろうとしたら、彼の方からも話を振ってきた。多分、彼も同じように記事を見たのだ。2人でほとんど声を合わせるように、私たちは同じことを口にした。
と、ここまで来て頭の中で3代目J soul brothers from EXILE TRIVEのストームライダーを頭に浮かべている人はちょっと一度冷静になって、東京ディズニーシーの方のストームライダーを思い出して欲しい。
そう!そうそう!それ!う、うん、そうね、「緑のチカチカチェックするやつ!!」って間違っちゃいないんだけどそれしかないアトラクションみたいな思い出し方はやめなさいね、その後、仮にもストーム消してるんだから。
「空を斬り走るやつねー」って、え?あ、まあ間違ってはいないけども随分とポエミーな表現ね…
「疾風迅雷 蒼の魂」ってだからそれは3代目の方のストームライダーだろうが。
そんなこんなで、今日はTDSストームライダーのラストフライトの日である。こんなにアトラクションクローズでここまで衝撃なのはミクロアドベンチャー!やビジョナリアムに個人的には並ぶ。ツイッターによればあの人気のトイマニ、タワテラをぶち抜いて今日はストームライダーが最大の待ち時間のようである。センターオブジアースやレイジングですら待ち時間緩いのにストームライダーが120越えってもうなんだか異常気象を発見したかのような気分である。それこそ台風のような。個人的には、ストームライダー60分越えはシンドバッド15分待ちに並ぶ混雑のバロメーターだったのだけどなぁ。
今日はそれほどまでに、ストームライダーを愛する人がいる事を確認する日になる。ここまでくると宗教に近いかもしれない。ストームライダーという儀式を執り行うために長蛇の列をなす信者たち。ポートディスカバリーは聖地。
私ももし舞浜に行けるならそのお姿を拝みにポートディスカバリーへと足を運んでいただろうし、もし入園できなくてもベイサイドステーションからゆるゆると海岸線を回り、最もポートディスカバリーに近い地点からストームライダーに向かって祈りを捧げるくらいのことをしていただろう。エルサレム。
どうかしてると言われそうだが、今私はiPhoneのコンパス機能を始めてフルに生かし割り出したディズニーシーの方角に向かって文を書いている。
ストームライダーの何処がそれほどまでに私を魅了したのか。というと本当に答えになっていないのだけども「どの点においても優秀であった」というのが正直な答えである。
オープン当初としては驚きの、かなり精巧なフライトシミュレーター系でスタツアとの出来の違いにまず驚いた。
動き細やか!窓の外も見れるし!
まさかストームディフューザー刺さると思わなかったし。アトラクションのそういった出来が本当に段違いだった。
キャラクターたちも良い。デイビスのお茶目だけどイケメンな雰囲気(ホラーなら最初におどけて殺されてるタイプ)をよく声優は表現したと思う。ストームを目の当たりにした時のセリフは、その声色だけで息を飲んでいるのがありありとわかる。スコットとベースもいい味を出している。「司令室に来なさい!今すぐ!」の声は今も幻聴のように思い出せる。
バックグラウンドストーリーは、オープン当初はストームライダーがかなり大きなバックグラウンドストーリーを持っていた。だって、ポートディスカバリーの設定がストームライダー計画成功のお祭りって設定なのだから。あのポートディスカバリーの雰囲気も好きだったので、その真髄を味わえる、という点でもストームライダーは価値があった。CWC Center for Weather Controlのロゴなどもリアリティがあった。そういった、ディズニーならでは作り込みを感じ取りやすいのもストームライダーの良いところだった。
アメフロのSSコロンビア処女航海設定がタートルトークやオーバーザウェイブ、セイリングの看板の入れ替えなどでしれっと消えてるあたり、ポートディスカバリーの設定もふわっと変わってしまうのだろうなぁ、と思うと少し切ない。
音楽は言わずもがな、TDS、いやTDR、もっと言えばディズニー最高峰の楽曲だろう。
出来ればCDにはストームライダー組曲だけでなく、搭乗前の部屋で流れるイントロリピートのやつも何処かで収録をして欲しい。
あの名曲が、演奏される場所を失うのは本当に惜しい。ミクロアドベンチャー!の素晴らしいテーマ曲が今はTDLエントランスの一部になっているように、ポートディスカバリーのエリアミュージックとして生まれ変わってくれることに期待をしたい。
そして私が最もストームライダーを愛してやまない理由をあげたい。
なんじゃそりゃ、って人に説明すると、ストームライダーではキャビンに搭乗する直前に、気象コントロールセンター研究員であるキャストさんが実演でミッション内容を説明してくれるのである。
私はこれが本当に好きだった!!
今でこそタートルトークにタワーオブテラーとキャストが説明をしてくれるアトラクションは増えたものの、昔は無かったのだ。
もう、カヌーかジャングルで体育会系なノリしか無かったわけです。
もっとさかのぼればシンデレラ城ミステリーツアーがあったけれども、シーではストームライダーくらいしか無かった。2つのシアターでも説明はあるけど本当に説明くらいなので、ストームライダーが1番エンタメ性があったのだ。
初めて見たときはベースとの掛け合いなどももしやここにいるのか?と思ってしまったほど。
最近では「今の…100万倍くらいですかね?」
はすべり芸としての地位を築いてしまったけども、話口調や映像を使ったパフォーマンスは、本当に素晴らしかった。
東京ディズニーシーはオープン当初は全体的にキャラに頼らない、生身の人間が見せるパフォーマンスを重視していた節がある。アンコール!やミスティックリズムはその最もたるものだけれども、アトラクションで初期のシーが標榜していたライブパフォーマンスのエッセンスを取り入れていたのは今思えばこのストームライダーだけだった。
そこまで難しいことは考えずとも、初めて乗ったとき、あの説明を受けたとき、「これが、これからのTDRのアトラクションなんだ…」と衝撃を受けた。
そう、思い起こせばオープン当初のシーの人気アトラクションの中で、「原作がないアトラクション」はストームライダーだけなのである。
今のファストパス対応アトラクションの中でもレイジングスピリッツとストームライダー、タワーオブテラーだけだ。(タワテラはトワイライトゾーンとはもはや無関係なので)
鑑みればあのあたりのオリエンタルランドはディズニー脱却をコンセプトにしていたのか、イクスピアリにオリジナルキャラを作ったり(何処に行ったんだネポス…)前述の通りアンコール!などのキャラ無しのショーが多かったり、シーではグリ施設は無かったり、かなりストイック、というかランドとの方向性の違いを明確に出そう、という気概があった。自分たちで新しいものを作るんだぞ!という。そんな中で作られたこのストームライダー、力が入らないわけが無いし、面白く無いわけが無いのである。
そう、シンドバッドが友愛のストーリーに書き換えられたり、グリ施設が4つもできたり、キャラ無しのショーは全部廃止された、オープン当初のコンセプトもへったくれも無い今のシーの中で、唯一、ストームライダーはあの頃の雰囲気を持っていた。ある意味では、ストームライダーはオープン当初のシーの遺跡なのである。
そして個人的なことを言えば、プレフライトクルーになりたかった。
たくさんの人の前で、ご案内をする姿が眩しかった。子供ながらに憧れて、いつしかあの案内はすべて諳んじれるようになっていた。
その影響もあってか、演劇部に入ったこともある。今の仕事でも司会業を少し受け持っている。
あのプレフライトクルーへの憧れ、ストームライダーへの憧れが、こっそりと私の人生に種をまいていてくれたのだと思っている。
ストームライダーは、思い出であり、人生の起点であり、唯一無二のアトラクションだった。
明日からは、ポートディスカバリーにストームライダーはいない。
それに伴い、14年に渡るストームライダーによるストーム消滅ツアーは廃止となる。
同センターによると、今後の学術研究へ注力するための選択だそうだ。
本日の閉鎖を持って、センターに勤務の全職員は新事務所へ移ることになる。
そしてたくさんのプレフライトクルーは明日も、新しい場所ながらも変わらずにストームや異常気象と戦う日々が続くのだろう。
もう二度と、凄まじい破壊力を持つストームの中になんか入れない。
もう二度と、100万倍くらいの小粋なジョークにクスリと笑うこともできない。
もう二度と、緑のチカチカの部分だけ決めゼリフのように声を被せる高校生の集団も見れない。
おやつのピーナッツのチェックも、雨に驚くゲストの姿も、エンジンがやたらと故障する機体にも、会えない。
そして、外へ出たときにより美しく感じる空と海のきらめきと潮の香りにも。
ストームライダーはなくなっても、乗った記憶、そしてそこに確かにあったという記憶は誰もの心に、残る。
だからこそこの寂しさは抑えて、大きな舵を切るオリエンタルランドを応援したい。
ここまで記憶に残るものを作ってくれたのだから、きっとそれを超えてくれるだろうと期待をしつつ。
本当に、ありがとう。
ポートディスカバリーは、今日も、晴れている。