SMAPというのは、日本のいわゆる「失われた20年」を駆け抜けたアイドルなのだろうと思う。
今、あらためてWikipediaを見てみたら、前身である「スケートボーイズ」の結成が1988年、
バラエティーも全力でこなす新しいタイプのアイドルとしての存在のスタートとなったテレビ番組
『夢がMORIMORI』のレギュラーとなったのが1991年
そして、『SMAP×SMAP』が始まったのが1996年だそうだ。
以降、森くんの脱退という事件をはさみながらも、日本の芸能界のトップを、彼らが懸命に走ってきたことは、誰もが知っている。
ちなみに、日経平均株価が、38,957円という今では信じられない高値を付けたのが1989年の年末。
その後、バブルが崩壊して、山一證券が自主廃業を決定して、社長が記者会見で号泣して世間に衝撃を与えたのは1997年のことである。
まさに、SMAPのメンバーが光GENJIのバックダンサーなどの下積みを経て、人気を獲得しだすまでの時期に重なる。
まだまだ「一生懸命勉強して、いい大学に入って、いい会社に就職すれば、一生安定した生活が送れる」という、
高度成長期の神話(当時は、あながち神話でもなかった)を信じ込まされて大学まで進んだものの、
やっと就職した会社では、自分の目上に掃いて捨てるほどいるバブル世代の下で、
後輩もろくにできず、ブラックな働き方を長年続けさせられたり、
就職活動がうまくいかずに非正規社員になったり、ニートになったりという人が、相当数いるはずである。
そして、そんな彼らの中に、SMAPに憧れたり、勇気づけられたり、
やけっぱちになってSMAPの歌をカラオケボックスでがなったりしていた人も多くいるはずだ。
SMAP自身も、アイドルをめぐる環境変化の中で、当初はなかなか売れる見通しが立たず、苦労を強いられたという。
それが「バブル崩壊」と関係あるのかどうかはよくわからないが、ともかく、彼らは有能な女性マネージャーの下で、
歌唱力も演技力もダンスも、彼らより優れた人たちはいるのだろうが、
どんなに「スカしている」「いきっている」といわれようとも、かつてのキムタクは「カッコいい」の代名詞として人気は別格だったし、
「音痴」という、本来歌手としてあるまじきレッテルを張られながらも、その人柄と気配りで中居くんは日本屈指のMCタレントになっていったし、
闇を抱えながらも明るさを振りまく慎吾ちゃんの姿とか、
あくまで飄々と、ときにユースケサンタマリアと、女性の胸が見える見えないではしゃいでたりする草薙くんとか、
決して仲良しではないのだろうけれど、互いを尊重しながら「プロのアイドル」として彼らは日本の芸能界に君臨してきた。
そんな彼らが、「同族企業の経営一族」と「自分たちを育ててくれたたたき上げの取締役」の対立が原因で、
分裂させられそうなのだという。
これは、とてつもなく哀しい。
あんなに「スーパースター」な彼らも、所詮は権力を持っている年寄りたちの都合で動かされる「労働者」にすぎないなんて。
昨年からSMAPが「のど自慢」に出場して、東京から5~6時間かかる被災地の街を訪問したり、
年末には、中居くんが『笑ってはいけない』に出てきて、お笑いタレントとキスシーンを披露するなど、体をはった仕事をしたり、
年明けには『すべらない話』で、中居くんが事務所社長の誕生日のエピソード
(それも、事務所内での近藤真彦の優遇ぶりと、中居くんの立ち位置を彷彿とさせる話)を披露したり、
なんか、SMAPが仕事の幅を広げてきているなあ、とは思っていた。
それが、事務所独立を見据えた必死の行動だったと思うとまた、なんとも切ない。
現在の事務所に頼らず生きていくためには、そりゃNHKや吉本興業との関係は深くしておくに越したことはない。
とくに、中居くんの「肝の座りっぷり」と「体の張りっぷり」は、「SMAPの居場所を俺がつくる」という覚悟の上ではないだろうか。
一部報道によれば、キムタクが現在の事務所に残留を決めた理由の一端に
奥さんの懇願もあったともいう。
メンバーで唯一、家族を抱える彼にとっては、「安定した現在の会社に残ってほしい」という奥さんの願いは無視はできないだろう。
これも「労働者」っぽくって、哀しい。
バブル後に社会に出た人の多くは、バブル以前の社会が残した諸々の「負の遺産」を清算するために、
苦労を強いられてきたうえに、あまり感謝されることもなく、年寄りたちの「わがまま」に振り回されているのではないかと個人的に思っている。
少子化はあんたらが結婚して子供創らないせいだとかいわれても知るかよ。
SMAPもそうだ、とは言うつもりはないんだけれど、でも、なんか、やはりどこか重なっているように見えて仕方がないのだ。
さらに突飛なことをいえば、ちょっとだけ、例の「新国立競技場」をめぐる騒動を思い出す。
偉くて権力を持った人たちが決めてしまったことが、たとえ非合理だったとしても、もう覆すことなんかできないのが、
この国の常識だった。
幸いにして、あの膨大な予算を食いつぶす「ザハ案」とやらは変更が決まって、
多少なりとも「世論」が、「権力者が決めたこと」を覆せたのはよかったけれど、
あの、「権力を都合のいいように使う年寄り」の象徴たるオリンピック組織委員会のトップ(記すのも忌々しいので、ここのは名前は出さない)は
いまだトップであり続けている。
それが、多分、今のこの国の限界だ。
はたしてSMAP、どうなるんでしょうね?
なんとか存続してほしいなあ。
自分は、そこそこテレビ好きでお笑い好きだけど、SMAPに今まで特別な思い入れがあったわけではない。
カラオケで代表曲のほとんどは歌えるけれど、CDを買ったこともない。
でも、SMAP存続の役に立つんなら、『世界に一つだけの花』のCD一枚くらいなら買ってもいいかなと、今回、思ってしまった。
まあ、役に立たないと思うから、買わないけれど。
「事務所内部の問題に口に出す立場にはないが、フジテレビとしては、『SMAP×SMAP』は長年、視聴者に愛されてきた番組であり、
今後も放映が続けられるよう関係各所には努力してほしいとは思っている」くらいのことを会見で発言したらどうだろ?
現在ネット上では四面楚歌にあるフジテレビの好感度も、多少は上がるんじゃないかと思うし、
結局は業界にいる人たちが動かないと、事態は良い方向には動かないのだろう。
正直どうでもいいっす世代論はやめてください