宇宙世紀136年「神の雷」を阻止する作戦「鋼鉄の七人」、その七人に選ばれなかった、八人目と九人目のモビルスーツ。
だが、この機体に関しては、存在を主張するものが、たった2人しかおらず、そもそも兵器歴史の分野で解説する機体なのかどうかすら怪しい存在である。
第二次ネオジオン戦争期に漂着したギラ・ドーガを作業用MSとして使っていた、資源小惑星の作業員二名の独自カスタマイズ機。
40年近く前の旧型機であり、かつその間作業用として使用されており、機体の運動性や機動性の面に関しては当時よりも劣っており、到底木星との決戦に耐えうる機体ではない。
しかし、この機体は運動性や機動性を重視していない、何より攻撃力とも言うべき兵器すら一切所持していないのだ。
一見すると通常のギラドーガよりも巨大なバックアップによる超威力のビームキャノンにも見える兵器を所持しているが、これは他の機体にエネルギーを補給する機器である。
動かすのが困難な作業用機械間を繋いでいたバイパスを利用して作られており、彼らが作業員として働いていたことを証明する事実でもある。
これは鋼鉄の七人Bチームの近接援護担当のクロスボーンガンダムX1フルクロスをサポートするために特化した機体であるためである。
ギラ・ドーガ自体が装備しているABCマントについても、フルクロスの特殊装甲が破壊された際の予備部品であり、彼ら自身が防御手段として使うために装備しているわけではない。
事実、この写真でも前面の装甲を隠すのではなく、後ろにたなびかせている。
いったい、この二体のギラ・ドーガと「鋼鉄の七人」の間に何があったのかは、くだんの資源小惑星で彼らに会えば快く話してくれるため、ここには記さない。
彼らの「鋼鉄の七人」への、特に元になった宇宙海賊クロスボーンバンガードのエースパイロット「トビア・アロナクス」への信仰は強く、
宇宙世紀190年代初頭の宇宙戦国時代と呼ばれる動乱の時代に生まれたMS支援AI。
当時、コロニー、地球、木星、いずれの集団も最早新型MSを製造するだけの国力は残っていなかった。
しかし、ミノフスキー粒子の発展以降あまり重用視されていなかった、情報工学の面からMSの性能を向上を目的とし、MS支援AIの本格的な製造が始まっていた。
特に木星帝国のバイオ脳技術と、サイド3のコンピューター技術は突出しており、この二カ国のAI非常に優れた性能であった。
今回紹介する「ダミアー」は、その二カ国の技術者の共同開発によるAI郡、通称ガリューシリーズの一つだ。
「ダミアー」の特徴は、既存のAI郡とは違い、特定のMS郡、木星由来のMSに特化した支援システムにある。
通常のMS支援AIは、パイロットに依存し、パイロット共に成長していくが、この「ダミアー」はパイロットに依存せずMSに依存している。
それは、木星のMS郡が特殊だったこともあるが、何より完全なワンオフ機を支援するAIという分野が未開拓だったことへの挑戦でもあったようだ。
特定のMSに特化した、MS支援AIという発想自体は悪くなく、事実「ダミアー」の量産により、木星防衛軍の任務成功率は格段に向上した。
しかし、MS支援AI全般の問題でもある「デバイスに操作を委ねられるパイロット」の少なさ自体は、以前として解消されていない。
確かに支援AIにより、任務成功率という観点では向上しているが、パイロットの精神的安定性とも言える指標値は下がってしまった。
これは、時に人を殺す事を躊躇しないことが求められる戦場において、自分の意志ではなくAIの意思が加入することへの嫌悪感にあると言われている。
宇宙世紀170年前後に見られたニュータイプでもサイキッカーでもない、新たな人類の可能性として持て囃されたデバイスを高度に操れる人種も、またニュータイプやサイキッカーのように何時しか廃れ、ごく一部稀に見られる兵士の一要素でしかなくなっていた。
宇宙世紀が始まって200年という節目が近づいてもなお、人類の革新、人類の進化、というお題目は言葉が大きすぎるのだろう。
だが、モビルスーツではない新たな機動兵器(マン・マシーンと呼称されるらしいが、詳細は不明)を開発している集団があるという噂もあり、この動乱はまだまだ終わりが見えない。
そんな我々を、AIであり、人類が作った存在である彼女たちは、どう思っているのだろう。
なお「ダミアー」を始めとするガリューシリーズには、通常のマスターとして使えるパイロットの他に、
「アークマスター」と呼ばれる、ガリューシリーズのAIが共通して信奉する人物が存在する。
「アークマスター」はガリューシリーズ以外にも数多くのAIの開発に携わっており優れたAI技術者であると同時に、優れたMSパイロットでもあったため、AIに戦闘を教育する過程で、そう呼ばれるようになったらしい。
そんな「アークマスター」が最初に製造したAIが、愛らしい少女の姿だったことが、今もなおMS支援AIのグラフィックがそのような少女の形をしていることの由来である。
球のような形状の大型のシールドを装備し、背中からケーブルが伸びているジェガン。
宇宙世紀140年代前後のフォン・ブラウンへの遷都の際、生粋のアースノイドで宇宙にあがったことがない政府高官が大勢おり、彼らのために重力がある施設を大量に作る必要があった。
宇宙にあがってから140年もたっていたこともあり、生粋のスペースノイドたちにとっては、あまり重力の有無は重用視されていなかったためである。
そのために、大量の資材が月へ輸送されたのだが、その輸送船がコロニー軍に属さない、宇宙海賊に襲撃される事件が相次いでいた。
コロニーの自治が進んでいたこの年代においては、宇宙海賊のような軍の支援を受けていない荒くれ者たちすら、高性能なMSを保有していた。
特に多数を占めていたのが、ブッホ・コンツェルンのMS郡であった。
コスモバビロニア建国戦争の際に示されたように、小型MSと大型MSの性能差は圧倒的であり、未だにフォーミュラー計画の量産機が大量生産されていない現状では、宇宙海賊の小型MSに対応するのは難しかったようだ。
特に木星戦役以前に導入された小型MSのジェムズガンが空間戦闘に向いていないことも、原因の一環だったようだ。
そこで急遽白羽の矢がたったのが、コスモバビロニア建国戦争以前の名機「ジェガン」であった。
空間戦闘可能である点、かなりの数がまだ配備されていた点などが改修された理由としてあげられているが、何よりフォーミュラー計画以降サナリィにその座を奪われたアナハイム社との何かしらの協議があったらしく、ジェガン専用の追加パーツを新たに製造する事が決まった。
さて、今回の目的においては、敵MSを戦闘不能にすることは求められていなかった。
何しろ敵は所詮無頼者の宇宙海賊であり、大量の組織的運用をされていたわけではないため、資源を月面まで運ぶために、月の防衛範囲内まで戦艦やシャトルを防衛することが出来れば、多勢に無勢で宇宙海賊は撤退するため、防衛に専念すればよかったのだ。
そこで考案されたのが、この独特の形状のシールドだ。
これは、宇宙海賊の主力となるデナン・ゾンのショットランサーをはじくことを目的とする形状だ。
ビーム兵器ではない実体兵器だからこそシールドの形状により威力を殺すことが出来ている。
さらに特徴的なのが、シールドの裏側から放出される大量のビーム機雷により、ジェガンを除け直接戦艦に近づくことを妨害する。
しかし、ビーム機雷は、ビームを丸状に固定し空間を漂わせる技術で、通常のビームライフルよりも大量のエネルギーを必要とし、ジェガン程度では補えるものではなかった。
ならば戦艦側に直接装備するオプションにする案も出たが、ビーム機雷を射出することが難しく、MSが直接発射装置を持って散布する必要があったのだ。
ジェガン本体と戦艦を「直接」ケーブルで繋ぎエネルギーの問題を解消したのだった。
戦艦防衛という任務に特化した兵器といえるが、ケーブルを破壊されると、ただの大型シールドであり、ネタが割れてしまえば何ということはない兵器だったようだ。